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第29話 イドウ

松浦まつうら汐良せら視点>



私は翔真に振られてから、何も考えることが出来ずにただふらふらと残りの時間を過ごし、最終日を迎えた。

皆がお土産を買う時間私は、何気なく外に出ると会話が聞こえた。


「俺、好きな人がいるんだ。」


その声は、翔真だった。その前に立っていた天野菜摘がどうやら翔真に告白したようだ。私は内容が気になり、咄嗟に物陰に隠れて続きを聞く。


「うん……知ってるよ。それが誰なのかも、多分。」

「だから、その、菜摘の気持ちに応える事はできない。ごめんなさい。」

「あ〜あ、初恋で失恋しちゃった〜。謝らないでよ。実は、多分こうなるだろうなって思ってたんだ。だって分かりやすいし、嫌でも分かっちゃったんだよ。でも、自分の気持ちを伝えたかったから………ワガママかもしれないけど、相手の気持ちとか都合とかよりも自分の気持ちをどうしても伝えたくなったんだ。」


私はこの話の中で少し気になることが聞こえた。


『翔真の好きな人。』


誰なんだろうか。

私も翔真に振られた一人として、知りたいし、知る権利があると思う。

今の話を聞くと、天野さんは翔真の好きな人を知っている。


「私、行くね………みんなを待たせてるから。」

「うん、じゃあ。」

「ねぇ、友達としてさ!………また連絡して良い?」

「もっ、もちろん!」



そんな風に考えを巡らせていると、話が終わったらしく天野さん私とは違い、笑顔で空港に戻るためこちらの方に向かってくる。

私は、彼女を後ろから追いかけて声を掛ける。


「あ、天野さん。」

「ん?松浦さん?どうしたの?」


私が後ろから声を掛けて、彼女が振り返って見えたその目には涙が見えた。


「大丈夫?」

「…あ、ごめんごめん。大丈夫だよ。それで、どうしたの?」

「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど。ここじゃあれだから、トイレに来れる?」

「いいけど?」


そうして、私たちはトイレに向かい、手洗い場の前に並んで立った。


「それで、話って何?」

「さっき翔真と話してるの偶然聞いちゃったんだけど、」

「あちゃ、聞かれちゃったか。恥ずかしいところ見せちゃったな。」


天野さんはまた笑顔でそうやって答えた。


「どうして、どうしてそうやって……。」

「ねぇ、松浦さん。…私、今上手く笑えてるかな?」


私は顔を上げて、鏡に映る天野さんの顔を見ると、表情は笑顔だが、頬には一筋の光が流れていた。

私はそれを見て何も言えなかった。


「初恋だったのに。本気で好きだったのに。でも、翔真の好きな人が分かっちゃって。多分こうなるだろうなって思ってた。でも、自分の気持ちを伝えたかった。だから、ワガママかもしれないけど、相手の気持ちとか都合とかよりも自分の気持ちをどうしても伝えたくなった。ちょっとって翔真には言ったけど、とっても胸が痛い。」


嗚咽しながら、そう言う天野さん気持ちに打たれ、私はそっと抱きしめてあげた。


しばらくして、嗚咽が聞こえなくなって、再び天野さんが口を開いた。


「ありがと。松浦さん。もう大丈夫だから。」

「うん。」


私が天野さんから離れると、彼女は眼鏡を外して涙を拭く。


「天野さん、眼鏡ない方が可愛いよ。」

「そうかな?松浦さんがそう言うなら、そうしようかな。もともとこの眼鏡、伊達みたいだし私のじゃないし。心機一転外してみるか。」

「そうなんだ。」

「そう言えば、松浦さんは翔真のことまだ好きなの?」

「えっ?」

「ほら、元々翔真と付き合ってたんでしょ?復縁したいとか思わないのかなって。」


天野さんはどうして私が翔真と別れて、そしてまたこの修学旅行で復縁したいって告白したことを知らないのか。


「うん。好きだよ。」

「そっか。それじゃあ、この眼鏡松浦さんにあげるよ。松浦さんの方が似合うと思うし、眼鏡も似合うと思うんだ。」


そう言って天野さんは私に眼鏡を渡してきた。


「はい、それじゃあ頑張ってね。」


そして天野さんはトイレを出て行ってしまった。

私も、帰りの飛行機の時間が来てしまったため、集合場所に戻ることにした。


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