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第34話 ムソウ

松浦まつうら汐良せら視点>


この眼鏡の力はとてつもなく偉大だ。

何もかもが上手くいく。


例えば友好関係。

この前の、坂原さかはら 陽菜乃ひなのとの一件で彼女とは話すようになり、いい信頼関係を築けている。

他にも、私のことを避けていたクラスメイトの女の子たちも今では、一緒に遊びに行ったりする仲だし、親との関係もさらに良くなった。


さらに恋愛。

男と言う生き物は実に単純で、ちょっと助けたり、助けてと頼むだけで好感度はぐんぐんと上がっていき、額の数字が80後半を過ぎた頃には告白をしてきていた。

翔真の実験台になってもらった、数々のどうでもいい男からの告白はいい感じに流したが、翔真以外に一人だけどうしてもこの眼鏡を使って落としたい男がいた。


あの日。

翔真に浮気がバレ、別れを告げられたあの日まで浮気相手であった《《彼》》だ。


私はすぐに行動に移した。

平日学校に行く前に、私はできる限りのおめかしをして、《《彼》》の家の前で張り込んで彼が出てくるのを待った。


出てきたのを確認したら、偶然を装い彼の前に現れる。


「おひっさ。」

「お、おう。汐良せらか。久しぶり。どうしたんだ?」


《《彼》》は私の姿を見た瞬間、少し驚いた顔をしたが、普通に返してくれた。

そうして、《《彼》》の額の数字に目を向けると、”5”と言う数字が出ていた。

私の事そんなに興味なかったんだと思いつつ、彼と会話をする。


「いや、久しぶりに顔が見たくなってさ。」

「ふ~ん。」

「彼女とはまだ付き合ってんの?」

「……まぁ。」

「その様子じゃ、上手くいってないんだね~。どう?今日の放課後暇だったら二人で遊びに行かない?」

汐良せら、何か変わったな。」

「そう?ま~、それはどっちでもいいや。さっきの答え決まったらメールしてね。」


そう急いだ振りをして手を振りながら、《《彼》》を見ると数字は”10”に変わっていた。

《《彼》》と別れたあとすぐに、『放課後、いつもの場所で。』と送られて来ていたので、やっぱり男って単純だなと思った。


その日の放課後は、ただ映画を見ただけで解散した。

その次の日はボーリング、次は勉強会。

時には夜に電話をしたり、メールでは、「~には特別。」みたいな、少し期待するような事を言ったりした。

誕生日が近かった彼にはプレゼントもあげた。


そんな私の努力もあって、彼の数字はついに”87”になった。

そしてついに。


「ごめん、遅れちゃった。それで、大事な話って?」

「…汐良せら。お前が好きだ。」

「え?」

汐良せらが好きだ。だから、俺と付き合ってくれ。」

「…ちょ、ちょっと待って。彼女はどうしたの?」

「彼女とは別れて来た。」

「え?」

「だから……」

「ごめんなさい。」


私のその言葉に《《彼》》は驚いて固まってしまった。

その《《彼》》に私は続けて言い放つ。


「私、好きな人が居るんだ。だから、ごめん。あなたの事は好きだけど、異性っていう意味ではないないかな。」


そう言って私は《《彼》》の元から去って行った。


これで《《彼》》も私と同じ気持ちを味わったはず。

それにほとんど数字が0の男を告白してくるまでに持ってくることが出来た。

後は本番のみ。




そして夏祭りが明日に迫って来ていた今日、私は友達と作業をしていると「翔真が倒れた」と言う報告を受けた。


私はすぐさまその場所に向かっていくと、そこには地面に倒れていて苦しそうな翔真を、坂原さかはら 陽菜乃ひなの、そのほか数人の生徒が周りを囲んでいた。

「翔真!」と声を掛けるも返事はない。


すぐ後に先生と救急車が来た。


「先生は角田君の付き添いで病院に行くけど、誰か生徒で一人付いて来てくれないかしら。私も祭りの事でつきっきりという訳にはいかないから。坂原さんは?」

「私も、夏祭り準備の管理を任されているので。」

「ああ、そうだったわね。」

「私、行きます。」


そんな話の中、私は自分から立候補する。

そして、坂原さんと目を合わせて頷きあうと、急いで先生を連れて救急車に向かった。




どれくらい時間が経っただろうか、翔真がやっと目を覚ました。


「翔真、大丈夫?倒れたって聞いて心配したんだから。」

「えっと、ここはどこ…?」

「夏祭り会場近くの病院だよ。」

「病院……。」


まだ、現状を理解しきれていない翔真に、夏祭りの準備をしていた時、体調が悪くなって倒れたということを伝えた。

そして彼の額の数字を見て、私は少し笑みが零れそうになった。


「ああ、そうだ…。大樹たち、他の皆は?」

「他の皆はまだ、会場で準備をしてるよ。私も、翔真の付き添いで来ただけだからもうすぐ会場に戻らないと。あんまり、無理をしないでよね。今回はただの熱中症で済んだけど、こんなのただのラッキーだからね。」

「ごめん……。」

「それじゃあ、私の仕事も終わったことだし、後はお医者さんにお任せだね。」


私はそう言って椅子からおもむろに立ち上がって、病室を後にしようとしたら声が掛かる。


「1つ聞いてもいいか?」

「なに?」

「どうして俺の付き添いが、お前なんだ?汐良せら。」


私はその質問に悪戯っ子みたくはにかみながら、口に人差し指を当てて、「ヒ・ミ・ツ!」と言って病室を去った。


夏祭り本番が勝負だと心に決め私は準備に戻ったのだった。

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