第33話『誓いの翼達、天界へ行く』
皆様こんにちはです、第33話目更新でございます。
今回は前回のアギラの末路とエミル達がタイトル通りに天界へ行く話等になります。
両者の明暗をご覧下さいませ。
では、本編へどうぞ。
連合軍が勝鬨を上げていた頃、シエル達3名はアイリス達に追い込まれつつあったが、其処にティターン兄妹の合図があった為魔族達に撤退を促した後、自身達はセレスティアのシエルがエリスとして商業している屋敷の地下に転移した。
「シエル様にダイズさんにアザフィールの旦那、大丈夫ですか⁉︎
かなりの戦闘だったと見受けられますが…‼︎」
「…死んでいないのだから問題は無いわ。
それより2人共、アギラのクリスタルを出しなさい」
ティターン達はアギラの止めに介入する間シエル達がかなりダメージを受けていた事を見ていた為、3人に駆け寄り回復魔法を掛けていた。
その心配を疲労しているシエルは死んでいないから問題無しだとし、2人に回収したアギラの魔血晶を渡す様に要求する。
すると2人は回復を手早く終わらせて頷きながらアギラの核をシエルに手渡した。
シエルは受け取ったそれを床に投げ、魔力を送り込み始める。
それによりアギラはこの場で復活する。
「…はっ⁉︎
こ、此処は⁉︎
奴等は何処に⁉︎」
【シャキッ、カチャ‼︎】
「此処は私の表の顔で拠点にする屋敷の地下だ。
奴等はお前に勝ったよ、そしてお前は負けた。
それで今私に剣を構えられて、転移封じの鎖に縛られている、その意味は分かるな?」
アギラはグランヴァニア宮殿跡では無い別の場所で復活し、此処が何処なのか理解出来ないでいるとティターン達がアギラに手鎖を付け、シエルが剣を構えながら此処がエリスとして拠点とする屋敷地下だと話しながらオリハルコンソードを向け、罪人用の転移封じの鎖を付けられた意味を理解してるかと問うと、アギラは滝の様な汗を流し始め弁明の為に口を開く。
「まっ、待ってくれシエル、ダイズ‼︎
私には未だ策が沢山あるんだ‼︎
それに奴等の戦闘スタイルは見た、だから次こそは必ず」
「アギラ…貴様、『魔王』様に 最後のチャンスを賜っていた事を忘れたか?
それをふいにして置いて次こそは?
…此処まで愚かな奴だとは思わなかったよ、この役立たず。
折角私達も身を削ってアイリス達を止めてたのにそれも意味が無かったな。
だからこそハッキリと言ってやる、今直ぐ死ね、魔界1の愚者」
アギラは次こそはと口にしながら未だ策があると弁明した瞬間、シエルが地獄の底から聞こえる様な暗い声色で魔王からの最終通告を棒に振った事を口にしながら、自分達がアイリス達を止めてた意味まで無かった事を話し、そしてそのボロボロになりながらも綺麗さを保つ容姿と口から魔界1の愚者と口にしながら死ねと発言し、剣を振り被ろうとしていた。
「ま、待ってくれ本当に頼む、魔王様にも一緒に弁明して欲しい‼︎
そしたら本当に今度こそは」
【ザンッ、ブシャァァァァァァァァァ、ボォッ‼︎】
アギラはこの期に及んでも尚も魔王に共に弁明して欲しいと頼み込み、更に今度こそ…それを言い切ろうとした瞬間シエルの刃が振り下ろされ、アギラのクリスタルごと身体を斬った瞬間鮮血が飛び散り、そしてアギラの身体は灰になりアギラは今度こそ完全に死んで行った。
それを返り血を浴びたシエルがそれを剣に少し付いた血を拭い、鞘に収めてから拭き取ると再び冷淡な表情で口を開き始める。
「…ふん、共に弁明を、と言ったがどうせある事無い事を私達に擦り付けて生き延びようと言う魂胆だったのだろう?
そうすればお前の死は変わらずとも上手く行けば私達を道連れに出来ると考えたからだろう…が、『魔王』様はその程度の物はお見通しだ。
よってお前は今死ぬか『魔王』様にジワジワと嬲り殺されながら処刑されるかの2択しか無かったんだよ」
シエルはアギラの性格、そして他人を蹴落とし今の地位についた事を念頭に入れながら自分達も道連れにしようと最後の足掻きをしようと企んだと断じる。
しかし、魔王はそれを見抜く事も口にしながらこの時点で魔王により処刑されるかシエル達に殺されるかの2択しか無かった事をアギラだったモノに告げる。
「ではさらばだアギラ。
最後まで保身しか考えなかった愚者、アリアの兄でありながら妹にすら劣るその低脳さは1日だけは覚えておいてやる」
「はっ、良かったなアギラ!
ダイズさんに興味が無い奴が1日でも顔を覚えてられるなんて相当レアケースだぜ!
あの世でアリアに感謝するんだな!」
そうしてシエルとアザフィールは最早何も言う事が無くなり地下室を去る中、ダイズが元々魔族の将の1人と言うだけで力も策もアリアに劣り興味が無かったアギラに対し、興味が無い者は覚えない質でありながら1日だけは覚えると宣告し、ティターンもレアケースだと叫びながら死んだアギラに対しアリアに感謝しろと叫びながらティターニアと共に最後にその場を去った。
そして後にはアギラだったモノとその血しか残されていなかった。
一方グランヴァニアでは、勝鬨を終えた後死んだ兵士達が再び綺麗に整えられ天使達に家族の下に送られ、全員が長く黙祷を捧げた後収容所群の扉は開け放たれ、中からはグランヴァニアの国民が大勢黄昏の空の下に出て来ていた。
その間にフィロやリヨンも国民達の前に連れて来られ唯一の皇族、そして国の代表として連合軍や天使達の前に立っていた。
「皆様…セレスティアを始めとした4国、更に天使様達の皆々様方、我等魔族信奉者と言う生まれ付いた背信の徒であったグランヴァニアを命を懸けてお救い頂き誠にありがとうございました…‼︎
このご恩は、未来永劫忘れません…‼︎」
フィロは自身達が魔族信奉者と言う地上界の膿であった筈なのに命懸けで救いに来た4国連合軍や天使達に感謝の言葉を述べ、その恩を未来永劫忘れないとして頭を下げ、感涙を流していた。
それに続き国民達も啜り泣きながら頭を下げ、本当に自分達を救った恩人達に感謝の念を抱いている様子を見せていた。
「どうか頭を上げて下され。
我等は同じ地上界に生きる同胞、それを見捨てればアギラの様な悪逆なる者と同類になる。
そう娘や勇者ロマン君達に教えられて救いに来た身。
故に未来永劫と重く受け止める必要は無いですぞ。
ですからこれからも助け合いましょう、地上界に生きる同胞として」
それを隻腕となったランパルドは自分達は同じ地上界に生きる同胞とエミルやロマン達に彼女達を見ながら教えられたと話す。
それを聞いたロックにゴッフ、サツキはランパルドを1番前にしながらその同胞として助け合おう、その言葉を発した瞬間辞儀をし諸王全員がフィロやリヨン、グランヴァニアの民達に頭を下げていたのだ。
それを見たフィロや今まで泣くのを堪えたリヨン、グランヴァニアの民達は嗚咽しながら4国やエミル達に感謝するのだった。
「これで良かった…けれどもアギラの魔血晶をロマン君の見た通りならティターン兄妹に奪われた事になる、また奴が暗躍したら…」
エミル達は離れた少し離れた場所からそれを見て良かったと口にする一方、アギラのクリスタルがティターン達、つまりその主人たるシエル達の手に落ちた事を気にし、もしも再び暗躍したらまた犠牲が出る可能性を考慮して少し暗めの表情をしていた。
ロマンもあの時瞳にティターン達が映ったのに身体を動かせなかった事を悔い、拳に強い力を込めていた。
「恐らくその心配は要りませんよエミル。
魔族シエルが撤退する前に魔王から最後のチャンスを貰ったのに物にしなかった、だから始末すると言ってました。
もし仮にシエル達が始末しなくてもアギラは死ぬでしょう、今の魔王は実績がある者に褒美、失敗続きには死を徹底してますから」
「まぁ、結論から言えばアギラは終わりですよ、はい」
すると其処にアイリス達が歩きながら近付き、シエルが魔王の最後のチャンスを棒に振った為アギラを始末すると話し、更に魔王は功績には褒美と失敗続きには死を徹底してると話した。
更にアレスターも結論としてアギラは終わりだと告げ、全員それを聞きアギラはロマンの最後の攻撃を受けた時点で終わっていたと悟り、少しだけ悲劇が繰り返されない事にホッとし始めていた。
「では我々天使はアギラ派の断罪が終わったのでこれで失礼………少し待って。
はい神様、アイリスです」
『???』
そうしてアイリス達はアギラの断罪が終わった為その場から天界へと転移…しようとした瞬間、如何やら神からの念話がアイリスやリコリス、アレスターに届き空に顔を向け会話を始めていた。
それをエミル達は何事かと思い顔を傾げながら見ていた。
するとアイリス達はいきなり驚いた様子を見せていた。
「えっ、い、今何と仰いましたか⁉︎
…し、しかし………は、はい、分かりました、その様に致します…!」
「アイリス達にアレスター先生、何かあったんですか?」
するとアイリス達は何かを神に言われたらしくオーバーリアクションを起こし、更にアイリスは何か神に言われてそれを抗議するかの様な声を上げるが、最後には折れて命じられた事を実行すると話して念話が終わる。
エミルが代表して何があったかを3人に問い質すと3人は互いを見合わせて、頷きながらアイリスが前に出て話し始めた。
「…はぁ、神様が『誓いの翼、正義の鉄剣を天界の私の前に招待する様に』と命じられたのだよ。
天界は地上界も魔界の者も死してしか辿り着けない神聖な地、輪廻転生を司る世界だから生者は連れて行けない、ましてや神様の前にお連れするなんてこの世界創世の時代から見ても初の事例よ…」
『…えぇ⁉︎』
するとアイリスは神がエミル達とネイル達の10人を天界の自身の前に連れて来る様にと命じたらしく、これをアイリスは輪廻転生を司る世界である天界に生者が、しかも神の前に連れて来る事が初の事例だと話すと、エミル達は声を上げて驚き離れていたランパルドやアルク達の耳にもその声が届き何があったかと寄って来ていた。
「エミル、素っ頓狂な声を上げて何があったのだ?」
「あ、お父様達…えと、これから私達誓いの翼と正義の鉄剣はこれから天界の神様の下に連れて行かれる、みたいです…」
『…な、何と⁉︎』
ランパルドは娘が突然叫んだ事に何事かと問い質すと、エミルは自分達10人は天界の神の前に連れて行かれると話した。
それを聞いたランパルドやアルク、ロック達は突然の神の下へ呼ばれた発言に仰天しカルロも「マジかよ」と発言して心底驚いた様子を見せていた。
「では、エミル様とロマン君、サラ姉さん達は神様の下に一旦連れて行きます。
直ぐに戻る筈なので皆様はヴァレルニア港街跡でお待ち下さいませ」
「じゃ、じゃあお父様達、行ってきます‼︎」
【ビュン‼︎】
そうしてアレスターがランパルド達に先にヴァレルニア港街跡に向かう様に伝え、エミルが出立の挨拶をした瞬間アイリス達が転移魔法を使い、彼等の目の前でエミル達10名は天界へと転移して行った。
「…全く、我が末っ子と仲間達は破天荒であるな」
「ええ、そうですね父上」
ランパルド達親子とエミルとその仲間達の破天荒さに苦笑しつつ、末っ子が成長した事を喜びながら黄昏が晴れて行き、元の青空になりつつあるグランヴァニアの空を見つめていた。
「如何やら、今代の勇者も魔法使いも只者では無い様じゃのう」
「…ええ、そうですな」
一方サツキはロック達にエミル達が只者では無いと話すと、ロック、ゴッフ、リリアナはかつての戦友が今や自分達を超え、その先の先まで行ってしまった事を寂しく思いつつもより一層頼もしくもなったと感じ、これからは心の何処かにあったライラとして見るでは無く『エミル』として接して行こうと3人は密かに誓い合って行ったのだった。
【ビュン‼︎】
エミル達は突然のアイリス達の天界への招待を受け困惑しながらも転移すると、其処は緑で青空が地上界以上にあり、魔法元素も世界樹周辺の高濃度さから更に濃くなっている世界、天界に辿り着いた上に目の前には神々しいと一目で感じてしまい誰もが萎縮する宮殿が其処にあった。
「さあ、神様がこの先で待っています。
早く行きましょう」
「それと、神様に失礼無き様にお願いしますよ。
アイリス姉様を打ったみたいな事をしたら私が許しませんから」
すると右手側にはアイリスが立ち、案内を始めると左手側のリコリスは神に無礼を働かない様にと忠告を入れながら歩き始めた。
全員の後ろではアレスターが和かに笑い大丈夫と言った雰囲気を出しながら固唾を呑む全員を歩き始めさせた。
そうして全員が神殿を真っ直ぐ歩き、その奥に辿り着くとこの神々しさを放つ光に包まれし男が石の椅子に座っていた。
「待っていたぞ、地上界の混乱を収めし若き我が子等、そして魔法使いライラの転生者よ」
「…は、はい、神様…」
エミル達はその神々しさから自然と、自ら跪き頭を下げていた。
エミル達は直感する、この神々しき者こそ世界を創造したと伝説で謳われる存在…この世界の絶対的な上位に立つ者、神であると。
「我等が父にして偉大なる神様、地上界を混乱の渦に沈めし咎人、魔族アギラの断罪をこのエミル達が成し遂げました」
「うむ、我が未来をも見透す眼でそれ等全てを見透してた。
アギラは勇者ロマンの手で討たれ、魔族シエルの手により粛清された。
この世に生まれ、正義を成した若き我が子等よ、そなた達の活躍に私は感服し、また私自身が慎重になり過ぎた為犠牲者を悪戯に増やしたとも理解している。
本当に申し訳なかった、我が子等達よ」
アイリス達も跪き、アイリスがアギラをエミル達が断罪した事を話すと、神もその眼で見透しロマンが直接倒し、その後はシエルが粛清した事を口にしてエミルはアギラが生きてる可能性が0になりホッとしていた。
そしてエミルやロマン達の活躍に心を動かされ、更に自身の慎重さが今回の犠牲を生んだと深くエミル達に頭を下げていた。
それをアイリス達は驚愕し、エミル達は上目遣いでそれを見ていた為同様に驚愕していた。
「では、私がそなた等をこの輪廻転生を司る天界に招きし理由を説明して」
「あ、あの、神様…失礼な事だって分かってるんすが…出来るだけ現代風に話して貰えませんかね?
余り古めかしい言い方だと俺さ…こ、この馬鹿なアルには、分かり辛い物でして…」
『(あ、アルゥゥゥゥ⁉︎)』
それから神が本題の話に入ろうと口を開いた瞬間、アルが畏まりながらも神に現代風に話して貰うように頼み込み、理由も話しながら俺様呼びを控えて分かり辛いと進言する。
それを聞いたエミル達は顔を上げなかったがアルの発言に仰天しエミルは不敬で何らかの処罰が下らないかと冷や汗を掻きながら震え始め、リコリスは早速不敬を働いたアルを射殺す様に見つめつつ自身もアルが何かの罪に問われないかと内心では心配していた。
そして、神の次の言葉はと言えば………。
「…成る程、それは失礼をして済まなかった、地上界の子達よ。
では分かり易く現代の話し方でこれから先の話を進めようか。
分かり辛くて本当に申し訳なかった、ゴッフの弟子アルよ」
『か、神様ぁ⁉︎』
何と神はアルの発言を受け入れ、古めかしい言い方を止めて現代風に話を進め始め、アルにも分かり辛かった事を謝罪し、アイリス達を含めて全員を驚かせた。
如何やら神はちょっとやそっとでは波風は立てない、アギラの様な者に断罪の刃を振るう様に命じる寛大な者であったと、エミル達は思い知らされた。
「さて、私が皆を本来は死に魂となってしか来る事が出来ない天界に招いた理由は3つある。
先ず1つ目はアギラをその手で討ち果たした事だ。
私の尻拭いを地上界の皆にさせてしまった謝罪やアギラの様な罪人を討った礼を述べたいと思い招いたのだ。
地上界の勇士達よ本当に申し訳なかった、そしてありがとう…」
「か、神様…い、いえ、僕達は、アギラの様なやつを許せなかったから倒しただけで大それた事は一切してません…」
神はそのまま本題に入り、3つな理由を話し始め、1つ目はエミル達がアギラを討ち果たした事に対する謝罪と礼であり、それを聞いたエミルは神自身もアギラを見過ごしていた事を罪に感じているとアイリス達の様子から予想してた物が当たり、自身はアイリスに怒りをぶつけた為そのまま何も言わず頭を下げる。
対するロマンは大した事はしていないと話し、本当にやりたかった事をしたかっただけと思い、神もそれを見透かしてか頷くだけだった。
「では次は…エミル、君の存在と転生魔法についてだ。
私はあれを禁忌の魔法と見定め、アイリスを通して地上界全土にそれを伝えた。
理由は、王族として検閲書物や禁忌魔法一覧を見て理解しただろう?」
「…はい、転生魔法は輪廻転生の輪を崩し、その影響により死への忌避が薄れ次があるからと平気で自死する者が増える為です。
創り上げた私が迂闊であった事を此処に謝罪し、また2度と転生魔法を使わない事を約束致します」
次に神はエミルに対し転生魔法についての話をし、エミルはこの話が遂に来たかと感じ、かつての自身が作り上げた魔法は禁断の物となっていた事を14年で理解し尽くした上で理由も輪廻転生の輪を崩す秩序を乱す物だと書庫で見た時から深く反省し、もう2度と使用しない事を誓いつつこれが世に漏れない事を祈りながら14年の月日を過ごしてたのだった。
そしてかつての自分の罪を認めながら神にそれ等を話すと神は嘘は無いとして何も言わずに神気で手を作り、エミルの頭を撫でていた。
「さて、最後に3つ目だが君達が今代の魔王のみならず、この先に待つ災厄に立ち向かう為の鍵になると未来視で分かった。
よって君達10人にはこの腕輪を授けようと思う」
すると最後に神は椅子を立ち、エミル達を見つめてこの先にある災いや魔王に立ち向かうのに中心的な人物となると話し、手の上に10個の腕輪を転送魔法の様に浮遊させながら現させ、それをふと下から押す様に手を動かすと10個の腕輪はエミル達の前に飛び、目の前にフワフワと浮いており、アイリス達はその腕輪を見て驚愕した表情を浮かべていた。
「あの、神様、この腕輪は一体?」
「『時空の腕輪』と呼ばれる貴重な腕輪だ。
私や魔王しか管理していない数少なく新たに作り出すのに100年単位は掛かる代物だ。
この先直ぐに訪れる災いにはこれが必要になる、だから受け取りなさい。
その時になればアイリス達が使い方を教えてくれる」
神は時空の腕輪と呼ばれるアイテムを渡し、魔王や自身しか管理していない貴重品であり、次の災いに必要と言われ、それぞれが受け取り腕に装備すると神は頷きながらこれで良いと言う表情を浮かべていた。
「か、神様、時空の腕輪が必要になる事態とは一体何なのですか⁉︎
『この世界の時空が乱れる』と言うのですか⁉︎」
「そうだ、我が娘にして創世の世界から3世界を見守り続けた私の娘アイリス、そしてその妹にしてアイリスの次に長生きしているリコリス。
この言葉の意味を深く捉え、そなた達も時空の腕輪を受け取ると良い。
更にアイリス達に2個ずつ渡すべき人物を見定めて渡す様にする為多めに渡す」
するとアイリスとリコリスは時空の腕輪が必要になる事態が発生する事に驚愕しながら問い掛けると神は肯定し、その意味を深く捉えるように命じながら彼女達にも腕輪を渡し、更に手渡すに相応しき者に手渡す様にと2個ずつ渡し、アイリス達は深々と頭を下げながら腕輪を装備し、天界製の魔法袋に入れる。
「それからアイリスはエミル達に、リコリスはネイル達に付いて行きアギラの様な輩が2度と跋扈しない様になさい。
アギラの様な者を見掛けたら逐次私に報告し、断罪の刃を振るいなさい」
「‼︎
………はい、このアイリスとリコリス、深く承りました…‼︎」
更にアイリスとリコリスにそれぞれエミルとネイル達に付き、アギラの様に聖戦の儀の法を破ろうとする者を断罪する様に命じるとアイリスとリコリスは今まで神に報告していた努力が報われたと感じながら命を承り、頭を下げていた。
「そして………魔法の天才アレスター、君には言うべき事がある」
「…はい、遂に近付いて来たのですね、私の輪廻転生の時が」
「その通りだ、よってアレスターは今後は天界で身を清め、次なる生に備えなさい。
…特別に天使化させたせめてもの計らいとして、家族や生徒達に別れを告げて来る許可を与える、それ以降は天界で過ごしなさい」
すると最後に神はアレスターに輪廻転生の時が迫りつつある事をエミルやサラ達の前で伝え、更に天使化した事で地上界と行き来出来る事から生徒や家族に別れを告げて来る計らいをし、それを聞いたエミルやサラはアレスターを見て悲しげな表情を浮かべていた。
「良いんですよサラ姉さん、エミル様。
生きとし生きる者は全て輪廻転生の輪の中に組み込まれていて、本来なら私が家族や姉さん達に再会する事自体が本当に特例、奇跡だったんですよ。
ですからそんな悲しい表情を浮かべないで笑って別れましょう。
それが、再会を許された私達の最高の別れですよ」
そんなエミルとサラにアレスターは輪廻転生を説き、この様な再会すら特例であり奇跡の産物だった事を話しながら彼女達の目を見ていた。
そして2人に近付き抱きしめ、笑顔で別れる事を最高の別れだとも話した。
その中でエミルとサラは震え…泣きながらも必死笑顔を崩さない様に努めていた。
「うん、うん、分かったよ………バイバイ、アレスター…私達の大切な家族だった人…!」
「アレスター…先生…貴方は最高の先生でした…!
そんな方の生徒になれた巡り合わせを誇りに思います………‼︎」
「はは、私もですよ…」
サラ、そしてエミルは涙に濡れながらも笑顔を崩さずに互いに自分達にとってアレスターは大切な存在であり、サラにとっては唯一の弟、エミルにとっては学び直しや500年前に無かった温もりを教えてくれた先生として誇りに思うと伝えると、アレスターもまた自分も同じ想いだと2人に伝えると2人の背中を摩り、そして自然と3人は離れ始めた。
「…では、カルロ様達やリン姉さん達に別れを告げたら私達の再会の時は終わりですね。
さあ、地上界へ行きましょうか」
「…はい。
神様、確かにアギラに対して慎重になり過ぎた事は神様のミスでしたが、アイリス達を送ってくれたのもまた貴方様でした。
ですので、我等が父たる貴方様に感謝致します…それでは、失礼致しました‼︎」
アレスターは最後にアルクやカルロ達、更にリン達に別れを告げて奇跡の時は終わりだと告げるとエミル達は重く受け止め立ち上がる。
そして神にアギラに慎重になり過ぎた事をミスだったと告げつつ、しかしアイリス達を派兵したのもまた神の為それらも加味して最大の感謝の意を込めて礼をし、そしてアイリス達に伴われて神殿から離れて行った。
それから神はエミル達が転移したのを見届けると、椅子に座り空に浮かぶ2つの月を見ながら未来を再び視ていた。
「…矢張り『彼方なる者』が再び目覚め、3世界の時空は乱れ行く…。
そうなれば聖戦の儀所では無くなる…どうか希望なりし我が子等よ、その手を結び合せ彼方なる者を討滅せしめて欲しい…」
神の眼には彼方なる者と言う時空を乱す存在が映り、それと戦うエミル達の姿まで映っていた。
そして神の眼に映る希望なりし者達が手を取り合う姿も映り、それが3世界を救うと信じて瞳を閉じ、時の流れに身を任せるのであった。
そうしてエミル達は地上界へ戻り、アレスターも別れを済ませ天界へと戻って行き、フィロの名の下グランヴァニアも4国と国交を正常化させ戦いで死んで行った者達の国葬が終えてから3日が経った頃。
エミル達とネイル達の下に『貴女様方にお会いしたいです、どうか3日後にセレスティアの我が屋敷へ来て下さいませ。
最高のおもてなしを致します、貿易商人エリスより』と言う手紙が届き、エミル達はその屋敷に馬車で向かってる途中であった。
「ねえエミル、貿易商人のエリスさんってどんな人なの?」
「私は直接会ったことが無いから分からないわ。
ただ凄いやり手の商人らしくて、彼女に見放された者は商人界隈で生きて行けなくなるとか噂されてるわ」
ロマンはエミルにエリスと言う人物がどんな者か問うと、エミル自身は会った事は無いがかなりのやり手だと話し、ネイル達も噂で同じ様な事を聞いてる為そんな人物が何故自分達に会いたいか分からず困惑していた。
ただ3名、ムリアとアイリス、リコリスを除いて。
「さて、着いたわよ。
此処がエリスさんの屋敷よ」
「わぁ、大きい」
そうしてライラックの隣街『ハーティス』の一角にある屋敷に到着すると、その広さは爵位持ちの貴族の屋敷並に大きくロマンは圧巻されていた。
するとその屋敷を見ていたルルは瞳を細め、フードを半被りにしながら値踏みするかの様な仕草を見せた。
「あれ、如何したのですかルルさん?」
「…臭う、月下の華の勘が此処は何か黒い、そんな感じがするわ」
「チッ、ルルのこの反応はかなりの確率で『当たり』だぜ、お前等気を付けて行くぜ」
その様子を見たキャシーがルルに如何したかを問うと、彼女は月下の華としての勘が働き此処は何か黒いと感じダガーに手を添えていた。
アルはこの勘は良く当たると話し、全員もルルの本業の勘を信じて緊張を走らせる。
その中でムリア、アイリス、リコリスだけは気付いてしまったかと思いながら門を叩くと中からメイドが直ぐに現れ、門を開ける。
「お待ちしておりました、エミル王女殿下と皆々様。
私ティアが屋敷の入口までご案内致しますので付いて来て下さいませ」
「(…あれ、この子何処かで…?)」
メイドのティアと名乗る使用人は全員の顔を拝見した後お待ちしてましたと礼儀正しくお辞儀をし、屋敷の入口まで全員を案内し始める。
その中でロマン、更にエミル達誓いの翼はティアの容姿に既視感を覚え、ルルの言った黒いと言う言葉が堂々巡りを始め此処は何なのか、エリスとは何者なのかと考え始めていた。
そうしている間に入口に辿り着き、エミル達が中に入ると筋骨隆々の大柄の執事が全員を出迎えた。
「な、て、てめぇは…⁉︎」
「ようこそお越し頂きました、私はこの屋敷の執事長のアズと申し上げます。
以降お見知り置きを」
アルは、否、エミル達はその執事長…アズと名乗る男の容姿に見覚えがあった。
それもごく最近も出会い、そしてアイリス達の前に立ちはだかった者と瓜二つなのだ。
「…アザフィール‼︎」
そしてエミルはアズを自分達が良く知る魔族…アザフィールの名を口にして杖や武器を構えようとした瞬間アイリス達とムリアに首を横に振られながら止められ、エミル達は苦々しい表情を見せながらアズ…アザフィールを見ていた。
するとアザフィールはお辞儀をするとほんの少し変身魔法を解き、そして再び人間に変身しながら不敵な笑みを浮かべるのであった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
アレスターは輪廻転生の時期が遂に決まり天使として出てくるのはこれで最後になります。
更に最後の最後にエリス=シエルからの招待状で招かれたエミル達。
その中で何が起きるかはまた次回に。
では今回は時空の腕輪を少しとアギラの思惑と末路、転生魔法の禁術化、天界へ生者が招かれる事を書きます。
時空の腕輪:とある用途で使用される希少なアイテム。
その力はまだエミルには未知であり、これがエミル達の手に渡った事自体が神からのメッセージでもあるとアイリス達は解釈した。
アギラの思惑と末路:アギラは最終通告すら失敗に終わった後何とか生き残る為にシエル達にある事無い事の罪を被せてその場を生き延びのし上がろうとしていた。
しかし彼の素行を知るシエル達には看破されていた為復活させられたその場で斬られ完全に死を迎えた。
なおシエルの憶測通り魔王の下に帰れば罪を被せられず一瞬で死なせてくれたシエル達と違い少しずつ死なせていく残酷な処刑がまっていた。
つまりはアギラは完全に詰んでいたのである。
転生魔法の禁術化:エミルがライラの時に魔血晶の特性を下に若干の解析を行い創られたこの魔法は輪廻転生により次なる魂に生まれ変わる流れを壊し、更に死んでも次があると死への忌避が薄れると言う理由から神が直接禁術化する様にアイリスに命じ、誓いの剣や当時の王達に使用を固く禁ずる事を伝え広め現在は禁書図書館の禁術に含まれている。
エミルもそれを禁術を読み漁る際に知り、2度と使用しないと誓っていた。
天界へ生者が招かれる:死者の世界、死んだ者の魂が辿り着く安らぎの地である天界へ生者たち立ち入る事は許されてない、本来出来ない事である。
天使以外は自由に行き来出来ない仕組みになっているが、今回エミル達は超特例で招かれ神に直接謁見した。
この事例自体が初であり、神の姿を生者が見る事は本来叶わない為アイリス達も神の命でエミル達を招くと念話で言われた際に狼狽していた。




