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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第3章『時空改竄編』
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第37話『呉越同舟の戦い』

皆様こんにちはです、第37話目更新でございます。

今回は前回の続き、シエル達が参戦した所からの続きになります。

3界の有数の戦士達が1人の敵に対して如何するかをご覧下さいませ。

では、本編へどうぞ。

「先手必勝、嵐瀑弓‼︎」


雷光破(サンダーバースト)‼︎』


 第2ラウンド開始時にサラが昂揚するソーティスを水+風の複合属性絶技で狙撃し、更にエミル達はアザフィールも含めて光+雷の複合属性魔法を撃ち敵対者を穿とうとした。

 しかしソーティスはそれを全て時間加速魔法(タイムアクセル)による超スピードで全て躱し切ると突撃し始めた。


「ソーティス、我等の正義の刃を受けろ‼︎」


「その脳みそカチ割ってジュースにしてやるぜこの野朗‼︎」


「はぁぁぁぁ‼︎」


 次にネイル、ガム、ムリア、リョウ、アル、ルルが突撃し剣、槍、刀、斧、ダガーを風の絶技で速度を上げながら振るったり、氷の絶技で足を凍らせようと武器を振るった。

 しかしソーティスはそれも全て躱し今度は全員の足を払った後に回転蹴りを見舞い6人を難なく吹き飛ばす。


「ソーティス、俺の拳を受けろ‼︎」


「世界の秩序を乱す者、死に絶えなさい‼︎」


「ふっ、魔族と天使が共に来るか…面白い!」


 その次にはダイズ、リコリスが時間加速魔法(タイムアクセル)を使用しソーティスと同等のスピードを得て2人で何故か息があった即席コンビネーションを発揮して拳やブレード、蹴りも合わせて浴びせ始めた。

 それをソーティスは面白いと称して全ての攻撃を受け流し、躱し、そして2人の拳が同時に放たれた瞬間にそれを重ね合わせたと思うと受け流す投げ技を披露し2人を遇らう。


「くっ、舐めるなぁ‼︎」


「はぁ‼︎」


 しかし投げ飛ばされたダイズは怒りを剥き出しにするとリコリスと共に態勢を空中で立て直しソーティスに向かい再び突撃して拳を浴びせようとした。

 その技のキレは視界に捉えてるシエルやアイリスの中で1番だった。


「甘い」


【ドンッ‼︎】


『ぐはぁっ‼︎』


 しかしソーティスは2人を迎え撃つべく突撃し、彼等よりも早く掌で押す動作で攻撃して2人を吹き飛ばす。

 ダイズ、リコリスはこの攻撃は一見すると大した事の無い攻撃に少し吐血していた。

 これはアルも他の皆も受けた魔力を帯びた掌を無駄な動作無く全身の内部に送り込まれ内側からダメージを受けるソーティス独自の技である。

 そしてこれをモロに、加減抜きで受けた為動けなくなってしまう。


「リコリス‼︎」


「視線を逸らすな勇者ロマン、奴等なら大丈夫だ‼︎

 それよりも奴が来たぞ‼︎」


 リコリスに視線を向けるロマンにシエルが視線をソーティスから逸らさずに大丈夫だと言い放ち向かって来る敵に集中せよと警告する。

 それを見てか先ずはアザフィールからソーティスに向かい、その大剣を振り下ろし手刀とぶつかり合った。


「ソーティス、かつての我が友にして共に魔界を治めようとした者よ‼︎

 我が剣で貴様の過ち、時の改竄をもう起こさせはせん‼︎」


「アザフィール、お前から来てくれるとは嬉しいぞ‼︎

 さあ、かつての如く戯れるとしようではないか、友としてなぁ‼︎」


【ドンガンギンガンッ‼︎】


 アザフィールとソーティスはかつての友同士と言う立場でありながら思想から対立し合い、そして今正に殺し合いをしておりその激しさは感情的に見れば明らかにダイズやリコリス以上に動いており其処に篭る殺意もまた段違いであった。

 更に戦い方も互いの手癖、戦法を理解し合っての潰し合いであり矢張り今まで突撃し合った者達の中でも苛烈な戦いを繰り広げていた。


「す、凄い…」


「ぼーっとするな勇者ロマン‼︎

 我々も行くぞ、アイリス‼︎

 それから勇者ロマン受け取れ、時間加速魔法(タイムアクセル)‼︎」


 ロマンはその戦いを観て凄まじさを体感し、改めてダイズやリコリス、アザフィールの領域は遠く険しいと思いながら背後に居るエミル達へのガードは緩めずにいた。

 しかしシエルにはぼーっとしてた様に映ったらしく背中を叩かれアイリスと共にその戦いの場に向かう事を叫ばれた。

 更にシエルはこのタイミングでロマンに時間加速魔法(タイムアクセル)を掛けて来る。


「わ、わっ⁉︎

 周りの風景が…ゆっくりに見える⁉︎」


「はぁ、時空の腕輪は装備者が敵対者と認識する者の時間操作系魔法を受け付けなくするのに…ロマン、貴方はお人好しですよ全く!」


 時間加速魔法(タイムアクセル)を受けたロマンは周りを見るとエミル達の動きがゆっくりに映り、アザフィールとソーティスの動きも超然としながらも先程と比べても少しは目で捉えられるスピードに収まり驚いていた。

 対するアイリスは時空の腕輪の効果で時間操作系は敵対者に掛けられても無効になる筈なのに時間加速魔法(タイムアクセル)が発動した事にお人好しと叫びながらソーティスにシエルと共に攻撃を開始し、遅れてロマンも攻撃に入る。


「ソーティス、事を起こされる前に貴様は始末する‼︎」


「時空を乱す者の存在は許されない、消えなさいソーティス‼︎」


「やぁっ‼︎」


 シエル、アイリス、ロマンが自身が加速中にアザフィールとソーティスの間に割って入り攻撃を開始する。

 それを見たアザフィールは少し後退し、連携が取れる位置に立つ。

 そしてシエルはベルグランドを振るうが、ソーティスは今まで手刀で打ち合っていた物を避け、アイリスやロマンの矛と剣の方を手刀や蹴りで対処していた。


「ベルグランドを避けてる…? 

 なら、シエルを中心に攻撃しよう‼︎」


「…チッ!」


 ロマンはシエルの攻撃ばかりを回避してる事に気付き、其処からシエルを中心に攻撃パターンを組むと叫ぶとソーティスは要らぬ事に気付いたなと言わんばかりに舌打ちをし、ロマン達が攻撃してる間にシエルを攻撃に参加させると言う足止めに入りアザフィールも当然ソーティスを殺す為にその戦法を使い始めた。


「ほらほら如何したんだ彼方なる者、そんなにベルグランドが怖いのか? 

 なら、もっともっとこの刃を受けろ‼︎」


「ふっ、1週間戦い続けて有効打が見つからないからゴリ押しで来るか…間違っては無いが俺の嫌いなタイプだな!」


 そのシエルもまたベルグランド『だけ』は避け続けてる事を既に察している為時間加速中に飛んでくる魔法や矢、更に何とか捉えようとするアルやネイル達に同じく加速中で直ぐ様復帰したダイズとリコリス、アイリスやロマン達の間を縫ってベルグランドを当てようとしていた。

 ソーティスはそんなシエルに苛立ち、ベルグランドの斬撃を避けるのに必死になっていた。


「はぁ‼︎」


【ズシャッ‼︎】


「っ、流石勇者か、時間加速の中でも適応し始めたか!」


 其処にロマンが隙を見つけて斬り掛かり、ソーティスに2度目の傷を付けた。

 それを見たソーティス自身は勇者としての資質の高さを評価し胴体に付いた小さな傷を拭い、ロマンを見据えていた。


「今が好機、リコリス‼︎」


「はい姉様‼︎

 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


【ガキガキガキガキガキーン‼︎】


 その時アイリスがリコリスに指示を出し、共に魔力を集中すると光の矛がソーティスを囲み内張の結界魔法(シールドマジック)Vの様な内部の者を拘束する空間結界を作り出しソーティスはその結界を叩くが意外に硬く直ぐには破れない様子であった。


「チッ…!」


「良く動けなくしたなアイリス、リコリス! 

 ではこれから処刑を行う、覚悟しろソーティス‼︎」


【バチバチバチバチバチバチバチ、キィィィィィン‼︎】


 その結界をまたと無い好機と見たシエルはベルグランドを両手で持ち、振り上げる前の姿勢を保ち魔力を込め始めた。

 するとベルグランドは赤い魔力の輝きから赤黒い闇の絶技と同じ禍々しい魔力光に包まれるが、その込められた魔力は明らかに暗黒破を遥かに上回る魔力量を見せ付けていた。

 そしてシエルが立ち止まった為エミル達にもその光景は普通の速さで映っていた。


「あれは…やっぱり…‼︎」


「光ある所闇あり、生は死に反転し全てを蹂躙し尽くす………受けるが良い、絶界魔剣‼︎

 ベルグランドォォ‼︎」


【ズガァァァァァァァァァッ‼︎】


 エミルはその闇き魔力光を神剣ライブグリッターをそのまま反転させた様な物だと感じ取り敵に回せば間違い無く死が待つその剣に汗を流していた。

 その間にシエルは瞳を閉じながらベルグランドの真の力を解放する為の詠唱をする。

 更にそれが言い切られた瞬間ベルグランド全体から赤黒い魔力が充満した所でその眼を見開きソーティスを捉える。

 そして剣を振り上げた瞬間暗黒破の様な闇き一閃が大地を穿ちながらソーティスに向かい始めた。


「…ふう、矢張り目覚めたてはこれが限界か…!」


【ブゥン、カチカチカチ、ビュン、ズガァァァァァァァァァッ‼︎】


 しかしソーティスはそんな闇の一閃を前にしながらも余裕を見せ、自身が現代に目覚めてから時間が余り経っていない現状はこれが限界と見切ると手を翳し、その先に時計の様な魔法陣が現れソーティスはその中に吸い込まれる。

 その直後にベルグランドの魔力の斬撃が空間結界諸共その場を破壊の渦に飲み込んだ。

 後に残ったのは穿たれた大地のみとなっていた。


「…チッ、ソーティスは時間跳躍魔法(タイムジャンプ)で逃げたか」


「我々天使の空間結界もアレには対応してませんからね…」


「だがソーティスはベルグランドを恐れてる、それだけ知れたなら僥倖だろう」


 それからその場を見たダイズは直前の行動からソーティスは時間を跳び逃げたと察し、アイリスも全力戦闘形態を解除しながら天使の空間結界も時間跳躍魔法(タイムジャンプ)には形無しだとして逃した事を気に掛けていた。

 対するシエルはベルグランドが現段階で有効打だと知れただけでも良かった為ベルグランドを再び異次元に保管して戦闘態勢から警戒態勢に変わっていた。


「畜生が、俺様達は全く役に立たなかった…‼︎」


「いや、アイリス達も使うのを渋った時間加速魔法(タイムアクセル)抜きで此処まで保たせたんだ、お前達は十分活躍したさ。

 …それでアイリスにリコリス、何故時間操作系魔法を使うのを渋った? 

 ソーティス相手に出し惜しみは無しにしなければならないと理解出来なかったか?」


 警戒態勢に入ったアル達はロマンしか碌に役に立たなかった事を悔いていたが、シエルは時間加速魔法(タイムアクセル)抜きで自身達が来るまで耐えた事を称賛していた。

 しかしそんなシエルはアイリス達の方を呆れた目で見つめながら何故時間操作系魔法を使い渋ったかを問い始めた。


「…目覚めたてのソーティスならばエミル達と私達だけでも仕留められる、そして奴を討滅するのは天使の役目と考えたからよ。

 けれどその考え自体甘かったと痛感したわ…エミル、キャシー、シャラ、ロマン、ルル、ムリア、これから時間操作系魔法を貴女達に授けるわ。

 これも私達の怠慢の対価よ」


 アイリスやリコリスは目覚めたばかりのソーティスならばエミル達と協力すれば時間加速魔法(タイムアクセル)等を使わずに倒せ、更に彼方なる者は天使が討つのが使命と語るが、それが怠慢だった事を認めてエミル達魔法使いやロマン、ルル、ムリアに時間操作系魔法を授けると話し術式を教えようとしていた。


「(アイリス…あれだけ忌避していた時間操作系魔法を私達に教えるなんて…余程ソーティスの実力が想定外過ぎたのね…)」


 しかしエミル達はアイリスが時間操作系魔法を他者に教える事を避けていた事を知る為、特にエミルはソーティスが其処まで想定外の実力を発揮していたのだと言動や態度から感じ取り特に何か噛み付く事はせずに彼女達を見守る事にした。

 これも1ヶ月もずっと一緒に過ごして等身大の彼女達を知れた為である。


「怠慢次いでにアイリス達に頼みたい事がある、時空の腕輪を私とダイズ、アザフィールの分を用意してくれ。

 生憎と魔界にあった腕輪は奴に全て破壊されてしまい天界を頼らざるを得なくなってな」


「…そう、なら3人は此方に来て。

 リコリス」


「はい…」


 するとシエルはアイリスに頼み事として時空の腕輪を3人分用意してくれと話すと、アイリスは先程の落ち度もあってかすんなりと要求を通し、リコリスと共に天界製魔法袋(マナポーチ)から時空の腕輪を所持して丁度残った3個を取り出し、それをシエル達に引き渡して左腕に装備するのを見届けた。


「…よし、これで時間改変現象(タイムパラドックス)に怯える心配は失せたな。

 後はソーティスを存分に追うだけだな」


「…もしかして神様は、リョウだけじゃなくシエル達にも時空の腕輪が必要だって未来を視て時空の腕輪を4個アイリス達に渡したのかな?」


 シエル達3人はそれを装備してこれが時空の腕輪で破壊されてない物と確認していた。

 時間改変現象(タイムパラドックス)の脅威に怯える心配は無くなったと一見して怯えている様子の無いシエルが話すと、エミルは神がこの事態になると未来視で視た為時空の腕輪を4個アイリスとリコリスに託したのかと話し、アイリス達もそう言う事なのだろうと納得していた。


「有り得る話だ、神は全てを見透す眼を持つとされてる。

 ならば俺達がソーティスを追う事も把握してる筈だ」


「流石は我らが世界を創造し、今なお世界を見透す者であると言えるだろう」


 ダイズやアザフィールもエミルの想像に頷き、神は全てを見透す事を話しながらこの事態を想定したと断言しながら時空の腕輪を確認し終えて彼女達を見据えながら会話をしていた。


「…それにしても、魔界もソーティスを追って来るなんてね」


「当たり前だ、あんな居るだけで全ての土台を引っ掻き回す存在など『魔王』様で無くとも目障りと判断するさ。

 だからこそ今地上界には私達以外の魔族が居ないんだ、ソーティスへの警戒からな」


「あ、そうなんだ」


 それからエミル達は互いに距離を取りながら会話を始め、同族を魔界側が追う事を不思議がったがその答えをシエルは目障りと魔王が判断せずとも自分達が判断する様に言葉を口から出していた。

 更に魔界側の情勢としてソーティスへの警戒へ全振りした為地上界には魔族が現在ソーティス以外には自分達4人しかいない事を暴露した。


「同族にまで此処まで警戒されるたぁ相当だな。

 時間跳躍魔法(タイムジャンプ)は其処までの禁忌って訳か」


「そうさ、全てを支配したい『魔王』様は時空が乱れ支配する対象その物が滅ぶ可能性を秘めたこの魔法を自身で覚え使う事が無い様にしてる程だ。

 故にソーティスがこれを会得した時点で危険因子と見做してアザフィールと共に奴を封印した程だ。

 此処まで言えば魔界側が如何に奴を警戒してるか分かるな?」


 そうしてアルは改めてソーティスが事態に疎い地上界以外から最大級の警戒をされてると理解すると、シエルが魔王も自身の野望を潰しかねないこの魔法を覚える気も使う気がないと話す。

 更には会得した時点で危険因子だと見做してアザフィールと共にソーティス封印をしたと説明し、エミル達は互いに友と呼び合ったアザフィールを見てそれ程厄介かと判断していた。


「それにしても、あの絶好の機会と言える場でソーティスを逃したのは手痛いだろう…」


「シエルのあの暗黒破を更に強めた様な1撃を避けられた上に何処に逃げたんだろうね…?」


「暗黒破みたいな、か。

 ふっ、寧ろ闇の絶技の方がベルグランドの模倣なんだがな。

 さて…」


 その中でネイルがソーティスを逃したのは手痛いと口にすると、サラもシエルの強大な1撃を避けた上に何処に逃げたのかと周りを見てエミル達は手を上げると、アイリスとベルグランドが闇の絶技の本元としれっと語るシエルはベルグランドで穿たれた場所に移動して時空の腕輪を胸元の前に構える。

 すると赤い文字が腕輪の上に浮かび上がり構えた腕を戻してその文字を見始めていた。


「…? 

 ロマン君」


「うん」


【ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

 バッ、キィィィィィン、カチカチカチカチ】


 それを見たエミルとロマンもアイリス達に近寄り同じ様にしてみると時計の音がしながらまた同じ様に文字が浮かび上がった。

 更に遠目で分からなかったがこれを近場で見るとそれは数字であり、エミルとロマンは数字を見ながら何なのかと思っていた。


「赤い数字…そしてこの暦と日時…奴は1ヶ月前に跳んだな」


「えっ? 

 …えっと、この数字を今の魔法暦に変えてこっちを日時に変えると…確かに『魔法暦2035年』になってこっちは1ヶ月前、土の月その1の28日になるわね。

 その時は確か…魔血破(デモンズボム)が起爆された日ね………」


 シエルが腕輪に浮かんだ数字や赤い文字から1ヶ月前と断定すると、エミルは直ぐに数字の並びを見ると確かに現在の時間から丁度1ヶ月前、魔血破(デモンズボム)が起爆した日になっていると解読しロマンも同じ様に見ると確かにとなりつつ、目の前で爆破されたギャランの事を思い出し暗い気分になっていた。


「時空の腕輪で奴を追うには先ず時間改変現象(タイムパラドックス)が起きなければその異常地点に跳ぶ事が出来ない…疲労が回復するまで其処に潜伏する気ね、考えたわね」


「其処がソーティスの厄介さよ。

 奴は慎重に事を運ぶと思いきや大胆に動く、更には自身の無理を理解してその無理を行う事が無い。

 現時点でシエル様達を含めた我等に勝てぬと踏んでの潜伏も其処から来ている。

 全く、見極めが良過ぎる奴だ」


 リコリスは時空の腕輪を使った追跡は時間改変現象(タイムパラドックス)で異常が発生しなければその地点には行けないと話すとソーティスを良く知るアザフィールが彼の厄介さや無理は行わない慎重さを語りつつ大剣を仕舞いシエルとダイズの側に立ち2度も仕留められなかった事を気にした様子を見せていた。


「アザフィール、奴を仕留められなかったとは言え矢張りベルグランドが奴を殺す鍵だと知れたんだ。

 余り気にするな」


「…御意」


 シエルはアザフィールの表情からソーティスを仕留められなかった事を悔いている事を悟り有効打が見つかったと言う自身達に有意義な情報を前面に出していた。

 それを聞いたアザフィールも自身の手で決着をと思っていた所から頭を切り替えて次のソーティス対策を脳内で構築し始めた。


「さあエミル達、今度は抜からない様に教えられる範囲の時間操作系魔法の術式を全て教えるから来なさい」


「ええアイリス。

 …え、あれ? 

 この魔法、術式を見たら光でも闇でもない、と言うより属性が無い? 

 支援魔法は光属性か闇属性が一般なのに…」


 一方エミル達側はアイリスから時間操作系魔法を教えられる分のみ教えると術式を展開しみせられていた。

 それを見たエミルはこの魔法が支援魔法は光属性か闇属性が一般である筈なのにこの魔法には属性その物が無いと読み取り困惑していた。


「ええ、時間操作系魔法は属性が全く無い魔法の中でも特殊な物なの。

 だから属性を変換する技術も要らないから直ぐ使える。

 それに覚えて使うなら複雑な体内魔力の流れを必要としない、強いて言うなら持続時間を上げるためだけに体内魔力の量が必要になるの。

 故にこれは別名無の魔法と呼ばれているわ」


 アイリスは時間操作系魔法…無の魔法を詳細に語り出し火属性の様に属性変換する体内魔力の流れをコントロールしたりする技術が必要無く、体内魔力の量で効果時間の持続を上げるのみの為覚える事も使う事も難しく無いと話した。

 現にエミルから見て術式には本来ならある一定値のレベルで使える様になるリミッターとも言える推奨レベル値が設定されていなかった。


「そしてエミル程の才能やロマンの様な耐性が有れば時間跳躍魔法(タイムジャンプ)まで自力で術式を頭の中で構築出来てしまう…これだから私は貴女達に教えず、あの場でソーティスを始末したかったのよ」


 更にアイリスはエミル程の才能やロマンみたいな時間操作系魔法への耐性があれば術式を教えなくても時間跳躍魔法(タイムジャンプ)の術式を自然と構築出来る危険性があった為、アイリスはこの魔法を教えずにソーティスを始末しようとしたとまで話してエミル達をこの手に掛ける可能性を排除したかったらしい。


「…そう、だから渋ってたのね。

 私達がソーティスの様になるのを避ける為に」


 それを聞きエミル達はアイリスの考えを納得しながら術式を覚え一通りの魔法を使える様にした。

 そして試しにエミルは自身に時間加速魔法(タイムアクセル)を使うと体内魔力が浪費され続けながら加速中の世界を体感し、これが先程までロマン達が見てた光景と思いながら直ぐに魔法を解除した。


「おまけに時間操作系魔法は熟練度に左右されずに効果が発揮できる。

 これで全ての時間操作系魔法を会得し、他の時間にまで跳ぶソーティスの厄介さが分かったか?」


「…ええ、それにアイリスの言う通り時間跳躍魔法(タイムジャンプ)の術式が頭に浮かびそうで怖いわ。

 貴女達は良く平気な顔でこの魔法を使えるわね?」


 するとシエルがエミルの前に立ち、周りがやや警戒する中でこの体系の魔法は熟練度が必要無い事やエミルはアイリスが危惧した様に時間跳躍魔法(タイムジャンプ)の術式が頭の中で浮かび上がり掛けたりと言った事を確認し、ソーティスの厄介さや彼女やアイリス達が平気でこれらを使う神経の図太さに逆に関心を覚えていた。


「ふん、こんな物平静を保つか俺の様に別の狂気を持つ事でそちらに意識が向かずに済む。

 現に狂戦士(バトルマニア)である俺が時間跳躍魔法(タイムジャンプ)に手を伸ばしていないからそれは実証済みだ」


「…平静を保つか、自ら別の狂気に身を浸す事でそちらに意識を向けない様にする…言ってる事は滅茶苦茶だけども理には適ってるわね。

 狂戦士ダイズがそれを証明している訳だからね」


 其処にダイズが時間跳躍魔法(タイムジャンプ)への欲求から意識を逸らすには平静か別の狂気が必要だと話し、自身の存在を実証としてエミルの目の前に立たせる。

 するとエミルも滅茶苦茶ではあるが理に適っていると話して頷いていた。

 これにはロマンも滅茶苦茶と思いつつ、シエルやアイリス達を見ながら納得せざるを得なくなっていた。


「さて、改めてだがエミルとロマン達。

 ソーティスを始末するまでは互いに手を出さない限りは共闘関係でいる事とする、これで問題は無いか?」


「…貴女の魔剣ベルグランドが奴に有効打だと明らかになっているからそれしか道が無い事は明らか、なら合理的に考えて私は反対はしないわ。

 けど背中から斬って来たら倍返しでは済まさないから覚悟なさいよ」


「それはお互い様だ」


 最後にシエルがエミル達にソーティス討伐までは共闘関係である事を敢えて話すと、エミル達は神剣ライブグリッターが無い為魔剣を持つシエルを中心に戦陣を組む事を余儀無くされてるので背後から攻撃したらただでは済まさないと互いに警告し合いながらソーティス討伐の共闘関係が改めて結ばれた。


「さて、これから過去に逃げたソーティスを如何するかなんだけど…」


「過去に逃げた以上、事が起こるまでは此方から干渉しようが無いです。

 奴が小さな時間改変現象(タイムパラドックス)を起こすのを待つわよ、エミル達」


 次にエミルは過去に逃げたソーティスを如何するかと話すと、アイリスは事が起こるまでは干渉出来ないと話しソーティスが時間改変現象(タイムパラドックス)を起こすまでは待たなければならないとしてリコリスと共に逃げた馬達の回収をしていた。


「なら俺達の武具をシリンダーツで直すぞ。

 見ろよこれ、奴の手形や手刀の斬り傷が鎧に残ってやがるぜ‼︎」


「これはソーティス独自の戦い方の為だな。

 奴は手や腕に魔力、脚を集中させて絶技無しでも敵の内側にダメージを与える独特の戦い方をしてる。

 実際身体の外側より内側の方が痛いだろう?」


 するとアルは全員の武具を指差しながらソーティスの手形や手刀の傷跡がある為シリンダーツでこれらを直そうと提案するとエミル達は頷く。

 その中でシエルはソーティス独自の、ダイズの拳法とはまた違う戦い方の所為であると話して身体の内側を破壊するのが目的の拳だとしてソーティスの拳や掌底等を受けた全員はその部分を摩っていた。


「(さて、1ヶ月前の過去に逃げたとしてその次は一体何を如何する気だ、ソーティスよ…)」


 その中でアザフィールは過去に逃げたソーティスがどんな事を起こすのかを考え始め、エミルやアイリス、シエル達全員も神経を研ぎ澄ませて何が起きても良い様に警戒態勢を解かずにシリンダーツに向かうのであった。

 因みにシエル達は『変身魔法(メタモルフォーゼ)II』を使い地上界の者に化けて余計な混乱を避ける様にするのであった。


「(それにしても属性が『無い』ね………もしかしたら、行けるかも知れないわね…)」


 そしてエミルは時間操作系魔法に属性が『無い』事に着眼し、別の意味で使えるかも知れないと考えて脳内で魔法術式を構築を開始し、全員に内緒でまた魔法を創り上げようとしていた。

 そのエミルの顔を見てロマンはまた何かを思い付いたと察し、彼女の口から語られるその時を待つ選択を取った。

 これも全てはエミルを信頼しての事であり、彼女との絆が深まってる証

 であった。




「ふう、矢張り世界の均衡を守る為の神器は俺には特攻となってしまうか。

 それだけ知れただけでも先の逃走は意味があったな」


 一方、1ヶ月前の過去に逃げたソーティスは魔剣ベルグランドは自身には毒になる事を理解し、それを知った事を意味のある物と捉えながら門の前に立っていた。


「…さて…これから有意義な実験を始めようか。

 現代の勇者達はこれを見抜くか、また時の果てをいよいよ以て見る事が出来るか楽しみだ…ふっ!」


【ブン、カチカチカチ、ビュン‼︎】


 そしてソーティスはエミルやロマン達が自身が仕掛ける実験や罠に気付くか、更には自身の目的である時の果てを見る事が出来るかを楽しみにしながら再び時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を発動し何処かの時間軸に跳び去った。

 彼が何処に跳んだか、また実験とは何か誰1人として分からぬままそれが行われるのを、現代のエミル達は待つしか無かった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

ソーティスには結局逃げ果せられ、彼は更なる実験を始めようとしてますがまだエミル達はそれを知りません。

それが如何なる物かは後程に…。

では今回は時間操作系魔法の属性、ベルグランドと闇の絶技の関係を書きます。


時間操作系魔法の属性:この体系の魔法に属性は無い。

光でも闇でも、他の属性でも無い正に『無属性』と呼ぶに相応しき魔法である。

故に対抗属性も無い上にそもそも対抗するには同じ魔法を覚えるしか無い。


ベルグランドと闇の絶技の関係:闇の絶技はベルグランドが真の力を解放した際の一閃を模倣して作られた物である。

その為武器が違っても最後の1文字に武器の種別名が入らない。

しかし闇の絶技は結局模倣である為、ベルグランドの真の力に比べると幾分も劣るものである。


次回もよろしくお願い致します。

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