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第36話 オサソイ

増田ますだ彩香あやか視点>


夏祭りの準備を終えた私は急いで翔真の居る病室に向かった。

時刻は面会終了時間の19時の少し前にギリギリ何とか滑り込むことが出来た。

ノックすると、中から声が聞こえ中に入る。


「彩香か。」

「翔真、大丈夫?」


私がそう尋ねると、翔真は微笑んで私の方に向き直った。

彼は病室のベッドに座っており、少し疲れた様子でしたが、その目にはいつもの優しさと温かさが輝いていた。


「大丈夫さ。それよりも他の皆は来てくれたりメッセージをくれたのに、彩香は来ないのかと思ったよ。」

「そ、そんな訳ない。」


翔真の《《皆》》の中には誰が含まれるのか少し気になったが、そこを聞くことはグッと堪えた。


「そっか。…夏祭りの準備は順調だったか?」

「うん。予定通り明日には開催できるって。」

「それなら良かった。明日の夜は俺も退院して行けるからさ。」


翔真はほっとしたように笑みを浮かべながらそう言った。


「…やっぱり翔真も夏祭り行くよね。」

「当たり前だろ。」


誰と行くの?そう聞こうとしたときふと、ベッド横の棚の上に一つの紙切れが折り曲げておいてあるのが見えた。

そこには少し遠かったが微かに『戸田』という文字が見えた。


「戸田くんもお見舞いに来たんだね。」

「え?大樹は忙しくて今日はお見舞いに来れないって連絡来たぞ。」

「そうなの?じゃあこれは…。」


翔真の言葉に驚き、私はその紙切れに近づいてみるとそこには『戸田麻衣』と書かれていた。


「戸田麻衣って書いてある。」

「お~。麻衣も来たんだ。大樹の妹だ。」


私は嫌な予感がして、悪いとは思いながらも中身を開いて読む。

読み終えたのを見て翔真が「なんて書いてあった?」と尋ねてくるが私はその問いを無視して話題を振る。


「翔真はさ、誰かとお祭り行くの?」

「いや、まだ一日目も二日目も決まってないな。」


その言葉を聞き私は、勇気を振り絞り言う。


「じゃ、じゃあさ。二日目、翔真と一緒に回りたい。」


翔真の顔なんか見られるはずもなく、翔真の足元を見て、心臓が早まるのを感じながら答えを待つ。


「いいぞ。」


少し時間が空いてから翔真の声が聞こえた。

翔真もあの時の言葉には気付いていなかったが、この誘いの本当の意味にはさすがに気付いているはず。私はいよいよ勝負の時だと思った。


「それで、その紙は何て書いてあったんだ?」

「これ、おつかいのメモだった。」


私はその時、心の中で全力で謝罪しながら、私は悪い女だと思いながら翔真にこう嘘をついた。

私の嘘に翔真は疑いもなく「そっか。」と言った。


「これ届けたいから、戸田君の家教えて。」

「おう、ありがとな。地図をメールで送っとく。」


それからは木羽優きうゆ先生の作品の話、今日の準備で会ったことなどたわいもない話をしばらく話してから、病室を後にした。





私は病院を出た後、翔真に教えてもらった戸田君の家の前に立っていた。

1つ大きく息を吐き、インターホンを鳴らすと、中から女の子の声が聞こえてドアが開かれて、かわいらしい女の子が出て来た。


「どちらさん?」

「あっ、ごめんなさい。」


私は咄嗟に謝った。

本人は何事かと首を傾げている。


「戸田君…大樹君いますか?」

「なんだ、お兄ちゃんのお客さんか。」


私がそう言うと彼女は「お兄ちゃんー。」と大きな声で呼び、中から戸田君が出て来た。


「おう、なんだか珍しい客人だな。何の用だ?」


そう聞かれて、私は全部彼に話した。

妹さんが翔真に残した《《夏祭り二日目》》のお誘いの手紙を見てしまったこと。

その内容を伝えずに私が持って帰ってしまったこと。

話ながら、罪悪感がふつふつと湧いて来る。

怒られて当然と思っていた私だが、戸田君が放った言葉は違った。


「お前、わざわざ言いに来るなんて優しいんだな。」

「え?」

「そんなこと言いに来ない悪い奴だっていると思うぞ。なのにお前は言いに来た。ホントに翔真の事が好きでやったんだろ?恋は盲目って言うからな。それに、翔真よりもお前が先に見つけたのは運が良かったんだ。麻衣もメールとか確実に伝わるもので言えばよかったもののこんなもので言ったからこうなった。恋と言う戦争に勝つためにしたことなんだから、お前は何にも悪くない。これは俺が何とかしとくから、思う存分楽しんで来い。」


その言葉に私は救われた。


「ありがと。」

「それじゃあな。」


そう言って別れて、私は家に帰った。

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