第41話『誓いの翼達、準備する』
皆様こんにちはです、第41話目更新でございます。
まだ準備回になりますがそろそろ物語が動き出します。
今回はその為の準備でもあります。
では、本編へどうぞ。
ティアが名前を教えてから20分が経過し、宿屋で料理を頼み彼女に与えながら事情や現在の情勢を説明していた。
その際ティアは9歳、兄から家に居ながら教育も受けてた為ある程度教養がある事も判明していた。
「…えっと、つまり此処は地上界…人やエルフの皆が居て、魔界と別の世界なんだけど…私が居た時代とはまた違う地上界、なの?
だから、魔界に行ってもお兄ちゃんは居ないん、だよね…?
それで今は魔界と地上界の人達が戦ってる…で、合ってるよね?」
「そう、この時空の腕輪に君が別の時代から来たと言う反応があって分かったんだ。
手っ取り早く違う時代と証明するなら、君が居た時代の魔王は誰だったか知ってるかい?」
ティアは混乱しながらも此処が魔界では無く地上界、更には自身が元居た時代と別の地上界だと、更に戦争中だと何とか整理していた。
が、まだ信じ切れない部分があるのか警戒心がある為シエルが手っ取り早い方法としてティアの時代の魔王が誰かを聞き始めた。
するとティアは考え始め、直ぐに思い浮かぶ。
「確か…魔王様は『グレイ』様、だった筈だよ」
「魔王グレイ…奴めか…」
「アザフィール殿、その魔王をご存知で?」
ティアは魔王をグレイ様と呼び、アザフィールがその名に反応するとネイルがその魔王を知ってるかと尋ねる。
するとアザフィールは瞳を閉じながら語り始めた。
「魔王グレイ、奴は愚王とも呼ばれてるそれまでの魔界を無法地帯にした愚か者であり、今の魔王と私が討滅した1世代前の魔王である。
アギラを魔王にしたら、と考えればイメージ出来る筈」
「…成る程ね、そんな愚王が統治してた時代からこの子は来たのね…因みに今の魔王の名前は?」
アザフィールはグレイを愚王と呼び、イメージはアギラを魔王にしたらと言うエミル達でさえ分かる最悪な統治者だと想像に難くなかった。
次いでとしてエミルは今の魔王の名前をアザフィール達に聞くと、全員黙ってしまう。
其処は機密なので教えないのか…と思っていた所でダイズが吐き始めた。
「今の魔王様に名は無い、あの方は自らの名を過去と共に捨て去り今の魔界を実力主義、しかしティアやシエルの様な子供を育て切る方法と規律を作り上げたり等それまでの魔界を変えたお方、と言って置こう」
「えっ、今の魔王様に名前が無いの?
…お兄ちゃんは名前は自分を自分と証明する証だって言ってたから、その証を捨てるって悲しいよ…」
ダイズは魔王は名を捨て、今の魔界を実力主義且つ例としてティアの様な子供を育てる規律を作りそれまでの物を変えたと腕を組みながら話すが、ティアは名前はその者の証と教えられた為それを捨てた今の魔王に悲しいと口にしていた。
「兎に角、此処は貴女が生きてた時代では無いわ。
だから私達が送り返すわ」
「…本当?」
「ええ、ティアちゃんのお兄さんに必ず会わせてあげるから私達と一緒に行こう、ね?」
それからアイリスは此処はティアが生きていた時代では無い為送り返すと話し、彼女も最愛の兄の下に帰れるのかと思い本当かと周りを見て問いた。
その時エミルが前に出て必ず会わせると力強く発言するとロマンやサラ達も頷き、ネイル達の方も頷き返していた。
そしてエミルは手をティアに差し出して握り返すのを待った。
「(…この人達、お兄ちゃんみたいな真剣な目をしてる…。
それにあの同じ魔族の…シエル達も、私の事を心配してくれてる………お兄ちゃん以外は見捨てた私を…)」
ティアも兄みたいに真剣な眼差しのエミル達やさっきからチラ見しているシエルや同族のダイズ達に自身を心配している様子を見てこの場に居る者全員が親や隣人も自らを見捨て、兄以外に大切にされた覚えが無い彼女には眩しく映り自然と手を伸ばし、エミルの掌に小さな手が乗り温かみがあるその手でティアの心を包み始めていた。
「さて、その子供の対応も終わった所で本題に入ろう。
俺達はヴァレルニアに向かい土の月その1の28日に向かい改竄点を正す。
だがその子供は時の迷い子であり置いて行けば消滅し此処までのやり取りが無駄に終わる。
其処で、その子供を連れて過去に跳び誰かが付きっ切りで守る役目を担う訳だが、誰がやる?」
するとダイズはティアの信用を勝ち取った所で本題に入り始め、ヴァレルニアに向かうは良いものもティアは迷い子の為置いて行けば消滅してティアの心を開いた意味が無くなると話し、其処で誰が常に守るかを問い始めた。
するとエミルが真っ先に手を挙げていた。
「じゃあ私が守るわ。
常に一緒にいて結界で守りながら皆を魔法で援護、これが理想型じゃない?」
「魔法使いエミルが、か…。
確かに後衛に置くのが最適解だろう、前衛に居たのでは戦闘で動けなくなる者も出るからな。
なら言い出したならしっかり守れ、我等も気が回れば援護する」
「エミルがティアちゃんを守るなら僕も2人に敵が向かわない様にしながら戦うよ。
エミル、任せたよ」
「任されました」
アザフィールがエミルが守ると言い出した事に後衛にティアを置く事が最適だと判断し、ならばと言い出しっぺのエミルに守れと話す。
更にロマンも2人や後衛全員を守る気で戦う覚悟を決めて最後に自身が1番信頼する魔法使いに任せると手を翳すと、エミルも手を翳してハイタッチをして誓い合った。
「んじゃぁ早速ヴァレルニアに向かおうぜ、あのスカした野郎の雁首を斬り落としてぶっ殺してやるぜ‼︎」
「こらアル!
ティアちゃんの前だから汚い言葉を使うのは禁止‼︎」
こうして方針が決まった瞬間早速ヴァレルニアに向かうと叫び、ソーティスの態度が気に食わなかった為か鼻息を荒くしてその首を斬り落として殺すとハッキリと大声で叫ぶと、サラがアルの後頭部を叩きティアの前で汚い言葉を使うなと叫び、アルは叩かれた頭を押さえながら何も言わずにそれを受け入れた。
「だが武具は如何する?
奴相手にミスリルは通用しないと分かり切ってる以上、先ずはオリハルコン採掘と武具への加工が先だと私は進言するが?」
「確かに…一々武具を傷付けられて修繕しては非効率ね。
シエルと同じ意見ってのが少し癪だけど私達はオリハルコン採掘を優先して武具の新調をする事を先に終えたいわ。
このままじゃ戦いの土台に立てないわ」
だが其処にシエルが口出しし、最初の戦いでオリハルコンじゃなければ傷付けられてしまうのを思い知らされた事を思い出させ、先に武具新調を済ませるべきだと進言すると、エミルもシエルと同意見と言う部分に癪だと話しながらもソーティスとの戦いに武具新調は必至と考えこちらも進言した。
「なら私は我が先祖、大英雄シリウスの武具を使う時が来たとして我が家に戻り装備し直して来よう。
大英雄シリウスの武具はオリハルコン製、更にエミル殿の前世で二重魔法祝印が付加されている筈である故、採掘数が少なくなる筈」
「それと後衛の武具もそれぞれ新調すべきだと思うよ。
私だったらフェザーボウから世界樹の枝で作られた最高の弓『エターナルボウ』、衣も『聖者の衣』にして少しでも攻撃力や防御力を上げるべきだよ」
するとネイルが先祖のオリハルコン製武具を引っ張り出すと話しそれで必要なオリハルコンの数が減ると話し、サラも自身の現在の武具から更に上の最高峰の武具に変えるべきだと考えを示し、武具新調は必須事項となった。
「ならシャラさん、ネイルさんを実家に送って下さい。
私達魔法使い組も世界樹の枝で作られた『世界樹の杖』作成と『オリハルコンローブ』を直ぐに鉱石採掘してこのロックヴィレッジで全てを行います」
「分かったわ、ならネイルさんが武具新調を終えたら合流するわ。
さあ、行きましょうネイルさん!」
【ビュン‼︎】
それからエミルはネイルの実家を知るシャラに彼を送り届ける様に話すと、魔法使い組も今の装備からワンランクアップさせる、採掘後はロックヴィレッジに戻ると予定を告げ彼女にネイルを転移させた。
「さて、次に我々だが地上界で経済と政治の侵略を進めた際にオリハルコン採掘が済んでいない未開拓の鉱山がある事も、既に開拓された鉱山内に大量のオリハルコンがある箇所がある事も把握している。
其処で、我々はこの開拓済みの場所でオリハルコンを採掘する事とする。
場所は此処と此処、更に此処とミスリラントに集中しているからゴッフの弟子アル、貴様の顔が通し易い筈だ」
次にシエルが世界地図を広げて自分達が何処にオリハルコンが眠っているかを裏側侵略の際に把握していた為、今回は開拓済み鉱山内に狙いを絞り採掘すると指揮をしていた。
するとその場所にはあのビーエ山にまで✔の印が付き、エミルは因縁の場所にもオリハルコンがまだあるのかと感じていた。
するとロマンは少し考えて、この手は使えないかとシエルに問い始めた。
「ねえシエル、ちょっと考えてこの手は使えないかな?」
「何だロマン、何かあるなら言ってみろ。
考えてやる」
「えっと、僕達はビーエ山で多分アギラが用意したオリハルコンゴーレムに襲われたんだよね、君達に襲撃されたあの日。
ならさ、魔族のシエル達が居るならその…魔素を送り込むとか何とかして鉱山内のオリハルコンをゴーレムに変えられないかな?」
ロマンはシエル達が襲って来た日の事を思い出し、あの時に恐らくアギラとその部下が用意したオリハルコンゴーレムにも襲われた事実を思い出し、それならばとシエル達が何かをして鉱山内のオリハルコンをゴーレムに変えられないかと提案を始めた。
するとエミルやシエル、ダイズ達全員は目を見開き、その手があったかと言う風に手を叩いていた。
「…確かに、その方がより高純度のオリハルコンが大量に手に入り且つ熟練度元素の塊を倒してエミル達のレベルアップを図れる。
考えたなロマン、その手を採用する」
「ならネイル達が帰ってき次第二手に分かれてこの案を使うぞ。
…ふっ、全く地上界、中でも短命な人間は機転が良く働くな。
其処が美点であり強さなのだがな」
シエルやダイズはそのロマンが考えた手は使えない所か時間短縮、高純度鉱石採取、レベルアップの一石三鳥となる1手だと驚かされながらも使えると判断し、早速ネイル達が帰還次第二手に分かれてその手で採掘すると決まる。
その際にダイズは人間の機転の良さを改めて理解し笑みを零すのであった
それから15分でネイルが帰還し、オリハルコンの武具に身を包んだ姿にロマン達は唸った後に特にオリハルコンが眠る鉱山に向かい、採掘してる作業員達にアルがエミルの手で転移しながら此処が戦場になるとルルが予知したとちょっとした嘘を吐き彼らを避難させる。
「わあ凄い、初めてお外に出て空を飛んでいるよ私‼︎」
「ふふ、そうかティア。
なら良かったな外に出れる様になって………さて、そろそろ始めるか!」
アイリスに抱き抱えられながら空や地上を見て、初めて見る外の世界にティアは心を躍らせていた。
それを聞き笑みを浮かべた後、念話でそれぞれの上空で合図を出しシエルとダイズが魔物を生む術を鉱山内のオリハルコンに掛け始めた。
そして此処はシエルと誓いの翼達が担当するビーエ山の坑道内。
エミル達は武器を構え因縁の魔物出現を待ち構えていた。
【ズズズズズズズズズ‼︎】
「来やがったぜオリハルコンゴーレム‼︎」
「それも大量大量…皆、行けるわね‼︎」
『OK‼︎』
シエルの術が発動し、オリハルコンゴーレムが大量に現れるとリョウを含む全員が小規模な魔法、矢を全員の合間を縫って放つ等をひ、坑道中でゴーレムを攻撃を開始した。
特にロマン達はアザフィールの一撃で倒されたあの頃の倍程強くなり、振るう剣や斧、ダガーでオリハルコンゴーレムを的確に倒しリョウも攻撃に参加する。
それによりあれよあれよと高純度オリハルコンの山が積み重なり、エミル達もレベルアップして行った。
「オラオラオラァ‼︎
あん時のリベンジマッチ+鬱憤晴らしだ‼︎
砕けやがれこの人形野朗‼︎」
「はい其処、隙ありだよ‼︎」
「今なら中級でも通用する、『水流波』‼︎」
アルは更にグイグイと突撃し二重魔法祝印で外部強度が上がったミスリルアックスで叩き砕き、その隙にサラが砕けた部分の核を撃ち抜き、エミルは枷が外れた上に今のレベルなら中級魔法でも十分通用するとして水の中級魔法でオリハルコンゴーレムの体を穿つ。
『はぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
そしてロマン、ルル、リョウも積極的に攻撃しその一閃一閃が最上位のゴーレムの核を斬り裂き、此方もレベルアップとオリハルコンの山を積み上げて行った。
リョウは知らないが此処にはもうあの頃の弱かった自分達は居ない、アザフィールに付けられたトラウマを克服する様にオリハルコンゴーレム達をエミル達は薙ぎ倒して行くのであった。
そうして集まったオリハルコンを全て回収し、作業員達を坑道内に安全確認させてから戻してロックヴィレッジにシエル達ごと帰還、それと同時にネイル達も帰還しそれぞれ対面していた。
「あ、エミル様にロマン君達お帰りなさい!
結果は…凄い、リョウさん含めて皆レベル550になっちゃってますよ‼︎」
「そう言うネイルさんやキャシーちゃん達も同じレベルになってるわよ。
さて、これを見て如何思ったかな、シエルは?」
キャシーが早速鑑定眼でエミル達のレベルを確認すると、全員550になっており420程から130以上レベルアップし、遂には枷を付けたシエルを超えるレベルとなり全員力が更に付いた実感が湧いていた。
特にエミル達はシエルを見ながら彼女の反応を待っていた。
「想定では500位かと思ったが50オーバーか、中々良いレベルに仕上がったな。
少なくとも枷を外した本気のティターン達でも相手に出来なくなってしまったな」
「ふーん、つまりあの2人は今の私達を下回るって訳ね…もしかしたら元々レベルアップ前の私達と互角位だったのかしらね?」
シエルも想定以上に仕上がった事に満足が行ったらしく頷きもうティターン兄妹では相手出来ないと漏らしていた。
それを聞きエミルの予想でレベルの枷を外した彼等の本気はレベルアップ前の自分達位と口にすると何も答えなかった。
それが答えだとエミルは思い、それならあの2人には何かあっても勝てると踏んでいた。
「さて、それぞれの成果を出そうかエミル殿」
「ええ。
皆、オリハルコン出すわよ〜」
【ガラガラガラガラガラ】
それからネイルの切り出しからエミルは合図を出し、全員でオリハルコンを魔法袋から取り出した。
其処には金の輝きを放ち銅の様な色合いを持つ鉱石が山の様に積まれた。
「わぁ、これがオリハルコンなの!
綺麗…」
「ええ、そして3界で最も硬い鉱石よ。
さて鍛治師アル、貴方はこのオリハルコンを精錬し武具に加工する技術はありますか?」
「ゴッフから教わってるから問題無いぜ!
後は温度調節の補佐役が居れば直ぐにでも作業に入れるぜ!」
ティアは初めて目にするオリハルコンの実物に目を輝かせながら触っていると、アイリスが頭を撫でて最も硬い鉱石と発言すると次にアルを見据え、武具に加工出来るかと問い掛ける。
無論アルはゴッフから教わった技術の中にオリハルコンを精錬、加工する技術も含まれてる為補佐が居れば直ぐに作業出来ると断言する。
それを聞きエミル達は流石アルと思っていた。
「ではリコリス、補佐に入りなさい。
我々天使の加工技術を彼に見せて差し上げなさい」
「私達からはアザフィールを寄越そう、アザフィールもその道に精通している。
さぁ行け、魔界の技術を見せて置け」
『はっ!』
するとアイリスはリコリスを、シエルがアザフィールをそれぞれアルの補佐に出してオリハルコンを村の鍛冶屋へと次々と運び込み始める。
エミルは只でさえ鍛治師最高峰クラスのアルに展開と魔界の技術が合わさると常人には使えない悪魔的なキメラ武器が出来上がってしまうのか少しだけ心配になり始めていた。
「さあ次は世界樹の枝だ、此処から近い最北の世界樹から採取して後衛の武器作りをするぞ、キリキリ動け時間の猶予は無いぞ!」
「いつの間にアンタが仕切ってるのよシエル…まぁ私達が手ぶらだし、パパッと行って採取して来ましょうか」
そんなエミル達にシエルが次の必要アイテムである世界樹の枝を最北の世界樹から採取する事と取り仕切ると、エミルはいつの間にか仕切られた事を不服としながらも何もしないよりマシな為魔法使い組とサラ、アイリス、シエルが転移しその場から消える。
「…それで、残された僕達は如何すれば…」
「仕方ない、ロマンやネイル達はティアの相手をしていろ。
迷い子は常に俺達の誰かが側に居ないとならないからな。
…さてヒノモトの剣士リョウ、この組み合わせならば…」
「分かっている、他の誰の迷惑にならない別の地で決闘するぞ。
今はお前の全力に及ばない、だが女王の至高の剣になる俺にとって貴様は超えるべき目標の1つ、よって手合わせ願おうか!」
最後に残されたロマン、ルル、ネイル、ガム、ムリアはダイズからティアの相手をする様にと彼女を預けられ、リョウはダイズに遂に決闘を申し込むに至り刀に手を掛けていた。
それを煽ったダイズは笑みを浮かべて彼の手を引き何処かに転移して行った。
「あーあ、遂にやっちゃいましたよ決闘。
ネイルさんにムリア、如何する?」
「ああなったダイズ様は止められないからもう放って置くしか無いんだな〜」
「…仕方ない、我等はダイズの指示通りティアの相手をしてあげようか」
そして残された5人は念の為ガムがムリアに決闘を止められ無いかと聞くが矢張り止まらないらしく、指示通りティアの相手をする様にするしか無くなりロマンとルル(フード付き)が彼女に近付き、目線に立つ様に腰を下ろしながら話し始めた。
「じゃあティアちゃん、何かやりたい事とかある?
僕達で良ければ相手になってあげるよ」
「本当?
ならえっと、えーと…」
【ぐぅ〜】
ロマンがティアに話し掛けてやりたい事の相手をすると話すと、ティアは色々な遊びを思い付いていたが丁度お腹が鳴り、彼女は顔を赤くしながらお腹を押さえるとロマンももうそんな時間かと思い、ルルと2人で頷き合っていた。
「じゃあ…ティアちゃん。
お姉ちゃん達と一緒に………ご飯、食べましょう?」
「丁度僕達もお腹空いてたからね」
「ホント?
じゃあ地上界の料理を食べてみたい!
私、お兄ちゃんの作る料理が1番だけど他にも色々食べてみたい!」
2人も上手く話を合わせてティアにご飯を食べる様に誘導すると、彼女は全く未知な地上界の料理に興味が湧き食べたいと話していた。
それを聞きネイル達も頷き近付いた。
「では皆を待ちながら宿屋で料理を食べようか。
きっとティアが驚く様な料理が沢山あると思うぞ」
「じゃあエミル達が来るまでにご飯食べよう!」
ネイルがガム達の代表で同じ目線に立ちながら話すとティアはエミルを呼び捨てにしながらご飯を食べると決まり、歩き始めていた。
これは彼女が目覚めてからの自己紹介で呼び捨てで良いと気軽にエミルが話した事と彼女の本来の時間軸で兄に遠慮していた部分が無くなり子どもらしい地の部分が出ている為である。
「じゃあ僕達も行こうか、ルル」
「…その前にロマン、内緒話が」
ティアがネイル達と共に宿屋に歩き始めた時、ロマンも立ち上がり後を追う為にルルと共に歩こうとした………その時、ルルから小声でロマンに耳打ちしながら2人の内緒話が始まり彼はルルの話に頷き始めていた…が、途中から顔に出る程の驚くべき内容が語られロマンは内緒話中の本人の顔を見た。
「それ、大丈夫なの⁉︎
何か問題にならない?」
「大丈夫、過去が変わる前に関係者からは許可を貰って持ち出してる、それも半月前からよ。
そして擬似特異点の私の持ち物に変化が無かった。
だからこれが、ソーティスに対する絶大な切り札になると思う。
…ただ隠し札でもあるから私が此処だって思った時にしか出さないから余り頼らない様にもして、気取られたくないから」
ロマンはルルがやってる事を心配するが、エミルが全員に一度離れ離れになり必要な準備をする事を話した際にルルも関係者各位に周りある物の持ち出し許可を貰い、それをずっと隠していたのだ。
そしてこれはソーティスに絶大な切り札になるが、気取られたら効果が激減すると思いルル自身が決め打ちした瞬間に使わせる雰囲気を出してロマンも頷き、ルルにそのタイミングを任せると無言で伝える。
「お〜いロマーン、ルルー、早くしないと全部食べちゃうよ〜‼︎」
「あ、分かったよティア、今行くよ‼︎
…じゃあ、エミルや皆にも内緒で」
「そうして…下さい」
するとティアが宿屋の入り口で待っており、ロマン達に料理を食べてしまうぞと叫び2人を呼んだ。
それからロマンとルルはこの話を胸の内に仕舞い宿屋に走りテーブルに座る。
そして6人でそれぞれ料理を頼むと、ティアは兄が出す料理全てを食べていたため嫌いな食べ物が無い(但し魔界の物だが)が分かり、それに近い料理を注文してエミル達の帰還を待つのであった。
それからリョウがボロボロになってリョウ程で無いにしろダメージを負ったダイズが決闘から帰って来て大騒ぎになり2人に決闘禁止令が出されたり、世界樹の枝や聖者の衣に必要な世界樹の葉や其処で採取できる泉の水を採って来たエミル達が帰って来てボロボロな2人に回復魔法を掛けて同じ様に禁止令が出されたりする中、ティアの部屋でエミルとロマンの立ち合いの下シエルが彼女とチェスをしていた。
「えっと、此処‼︎
チェック‼︎」
「むっ………驚いた、手加減した覚えは無いんだが………投了だ。
相当強いんだなティアは」
「うん、お兄ちゃんと時間がある内に遊んでたらお兄ちゃんより強くなっちゃったんだ〜!」
その結果は特に手加減していないシエルが投了宣言して敗北すると言う、エミル達も見てて奇策や瞬時な対応にこれは自分達も勝てないとお手上げしながら見ていた。
如何やら一通りの遊びは兄とやる内にその兄を超える強さを得たらしく、これは手強い子供だとエミルやロマン、シエルは感じていた。
「じゃあ次は何をするの、トランプ?」
「そうねぇ…じゃあ此処はブラックジャックかなぁ?
ルールは分かる?」
「うん、手札が21になったら勝ちだよね!」
次にティアは何で遊ぶかと話すとエミルが適当にブラックジャックをすると話すと、ティアもルールは分かるらしく子供らしく遊び相手が増える事に喜びを持っていた。
[と言う訳だダイズ、アザフィールが手を離せない以上お前がトランプを持って来てディーラーをやれ]
[良いだろう、誰が吠え面をかくか見てやる]
「…魔族の念話をそんな俗っぽい理由で使うんじゃないわよ」
それを聞いたシエルは念話でダイズにトランプを持って来させ、ディーラー役をやらせる命を出すが傍受していたエミルは魔族の特性を俗っぽい理由で使われ方をして肩を落としていた。
そして部屋のテーブルで囲みダイズが手早くシャッフルを始めていた。
「じゃあ賭けとして…私達3人の誰かが勝ったらティアちゃんは体内魔力制御を私達から教わる、ティアちゃんが勝ったら私達の恥ずかしい失敗話を聞ける、で良いかな?」
「うん、良いよ!
よーし、勝っちゃうよ〜‼︎」
するとエミルはロマン、シエルのうち誰かが勝ったら体内魔力の制御法と言う真面目な話、必要な事をやりティアが勝てば3人の恥ずかしい失敗談を聞けると言う賭けをしてティアは了承してやる気に満ちていた。
そうしてカードが配られ始め、互いにカードを見ていた。
「ふんふふ〜ん」
「ヒットだね」
「私もヒット」
「…えっと…ごめんなさい、スタンド‼︎」
全員がカードを見て追加で引いて行く、そんな中ロマンは謝りながらカードをこれ以上引かないと言う選択をしてエミル達の視線を集めた。
それも悪い意味で。
「おい、おいまさかロマン貴様…」
「…取り敢えずこれ以上カードを引くプレイヤーは居ない?
ならダイズ、最後のカードを引いて」
「ああ…20でバースト無しだ」
全員で見合ってこれ以上のカードを引かない選択を取りダイズ17より下の札の為最後のカードを表にし、自身の札と合わせて20となりそれ以上引かない様になった。
それから全員ロマンに注目すると、先ずは右のカードをオープンしJ、10の数である。
そしてこれ以上引かないと言う事は10の数以上は確定と考え左のカードに関心が向くとロマンは左もオープンした。
「…うわ、スペードのA、マジモンのブラックジャックだ…」
「何なんだその理不尽な引きは…たく、賭けは私達の勝ちだが勝負に負けたぞ…」
エミルとシエルはロマンの理不尽な引きに頭を抱え、あくまで21に近付けるゲームの趣旨をいきなり不意にされてしまい気分を害していた。
特にエミルは日記にロマンにカードゲーム類禁止と書き、ロマンも無言で頭を下げていた。
「凄〜い‼︎
ロマンって運が凄く良いんだね‼︎
本当に凄い‼︎
でも次は負けないからね‼︎」
対するティアは子供らしい感性でロマンの運の良さを凄いと純粋に反応し、されど次は負けないと話して元気に振る舞っていた。
ロマン達はこんな子供の感性を懐かしく感じ、この子は守らないとと更に決意を固め始めていた。
それは一見仏頂面のシエルもティアをチラ見している為、ダイズは同じ師父の下で修行した彼女もロマン達と同じと考えながらカードを片付けていた。
「…ふう、さてティアちゃん。
貴女は強大な体内魔力が身体を蝕んで今は枷を付けて9歳の子供の魔力適正量を上回らない様にこっちから小細工してるのは話したよね?
なら今度はその体内魔力に慣れる様に制御法を学んで行く事になるわ、良いね?」
「うん、良いよエミル、ロマン、シエル‼︎」
それから落ち着いたエミルは早速体内魔力の制御法の基礎をアル達の鍛冶や杖等の新調が終わるまで勉強させ始める為に現状の振り返りと目標を設置し、その目標を達成させる様に話すとティアは元気良くエミル達の名を呼んでいた。
かく言うティアもビーエ山上空の様な世界を、例え夢に終わる物だとしてももっと見たいと考える様になりエミル達から体内魔力のイメージを思い浮かばせ、魔力一体論に基づく魔力制御を行ない始めるのだった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
物語中にルルが何かフラグを立てましたがそれが判明するのはずっと後の予定になります。
そして、エミル達のレベルは遂に枷付きではありますがシエル達のレベルを超え、更にオリハルコン製武具に変わります。
が、前の武具はそのまま持ち物に残り、とある人物は後々の話にその武器が絡みます。
それだけは予め予定として書きます。
では今回は『彼』の記憶のティアとエミル達の前に居るティアの相違について書きます。
『彼』の記憶のティアと迷い子のティアの相違:別に違いは無い、ただ兄である『彼』に遠慮していた+身体が弱かった為に思う様な事が出来なかっただけでエミル達の前に居るティアが本来の性格、多感な少女である。
ただこの事を知る者はエミル達の中に居らず、ティア本人にしか分かっていない。
次回もよろしくお願い致します。




