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探し物 La méditation   作者: ピタピタ子
6/12

記憶

朝起きると、小鳥がたくさん鳴いていた。私は母の書斎で取った香水を自分にふりかけた。そしてカバンにある写真をまじまじと眺めていた。眺めていても何も起こらなかったのですぐに写真をしまった。部屋の柱を見ると、複数平行に並んでいる点と数字が書いてあった。身長の記録なのだろう。最後の記録を見ると161cmと記録されていた。きっとこれ以上あの少女は身長が伸びなかったようだ。私は柱に書いていた記録を消しゴムでひたすら消そうとしていたが消えなかった。代わりに自分の写真を彼女の最後の記録から最初の記録を隠すように張った。中学の時の写真ばかりで、どの写真もロボットのように無表情だった。母との写真は私も母も笑っていなかった。


「カトリーヌ。」

「どうしたの?」

「この前作ったケーキある?」

「腐るからもう全部食べたよ。」

「そう。」

「新しくブラウニー作っといたわよ。庭で育てたレモングラスとレモンバームでハーブティーにしよう。」

「コーヒーがあるなら、コーヒー飲みたい。」

「私コーヒーは飲まないからないわ。」

「そうなのね。ハーブティーでも良いよ。」

カトリーヌは冷蔵庫からブラウニーを出して、ハーブと熱いお湯をポットに入れた。ポットからも湯気がよく出ている。

外を見ると窓が曇っていて、外がよく見えなかった。

「今、シャルロットがいる部屋は娘が使っていた部屋なの。あなたの趣味に合わないでしょ。あなたは娘に似てないわ。」

「会ったこと無いけど、そんな感じする。名前は?」

「フローランスよ。」

「今はどこに住んでるの?」

「もうここにはいないわ。私達がいずれ行く場所に行くわ。」

カトリーヌはブラウニーを食べるのをやめた。

「どうしてそれを私に。」

「何でだろう。とにかく娘は4年前に他界したの。もちろん自分の意思に反してよ。」

私はカトリーヌをじっと見つめた。

「フローランスは私のように赤毛が入ってて、スタイルも良くて綺麗な娘だった。友達もたくさんいたし、いじめられることなんて無かった。前向きな性格で、どんなこと言われても屈しない強い子だった。」

カトリーヌは引き出しを開けて、写真を取り出した。

「最後に取った写真元気なさそうでしょ。その時に気がついておけば良かった、早く気がついていればこんなことにならなかったとその時思っていた。娘のことを忘れるために部屋にはほとんど入ってなかった。たまに掃除をしてたくらいよ。」

私は何も言わず彼女と写真を見た。

「今も後悔してるの?」

「そうだと言ったら?」

「別に何も思わない。私の人生じゃないから。」

カトリーヌはフローランスについてより詳しく話した。フローランスは生前、私とは違い同い年の男子にすごいモテた。彼氏も何人か出来た。ある日、新しい彼氏が出来ると、元彼がそれ見て嫉妬して彼女に何回もつきまとった。彼女が強く抵抗してもそれをやめなかったし、家にまで押しかけることがあった。そういう事が立て続けに起こると、日に日に彼女は元気が無くなった。ある日、夜道を歩いてると、後ろから元彼とその集団に酷く殴られたり、蹴られたりした。彼女が気絶した所を見て、彼女を人気のない川に投げ捨てた。そのまま彼女は息を引き取った。数日後元彼は逮捕され、それに関与した人達も一緒に逮捕された。

「もうあの時には戻れないわ。」

そう言って、カトリーヌは自分の部屋に行ってしまった。


夜になると物音一つしなかった。そんな中私はベッドで寝ていた。ドアがゆっくり開いた。そこにはカトリーヌがいた。どんどん私の方に向かって来る。

「カトリーヌ。」

カトリーヌは何も言わず私の頭を撫でた。

「ようやく帰って来たのね。」

彼女はよく分からないことを言った。部屋は電気が消えていてよく見えないのに、彼女が私を見守るような笑顔を見せた。そうして、彼女は私の布団に入って来た。彼女は後ろからそっと抱きついた。

「お前が小さい時一緒に布団に入っていたの覚えてる?」

そもそも彼女とはこの前偶然に知り合ったばかりでもちろん私は何も答えなかった。

「お前は神様が私のために天から届けてくれたプレゼントよ。産まれてきた時、こんなに可愛くて小さな娘が産まれてくると思っていなかった。フローランス。」

私はフローランスの代替品なんだろうか?フローランスが天国に行ったのは私とカトリーヌが会うためかと考えたが、何も答えが出なかった。

「フローランス、もうママの元を離れないで。フローランス…」

彼女の涙が枕に広がった。

朝起きると、まだカトリーヌはいた。カトリーヌはそのままにして私は起き上がった。私は荷物が全然無かったので、すぐに荷物がまとまった。私はカバンから香水を取り出した。香水越しからカトリーヌを見た。彼女は姿勢を変えることは無かった。ベッドにゆっくり近づき、ベッドに持って来た香水をかけた。彼女は起きないままだった。そのまま荷物を持って、家から出て鍵を閉めた。鍵はポストに入れた。

私は川まで行ってフローランスの部屋から持ち出した写真をたくさんばらまいた。写真は川をよく流れた。写真はすぐに遠ざかった。

私はリヨン・パール・ディウ駅に向かった。行き先は特に決まっていなかった。私は適当に発券機をいじってチケットを購入した。

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