第2話 キザシ
俺が通う学校には三大美女と学校中の皆が呼んでいる人達が存在する。
それもあろうことか三人とも俺と同じクラスなのである。
決して自慢している訳では無い。
なぜ今こんなことを言ったかというと、
三大美女の一人である松浦汐良は俺の彼女だからだ。
これは自慢だ。
高校入学して早々彼女に一目ぼれをした俺は地道に距離を縮めていき、やっとのことで彼女と付き合えたのだ。
始めは、何であんな奴が俺なんかと、などと冷ややかな眼差しで見てくる目もあったが、そんな嫌なことも彼女の笑顔を前にすると一瞬で吹き飛んでいったし、そう言ってくる奴らも諦めたのか減っていた。
付き合って約半年。
今まであまり恋人らしいことは出来ていないが俺は横にいる彼女の笑顔が見られるだけで幸せだった。
今日一日学校での生活をしていてこの眼鏡について分かったことがいくつかある。
まず、この数字が見える条件だ。
これは俺と会話している相手に見え、会話を終えてしばらくすると見えなくなるということ。
そして、次にこの数字。
今日俺と話した中で一番高かったのは大樹の69。
そのほかはどんな人も30~40前後の人ばかりだった。
この数字の表すことはまだ分からないがおそらく俺に関係する何かだろう。
時間は放課後。
「翔真、一緒に帰ろ~」
授業が終わり、帰りの支度をしていると彼女である汐良が呼びかけてきた。
俺は軽く返事を返し、急いで準備を終らせ彼女の方を見ると、彼女の額の上に数字が見えた。
その数字を見て、俺は驚いた。
今、目の前にいる俺の彼女である汐良の頭の上に書かれている数字は
”0”
俺は再び思考を巡らせる。
仲がいい人は決まって数字が大きかった。
数字の意味、0の理由、それがなぜ彼女である汐良に現れているのか。
俺が今日一日集めた情報は彼女の額に現れたこの数字のお陰でまたぐちゃぐちゃになってしまった。
俺は帰り道の間も考え続けて、会話の内容が全く入ってこなかった。
家に帰っても数字の謎は解決することなく、俺は考え疲れ気分転換がてらベッドに横になり、スマホをいじりネットサーフィンを始めた。
『有名芸能人が結婚!!』
『某政治家が問題発言!?』
そんな様々なニュースを斜め読みで見ていると、一つ目に留まるニュースが脳内に流れ込んできた。
『人気番組「好感度を下げておこう」 視聴率は上がり、好感度も上がる一方』
それは、最近始まった人気テレビ番組のニュースだった。
「好感度……。下げる……。上がる……。」
そのニュースを見て、不思議と今日の出来事が全て繋がっていく。
数字が上がったり、下がったり。
友人の大樹の数字が大きく、あまり関りのない人は少し小さめな数字。
「あれって、やっぱり好感度……なのか…?」
彼女である汐良の数字を見るまで俺の中でもそうなのではないかと思っていた。
しかし、あの数字が好感度を表しているとなると彼女の汐良の数字が”0”だったことの理由が分からない。
彼女であるなら好感度は高いはずだからだ。
「明日、確かめてみるか」
今日は普段使わない頭をふんだんに使って疲れたので、残りは明日の自分に任せることにして、眠りについた。
日は跨ぎ、翌日の放課後。
俺は彼女である汐良を尾行していた。
汐良とは放課後、基本的には一緒に帰ることになっているが時々彼女の都合で帰らない日がある。
それが今日だった。
つい昨日までは毎日一緒に帰るのは大変だし、一人の時間や友達との時間も必要だと思って納得していたが、最近はその頻度も多くなっている気がしていた。
もしかして、何か隠しているのではないか、この数字の疑問がその疑いを加速させ、それをはっきりさせるため尾行するに至ったのだが……。
残念なことに俺の予想、疑念は悲しくも当たってしまった。
汐良は学校近くの公園で他の高校の男子と合流するやいなや、スムーズにそして仲良さそうに腕を組み歩き始めたのだ。彼女には他の男がいたのだ。
浮気だ。
この瞬間、俺が見えるようになった数字の正体が好感度であることの可能性がグンと上がった。
しかし、まだその現実を受け入れられない俺は心が痛むのを堪えながら汐良の尾行を続けた。
俺が付いてきているとは知らない彼女たちは、ショッピングモールでおそろいの服を買いペアルックをしたり、ご飯を食べたり、一緒にゲームしたり。
「俺とだってまだしてないのに……」
汐良は今まで約半年間付き合って来て俺とはしたことのないような恋人らしいデートをしていたのだ。
夜も遅くなりショッピングモールを出てそろそろ解散かと思いきや、家の方とは反対側に歩き始めた。
俺は最悪の事態を目にした。
彼女らが向かっていたのはホテルだった。
それは普通のホテルではなく、大人の男女がそう言うことをするために入るホテルだった。
制服では高校生とバレてしまうから、さっき服を買って着替えたのか(※実際にはしてはいけません)。
さらに彼らがホテルに入って行くときにかすかに彼らの声が聞こえた。
「汐良って同じ高校に彼氏いるんだろ?こんなことしていいのかよ」
「いいのよ。あいつの事なんてこれっぽっちも好きじゃないんだから。私にとっては、良いカモよ」
「ははっ。お前、ホントに悪女だよな。そんなお前がいいんだけどなっ」
「もう、やめてよ」
そう言って男は汐良の肩に手を回してくっつき、ホテルに入って行った。
その瞬間俺の中の何かがブチッと切れる音がした。
この約半年間、汐良と過ごした時間、彼女に費やしたお金、すべてが無駄になった瞬間だった。
どうして俺はこんな女を好きになってしまったのか。
こんな女を好きになってしまった、騙された俺自身が憎い。憎すぎる。
全部、無駄だった。俺は最初から弄ばれていたのだ。
俺は思考を巡らせて一つの結論にたどり着く。
俺は彼女らがホテルから出るまで出口で張り込み、そして出てくるところをスマホのカメラに収めその日はそのまま家に帰った。




