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第10話 ハラン

松浦まつうら汐良せら 視点>



何もかも失ってしまったのか。



あの日、翔真に浮気がバレ、別れを告げられた。

その時は何にも思わなかった。

何ならこれで堂々と浮気相手であった《《彼》》と会うことが出来る、そう思い嬉しかった。

しかし、現実はそうはいかなかった。


翔真と別れてから初めて《《彼》》と会う約束をした放課後。


「ごめん、遅れちゃった。」

「うん、いいよ。珍しいね。」

「そうなのよ、聞いて。今日、彼氏の翔真に振られちゃったの。」

「は?」


私のその言葉に《《彼》》は驚いている。


「なんか、あんたとあってるところ見られちゃったみたい。私も面倒くさいから開き直って翔真と別れて来たの。」

「…ちょ、ちょっと待って。別れたの?」

「だから、そう言ってるじゃん。これからは、毎日会えるね。」

「いや、無理だよ。」

「え?」

「無理だよ。だって俺、彼女いるもん。」


私はその言葉を聞き、唖然とした。


「最近できたんだ。いつ言おうか迷っていたけど、これもちょうどいい機会だ。俺たち会うのはもう辞めにしよう。君に構える時間は無くなった。」

「…う、嘘。」

「嘘じゃない。」

「嫌だ。」

「君の幸せを祈ってるよ。」

「嫌だ。」

「それじゃあね。」

「嫌だ。」

「さようなら。」


そう言って彼は私の元から去って行った。

私はその場にポツンと一人、立ち尽くしたままだった。




そんな時、上の空だった私を現実に引き戻したのは翔真だった。

平日の朝、眠れないので早めに学校に登校していると翔真の姿が見えた。

しかも、ついこの間まで私と付き合っていたのに隣にはすでに新しい女の姿があり、それは学校三大美女の一人、坂原さかはら 陽菜乃ひなのだった。

私を置いて学校に先に行っていた理由はこれだったのかと納得したのと同時に考えが浮かぶ。


『翔真とよりを戻そう。』


なにせ私も学校三大美女の一人なのだから。




「翔真。ちょっといい?」


私は早速、翔真を呼ぶ。


「なんだよ、俺は話すことなんてないんだが。」

「うるさい。いいからちょっとこっちに来なさい。」


いやいや言いながらも来るところ私にも気があるのだろう、そう思い私は話し始める。


「あんた最近、陽菜乃と仲良さそうじゃない。」

「それがどうした。お前には関係ないだろ。」

「あなたもそろそろ分かって来たんじゃない?」

「何が?」

「私が彼女だったありがたさを。別れてから一週間ぐらい経って無くしてから気付いたでしょ。あなたがどうしてもって言うならよりを戻してあげてもいいわよ。」


よく言った私。翔真は私のことを愛していた。大好きだったはず。

私がこういえば断るはずなんてない。

そう思っていた。


「いや、いいよ。」

「へ?」


想定もしない断りに私は素っ頓狂な声が漏れる。


「話はそれだけ?それじゃあ、俺忙しいから。」

「まって・・・・」


止めようとする私を払いのけ翔真《《も》》私の元から去って行った。




何もかも失ってしまった。

私の居場所が無くなってしまった。




家に帰っても親に「どうしたの?」「顔色悪いわよ。」「お母さんに話してみなさい。」などと心配される。

こんなこと話せるわけない。

話したところでどうせ私が悪いと言われて終わりだ。

親は私を心配しての言葉だろうが私にとっては有難迷惑なだけである。




休日、私は家にも居ずらくなり朝から散歩に出かけた。

なんとなく向かった先は《《彼》》との集合場所だった公園だった。

何がここに私を引き連れたのだろうか。

未練か。

思い出か。

そんな思いにふけっていると、見覚えのある姿が一つ目に入る。


翔真だ。


遠くから彼の様子を伺っていると、彼に近づく影が一つ。


坂原さかはら 陽菜乃ひなのだ。


彼らは少し話すと手を繋ぎ歩き始めた。



『そこは私の場所なのに。』

『奪いやがって。』


そんな思いが募って来て、私は翔真たちを尾行することに決めた。

バレたら、翔真もやっただろうと言ってやろう。


それから翔真たちは猫カフェに行き、お昼ご飯を食べて普通のデート?のようなものをしていた。

そう言えば私は翔真と彼氏彼女がするデートのようなものをしたことが無かったっけ。

そんな過去も思い出しながら尾行を続けると、見覚えのある道に出た。


そう、この道は翔真のマンションへの道である。

私も一度だけ教えてもらったことがあるから分かる。

私の記憶は正しく、翔真たちは二人揃ってマンションに入って行った。




「まさか、ね。」




私は信じられない光景を目にして帰宅した。



帰宅したとて、見た物は忘れられず目を閉じれば瞼の裏であの光景がリピート再生されて頭から離れない。

ご飯を食べるときも、お風呂の時も、寝るときまでそれは続いた。

これではまともに生活すらできないと悟った私は翔真にメッセージをいつ振りか送る。



『もしかして、誰かと一緒?』

『明日、翔真の家に行ってもいい?』


私はそれから布団に横になっていたが日を跨いでしばらくは眠れなかった。



目が覚め、スマホを見るが翔真からの返信が来ていない。

電話も掛けてみるが出ない。

昨日の夜は何をしていたのだろうか、そんな妄想が膨らむ。


私は身支度をして、家を出発し、翔真のマンションの部屋のドアの前まで来た。

一つ大きく深呼吸をし、


「よしっ。」


と気合を入れ、インターホンを鳴らした。


ドアの奥からバタバタと音がして、ドアが開かれる。

そして、中から出てきたのは家主の角田かくた 翔真しょうまでもなく、

昨日見た坂原さかはら 陽菜乃ひなのでもなく、

私の知らない女の子だった。


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