第35話『ロマン、決闘する』
皆様こんにちはです、第35話目を更新致しました。
今回から第3章が始まります。
各勢力が今回何をしているかお楽しみ下さいませ。
では、本編へどうぞ。
これは遠き記憶、『彼』が覇道を歩むきっかけになった記憶の1つであり過ぎ去りし過去、変えようの無い昔の記憶。
『彼』には身体が弱い妹が居た、が両親は居なかった。
妹が生まれると同時に両親は『彼』等を捨てて何処かに消えてしまったのだ。
その為『彼』は幼いながらも妹を育てるべく力の限り育てたが、幼い故に限界もあり、更に生まれ付き妹は身体が弱かった為ベッドで寝た切りの生活をしていた。
「『ティア』、ほら今日も働いて稼いだお金で作ったご飯だよ、お食べ」
「ありがとう、お兄ちゃん…ゴホッ、ゴホッ!」
ティアと呼ばれだ褐色肌の少女は兄である『彼』が命を取り合う闘技場で勝ち、金を荒稼ぎしている噂を耳にはしているがそれでも兄が自分の為に命を賭けたのならと、その額に淡く輝く魔血晶と瞳に反射する『彼』の哀しげな顔を見て咳をしながらも食事を食べて元気になって兄を闘技場から引かせようと想っていた。
「(守るんだ、俺がティアを守るんだ!
他人を殺してでも、俺の命を懸けて守るんだ‼︎
俺やティアを捨てたあの屑の両親に代わって俺が…‼︎)」
一方『彼』は兄として他人の命を奪ってでも金を手にし、ティアを少しでも裕福に暮らさせる為にその血に濡れた金で食べ物を買い、そして料理し自分達を捨てた両親の代わりに妹を命懸けで守ると誓ったのだ。
その甲斐あってか身体が弱かったティアは10歳を迎えるとベッドから立てる様になり、家も荒稼ぎした金で少しは大きくし2人で少し歪ながらも幸せに暮らしていたのだった。
2人の願いはただ1つ、お互いが無事に平穏に過ごせたら、そんな淡い願いであった。
「(守るんだ、守るんだ絶対…‼︎)」
そうして『彼』外に一旦出て握り拳を作りながら空を見上げ、その闇く闇く黒き漆黒の意志を全て妹に捧げながら何を犠牲にしてでも守ると2つの月が照らす闇黒の空に誓うのだった。
しかし、されどこれは記憶、過ぎ去った物である。
故に現在の『彼』には過去など意味が無い物であった…。
シエル達が賭けで敗北し、地上界の裏側からの侵略を止めてから約1ヶ月が経過した魔界にて。
窮極封印魔法は更に食い破られ始め、最早全体がひび割れて何時封印が破れても可笑しく無かった。
それを魔王の宮殿にて呼び戻されたシエルと ダイズ、アザフィールは巨大な水晶石で茶髪で良くある短髪だが威圧感がある存在、『魔王』と共にそれを見ていた。
「ふん、神の未来視は正しかったと言うわけか。
我とアザフィール、2人で施した封印魔法を内側から食い破り始めたか…。
ソーティスめ、大事な時期に空気を読まず自分の『研究』を進めたがる癖は治ってない様だな」
その水晶石を玉座に座りながら魔族の王たる魔王は水晶石に映る封印魔法が破られ始めた事を椅子の手摺りに指を叩きながら見上げていると忌々しい神の未来視が正しかった事に期限を損ねてはいるがそれ所では無い為余計な感情は見せずにシエル達に視線を移し替え跪く彼女達に威圧感がある言の葉を紡ぎ始めた。
「それで、ソーティス対応は如何する気だシエル、ダイズよ?
アザフィールも使うのは目に見えているが、それ以外は如何する?」
「要らぬ犠牲を増やさない様に私とダイズ、アザフィールの3人のみで対応します。
更にこの際利用出来る物は利用して天界のアイリス達や地上界の誓いの翼達も利用して奴を対処しましょう。
上手くやれば向こうにのみ損害を与えられます。
それと、封印がこうして破られ掛けてる以上殺す事に思考を変えねば貴方様の望む世界も奴に只々『壊される』だけです」
魔王はシエルにソーティスへの対処を如何にするかを問うと、シエルは魔界側からは自身やダイズ、アザフィールのみで対処し残りは天界と地上界の特記戦力であるアイリスや誓いの翼達を利用すると案を出す。
更に封印が破られ掛けてる以上ソーティスは封印では無く処刑しなければならないと進言し、魔王が望む物も壊されるだけと警告していた。
「ふっ、賭けで奴等に負けたお前の口にしては良く回る…まあ、アレはどうせ副案だった為失敗にカウントはしないが、此度の事態は失敗は許されない。
最悪の場合はベルグランドを抜け、アレはソーティスの様な輩を討つ為に存在する忌まわしい神器の1つよ」
「無論、心得ております『魔王』様」
魔王はシエルとダイズがエミルとロマンに賭けで負けてしまい100年計画が失敗に終わった事を口にするが、魔王としてみればそれは副案に過ぎなかった故に失敗に見做さなかった。
しかし今回のソーティスの件は失敗出来ない為魔剣ベルグランドを使用する事も命じるとシエルはダイズ、アザフィールと共に頭を下げて勅令を賜っていた。
「よし、では先ずソーティスの監視を強めるぞ。
時空の腕輪を装備し『禁断の地』に足を運び何時でも────」
【ピキピキ、バギィィィィィィンッ、ビュン‼︎】
『⁉︎』
次に魔王はソーティスの監視を強める様に彼の者が封じられた土地である禁断の地に時空の腕輪を装備してから派兵し何時でも対処する様に命じようとした…その刹那、水晶石の先のビジョンから封印が一気に全て砕け散り、中から何かが一瞬転移したかの様な様子を見せた。
それに対してシエル達は早過ぎると思考し、魔王も何を思ったか不明だが「ほう」と一言口にした。
その瞬間魔王の玉座の間の扉が開かれ、ティターン兄妹やアリアが目を見開きながら突入して来る。
「魔王様、シエル様、ダイズ様‼︎」
「アザフィールの旦那‼︎」
『‼︎』
ティターン達は魔王やシエル達の名を叫び手を伸ばすとシエルと魔王の間に銀髪のはねた癖毛が特徴の黄色い眼をした魔族が現れ、隙がある魔王に対し無表情で手刀を繰り出していた。
それを見た3人は立ち上がり『時間家族魔法』まで使い魔王と銀髪の魔族、ソーティスの間に割り込もうとした。
そして────。
一方地上界にて、エミル達はアイリス、リコリスから時間操作魔法の一連を教わり、その究極形であり到達点にして禁断の領域『時間跳躍魔法』について1ヶ月前の説明のおさらいを聞いていた。
「つまり、時間の加速や遅延、停止等の先に時間を跳躍して別の時間軸に自分自身を跳ばす魔法が存在するから、地上界にこれを悪用されない為にそもそも時間操作系魔法を伝説にある創世期の時代の魔界も天界も他の魔法は教えどそれだけは教える事は無かった、と?」
「概ねその理解で正しいわ。
そしてソーティスは800年前に今の魔王やアザフィールと親睦を深めつつ時間操作の果てに650年前に辿り着き、魔界最後の戦乱である『ソーティスの乱』で封印された魔族よ」
エミルとルル、サラはアイリスの話を聞き入り魔族や天使が魔法を齎したとされる創世期に地上界の者が悪戯に時空を乱さない様に敢えてその存在を伏せたのが時間操作系魔法であり、ソーティスは禁忌を破り完成形に辿り着いた為アザフィールと現魔王に封印されたと聞き更にはそのソーティスとの戦いが魔界最後の戦乱とまで聞き、如何に時間跳躍魔法が禁忌かを理解しようとしていた。
「それで、時間跳躍魔法の恐ろしい所は過去の改変すら可能だと聞いたけど、過去を変えると今や未来が変わってしまう…のよね?」
「そう、過去の改竄は現在、未来すら影響を及ぼす。
例えば今死んでいる人を生きている様に変えたり、生きてる人を死んだと変える現象…神様の言う時間改変現象が発生するわ。
これが一度起きれば時空の流れは乱れ、大本を断たない限り時空は乱れ続け最後には世界が崩壊する…と神様は私達に説明してくれたわ」
エミルはアイリス達の話を日記に纏め始め、時間跳躍魔法は時間改変現象を発生させ、これを放置すれば世界が崩壊すると纏め、欲が深い者がこれを使えば確かに大変な事…例えば今生きているアルクを過去に跳び殺して死んだと改変する事さえ出来ると頭で纏め、サラやルルも同様の考えを纏めて青褪めていた。
「そして時空の腕輪の第1の効力として身に付けていれば敵の時間操作系魔法の影響を受けないと」
「例え時間改変現象であっても、ですよね?」
「その通りよサラ、キャシー」
次にサラとキャシーが時空の腕輪の効力について話し、これさえ身に付ければ時間改変現象を含む全ての時間操作系魔法の影響を受けなくなる事を確認し、アギラ討滅の際のティターン達の横槍の様な事は起きなくなると改めて理解する。
「で、偶に時間操作系の魔法を覚えてなくてもに耐性を持つ者が居てそれが例としてティターン達の時間停止の中で彼等の姿を視認した勇者ロマン、と言う訳よ。
因みにそう言う者程時間操作系魔法を覚え、完成系に近付き易い性質があるわ」
「成る程、ロマン君はそんな適性が…」
更にリコリスはロマンのティターン達の時間停止魔法中に彼等を視認した現象を時間操作系に耐性があると説明し、そう言った体質の者がそれらを覚えソーティスの様に完成系の時間跳躍魔法に近付き易い危うい面もあると説明し、エミル達はそうならない様にロマンを支えないとならないと考え日記を閉じてアイリス達の授業を終えた。
「…で、そのロマン君なんだけど…」
【カンカンカンカンキンキンキン‼︎】
「オラァロマン、そんな何処の馬の骨とも分からねぇ野郎に負けんじゃねぇ‼︎」
するとエミル達は『現実逃避』をいよいよ止めてロマンやアルの方を向くと、ロマンはヒノモトから来た剣士と絶賛実剣での模擬戦(と言うよりも決闘)中であり、アルは昼間から酒を飲みながらロマンを応援し、近くに座っているガムはヒノモト側を応援しネイル達は相変わらずお手上げと言った様子を見せていた。
そして観客と言う名の野次馬も最初と比べると更に増えていた。
「…どうしてこうなったの⁉︎」
エミルは一連の戦いに何故こうなったと叫び声を上げ、サラやルルは頭を押さえアイリス達も溜め息をし、こうなった経緯を思い出し始めていた。
事の発端はあれから魔族が潜伏していないかエミル達が各国を回り始め、ヒノモトに到着した時まで遡る。
エミル達は地図にセレスティア、ミスリラントと印を付けて魔族が潜伏して居ない事を確認し、残るはフィールウッドかヒノモトになり、広大な森が広がるフィールウッドは直ぐに終わらない為島国であるヒノモトに寄り、其処で全体を見て魔族が居ないかを確認する任をギルドから依頼として受けていた。
因みにエミルやネイル達はグランヴァニアの功績により遂にAランク冒険者になり、この様な重要依頼を任される様になっていた。
「見えたわ、他の国とまた違う独特の文化を持つ島国、ヒノモトが!」
「ひゃ〜、ヒノモトもひっさびさだなぁムリア」
「んだな〜。
確か半年は来てなかったんだな〜」
そうして船で移動している間にヒノモトを眼前に捉え、それぞれが違った感想を見せており特にヒノモトに来た事が無かったロマンは目を輝かせていた。
因みに転移魔法で転移しなかった理由は1ヶ月前の様な緊急事態以外でそれをすれば不法入国で捕まる為である。
そうして船は港に着きエミル達はヒノモトの大地に足をつけた。
「ギルドの依頼を受けた皆々様、ようこそお越し下さいました。
私達はヒノモトのサツキ女王より案内人を承った者です〜。
ささ、立ち話もなんですので早速ヒノモトの案内をさせて頂きます〜」
「はい、よろしくお願いします」
するとヒノモト独特の服、『着物』を着た若い女性達がエミル達の案内を始め、2〜3人馬車に乗りヒノモトの港町をエミルは看破魔法Iと透視を使いながら見ており、魔族への警戒心を表面には出さずに女性達の説明を聞いていた。
「この港街『ワダツミ』はヒノモトの誇る最高峰の港街でして、歓楽街も盛んで人の往来の多い町で貿易や旅行業が最も多い町なんです〜」
「成る程そうなんですか…ふむふむ」
エミルはロマン同様ヒノモト独特の文化に目を輝かせるキャシーを横にメモを取りながら、ワダツミの魔族潜伏数を0と書き、今までの国同様魔族達が急に居なくなり魔物の出現頻度が下がり始めた事を不気味に感じながらメモと睨めっこをしていた。
そんな中で女性達は歓楽街の食べ物屋の集合地前に馬車を停めるとエミル達は何事かと思い女性を見始めた。
「そんなに難しい顔をしていては依頼と言えど折角の観光旅行が楽しめませんよ、此処は1つお団子やお茶を飲みながら休憩して下さいませ〜」
「あ〜成る程、気を遣わせてしまいましたか、態々すみません。
職業柄どうしても見過ごせない事案でしたので…では、休憩致しますのでお店にご案内よろしくお願い致します」
「はい、ご案内させて頂きます〜」
如何やら案内人のリーダーはエミルが難しい顔をしていた為、リラックスを促す為に甘味処が並ぶ場所で馬車を停めたらしく、エミルは気を遣わせたと少し反省し案内をされ始める。
すると女性達は団子屋に案内し、こし餡やみたらし餡など複数の団子を用意し、大きな日傘で外に座るスペースにエミル達は座ると提供された団子に目を輝かせるロマン、サラ、キャシー達を筆頭に女性達を見ていた。
「ではお寛ぎ下さいませ〜。
十分休まりましたらまた馬車で案内します〜」
「はい、では皆様、頂きます」
『頂きます!』
女性達は馬車を邪魔にならない位置に置き始め、休憩し終えたらまたヒノモト全体を案内する様に待機すると全員で頂きますと挨拶し、団子に手をつけ始めた。
「もぐもぐ…んん〜、ヒノモト本場のお団子美味しい〜!」
「ゴク、ゴク…ふう。
そしてこれがヒノモトのお茶、緑茶ですか。
甘味にこの絶妙な味が合わさってお団子と緑茶、両者の味を引き立てますね」
サラはキャシーやロマンと共に団子を食べ頬が落ちるかの様な味に笑顔が漏れ、エミルも緑茶を飲みその味を堪能し団子と共に飲食しながら空を見ていた。
「本当に地上界は食べ物のバリエーション多いですね、アイリス姉様」
「そうね…聖戦の儀の監視じゃなければもっとゆっくり堪能したい位ね」
一方アイリスとリコリスも地上界の食べ物の多さに驚いており、聖戦の儀の監視でなければお忍びで旅行を楽しみたいとも話し、特にアイリスは創世期から生きて来た中で現代の地上界の食は各国で独特の進化を遂げてる為か感慨深い感情を抱いていた。
それを見ていたエミル達はアイリス達はロックやサラを遥かに超える歳月を過ごし地上界も魔界も見守り続けて来たと感じていた。
「…失礼、貴殿達は誓いの翼と正義の鉄剣だな?」
「あ、はい…あれ?
確か貴方はルルと一緒にヒノモトの城で試練の問いをサツキ女王様にする様に言われた方の1人、ですよね?」
そんな休息を満喫しているエミル達の前にヒノモトの服と軽装の鎧、刀を差した青年が現れ、エミル達に誓いの翼と正義の鉄剣のかと尋ねてくる。
その青年を見たロマン、ルルは1ヶ月前のグランヴァニア遠征前にサツキの紹介の下で試練の問いをさせた者、エミルは二重魔法祝印を付与させた者の1人と思い出し青年をエミル達は観察を始めていた。
「矢張り勇者ロマンや月下の華ルル、そして魔法使いエミル王妹殿下にネイル達が居るからそうだと思ったぞ。
俺の名は『リョウ』、1ヶ月前のアギラの戦いにも参加した流離人だ。
早速で悪いが頼みたい事がある………勇者ロマン、俺と決闘してくれ」
『………えっ?
えぇ⁉︎』
その流離人のリョウはアギラの戦いにも参加していたと口にし、あの戦いは未だ魔血破の事がある為エミル達の頭から離れず偶に救えなかった者の最期の顔を夢に見る程鮮烈に記憶に残っていた。
その中でリョウは頼みたい事として要求したのは………何とロマンとの決闘であった。
これにはエミル達もビックリ仰天し、ロマンに至っては理解が追い付いていなかった。
「あの、冒険者…この国の呼び方では流離人のリョウ、さん?
何故ロマン君と決闘をしたいと思ったのですか?」
「理由は簡単だ、あの悪逆の将アギラに止めを刺した者、強くない訳が無い。
よって、その強さを理解する為に我が刀と勇者の剣、何方が上か確かめさせて貰う。
無論嫌とは言わせない、戦うと言うまで俺は後を付いて行くぞ」
「うわぁ、ダイズ様みたいな狂戦士なんだなぁ〜。
ロマン君、これ受けないと一生付いて来るんだなぁ〜」
リョウはアギラを斃したロマンが強く無い、弱い訳が無いと話し、その強さを理解したいとして刀の鍔に指を掛けて刀身を鞘からギラリと見せていた。
更にムリアはリョウはダイズの様な狂戦士タイプだと口にした上でロマンに勝負を受けないと一生付いて来ると話し、彼に同情しながらも受ける以外の選択肢がない事を遠回しに伝えていた。
そうしてロマンは少し考え、エミル達もみながら下した決断は…。
「…分かりました、貴方が満足するかは分からないけど僕達にも旅や様々な目的があります。
それに巻き込まれて死んでしまっては困りますので戦いましょう!」
「ふっ、仲間の心配のみならず俺まで心配しているか…噂通り甘いと言われる程優しいのだな。
では行くぞ、道の真ん中に立て」
ロマンは考えた結果、エミル達の旅の邪魔になる可能性やリョウが巻き込まれて死ぬと言う悲惨な結果を避けるべく決闘を受ける事にした。
それをリョウは甘いと断じながらも優しいと話し、一定の理解を示しながらロマンに道の真ん中に立つ様に促した。
そして両者は剣と刀を抜き、正面から見合っていた。
「んじゃ決闘の合図は俺様から出させて貰うぜ‼︎
両者見合って…始め‼︎」
『はぁっ‼︎』
【ガン、ガンキンキンキンキンキンギリリリリッ‼︎】
そしてアルの合図により決闘が始まり、ロマンとリョウは1撃を素早く打ち込み相手よりも多く攻撃し勝負を早々に決しようとしていた。
しかし2人共同じ考えの為途中で迫り合いが発生し膠着状態が発生しつつあった。
「ふっ、流石は勇者。
アギラを斃したと言うその腕に嘘偽りはない訳だ!」
「僕1人で斃した訳じゃないですけどね。
それにそちらこそ、あの戦いを切り抜いた事はあります、ね!」
【ギリリリリッ、ギン‼︎
カンキンキンキンキンキンキンキンギリィィィィィッ‼︎】
その状況でリョウはロマンを確かにアギラを斃したと認め賞賛する。
ロマンも仲間と共に戦った故に自分1人ではないと話しながら、リョウの腕前をグランヴァニアの戦いを切り抜いたと賞賛し返すと再び激しい斬り結び合いが発生し、それらを見ていた野次馬達も盛り上がりを見せ始めていた。
「ふう、男の子って決闘が好きなのかなぁ?
ロマン君も意外と良い顔して汗流してるし」
「アギラの戦い前後では心休まる時が一切無くグランヴァニアの戦いを迎えたから、ロマン君もこうして日常に戻りたい事もあるんだろうと私は思うがね」
エミルはその決闘を見ながらロマンも男の子かと思いながらお茶を啜り、彼が自分では少し分からない世界に入ってると感じていた。
するとネイルはアギラの戦い前後…シエル達に問答無用で戦闘不能にされた辺りから心休まる時が無かったとエミルの日記から推察し、故にこうした日常に戻れる時が欲しいのだと考え、エミルもそうなのかと思い始めていた。
「おっ、凄い決闘だ!
そこだやれやれ‼︎」
「異国の戦士君も頑張れ〜‼︎」
「…それにしても野次馬が増え過ぎてる、どうしてこうなるの?」
しかし、野次馬達の数がロマンとリョウが剣と刀の刃を斬り結び合せる度に増えて行き、エミルはどうしてこうなるのかと一言を言うと、周りを見ればアルやガムも決闘に夢中になり頭を抱える事態になりつつあった。
サラ達もこれはお手上げだとジェスチャーで示すと、決闘はロマンが勝つとは信じているが、それ以上の熱の入り様が無いエミルは如何しようかと考え始めていた。
「ならエミル、時間操作系魔法やルルが予知した彼方なる者ソーティスについて振り返る為に説明をし直しましょうか?」
「あ、良いのアイリスにリコリス?
なら、お願いしても良いかしら。
皆、アイリスが説明をするから聞きたい人は耳を傾けるのよ?」
するとアイリス達は1ヶ月前のルルの予知の直後に説明した時間操作系魔法やソーティスの事を説明し直すと切り出し、エミルは聞きたい者達に耳を傾ける様に声掛けをし、決闘中のロマンや観客に回ったアル、ガムは返事せずその他の者がアイリスを見て説明を聞き始めていたのだった。
そしてこれがエミルがどうしてこうなったと叫んだ経緯であった。
「あーもうまた観客が増えてるよぉ…本当にどうしてこうなったのよ…!」
「…えっと、時空が乱れたりしたらどうなってしまうかも説明しますよ。
時空が乱れるとこの世界の魔法元素の流れに淀みと言う異変が起きます。
淀んだ流れになる、と言っても実際そうならなければ分かりません。
だからそうなる前にソーティスは斃すべきです、でなければその初期段階から第2段階の異変、時空の腕輪を装備した者か同じ時間跳躍魔法を取得した者しか認知出来ない空間の亀裂が生じますから」
エミルはこの決闘沙汰が大事になり過ぎた事に頭を抱えている中、アイリスは説明を続け時空が乱れると何が起きるかを更に深掘りし、エミルは頭を抱えながらもそれを聞き、時空の腕輪を見てこれが其処まで重要なアイテムだと思い視線を向けていた。
そして時間跳躍魔法は本格的に世界を乱すと考えたエミルは、これを取得は絶対にしないと胸の内で誓っていた。
【ギリリリリッ‼︎】
「くっ、うぅぅ‼︎」
「ふぅ、成る程、これが勇者の力か…‼︎」
そうエミルが誓ってる中でロマンとリョウの決闘は続き、ロマンとリョウの刃が擦れ合い金属音が鳴り響く。
その中でリョウはロマンの力を見抜いたかの様な発言をし、力を抜きロマンの剣に押される形で後退する。
そして再び刀を構え、ロマンも剣を構えて膠着状態に入る。
そして────。
【カァァァァァァァン、ザクッ‼︎】
2人は一閃を斬り結び、その結果…リョウの刀が手元から弾かれそのまま地面に刺さる。
これによりロマンの決闘による勝利は確定し、リョウに一礼し剣を収めた。
『ワァァァァァ、ヒュー‼︎』
すると周りの野次馬からは歓声が、アルは口笛を吹きガムは「惜しい!」と口にし、決闘し合った2人は息を少し荒くしながらも握手を交わし互いの健闘を讃える様に立ち振る舞っていた。
するとエミルはやっと決闘が終わり、しかしながらロマンが勝った事に上機嫌になりながら2人に近付いていた。
「はい、2人ともこれで互いの実力は分かったでしょう?
ならこれ以上の危ない決闘は止めましょうね?
それにしてもリョウさん、貴方レベル414って今の私達に近いレベルとなってるわね…相当あの戦いで魔族を斬り、今も修行を続けているのね」
「当たり前だ、流離人とは言え俺達ヒノモトの戦士の使命は女王サツキ様の守護。
それを果たすのに弱き者で如何すると言うのか…。
それと、勇者ロマンと斬り合っている内にある事が思い浮かんだんだが言って構わないか、王女殿下?」
エミルは2人の決闘はもう終わりとこれ以上続かない様に敢えて言いながら鑑定眼でリョウのレベルを測っていた。
すると今のエミル達は420に対し彼は414とかなり近い実力を持ち、あの戦いでの活躍やその後の鍛錬を想像しているとリョウは女王を守る事がヒノモトの戦士の使命と話して相応の実力が必要だと語る。
更にその後、リョウはエミルに対しある事を提案するべく話を掛け、エミル達は何だと思い聞き始めていた。
「俺をお前達の旅、そして恐らくはギルドから任された魔族の調査、討伐の依頼を熟している為ヒノモトに来たのだろう。
ならば俺も連れて行って欲しい、お前達の誰かを守りたいと言う決意が俺が女王様を守る至高の剣になると勇者ロマンとの決闘を通じて感じた。
故に、俺をお前達の旅路に連れて行って欲しい」
如何やらリョウはサツキ女王を守る1番の剣になるのが目標らしく、それにはエミル達に付いて行くのが早いとロマンとの決闘で判断したらしく、彼はエミル達にそれ等を伝えて一礼をしていた。
「(えーと、さてどうするか…このまま放って置くと彼はこっちの旅の後を付けて来そうな予感しかしないし、もしも私達の戦いに勝手に巻き込まれて死んでしまったら私達は理不尽な死を避ける為に行動してるのに何をやってるんだって話になる…。
ならいっその事私達と一緒に行動させた方がこの人の為になる筈…)」
その中でエミルはリョウの実力や諸々を考え出し、このまま放って置いても再びロマン以外に決闘を持ち掛けてはパーティ加入をして来るだろうと思考し、ならばそんな事になって面倒事や自身が嫌う理不尽な蹂躙を避ける為ならば此処でリョウを行動を共にさせた方が良いと考え抜く。
「分かりました、では近くのギルド運営の宿屋でパーティ登録しましょう、誓いの翼6人目のメンバーとして」
「感謝する」
エミルは諸所の理由によりリョウを仲間にすると宣言した瞬間リョウは頭を下げ、更にロマン達もこの事は予想はしていたらしく溜め息もせずにエミルとリョウが握手を交わす所を静かに見守っていた。
それを祝福するかの様に鷹が空で鳴き声を発していた。
「では皆様、先ずはギルド運営の宿屋に向かうでよろしいですか〜?」
「はい、それで大丈夫です。
ではリョウさん、改めてよろしくお願いします」
「リョウで良い」
案内人が皆に話し掛ける中、ロマンは改めてリョウによろしくと言うと、リョウは呼び捨てを所望しそれを聞いたエミル達はそうしようとアイコンタクトをしていた。
「さて、じゃあ早速」
「お待ちなさい剣士リョウ、誓いの翼に入るならこの腕輪を左腕に付けなさい」
それからエミル達はギルド運営の宿屋に向かおうとしたが、其処にアイリスが時空の腕輪をリョウに見せ、それを左腕に付ける様に要求した。
この時点でアイリスの中ではリョウもソーティスを打倒する戦力と考えている事が窺い知れた。
「この腕輪は?」
「これは時空の腕輪と呼ばれる希少な物です。
身に付けていればある現象から身を守るのみならずそれの対抗策になります。
近い将来これが絶対役立ちますので付けなさい」
アイリスはリョウに時空の腕輪を説明し、エミル達も聞いたこの腕輪の効果の1つに時間改変現象から身を守る効果があると少し暈しながら伝え、しかしその瞳は真剣その物で近い将来に必要だと話すとリョウはそれを少し見た後左腕に付けた。
「これで良いんだろう、天使アイリス」
「はい、大丈夫ですよ」
決闘の余韻で周りが騒つく中、リョウはアイリスの正体をフードの中を見た上で理解しエミル達にしか聞こえない声でアイリスの名を口にしながら時空の腕輪を付けた左腕を見せた。
それに対するアイリスの答えは大丈夫だと言う物だった。
「じゃあ、リョウって新しい仲間が増えたから改めて誓いを立てようよ!」
「はっ、サラにしちゃ良い意見だぜ。
じゃぁリョウよ、縁を組め!」
するとサラが誓いの翼の誓いを新たに立てると提案すると酒が回り上機嫌なアルもそれに乗る。
するとエミル達はリョウを含めて手を繋ぎあい、5人が瞳を閉じるとリョウも合わせて瞳を閉じ、エミルが一呼吸入れるとリョウは少し遅れ気味に誓いを立て始めた。
『我等誓いの翼は世界を救う為に新たなる仲間、リョウを加えて魔王討伐を誓います』
「はい、私やリコリス、正義の鉄剣が見届けましたよ」
こうして誓いの翼に新たなメンバーが加わり、エミル達はこれを機会に魔王討伐を改めて誓い合い、それをアイリスとリコリス、ネイル達が見届けた。
エミルとロマン達は新たな息吹を受けながらこのルール無用と化した聖戦の儀を終わらせるべく行動を取り始める。
無論ソーティスと言う未だ見ぬ敵を警戒しながらである。
此処までの閲覧ありがとうございました。
魔界では封印されていた魔族、ソーティスが復活し、地上界の誓いの翼はリョウと言う新たな仲間を加え魔族が潜伏していないかの調査を続けました。
また冒頭の物は…本編に関わりがある、とだけ話します。
では今回はリョウ、ソーティス、『彼』とティア、時間操作系魔法、それへの耐性の設定を公開出来る分公開致します。
リョウ:エミル達がレベル420で出会ったレベル414の流離人(ヒノモトの冒険者の事)。
決闘好きで自らが強者と認める者と決闘し、その勝利と敗北を糧に女王サツキの至高の剣を目指す者。
ムリア曰くダイズと同タイプの人間である。
今回ロマンと戦い、敗北した後に誓いの翼入りを果たした。
アギラの動乱時ではグランヴァニア宮殿跡の外で魔族達と戦っていた。
ソーティス:禁忌の魔法時間跳躍魔法を覚え、あらゆる時間軸に介入する魔族。
二つ名は彼方なる者。
800年前に現在の魔王とアザフィールと親睦を深め、650年前の魔界で最後の戦乱『ソーティスの乱』を起こし友だった2人に最後は封印される。
しかし現世に封印を破り蘇り、自らの目的を果たす為最初に魔王を襲撃し戦線布告をする。
『彼』とティア:誰かの記憶の中に存在する遠い過去の魔族。
名あり魔族はレベル220でなを襲名する為、この遠い記憶の先に居るティアは幼いながらもレベル220を上回っている事になる。
『彼』は何を犠牲にしてもティアを守ると決意するが…。
時間操作系魔法:世界が創られた創世期の時代に地上界に唯一齎されなかった魔法。
時の加速、遅延、停止等の先の究極の到達点として時間跳躍魔法が存在する。
しかし時間跳躍魔法は過去を改竄する等様々な危険性を孕む為地上界の者が悪用しない様に創世期の天界、魔界はこの体系魔法を教えなかった。
時間操作系魔法への耐性:時間操作系魔法は覚えている者は当然ながら、生まれながらにして耐性を持ち時間停止魔法中の世界を視る事が出来る者が稀に生まれる。
そう言った存在が時間跳躍魔法に到達し易く、迂闊に時間操作系魔法を教えず使えないのである。
現段階で生まれながらにして時間操作系魔法への耐性を持つのはロマンだけである。
次回もよろしくお願い致します。




