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第6話 ネコ

お昼の後は眠い目を擦りながら授業を何とか受け終わり、放課後を迎えた。

俺は約束していた通り、彩香と本の感想を言い合うために二人で中庭のベンチに座っていた。


「これ、貸してくれてありがと」

「一日で読み終えるなんてすごい」

「昨日の夜読んでたら、入り込んじゃって、気づいたら朝になってたよ。そのおかげで今日は徹夜だ」

「私もよくある。木羽優きうゆ先生の本、読み始めたら止まらない」

「特にこのシーンが……」


と、それから、俺たちは本を開きながら『芥川家殺人事件』を振り返った。

しかし、徹夜の負担は思っていたよりも体に来ていたようで、話している間に俺はいつの間にか眠ってしまっていた。


……


どれくらい寝てしまったのだろうか。

涼しい風に打たれ、だんだんと意識が覚醒してきて、何か後頭部に柔らかいものを感じる。

それは、今まで使ってきた枕とは比べ物にならないほどにとても寝心地が良かった。


「翔真。起きた?」


そんな声が聞こえ、目を開くと目の前には二つの山の奥に綺麗な顔がぼんやりと見えた。

その光景と記憶から、俺の後頭部に当たっている枕の正体が彩香の太ももだということに気付くのに時間は要らなかった。

俺は急いで体を起こす。


「ご、ごめん。いつの間にか寝ちゃってた」

「よく寝れた?」

「うん。めっちゃぐっすりだった」

「良かった。はい、これ」


彩香はそう言って眼鏡を渡して来る。

邪魔そうだから外してくれたのだろう。


「ありがとう」


俺は眼鏡を受け取りつけ、俺は驚愕した。

彩香の額に書かれている数字が






だったからだ。

それを見て再び考えることが増える。

100では無くなっている。

ー?

1?

これは何を表しているのか。

寝ている間に何かあったのか。


「翔真、もう遅い。帰る」


そんな風に考えていると彩香がそう言ってくる。


「そうだね。俺が途中で寝ちゃったからあんまり話せなかった、ごめん」

「全然大丈夫。何なら……」

「ん?」

「何でもない」

「俺も話したいこと話せなかったし、次からは読んだらすぐ感想言いあえるように連絡先交換しない?」

「ん、分かった」


そう言って彩香はすんなりと携帯を差し出してきたので自分の連絡先を登録した。


「それじゃあ。またね」

「うん。またね」


そう言って俺たちはそれぞれの家に帰って行った。





★★★★★★



増田ますだ彩香あやか 視点>



今日も私は朝早く登校して教室にいると、翔真が坂原さかはら 陽菜乃ひなのと一緒に登校してきた。

最近この二人が一緒にいることが多いような気がする。何故かこの二人が一緒にいると心がざわつく。


翔真には松浦まつうら汐良せらという彼女が居るはずだがどうしてだろうか。

浮気しているのか。


いやいや、木羽優きうゆ先生好きに悪い人はいないはずだ。

浮気なんてそんな事するはずもない。


彼は覚えてないかもしれないけど高校に入学して間もないときに私は彼に話しかけられた。

その時から私は彼のことが気になり始めた。

そして、最近彼が木羽優きうゆ先生を好きだということを知り、私は運命を感じてしまった。

彼女が居る人を好きになってはいけないと思いながらも最近は私の思いを抑えられていないような気がする。


そんなことを思っていると、彼が今日の放課後に本の感想を二人で話そうと誘って来た。


彼から誘ってくれた。私はとてもうれしかった。

私はドキドキしながら放課後を待った。





約束していた通り、翔真と本の感想を言い合うために二人で中庭のベンチに座っていた。


「これ、貸してくれてありがとね」

「一日で読み終えるなんてすごい」

「昨日の夜読んでたら、入り込んじゃって、気づいたら朝になってたよ。そのおかげで今日は徹夜だよ」

「私もよくある。木羽優きうゆ先生の本、読み始めたら止まらない」


彼と話しているときは少ししゃべり下手になってしまう。

私は懸命にそれを隠しながら話す。


「特にこのシーンが俺は好きかな」


そのシーンは私もとても好きなシーンだ。

やっぱり翔真とは気が合う気がする。


「そう。私もここ、好き」

「この容疑者五人がそれぞれ自分のバックグラウンドのせいで真実を証言できないということをうまく使って、状況をあやふやにしてるところがすごいよね」

「うん」

「それに最後にあんなどんでん返しが来るなんて思っても見なかった」

「そうだね。私も読み始めてから止まらない。休みの日を潰した。この前の新作、もう読んだ?」


私がそう翔真に尋ねた瞬間に私の肩に何かが乗っかる。




翔真の方を見ると、私が一方的に話すばっかりだったせいか私の肩にもたれかかってスヤスヤと眠っていた。

その顔はとても可愛らしかった。

私は翔真の頭を支えながら、私の肩からゆっくりと太ももの方に下ろして、膝枕のような形になった。

眼鏡が邪魔だろうと思い、私は彼の眼鏡を外してあげる。

眼鏡の奥に眠っていた顔はさっきの可愛らしい顔とは打って変わって、とても凛々しく見とれてしまった。


「っ……。そんな寝顔、反則」


私の彼への思いはより一層の大きくなった。

私は悪いと思いながらも、次いつ見られるかも分からない眼鏡を外した彼の寝顔を収めるためスマホで写真を撮った。


そして、しばらくは彼の頭をよしよしと撫でながら過ごしていたが、流石に退屈だったし、寝るのにも寝心地が悪そうだと思った私は彼の掛けていた眼鏡を手に取る。


「翔真の眼鏡」


私は何気なくその眼鏡を自分に掛けてみた。

私は視力は悪くないはずだが、眼鏡をかけてもぼやけたりしなかった。

度が入ってるなら気持ち悪くなったりするはず。

ならないということは


「伊達眼鏡?」


私は眠っている彼の方を眼鏡を掛けたまま向き、翔真の頭を撫でてあげた。

すると、彼の額のところに数字が見えた。

私は何だろうと思ってその数字に触れてみようとしたその時、


「んー、。」


と、寝ている翔真がうなり声をあげた。

彼に眼鏡を掛けていたことがバレてしまわないよう私は急いで眼鏡を外した。


「翔真。起きた?」


と何事も無かったかのように声を掛けた。


「ご、ごめん。いつの間にか寝ちゃってた。」


謝ってくる翔真。

眼鏡のことはバレていないようなので良かった。


「よく寝れた?」

「うん。めっちゃぐっすりだった。」

「それは良かった。はい、これ翔真の眼鏡」

「ありがとう」

「翔真、もう遅い。帰る」

「そうだね。俺が途中で寝ちゃったからあんまり話せなかった、ごめん」

「全然大丈夫。何なら……」

「ん?」

「何でもない」


なんなら、私にとってはご褒美でそっちの方が嬉しかったとは口が裂けても言えない。


「俺も話したいこと話せなかったし、次からは読んだらすぐ感想言いあえるように連絡先交換しない?」

「ん、分かった」


翔真の申し出に私は二つ返事でオッケーした。


「それじゃあ。またね」

「うん。またね」


翔真と別れてしばらく、自分の携帯に登録された彼の連絡先を眺めていた。

私の色々ドキドキした一日は幕を下ろしたのだった。

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