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第41話 スベテ

「――どうなった?」

「……付き合うことになった。」

「ようやくだな。」


昼休み。

俺は大樹とが弁当を食べながらそんな報告をする。


「大樹には色々と迷惑かけたな。」

「ホントだぜ。夏祭りの二日目なんて、麻衣の機嫌取りでいくら使ったことか……。その分はしっかり請求させてもらうからな。」


俺が彩香あやかと夏祭りを回っている間、どうやら大樹は俺と回る予定だった麻衣ちゃんと兄弟水入らずで回ったらしい。

こいつには感謝しても仕切れないものがあるな。


「ホントにありがとな。」

「それに、麻衣の奴まだ、諦めてない様子だったから気を付けとけよ。万が一にも浮気なんて…‥。」

「する訳ないだろ。」

「冗談だよ冗談。そんで、これからどうするんだ? 彩香ちゃんとの行く末のプランは?そう言えば、キスはしたのかよ。」


大樹は興味津々に尋ねてきたので俺は「ノーコメント。」とだけ言っておいた。


「何だよ連れねーな。まぁ、アドバイスできることがあったら言ってやるから、この恋愛マスター大樹様に頼ってくれよ。」

「何だよ恋愛マスターって。お前、マスターって言えるほど彼女いたことないだろ。現に、今も居ないし。」

「俺は居ないんじゃなくて、作らないの!」


俺がそう弄ると、大樹は弁当の具を口の中に含んだままそう言ってきた。

(はい出た、作れない人の典型的な言い訳。)

なんて口にはせず、「はいはい。」と流し聞いていると、


「お前っ、今馬鹿にした目で俺の事見ただろ!今に見てろよ。」

「分かった、分かった。」

上田うえだ雄大ゆうだいたにさんが痺れを切らして、谷さんの方から告白して付き合ったって聞くし、最近フィーバーだぞ。俺だって……。俺だって……。」

「大丈夫、大丈夫。大樹は良い奴だから彼女なんてすぐできるって。」


(誰か早くこいつを貰ってやってくれ。)

そんな風に思いながら、俺たちは昼休みのひとときを楽しんだ。



    

     ♦




「ごめん。思ったより時間かかっちゃって……。」


放課後、校門で待っていると小走りで彩香がこちらに近づいてきた。


「全然大丈夫だよ。先生に呼ばれてたんだから仕方ない。」

「……うん、ありがと。」


俺たちは手を繋ぎ、揃って歩き出した。


あとは家に帰るだけ……なはずだが、恋人同士となるとそうはいかない。

お互いが離れたくないと思い、今の時間を一分一秒足りとも無駄にしたくないと心の中で思っている。

そのため自然と歩くスピードは遅くなり、二人でずっと一緒にいたいと願うように歩いていた。


「「あっ。」」


そして二人同時にとある場所を見つめ、そう漏らした。

俺たちの目に留まったのは、本屋だった。


俺たちを繋いでくれたものがある場所。

その隣の公園。


「……ちょっと寄ってくか?」

「うん、寄ってく。新作が出てるかもしれないしね。」


俺たちはその本屋に吸い寄せられるように入っていく。

別に今日やらなければいけない何か特別な用事があるわけではないが、俺たちの足は勝手に店の中に向かって進んでいく。


本屋に入り、気になる本を探していると視界の端で、そんな俺を見て、なぜか彩香がニヤニヤし始める。


「……なんだよ。」

「いや? なんでもないよ?」

「嘘つけ。ならなんでこっち見てニヤニヤしてるんだよ。」

「別に。ただ翔真がカッコいいなって思っただけ。」

「か、かっこ……!?」

「照れてるのも可愛い。」


そんな彩香の言葉に不意を突かれてしまった俺は、仕返しをすべく思いを言葉にする。


「…俺より彩香の方が可愛いに決まってんだろ。」

「っ……。」


そんなやり取りをしながらも、本屋を堪能しその後はそのまま帰宅した。


 


        ♦




”ピピッ、ピピピッ”



いつものように寝室に鳴り響くスマホのアラームを止めた俺はベットから体を起こし、枕もとの眼鏡を掛けると、ふと、棚の上の眼鏡に目が行く。


「懐かしいなぁ。」


そして、昔のことが思い出される。




―――俺、角田かくた翔真しょうまには誰にも言えない秘密があった。


《《それ》》が、見えるようになったのは高校二年の始業式の日だった。


いつもは鳴るはずのスマホのアラームがなぜかこの日だけは鳴らなかった。

眼鏡を掛け、寝間着から制服に着替え、急いで家を出発する。


初日から遅刻しまいと全力で走り、学校へ向かう最後の曲がり角に差し掛かり

曲がった先にいた人とぶつかってしまい、その衝撃で眼鏡が外れてしまった。

俺は急いで眼鏡を手探りで探しながら、ぶつかってしまった相手に謝る。


「すいません。」

「いや、大丈夫だよ。はい、これ君の眼鏡。」


そう言って、スーツ姿の男の人が俺の眼鏡であろうものを渡してくる。

それが、この|不思議な眼鏡《LOVE GLASSES》だった。



(あのスーツ姿の男の人も俺と同じように過ごしたのだろうか。)

(それじゃあ…‥)



―――そんな風に考え込んでいると、寝室の扉が開かれ俺の名前が呼ばれる。


「翔真、早く起きないと遅れるよ。」


そう言って扉から顔を覗かせて来たのは、

俺の妻、増田ますだ彩香あやかだ。


俺たちはあれから交際を続けて、いろんな壁を乗り越え、社会人となり、ついにこの春に結婚したのだ。

(その話はまた次の機会に。)


「あぁ、すまん。」


俺はそう言うと、寝室を出て、彩香の用意してくれた朝ご飯を二人で食べ、不思議な眼鏡《LOVE GLASSES》を持ち、準備を済ませて玄関に向かう。


「いってらっしゃい。」


お見送りに来た彩香に「行ってきます。」と言い、額にキスをして俺は玄関を出た。


俺は少し遠くで走っている少年を見つけて、いつもより少し遠回りをする。

少年が道の角から出てくるのを見計らって俺も同じタイミングで角を曲がる。


「すいません。」


俺の思惑通り俺と少年はぶつかってた。

その衝撃でかけていた眼鏡が外れてしまった彼は急いで眼鏡を手探りで探しながら、謝って来る。


「いや、大丈夫だよ。はい、これ君の眼鏡。」


俺はそう言いながら、彼の眼鏡ではなく、持って来た不思議な眼鏡《LOVE GLASSES》を少年に渡す。

すると少年は何も疑わず、それを受け取りまた走って去って行ってしまった。

俺はその少年の眼鏡を拾い上げながら彼の背中にこうつぶやいた。




「良き恋を。」




―――――――――――――――――


~完結~


―――――――――――――――――


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