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SNSが結ぶ恋  作者: TERU
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第一話「フォロー」

大手企業に勤めていた正樹は、会社の派閥争いに破れて実家に戻り家業の漁師を継いだ。

人生に夢も希望も失った40代の男にとって、人生の終着駅のような場所だった。

そんな正樹がSNSを通じて『運命』の女性に出会う事になる。

SNSの発展で世界が広がり近くなったこの現代でこそ、可能性がある『ドラマ』を心の中で体感して下さい。

PROLOGUE『星ぼしの水平線』


満天の星空の元、一隻の小さな漁船が停泊していた。星空の輝きは見渡す限りの水平線の海に『鏡』のように反射しており、その光景は漁船が星ぼしに包み込まれているようであった。それは大自然がおりなす超幻想的な世界で、様々な条件が重なって出来る奇跡の瞬間である。小さな漁船の甲板で人影が動くのを見ることが出来る。今朝仕掛けた漁具を回収しているようだ。

人影の男がタバコを銜えてブリッジ(操舵室)に入っていった。その男はブリッジにてキリマンジャロから仕入れたコーヒー豆を自分で挽いて、特別製の『サイフォン』でコーヒーを沸かし匂いを嗅いだ。この瞬間が一番好きである。『清水 正樹』が商社マン時代から続けている拘りである。普通の地元漁師だったらせいぜいインスタントコーヒーか缶コーヒーである。沸かしたコーヒーをステンレス製のマグカップにそそぎこみ蓋をして、星ぼしに囲まれている甲板に出て行った。甲板に出るとまたタバコを銜えて火をつけた。

「凄い光景だけど男一人じゃ感動もしないな。」タバコを吸いながら独り言を呟く。

「ここに素敵な彼女でも隣にいれば話は別だが、仕事していたらただただ綺麗にしか思わないな。」コーヒーを一口飲んで感想を述べた。超幻想的な世界も形無しである。

「あっ!でもこれはこれで動画に撮ってアップせねば!」思い立ったように慌てて携帯を取り出し超幻想的な光景を動画で撮り出した。

「よし、これはこれで普通の人なら感動するはず。」そう独り言を呟きながら、携帯を操作して暇つぶしで始めたSNS『インスタグラム』にアップする。

「ハッシュタグ『絶景』っと!」最近覚えたハッシュタグを乱用する。

「他にハッシュタグ付けるかな?まあいいか!?送信!!」正樹は送信ボタンを押して満天の星空を見上げた。見えるはずもない電波を追うように・・・。



第1話 「フォロー」

「あーまたまた遅刻だ!」改札口にSuicaをかざして、ダッシュで走り出す。

「真咲マズイよ、所長にバレるよ。」携帯電話越しに同僚の美佳が慌てている。

「だって今朝までデザイン考えていたんだから仕方ないじゃん!今、全力で走っているから時間延ばして!」

「もうそんな事出来る訳ないじゃん!早くきて~!」携帯電話の向こう側から悲痛な叫びがこだまする。



「それでは結城さんのチームのデザインを発表して下さい。」

「はい!」息が切れきれで、動ける気配が無いプロジェクトリーダーの真咲の代わりに同僚の美佳が答える。

「資料は皆様のパソコンに転送しておりますので、ご確認のよろしくお願い致します。それでは資料の1のデザインから説明させて頂きます。」美佳が先ほどの慌てぶりを隠して、冷静を装って説明を始めた。


「ありがと~!美佳~!」真咲が涙目で感謝している。

「まあいつもの事だからね~!一個貸しだからね~!」

「何でもします!ローソンのふわふわシフォンケーキ買ってあげる~!」

「やっす!しかも自分が食べるついでに買うだけじゃん。」

「はははバレた!」真咲が笑顔で答えた。

「まあいいやそれで、ご飯食べに行くよ~!」

「はい、お姉さま~!」何かと調子がいい真咲であった。


結局、美佳がチェックしていた人気のカフェでランチを奢らされた真咲は、ランチ後に財布の中身を気にしながらローソン寄り、大好きな『ふわふわシフォンケーキ』をコッソリ買ってオフィース戻る前にビルの『オープンスペース』で至福時を過ごしていた。何かと安く付く女である。

真咲はシフォンケーキを食べながら片手でiphoneを開いてインスタグラムを見ていた。真咲もインスタバエを狙っていい写真や動画をアップしているがセンスが無いのか全然上手く撮れない。時折他の人がアップした写真や動画見ながら研究をしていた。

「何この動画!」真咲は一つの動画に目を奪われた。

『#絶景』に出ていた動画は、夜空に輝く星ボシに囲まれた船の動画である。海の水面にもその星ボシは反射されて映っており、それはまるで天の川を渡っている船のようであった。

「マジで凄いんですけど!ラプンツェルがランタンを飛ばしている時みたい。」ディズニーアニメの1シーンを思いだして、うっとりしている。

「ここ日本なの?加工している?」真咲はアカウント名を見る。『MASAKI27』

「えー同じ名前じゃん!フォローしちゃおう!」同じ名前に共感してフォローボタンを何気なしに押して、残りのシフォンケーキを食べ終えた。

「さて午後も頑張るぞ~!」真咲は大きく背伸びして立ち上がる。そして荷物を片付けてオフィースに向かった。


この何気ない『フォロー』が今後一つの物語を紡ぎ出すとは、真咲は思いもしていなかった。

次回、第二話『フォロバ』につづく・・・。


正樹は漁師をやりながら、少ない収入の中から自分なりの生活をしていた。田舎に住んで時間が有り余っている正樹は、暇つぶしにインスタグラムを覗いていた。その暇つぶしの中のちょっとした『1クリック』によって、『運命』の歯車が回りだす。


次回第二話「フォロバ」・・・。

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