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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第3章『時空改竄編』
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第42話『歴史の修正、始まる』

皆様こんにちはです、第42話目更新でございます。

今回からいよいよ本格的に戦いに移り始めます。

その戦いの行く末は如何なるかお楽しみ下さいませ。

では、本編へどうぞ。

 アルが鍛治職人魂を奮い、村で世界樹の杖とエターナルボウ、聖者の衣が製作され始めてから2日後、エミル達は朝ご飯を食べ始めながら宿屋のテーブルで雑談を話し始めていた。


「それで、ティアちゃんの魔力制御は如何なのエミルさん?」


「万事順調、つい昨日の夜には空に張った結界に火炎弾(バーンバレット)を放てる位に飲み込みが早いわよシャラさん!」


「えへへ、見ててくれたエミルやロマンにシエル、怖そうだったダイズも褒めてくれたんだよ!」


 朝食にパンとスープを頼んで大人数用テーブルを囲う中、シャラはエミルにティアの魔力制御が上手く行ってるかと尋ねるとエミルを始め、ロマンと目を閉じながらコーヒーを飲むシエル、ダイズが笑みを浮かべつつ順調だと話し、更にたった2日で中級魔法が使える程に才能があったらしくキャシー達も驚いていた。


「身体を壊さなければこの子は数百年の逸材となっていたでしょう。

 本当に、とても只の9歳の女の子とは思えませんよ。

 ですよね、シエル?」


「ふっ、そうだな。

 愚王グレイの時代に生まれていなければ私が面倒を見て正しく育てた位さ」


 アイリスもその様子を遠目で見ていた為かなりの逸材となっていたかも知れないと言う可能性の話をシエルに振る。

 すると彼女はドヤ顔で同じ時に生きていれば面倒を見たと話し、如何やら彼女も色んな意味でティアに愛着が湧き始めている様であった。

 黙っているダイズも反応からすれば同様であり、ティアはすっかりこの呉越同舟同盟の癒し枠になっていた。


【バタン!】


「おう良く食ってるなお前等‼︎

 このアル様達も混ぜてくれや‼︎」


「アル殿達! 

 もしやオリハルコンの武具が完成したのか!」


 すると宿屋にアル、リコリス、アザフィールの3人がドアから入ってエミル達を見渡すと、ネイルもこんなにも早くオリハルコンの武具が完成したのかと驚きながら声を掛けていた。


「おうよ、補佐の連中が大変優秀なんで2日間貫徹を決め込んだら完成したぜ‼︎

 まぁ俺様の腕も無きゃ完成さなかったがな、ガハハハ‼︎」


「ええ、彼の鍛治師の腕は最高峰でした。

 さあ、全員朝食を食べたら自分の装備を受け取りなさい。

 それぞれの武具が入った魔法袋(マナポーチ)に名札を貼ってますので持って行って下さい」


 アルは上機嫌で席に座り運ばれてきた肉を食べながらアザフィールやリコリスが優秀だったと話し、されど自身の腕前が無ければこんなにも早く完成しなかったと自慢すると、リコリスもアルの腕を評価し最高峰クラスと話していた。

 黙ってるアザフィールも頷いており、如何やら天界魔界でも通用する職人技を持つ事が判明した。

 それからリコリスは朝食が食べ終わった者から魔法袋(マナポーチ)を渡して行き、装備新調の時がいよいよ来ていた。


「俺のは…こいつか!」


「俺はこれなんだな〜」


「へぇ、オリハルコンローブも仕立て上がってるわねぇ」


 先ずはガム、ムリア、シャラが袋を手に取るとシャラが中を確認するとオリハルコンローブも仕立て上がってる事を確認し、更に自身の黄色主体のカラーに仕上がっていると思い唸っていた。


【バタン!】


「サラ王女殿下、発注令を受けていた聖者の衣にエターナルボウ、世界樹の杖が完成致しました!」


「あ、丁度良かったわ‼︎

 ありがとうね仕立て屋さん、はい代金だよ‼︎」


 其処に更にこの国1の仕立て屋が宿に到着し、発注されたサラ用の武具とエミル達の杖を運んで来た。

 その到着を受け、仕立て屋にサラが料金を支払うと早速エミル達に杖を渡した。

 するとエミルは席を立ち上がり、客が少し離れている場所で杖を手遊びで回転させ、感触を確かめるとバッチリと感じていた。


「うん、とても良い出来だよこの杖。

 じゃあ皆、早速装備新調するわよ‼︎

 アイリス、シエル、ティアちゃんを少しお願いね」


「分かってるから早く行け、此処までに2日時間を掛けたんだ。

 直ぐにでもヴァレルニア港街に向かいたいんだからな」


 それからエミルは全員に装備新調する様に指示を出し、アイリス達新調が必要無い組にティアを預けるとシエルがさっさとやれとニュアンスで伝えて来た為全員走って部屋で装備を新調した。

 それから直ぐに全員降りて来ると、パーソナルカラーは変わらないが、オリハルコン特有の金色の輝く部分が鎧やローブに追加され、その上でミスリル製のアーマー等と同等に軽く着心地が変わらなかった。


「流石アル、前の鎧と余り変わらない着心地だよ‼︎」


「ひゃあ〜これがゴッフ一門の腕か〜、すっごい仕立て上げだな〜!」


「ガハハハ、もっと褒めやがれ‼︎」


 全員腕を上げたり鎧を叩いたりしてその感触を確かめアルの腕を持て囃しているとアルは上機嫌で笑い声を上げ、自身の功績を讃える様に話していた。


「何だかあのアルっておじさん、顔は怖そうだけど面白い人だね!」


「お、おじさん…ま、まぁ子供からしてみれば俺様もオッサンか………ドワーフの誇りであるこの髭も相俟って…」


 するとティアがアルを面白いおじさんだと口にした瞬間その無邪気な言葉がアルの心に深々と刺さり、9歳の子供からすればドワーフの350歳はおじさんもおじさん、先祖レベルだと思い始め笑い声を沈めて髭を弄り始めていた。


「さて、おじさんのアルも元気出してティアちゃんの魔力を消費した広場に行くわよ。

 あ、宿屋さん、これ宿泊料ね」


「おいエミル、お前までおじさん呼ばわりするのは流石に許さねぇぞおい‼︎」


 それからエミルがアルを茶化しつつ宿屋の受付にシエル達を含めた全員の宿泊費を払うと、エミルにおじさん呼ばわりされたアルはカチンと来て彼女の跡を追い始め全員ティアの歩調に合わせた小走りで彼女を救った広場に集まり、早速エミルはロマン達全員を並ばせた。


「さて、ネイルの武具は前世で二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を掛けてるからもう必要無いとして、私を含む他武具を新調した全員に前の武具と同じ魔法祝印(エンチャント)を掛けてからの二重魔法祝印(ダブルエンチャント)‼︎

 はいよいしょ‼︎」


【キィィィィィン‼︎】


 ロマン達を並ばせたエミルは前世(ライラ)の時に二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を掛けていた大英雄シリウスの武具にはもう魔法祝印(エンチャント)の必要が無い為自身を含む武具新調組に前の武具と同じ魔法祝印(エンチャント)を掛けてから二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を掛ける。

 その瞬間広場に煌びやかな粒子状の光が辺り一帯を包み込み、ロマン達は再びエミルの魔法祝印(エンチャント)が自分達を守る感覚を覚えた。


「わぁ、綺麗…‼︎」


「これが魔法使いエミルや地上界の者達の真骨頂、個々の力は弱くとも仲間の能力を引き上げ補い合う、我々魔族や天使には無い絆と呼ぶ物さ、ティア」


 ティアはその光に見惚れ舞い踊っていると、シエルはこれがエミル、そして地上界の者達の絆と説き、アイリスとリコリスやエミル、ロマンはその様子からシエルはティアの事を例え一時の夢の様な結果になってもと思いながら気に掛けていると見て取れた。

 何よりシエルの鉄の様に固い表情の仮面、その下にある優しさを見てエミル達は今まで見て来た魔族と違う事を改めて思い知らされていた。


「…さて、二重魔法祝印(ダブルエンチャント)も終わって準備は整ったしアイリス、リコリス、ヴァレルニアに向かいましょう‼︎」


『ええ!』


【キィィィィィン、ビュン‼︎】


 しかしエミルは今は目の前の事態の解決を優先すべきだと考え、アイリス達にヴァレルニアへ転移する事を促すと2人の天使はシエル達4人の魔族を含めてロックヴィレッジから転移した。

 そして、エミルが魔法祝印(エンチャント)を掛けてた際に集まっていた野次馬達を尻目に注目されてた者達は消え、更にその場にロックとリリアナが訪れ住民達は平伏していた。


「頼んだぞサラ、エミル達」


「ルル、ロマン君、貴女達の行く末に幸があらん事を」


 ロックとリリアナは次に見た時にはまた自分達を突き離すレベルに至ったエミル達に期待、幸、様々な感情を込めて天を見つめ見送りこの自分達には及び付かない事態の解決を、その身の無事をただただ祈るばかりである。

 その姿にロックヴィレッジの住民達もサラ達が何かに巻き込まれているのを悟り、彼等もまた無事を祈り続けるのだった。




【ビュン‼︎】


「着いたわねヴァレルニアに。

 …予想していたけど、10日前とガラリと光景が変わりすぎてる。

 あの戦闘があった後のままに………」


 エミル達は転移して次の瞬間に目に映った光景はヴァレルニア港街であった。

 しかし、ほんの少し前に訪れ復興され始めた街はオーバーロードドラゴンのブレスや戦闘の痕ばかりが残り、自分達が10日前に見た街と同じとは到底思えずに居た。


「悲観している暇があるなら準備を始めるぞ。

 先ずは時空の腕輪を目の前に構えろ」


「分かってるわよシエル。

 ソーティスが逃げた時みたいに構えて…」


 そんなエミル達にシエルが喝を入れ、全員が時空の腕輪を胸元の前に構えるとソーティスが逃げた時の様に赤い文字が浮かび上がった。

 しかしそれはソーティスの時と違いノイズが走り、数字も時々文字崩れを起こしていた。


「アイリス、これがもしかして」


「はい、その通りですよ。

 過去の時間軸に改竄が起きた事を示す反応です。

 後はこの数字を頭に思い浮かべて腕輪を天高く掲げて下さい。

 そうすれば、私達は過去の時間軸に跳ぶ事が出来ます!」


 アイリスの近くに居たルルがこの状態を問うと帰って来た答えは当然の如く、其処に浮かぶ時間軸に改竄が発生していると言うものだった。

 アイリスは更に腕輪の上に浮かんだ数字の時間を思い浮かべ、天高く腕輪を掲げるとソーティスの様に時間を跳ぶ事が出来ると伝えるとエミル達は頷き、集中しながら数字を思い浮かべ始めた。


「ティア、私達の手を掴んでなさい。

 そうすれば貴女も私達と一緒に跳べるわ」


「わ、分かったよシエル」


 その際にシエルがティアに手を取る様に指示を出し、そうすれば共に跳べると説明をしてティアに自身の右手を取る様に促した。

 無論彼女は自身の身を知ってる為、消えない様にシエルの手を強く握っていた。

 それから直ぐに集中し切り、全員が天高く時空の腕輪を掲げた。


【キィィィィィン、カチカチカチカチカチカチ、ビュゥゥゥゥゥゥゥン‼︎】


 その瞬間周りに時計の様な魔法陣が浮かび上がり、それが反時計回りに針が高速で回り始めるとエミル達は光に包まれ、眩しく感じたエミル達地上界組やティアは瞳を閉じた瞬間身体が転移の時の様に重力から解放された感覚を覚え、そしてその場から光が消えた時にはエミル達も消え去っていた。

 それにより今のヴァレルニア港街には誰も居ない状態となり、冷たく寂しげな風が埃を吹き飛ばして行くのだった。




 それからエミル達は眩しい光が消えた後に目を開けると周りは巨大な時計が幾つも浮かぶ不思議な空間に出てエミル達は息を呑み始めていた。


「このまま腕は掲げ続けて下さい、それで跳ぶ時間に無事に辿り着きます。

 それからティア、この時空間で手を離さないで下さい。

 時の流れに飲まれて何処とも分からぬ時間軸に跳ばされてしまいます」


「う、うん、シエルの手を離さないよアイリス‼︎」


 アイリスは周りの全員にこのまま腕輪を掲げ続ける事、ティアには手を離さない様に忠告を入れながら自身も時空の腕輪を掲げていた。

 ティアはその言葉にビクッとなりながらもシエルの右手を両手で強く握り、シエルも離さない様に握り返していた。


【カチカチカチカチ、カチャ、ビュゥゥゥゥン‼︎】


 すると周りの時計の針が12時でピタリと止まり、次の瞬間エミル達は時空間と呼ばれる場所から転移し、再び実空間に出るとヴァレルニア港街から少し外れた位置にある小高い丘に転移が完了した。

 更にエミル達はその眼前に広がる光景に見覚えがあった、あの魔血破(デモンズボム)が炸裂し、数時間以上に及ぶ戦いが繰り広げられた瞬間だった。


「くっ、またこの光景を見るなんてね…‼︎」


「何、これ………これが、戦いなの…?」


 エミル達は再び悪夢の光景を目にし、眼下では過去の自分達が必死の抵抗をしているあの時の1つ1つの瞬間が広がっていた。

 更にティアはこの燃え広がり、奥の結界で守られてる人々は腕や足が治癒で繋がれてる最中、最前線のロマン達は雄叫びを上げながら魔族達を斬り伏せておりこんなに酷い光景が戦いかと青褪めていた。


「…違う、これは戦いでは無いです。

 これは、虐殺と言う一方的な蹂躙に抵抗する光景です。

 本来戦いとはこんな泥沼なものじゃありません。

 …魔界側にアギラと言う将軍が居たのです、その者は地上界の者達を痛ぶり、絶望に打ち拉がれる姿を見て悦ぶ悪逆の限りを尽くしてたのです。

 その結果がこれです」


 そんなティアにこれは魔界側のアギラと言う魔族が虐殺に走った結果だと話し、自戒の意を込めながらこの光景を再び目に焼き付けながらアギラの趣向を口にし、幼いティアも本の物語の悪役以上の悪意に恐怖心を覚え、エミルやシエル達の後ろに隠れ始めていた。


「…ティアちゃん…」


「おいお前達、そろそろ集中しろ。

 オーバーロードドラゴンが戦線投入されるぞ」


 エミルがティアを心配する素振りを見せる中、ダイズがオーバーロードドラゴンが来る時が迫った事を知らせ、隠れて服を掴んでいるティア以外の全員でランパルドとフィロ、リヨンの3人に注目し、改竄される瞬間を目撃しようとしていた。


「拙い、皆避けろぉぉぉぉ‼︎」


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』


【ゴォォォォォォォォォォォォ‼︎】


 そうしてアルクの叫び声が響き渡り、兵達の悲鳴が上がる中オーバーロードドラゴンのブレスが街に降り注ぎ地を穿ち、更に逃げ遅れたフィロ達を庇いランパルドが右腕を犠牲にして押し出そうとしていた。


【カチッ‼︎】


「っ、これは時間停止魔法(タイムストップ)‼︎」


 その瞬間世界が静止し、全員が時間停止魔法(タイムストップ)が発動したと認識した瞬間ランパルド達の方に注目し、ソーティスが居ないかどうかを確かめ始めた。

 すると…其処には、黒髪黒服の魔族と白髪白服の魔族が立っていた。


「何、ソーティスじゃない⁉︎」


「だがあの様子、奴等が時間停止魔法(タイムストップ)を発動させたと見るべきである‼︎

 シエル様、ダイズ殿、全員奴等の前へ‼︎」


 シエルはソーティスでは無い別の魔族が現れた事に驚き立ち上がると、アザフィールがあの時のこの戦場に居なかったその2人の魔族がこの時間停止を行なったとして全員でその魔族達の前に飛び出し始めた。


「ねぇ、何で皆止まっちゃったの⁉︎

 これ、なんなの⁉︎」


「えっ、ティアちゃんの時間が止まっていない⁉︎」


「驚く事は無いです、ティアが擬似特異点(セミシンギュラリティ)の貴女達に接触してる為に時間操作系魔法から逃れる事が出来ているのです‼︎

 それより戦いの用意を‼︎」


 そんな中ティアの時間が止まっていない事にエミル達は驚いたが、アイリスが擬似特異点(セミシンギュラリティ)のエミル達に接触してる為時間停止から逃れられたと説明し、今は目の前の謎の魔族2人組との戦いの用意をする様に指示を出し、エミルがティアを抱き抱えながら杖を構え他の全員も武器を構えると2人の魔族が此方に気付き出した。


「むっ、兄者‼︎

 やっと魔剣の将シエル達が来たぞ‼︎」


「分かってる、それに天使に…これが今代の勇者一行達か。

 確かに油断は出来ないレベルに仕上がってるみたいだな…」


 ランパルド達に群がっていた2人の魔族はシエルを初めに確認し、その後他の全員も確認して2人の魔族も剣を構えていた。

 魔族2人の内1人はシエル達が現れた為、自分達で実行しようとした案も何も出来ない為人質行為として刃先をランパルドに向けながら構え、それを見たエミル達は迂闊に近付けないと感じ構えを解かずに緊迫状態が続いていた。

 その中で先ずネイルが口を開いた。


「お前達は何者だ、ソーティスは何処に居る‼︎」


「ソーティス様は此処には居ない、今頃別の時間軸に跳び実験の照明をし始めている頃では無いか? 

 そして我々か? 

 我々はソーティス様の助手だよ」


「助手…だって⁉︎」


 ネイルが何者か、ソーティスは何処かを問うと黒髪の魔族はそれ等1つ1つに律儀に答え、更に自分達こそがソーティスの助手だと言い放ちガムや他の面々を驚かせる。


「そうさ、我等兄弟は彼の方から脳に直接時間跳躍魔法(タイムジャンプ)の術式を刻まれ、時を跳べる様になったソーティス様の助手よ‼︎

 それにしても時間跳躍魔法(タイムジャンプ)さえ脳に直接刻まれればその過程の魔法も全て会得済みになる実験は大成功だな兄者‼︎」


「そうだな、ヴァイス」


 更に白髪の魔族、ヴァイスはエミル達も聞いた事の無い脳に直接術式を刻み込むと言う失敗したリスクを度外視した手段で2人は時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を会得した事を告げる。

 そうしてこの2人の魔族から感じるソーティスへの狂信に今までの魔族の忠誠対象が魔王からソーティスに変わった物とエミル達は心で感じ始めていた。


「さて、我々があの方より授かった使命を果たすべくお前達を此処で排除するとしよう。

 最後に我が名はネロ、貴様達の命を奪う者の名前だ、しかとその胸に刻め!」


「来るわよ、全員戦闘開始‼︎

 ティアちゃんは私の後ろで隠れてて‼︎」


「う、うん‼︎」


 それから黒髪の魔族、ネロもこれ以上の話は不要と感じたのか遂にヴァイスと共に自身の使命を邪魔無く果たすべくエミル達を排除しようと襲い掛かり始めた。

 それを見たエミルは全員に戦闘開始と指示した瞬間、ロマンやシエル達全員に身体強化(ボディバフ)IVと時間加速魔法(タイムアクセル)を掛け、自身はティアを庇いながら結界魔法(シールドマジック)Vを張り彼女を守りながら攻撃魔法の用意をしていた。


「久々のソーティス様の為の戦いだ、腕が鳴るぜぇ‼︎」


「ネロ、ヴァイス、時を改竄する蛮行を許す訳には行かない‼︎

 我等が正義の刃を受けろ‼︎」


「さて、貴様等2人は弱者か、強者か見せて貰うぞ‼︎」


 ネロ、ヴァイスが支援魔法が行き渡ったのを見届けた瞬間自身達も時間加速魔法(タイムアクセル)を使用し停止した時間内でエミル達は加速しながら戦闘を開始。

 先ずネロをダイズが、ヴァイスをネイルが相手をしティアの目にも止まらぬスピードでオリハルコンの刃と魔族の剣が斬り結び、狂戦士の拳と剣が何度も衝突しつつネロ達を停止中のランパルド達から遠ざけ出す。


「ソーティスの仲間なら容赦しない、神様の名の下消えなさいネロ、ヴァイス‼︎」


「ふふ、最強の天使様達も来るか。

 ではその天使アイリス達に敬意を払い全力で相手しよう!」


「オラァ、俺様達も忘れんじゃねぇ‼︎」


 其処に直ぐアイリス達天使2人も参戦し2人の魔族に対して攻撃し、ネロもそれに敬意を払うと余裕を見せていたが、其処にアル達も乱入し2対多数の乱戦状態と化した。

 だがネロ、ヴァイスはこの状況を楽しんでおり、次は何が来るか待っている節が見て取れた。


「アンタ達、舐めるのもいい加減になさい‼︎」


雷光破(サンダーバースト)‼︎』


「エミル達に合わせて、『絶氷弓』‼︎」


 そんなネロ達の態度に苛立ちを覚えたエミルはキャシー、シャラと共に世界樹の杖と言う最高峰の杖に二重魔法祝印(ダブルエンチャント)により魔力浸透率、変換効率や威力が増大した雷光の魔法がネロ達を襲い、彼等がこれを避けた瞬間サラの放った矢が遂に2人に擦り、青い血がその箇所から垂れ始めた。


「ほう、これは…」


『やぁぁぁぁぁぁ‼︎』


 ネロは現代の勇者一行達のレベル以上の実力に関心を持った瞬間、ルルとロマンも遂に戦闘を開始。

 鋭い刃が彼等の喉元スレスレを掠め、更に的確に急所を狙う2人の攻撃に少し冷や汗が出始めていた。


「ふう、この2人はまた格別だな…‼︎」


「今だ、この至近距離なら避けられない、焔震撃(マグマブレイク)‼︎」


【ガガガガガガガ、ゴォォォォッ‼︎】


 2人の攻撃を避けていたネロ達が互いに接近した瞬間を狙い、ロマンは焔震撃(マグマブレイク)を放ち至近距離過ぎて避けられない2人に的確な魔法ダメージを与えた。

 更にその焔震撃(マグマブレイク)の合間を縫いアザフィール、シエルが突撃していた。


「その首、断たせて貰う‼︎」


「ほら、貴様等の大好きな魔剣だ、受け取るが良い‼︎」


「来たか、アザフィールとシエル‼︎」


【カンキンキンガンッ、ギリギリギリギリギリギリ‼︎】


 アザフィールは大剣を軽々と振るいヴァイスの首を断とうと接近し何度も打ち合いとなり、シエルは時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を使用する者達の有効打であるベルグランドを魔力を放出しながら振るい、ネロはその魔力を避けつつ剣同士の打ち合いと鍔迫り合いとなるが、明らかに他の面々と戦っていた時と違う反応をしておりエミル達は矢張りシエルがこの者達の攻略の鍵だと確信する。


「はぁ‼︎」


「っ、勇者が来たか‼︎」


 そのネロに対してロマンがシエルと共に攻撃し、確実に1人を潰す戦法を取り2人で1人を攻撃し続ける。

 これにはネロも流石に堪らなかったのか途中で距離を離し魔法で目眩しをしようとした…が、サラがそれを許さず足下に矢を放ち更に後退させ始めた。


「良くやったサラ、さあ貴様もこれで終わりだ‼︎

 絶界まけ」


「待ちなさいシエル、ネロの背後を見なさい‼︎

 ランパルド達が‼︎」


 シエルはサラがネロを釘付けにした所を見計らい、ベルグランドの力を解放しようとした………だが、アイリスがそれを中断させ、その理由もランパルド達がネロの背後に居り、避けても避けなくてもベルグランドの闇の一閃でランパルド、フィロ、リヨンの3名が死亡する為このままでは歴史の改竄を修正出来なくなってしまうのだ。


「…チッ‼︎」


「ふう、危ない危ない。

 まさかこれ程強く連携も烏合の衆では済まされないとはな」


「ぐおあっくっ‼︎

 兄者、奴等強えな‼︎」


 シエルは解放しようとした魔剣の魔力を霧散させながら舌打ちすると、ネロはわざとらしく身振り手振りを行いつつ、自分達の主の敵は烏合の衆で無い事を理解した。

 その時ダイズ、ネイル、アルの攻撃で吹き飛ばされたヴァイスがこれ等を以て強いと称し、だがそれでも笑みは崩さず戦い足りないと言った様子を見せていた。


「…ふう、矢張り我等3人だけでは無理があるか。

 ならば次は『数を揃える』事から始めようか…行くぞヴァイス、ソーティス様の下へ帰還するぞ」


「けっ、身体が温まって来た所なんだがな‼︎

 まぁ、兄者の判断は間違えた試しが無い。

 だから此処は引くぜ…但しコイツ等の首を斬ってからな‼︎」


 それからネロはヴァイスに撤退命令を出し、次の算段を口にしながらソーティスは下へ帰還しようと発言する。

 ヴァイスもそれに従う様子を見せる…が、直ぐに後ろを振り向きランパルド達の首に剣を振り下ろそうとし始め、その凶刃がランパルド達の命を奪おうとしていた。


「止め」


闇氷束(ブラックフローズン)‼︎」


 ロマンがそれを見てから走り出そうとした、が明らかに間に合わない。

 誰もがそう思った瞬間エミルが今までに無い反応速度でヴァイスの右腕ごと剣を黒き氷で凍結させ、ヴァイスも威力や範囲を自分の右腕限定に絞って複合属性魔法を放たれた事に驚き、エミルを睨んでいた。


「誰が、誰の首を斬ると?」


 エミルは彼女の後ろに隠れているティアには見せられない、目が笑っていない笑みを浮かべながらヴァイスの凍った腕を見ており、更に杖に魔力の光が集まっており次はもっと悲惨な目に遭わせると2人にこれ以上何かすれば生命を奪ると明確に暗示しており、絶対零度の殺意が魔族の兄弟を襲っていた。


「ヴァイス、もう止めておけ。

 これ以上の長居は無用だ」


「…チッ、分かったって兄者‼︎

 …次あったら殺してやるからな魔法使い、覚えておけ‼︎」


【ブゥン、カチカチカチ、ビュン‼︎】


 ネロはヴァイスに警告を発し、撤退を再度呼び掛けると流石にヴァイスも懲りたのか撤退し始め、更にヴァイスに至ってはエミルに殺してやると殺害予告を出すと時間跳躍魔法(タイムジャンプ)で撤退し、時間停止はアイリスが引き継ぎその場には1ヶ月前のランパルド達や自分達、そして未来から来たエミル達しか居なくなった。


「良いのかエミル殿、1人は確実に減らせた筈だが?」


「いや、あれ全然まだまだ余裕ある奴の態度だったからあれ以上やったら逆上して何するか分からなかったわネイルさん」


「マジか〜…」


 それからネイル達全員が集まり、ヴァイスをあの場でヤれた筈とエミルに問いたが、前世(ライラ)の経験も合わせてヴァイス達はまだ何があると感じた為エミルはあれ以上の追撃は元よりやるつもりが無かった。

 それを聞いたガムはまだ倒せないと聞き顔を押さえながら面倒だとさえ思っていた。

 なおロマン達エミルと付き合いがより長い組やシエル達はあれがハッタリと見抜いていた。


「さて、彼等は消え去ったので後はランパルドを右腕だけが巻き込まれる様に、更にフィロ達は巻き込まれない様に彼等の位置を把握し、ズレている場合は調節しましょう」


「ええ…お父様ごめんなさい、でもこれが正しい歴史の流れだから………不甲斐無い娘を許して下さい…」


 そしてアイリスは邪魔者が消えた為、残すは元ある歴史の形に直す様にランパルドの右腕を焼滅する様に調整する事を話し、エミルも同意して率先してブレスの範囲を計算、位置の微妙なズレを直したり等しながら不甲斐無い娘である事を詫びており、無表情にならなければ泣きそうになる為表情を変えずにあるべき形へと戻し始めていた。


「…さて、他に変わった点はないか? 

 なも知らぬ兵士が実は生きてたのに死んでいた等と言うオチは許さんぞ?」


「大丈夫です、私が記憶していますから。

 これで全てが整いました、後は我々が帰るのみです」


「アイリス姉様は一度見た物は忘れないから間違いないわ」


 最後にシエルが他に変わった点が無いかを問い質すと、アイリスが自身の記憶能力で全てがあの時と一致して後は帰るだけだと伝えると、リコリスもそれを保証しならばと全員集まり、アイリスに帰る方法を教えて貰い始めた。


「帰る時は簡単です、ただ腕輪を天高く掲げてしまえば良いだけです。

 そうすれば我々は元の時間軸に帰れます」


「そう…ならティアちゃん、捕まっててよ!」


「うん、分かったよエミル!」


 アイリスは帰る際はただ腕輪を掲げれば大丈夫だとエミル達に伝えると、エミルは後ろに隠れていたティアの手を掴みティアもまた彼女の手を掴んでいた。


【キィィィィィン、カチカチカチカチカチカチ、ビュゥゥゥゥゥゥゥン‼︎】


 それからエミル達は来る時と同様に時空の腕輪を掲げると、時計の様な魔法陣が浮かび上がり今度はしっかりと針が時計回りになりながら光に包まれ未来から来たエミル達は消え去った。


【ゴォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎】


 それと同時に時間停止魔法(タイムストップ)が消え去りオーバーロードドラゴンの炎が街を穿つのであった。

 因みにこの時間軸のシエル達は突然時間停止した事に驚き、事態を把握しようとする動きが増えていたがこれは未来のアイリス達が消えると同時に記憶からも消え去り、残りは元通りの歴史の形に戻るだけであった。

此処までの閲覧ありがとうございます。

今回の様に戦いの後にちゃんとした歴史になる様に調整する場合が多々あります。

更に時空の腕輪使用者と時間跳躍魔法(タイムジャンプ)使用者で跳躍する時間帯に時差が何故発生するか今回はその設定を書きます。


時空の腕輪使用者と時間跳躍魔法(タイムジャンプ)使用者の時差:時空の腕輪は時空の乱れを修正する為にそれが発生する前の時間帯に時間跳躍する。

その為その時間軸の好きな時間に跳べる時間跳躍魔法(タイムジャンプ)使用者との間で時差が発生する場合がある。

但し、時間跳躍魔法(タイムジャンプ)使用者が何度も同じ時間軸に移動している場合には向こう側も修正者がやっと来たと認識する様になる。


次回もよろしくお願い致します。

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