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第5話 スウジ

しばらくは何にも変わることない学校生活を送っていたが、それも永遠とは言えなかった。

学校が終わり今日は急いで帰り彩香から借りた木羽優きうゆ先生の過去作『芥川家殺人事件』を読もうと思っていたがそれはある女によって阻まれてしまった。


「翔真。ちょっといい?」


その声はもう聞きたくもない声だった。


「なんだよ、俺は話すことなんてないんだが」

「うるさい。いいからちょっとこっちに来なさい」


それは《《元》》カノの松浦まつうら汐良せらだった。

俺はしぶしぶ本を閉じ、言われるがまま彼女について行った。


「あんた最近、陽菜乃と彩香と仲良さそうじゃない」

「それがどうした。お前にはもう関係ないだろう」

「あなたもそろそろ分かって来たんじゃない?」

「何が?」

「私が彼女だったありがたさを。別れてから2週間以上経って、私と言う彼女を無くしてから気付いたでしょ。あなたがどうしてもって言うならよりを戻してあげてもいいわ」

「……いや、いいよ」

「……へ?」

「話はそれだけか?」


汐良せらはまさか断られると思っていなかったという顔をしていた。

眼も口も動くことなく開いたままだ。


「それじゃあ、俺忙しいから」

「まって……」


俺は引き留めようとする汐良せらをはねのけて帰った。

俺は無駄な時間だったと思いながら、本を早く読みたいという気持ちで足早に家に帰る。

すると、俺の家の玄関の前で陽菜乃がしゃがんで待っていた。

彼女はこちらに気付くと「遅い。」と、少しご立腹していた。


「遅いって待ってるの知らなかったし、それなら言ってくれよ」

「し、仕方ないでしょ。連絡しようにも連絡先知らないんだから」

「ああ、そう言えばそうだな」

「それで、何の用だ?」

「弁当作るって約束だけど準備ができたから明日から作ってあげようかと思いまして。嫌いなものとかアレルギーとかあったらいけないと思いましたので。それに好きなものも聞いておこうかと」

「なるほど。嫌いなものもアレルギーも特にないよ。陽菜乃が作ってくれるものなら何でも嬉しいかな」

「そ、っそう。」


陽菜乃は少し頬を赤らめながらそう答えた。


「そうだな。しいて言えば、卵焼き。甘い方がいいかな」

「甘いやつね。分かった」

「おう。楽しみにしてる」

「それと、次こういう時のためにもれ、連絡先、交換しておきません?」

「それもそうだな」


そうして俺の携帯の連絡先に坂原さかはら 陽菜乃ひなのの名前が追加されたのだった。

早速、陽菜乃からメッセージが届く。

可愛い猫がよろしくお願いします!と頭を下げるスタンプだった。

その猫はなんだか陽菜乃に似ているように感じた。

俺もよろしくの旨のスタンプを返しておいた。


「それじゃあ、また明日な」

「はい。また明日」


そう言って俺らはそれぞれ自分の家の扉を開けたのだった。



俺はその後、手早くカップラーメンで夜ご飯を済ませすぐに本を読み始めた。

読むのに没頭してしまい読み終えたときには、時計の針は朝の5時を指していた。

読み終えた感想をすぐに彩香に伝えたくなったが、彩香の連絡先も知らないため学校へ行ってからのお楽しみにすることにし、俺は寝ることを諦め学校の準備をし始めた。


それから、いつも通り陽菜乃と一緒に学校へ行った。

すでに登校していた彩香に話しかけると額の数字が98に下がっていることに気が付いた。

俺は何かしたかと思い返すが心当たりがない。

とりあえず、今日の放課後に本の感想を《《二人》》で話そうと言っておいた。

すると再び100に戻ったので俺は気にすることなく席に戻った。


その後、大樹が俺の顔を見てすぐに、


「お前今日徹夜か?顔色悪いぞ。」


と聞いてきたことにはとても驚いた。

あんまり眠たくはないんだけどなと思いながら、授業も普通に受けた。



そして、待ちに待ったお昼ご飯の時間。


「あまり期待しないでくださいよ」

「分かってるって。早く早く」


俺が急かす中、陽菜乃の持ってきたお弁当箱の蓋が開かれる。


「お~。旨そう!」


その中には、俺のリクエストした卵焼きから、ウインナー、から揚げなどから、野菜までしっかりとバランスが考えられ、綺麗に敷き詰められた陽菜乃らしいお弁当が広がっていた。

昨日の夜をカップラーメンで済ませてしまったせいか俺の食欲は今にも爆発しそうだった。


「どうぞ、召し上がってください」

「それじゃあ、早速。卵焼きから」


卵焼きを箸で持つと、程よい硬さで、口に運ぶと噛むたびに味がじゅわーっとあふれてきます。飲み込んだ後にもたまごの甘さ、味付けの甘さがふわっと広がる。


「うっま」

「それは良かったです」

「ネギを入れたやつもあるのでそれもどうぞ」

「マジか。センスの塊だな」


それから俺は無我夢中で食べ続けあっという間にお弁当は空になってしまった。


「どれもこれもめっちゃおいしかった。ありがと」

「いえいえ。それだけおいしそうに食べてもらえたらこちらもうれしいです」

「弁当箱は帰ってすぐ洗って返すね」

「いえ、私がやるので、大丈夫ですよ」

「さすがにそこまでしてもらうわけにはいかないよ」

「分かりました、ではよろしくお願いします」

「あと、材料代も」

「いえいえ。材料代はもらえませんよ。こちらからお弁当作ると申し出た訳ですし、それに2人分作る方が楽なので」

「でも……」


俺はさすがにお金の問題は解決しておきたいので解決案を考えていると。


「分かりました。翔真君には月に何度か私と遊びに行ってもらうことにします。その時の料金をいくらか奢りということでどうでしょう?」

「そんなことでいいならいいけど」

「それじゃあ、決まりです!初回は次の土曜日でどうでしょう。行きたいところがあるので」

「分かった。土曜日な」


それからは他愛もない会話をして昼休みを過ごし、教室に戻ったのだった。

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