同居
私は女性の家のベットで目を覚ました。鳥が窓に2羽いた。私が見ると逃げて行った。
「朝ご飯出来たから食べて。」
「ありがとうございます。」
「そう言えば、私名前言ってなかったわね。私はカトリーヌよ。」
「私はシャルロットです。」
「シャルロット。素敵な名前ね。」
「私達、よくある名前ですね。」
「カトリーヌって言っても色んなカトリーヌがあるのよ。女優のカトリーヌ・ドヌーヴとかカトリーヌ・ド・メディシスとかね。私は一人暮らしで道端で倒れたカトリーヌね。」
「シャルロットと言う同居人がいるカトリーヌですね。」
カトリーヌは声を出して笑っていた。私はカトリーヌが笑っても無言のままだった。
「そう言えば何でパリからリヨンに来たの?」
「探しものを探しているんです。」
「こんな遠くに?」
「はい。」
「何を探してるの?昔何か落し物したの?それならもう無理よ。」
「分からないです。」
「分からないのに探しもの?」
「はい。私が求めている何かを探しにここまで来ました。」
「そんなのパリでもリヨンでも簡単に見つからないわ。まあ良いわ。とにかく1ヶ月ここに泊まっていきなさい。何かあなた見てると心配だわ。」
私は何も返さず無言で洗い物をした。洗い物が終わるとすぐに部屋に戻った。私の部屋とは雰囲気が違った。1つ熊のぬいぐるみが置いてあった。私の部屋とは違い物がたくさんあった。本も雑誌ばかりだ。よくいる年頃の女の子の部屋だ。殺風景な私の部屋とは雰囲気が違って、まるで他の人の人生を歩んでいるような感覚だ。私の部屋がぬいぐるみや年頃の女の子が好きなものなどないのは別に親が買ってくれない訳ではない。自分でそうして来ただけだった。誰に何言われようがそんな部屋でずっと引きこもっていた。数少ないが小説もあった。本棚から取り出すと一枚の写真が落ちてきた。私くらいの女の子が写ってる写真だった。写真からは満面の笑みが浮かび上がっていた。写真は戻さず、そのまま本を漁りまくった。
突然カトリーヌが入ってきた。
「あら、ごめん。ノックし忘れたわ。それより何してるの?」
「本棚の整理ですよ。長年使ってなさそうだから整理が必要かなと思って。」
「そう。」
彼女はすぐに部屋から離れた。そしてそのまま彼女は外出してしまった。突然だった。
再び本を一冊一冊開いたり、棚から下ろした。そうしているうちに何枚かの写真が出て来た。その写真全部に最初に見た写真で見た少女が写っていた。ある写真にはカトリーヌと男の人と一緒に写っていた。もうカトリーヌの独り立ちした娘だろうか。きっと私とは全く違う人生に違いない。写真は全部まとめて、私のカバンに入っているスケッチブックに挟んだ。小説だけ本棚に並べ雑誌は本棚には並べなかった。小説1冊には香水をふりかけた。小説はずっと並んであるはずなのに他の雑誌と比べ新品な感じだった。私ははけておいた雑誌を紐で結んでまとめ、地下の物置場に乱雑に投げ捨てた。整理したら、ほとんどの本が本棚に無くなった。
夕ご飯の時間になると、カトリーヌと一緒にご飯を食べた。
「久しぶりに誰かと一緒にご飯を食べるわ。」
「そうなんですね。」
「もうここの生活には慣れたかしら?」
「慣れていません。」
「そう。あと1ヶ月ここにいて良いわ。」
「分かってます。」
「すぐに慣れるわ。そう言えば、捜し物はもう見つかりそう?」
「まだです。そのうち見つけ出します。」
「探してる割にはずっと部屋にいるわね。」
「部屋の掃除終わってないので戻りますね。」
カトリーヌをおいてそのまま部屋に戻った。しばらくするとカトリーヌがノックをした。
「ねえ、今日パン屋さんで美味しいケーキ買ったから一緒に食べない?」
「もう食べれないのでいいです。」
カトリーヌとは話したい気分じゃ無かったので、適当な嘘をついた。
カバンからしまった写真をもう一度見た。何度見ても写真の少女は笑っていた。当たり前だが表情何一つ変わらなかった。私はそのまま眠りについた。
次の日早朝、街中を一人で歩こうとしたらカトリーヌもついて来た。
「何でついて来るの?」
「私もちょうどジョギングしようと思うの。」
気がついたらカトリーヌと一緒にジョギングをしていた。私は走っている時心が無だった。無くても良いような時間だった。ただ機械のように走りまくった。
「シャルロット、水よ。」
「いらない。」
「水を飲まないと倒れるわよ。」
カトリーヌは私の為を思い、少し強引に水を飲ませた。私はむせてしまった。
「大丈夫?」
「うん。毎日ジョギングしてるなんて、そんなに運動が好きなの?」
「もちろんよ。何もしないよりスッキリするわ。毎朝ジョギングしてると虫や鳥の声が聞けて心地良いわ。」
そのまま私達は家に戻り、朝食をとった。
「シャルロット、あなたの名前の意味は分かってる?」
「知ってるよ。シャルルがその男性系で、自由な人って意味。」
「そうよ。カトリーヌは色んな意味があるわ。代表的な意味は清純ね。」
「カトリーヌは清純なの?」
「そうよ。名前にはしっかりパワーがあるの。」
「その言い方、胡散臭くて売れない占い師みたいね。」
「シャルロット、あなたも名前通りになるわ。カトリーヌには良くない意味もあるわ。」
「何なの?」
「拷問よ。私の親はきっと知らずにつけたわ。もう二人ともいないけど。」
カトリーヌは目をそらしながら話した。
私は部屋に戻って、ぬいぐるみを全部手に取って外に出た。ぬいぐるみを持ちながら歩いていると小学生くらいの女の子達が歩いていた。
「お姉さん、どうしたの?」
「ぬいぐるみ要らなくなったから、あげるね。お金とかはいらないから。」
「ありがとう。」
少女達は警戒することもなく、そのままぬいぐるみを受け取った。私は何も言わずに少女達のもとに消えた。
部屋に戻ると完全に私の部屋に変わっていた。もう違う誰かの部屋ではない。小説にはまだ香水の匂いが残っていた。私は小説を開いて、顔にのせてうたた寝した。