第32話『断罪の刃、下る』
皆様こんにちはです、第32話更新致しました。
今回でアギラとの戦いは最終決戦を迎えます。
エミルやロマン達が如何に戦い切るかご覧下さいませ。
では、本編へどうぞ。
エミル達とアギラの会話が始まった頃、宮殿跡外では変わらず死闘が繰り広げられており、中でも超越者6名による空中での大戦闘は更に熾烈さを極めていた。
「ふっ、このアザフィールの剣を避けつつ零距離魔法で我が鎧、肉体に傷を付ける貴殿のその実力、驚嘆に値する‼︎
誇ると良い、汝が実力と才能は私の想定の上を行った事を‼︎」
「これはご丁寧にありがとうござい、ます‼︎」
「(けれど私の本気で、殺す様に撃った魔法を相殺、更に何発受けても倒れる気が全然しない‼︎
これが今の魔王の下、魔界の戦乱や様々な事象を収めた大英雄アザフィールの力ですか…‼︎)」
アレスターとアザフィールは魔法戦で何度も何度もアレスターの魔法を相殺し、更に受けても全く倒れる気配が無いアザフィールに心底畏怖していた。
しかし負ける訳には行かず剣を避けつつ再び魔法を放ち続ける。
「グフッ‼︎
く、くふふ…全く、やるじゃないか天使リコリスゥ‼︎」
「ガハッ‼︎
く、いい加減倒れなさいよ、この化け物魔族‼︎」
リコリスとダイズは相変わらずのノーガード戦で拳と拳、たまにブレードが衝突させ合いながら互いに攻撃を受けては回復を繰り返して恐らく6人の中で最もダメージを受け続けているが、何方も倒れない耐久力を発揮しながら尚もノーガードで戦い続ける。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
しかしそれでも1番熾烈な戦いをしているのはアイリスとシエルである。
互いに一撃必殺の斬撃や魔法を放ち、それが頬を掠める肩を少し抉り脇腹や翼も傷付ける、アザフィールやダイズ達が受ければ数発で戦闘不能になる死闘を繰り広げていた。
更に6人の戦闘は相変わらずグランヴァニア宮殿跡の空気を震わし、大地が泣いてるかの如き震動が両軍に伝わっていた。
「くっ、連合軍よ怯むな‼︎
空の戦いは天使アイリス達が押さえている、ならば我等は我が妹エミル達がアギラの討伐を信じ戦い抜け‼︎」
「地上界の塵芥共とクソ天使共を殺せぇ‼︎
アギラ様がエミル共を殺すまで奴等を殺し続けろぉ‼︎」
一方連合軍+天使達とアギラ派の魔族+魔物達の戦いも激化し、連合軍の中から犠牲者も出始めるが、それでも天使が加勢している分魔族や魔物達を押し気味であり、魔族の現場指揮官は去勢を張りながら敵を殺し続ける様命令し、アギラへの狂信が垣間見える戦場と化していた。
「(エミル、ロマン君、ネイル殿、頼んだぞ。
ワシ達はそなた達がアギラの首を取るまでこの戦いを切り抜け続けるぞ‼︎)」
「(サラ、私の愛娘よ、あの悪逆なる魔族を我等地上界の誇りにかけて討つんだ‼︎)」
その戦場にてランパルドやロックは自身の娘や勇者ロマン、シリウスの子孫ネイル達の武運を祈りながら魔法と矢を放ち続け魔族や魔物を倒し続けていた。
「(ルル、ロアと私の愛しい子。
あの人に似た正義の心でアギラを倒して‼︎)」
「(漸く魔法祝印を認めたバカ弟子が!
帰ったら色々教えてやるから覚悟してやがれよ‼︎)」
更にリリアナ、ゴッフもルルとアルがアギラを討ち取ると信じながら魔法と斧を振るい、戦場に居る兵達の希望たる誓いの剣と言う英雄の役割を演じながらこの戦いに終止符が打たれるまで戦い続ける覚悟を以て血に濡れた荒野を駆け抜ける。
「さあヒノモトの勇士達よ、魔族共を叩き斬るのじゃ‼︎
あの卑怯者の首をエミル達が刎ねるまで戦い続けるのじゃ‼︎」
そしてゴッフやアルク達と共に前線に出ているサツキも突入した若き戦士達を信じてヒノモトの戦士達に戦い続ける事を命じ、連合軍の皆と同じ想いの下刀を振るい続け魔族達を斬り捨てていた。
全ては自分達が希望を託した者達の勝利を願っての事であり、彼女等の帰る場所を守る為でもあった。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
「この塵芥共がぁ‼︎」
一方宮殿跡内部ではエミル達の戦いが開始され、エミル達は身体強化を掛けてアギラもレイピアを構えて前衛全員と鍔迫り合いながら矢を避け、魔法が飛んで来ようとする場面を目撃して距離を離して同じく魔法の準備をしていた。
「焔震撃‼︎」
「瀑風流‼︎」
「雷光破‼︎」
エミル、キャシー、シャラはそれぞれ複合属性魔法を放ち、アギラを穿つ為の最大火力の魔力の塊は真っ直ぐ悪逆の魔族アギラを捉えていた。
しかしアギラも名あり魔族にして第3の将、故にこの魔法に臆する事無く正面から迎え撃とうとしていた。
「甘いわ、瀑風流、焔震撃、闇氷束‼︎」
アギラは3人が放った魔法の対抗属性である複合属性魔法を放ち、それぞれを相殺すると次にロマンに向かって突撃し始める。
それを止める様にサラが矢を連射するがそれは最小限の動きで避けられロマンの前に辿り着いてしまう。
「アギラ、お前だけは絶対に許さない‼︎
爆震剣‼︎」
「ほざけ、運だけで生き残った勇者が‼︎
嵐瀑剣‼︎」
【ガキィィィィィィィィン、ドォォン‼︎】
ロマンはアギラと何度も鍔迫り、許さないと口にした直後に複合属性絶技を使用し、アギラもロマンを運だけで生き残った者と罵りながら対抗属性絶技を使い鍔迫り、それらの魔力エネルギーが衝突した事で爆発が発生し両者は後方に足を擦りながら吹き飛ばされるも直ぐに態勢を立て直す。
「悪なる魔族アギラ‼︎
我等の正義の刃を受けろぉ‼︎」
「シリウスの子孫と腰巾着に裏切り者がぁ‼︎
口を開けば2言目には正義正義、鬱陶しいんだよこの正義中毒者共が‼︎」
其処に剣と槍を装備したネイル、ガム、ムリアがアギラに突撃しその刃を向ける。
だがアギラはネイル達を正義中毒者と怒りながら罵倒し、3人の一斉攻撃をレイピアで全て捌き切り、蹴りでそれぞれ吹き飛ばす。
其処にムリアが魔法を崩れた態勢で放つが、アギラはこれも対抗属性で相殺し、今までの魔族とは格が違う事をロマン達やネイル達の身体に刻み付けていた。
「どうだこれが私の力だ‼︎
地上界の侵略三人衆に選ばれた私の力だ‼︎
地上界の塵芥共め、消えて無くなれぇ、雷光破ォ‼︎」
「危ない、闇氷束‼︎」
「結界魔法V‼︎」
するとアギラは10人を目標に雷光破を力を溜めて放ち、その規模は大きく宮殿跡の天井も周りも全て破壊しながら雷光がロマン達を穿とうとした。
それをシャラが闇氷束を、キャシーが結界魔法Vを使用し対抗属性魔法による相殺と万が一に相殺しきれなかった場合の防御、瓦礫の直撃を防ぐ為に二重の防御策を実行する。
【ガラガラガラガラ、バチィィィィィィィィィィ、キィィィィィン‼︎】
「くぅ、うぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
すると瓦礫が結界で弾かれてる間に矢張り相殺し切れなかった魔法も結界に直撃し、キャシーは結界に込める力を更に強め魔法と瓦礫を防ぎ切ろうとする。
それから1分か10秒か、長い時間とも短い時間とも取れる間に宮殿跡の玉座周辺は黒い氷と粉々に砕け散った瓦礫の山と化し、その中でエミル達はキャシーの結界で守り切られ、アギラは自身の雷光で瓦礫を破壊し両者は無事であり戦いは吹き抜けとなった宮殿跡で仕切り直しとなる。
「アギラ、貴方の行いは全て絶対に許さない‼︎」
「俺様達の武具の力を見せてやるぜ、ずぉぉぉりゃぁぁぁぁ‼︎」
「黙れリリアナの娘とゴッフの髭面ジジイの弟子が‼︎
特にリリアナの娘、お前が勇者ロアの娘だとは思わなかったわ‼︎
今直ぐ死ねこの場で死ねぇ‼︎」
仕切り直しの初めはルルとアルが突撃し、アギラのレイピアとルル達の武具が絶技を混ぜながら激しく打ち合う。
その中でアギラはルルが初代勇者ロアの娘だと知らずに見過ごして居た為憎悪が2割増になっており、アルの攻撃を弾けばルルを執拗に攻めようとレイピアで斬り掛かり、3人の攻防は激しさを増すばかりだった。
「アギラ、ギャランやこの国の、お前の手に掛かった皆の無念をここで晴らす、はぁぁぁぁ‼︎」
「我等も行くぞ、ガム、ムリア‼︎」
其処にロマン、更にネイル達3人も加わり6対1の戦いになり、ロマンとルルは魔法まで放ちアギラの攻撃を上回る手数で押そうと連携を取りながら自身の武具を振るいアギラを討ち取ろうとする。
しかしアギラはそんな6対1の状況でも何と自身もややダメージを負いながらもロマン達の攻撃を弾いては擦り傷を負わせながら全員を後方に吹き飛ばし戦況は拮抗気味であった。
「くっ、コイツ全然表に出て来なかった如何にも腹黒汚物軍師の癖に俺様達とほぼ互角に戦いやがって!」
「当然だぁ、私は魔王様から地上界侵略を任されたアギラ様だぞ‼︎
そんな私が地上界の塵芥6人の同時攻撃如きに怯む訳…うおっ⁉︎」
【ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン‼︎
ドドドドドドドォォォン‼︎】
アルがアギラを罵倒しながらもその実力に驚きを隠せず、片手で頬から垂れた血を拭きながら眼前の敵をロマン達と共に見据える。
それをアギラは相変わらず地上界の者を見下し更に自身に様付けをするナルシズムを見せ、大振り手振りでロマン達の6人同時攻撃
に怯む訳が無い。
そう言い切ろうとした瞬間アギラを矢と魔法が襲い掛かり、アギラは急ぎ全てを回避していた。
「隙あり過ぎなのよ、アギラ‼︎」
「くっ、この塵芥共め‼︎
私が優越感に浸ってる所に不意打ちを仕掛けて来るしか能が無い卑怯なゴミ虫め‼︎」
「アンタみたいな卑劣な奴に言われたく無いわよこの下衆‼︎」
サラが不意打ちから開口1番に隙ありだと叫ぶとアギラは自身の事を棚に上げて卑怯だと叫び返し、それを聞いたシャラは下衆に言われたく無いと叫び返しながら魔法と矢は雨霰に放たれ続けた。
そんな中でエミルはアギラの様子をずっと無言で観察しつつ、魔法を放ち続けていた。
「この、いい加減にしろ塵芥ァ‼︎
燋風束ォ‼︎」
「大震波‼︎」
アギラは魔法と矢に痺れを切らせ、焔の風による拘束と目眩しを後衛に放つが、それをエミルが土と水による濁流の津波を発生させ相殺する。
その瞬間アギラ舌打ちをしながら再びロマンに向かって突撃し、ロマンもアル達を伴い突撃しながら迎え撃ち始めた。
「お前の所為で、どれだけの人が不幸になって、死んでいったか‼︎
その苦しみも何もかもを此処で絶対に断ち切る‼︎」
「黙れ塵芥、地上界の者など所詮は私に絶望に歪み苦しみ死ぬ恐怖を提供し、私を喜ばせる玩具でしか無いんだよ‼︎
そんなゴミ共が高貴な魔族様に逆らってんじゃない‼︎」
【カンカンカンカンキンキンキン‼︎】
ロマンはアギラの為に死んだ者や不幸になった者達を想い、その苦しみも全て断つべく元凶の魔族の将に断罪の刃をアル達と共に振るう。
対するアギラは地上界の者は自身の悦楽の道具でしか無いと断言し悪意が剥き出しになった刃を振るいロマン達と何度も何度も斬り結ぶ。
「この‼︎」
【バキッ‼︎】
「うあっ‼︎」
そしてそれらの合間にロマンを蹴り上げ、吹き飛ばした後ルルに突撃し、この中で最も勇者の血が濃く神剣を振るう可能性がロマンよりあると考えた彼女を殺すべくレイピアを振り被り絶技を放とうとしていた。
「爆震剣が来るわよ、ルル‼︎」
「っ⁉︎
嵐瀑剣‼︎」
【ガァァァァァン‼︎】
その瞬間エミルはアギラが爆震剣を放つとルルに叫び、それを聞いたルルは一瞬そうなのかと感じながらもエミルを信じ対抗属性の水と風を纏った嵐瀑剣をレイピアが振り抜かれる前に放ち、そして対抗属性同士だった為熟練度や体内魔力の差で相殺し切れるかレイピアとミスリルダガー2本が反発し合い、そして両者共に後方に吹き飛ばされ、ルルは身体を回転させながら態勢を立て直し、アギラは片手を地面に突き足と籠手でその速度を落としながら驚愕していた。
「バ、バカな⁉︎
な、何故私が今爆震剣を放つと分かった⁉︎
い、いやただの偶然だ、喰らえ」
「雷光破‼︎」
【バチィィィィィ、ドォォォンッ‼︎】
アギラは何故爆震剣を放つか判別されたか理解出来ず、しかし只のまぐれだと判断して今度は魔法を放とうとしたがエミルが先に雷光破を放ち、闇氷束を放った直後に相殺、目の前で反発により爆発するとアギラは焦げた左手を見つめながら何が起きているかさっぱり分からないと言った様子を見せ、他の皆もエミルを見つめ始めていた。
「アギラ、何故絶技も魔法も出す前に対抗属性を判別されて相殺されたか教えてあげるわ‼︎
魔法、絶技は体内魔力、そして『空気中の魔法元素を消費して』放つ物よ‼︎
魔力一体論の基礎中の基礎よ…そして私はアギラ、お前を観察してある事が分かった、だから魔法も絶技も見抜いたのよ‼︎」
「ある事…?
エミル様、勿体振らず言ってくれや!」
エミルは茫然としているアギラに対し、魔力一体論の基礎中の基礎を話し始め、更に戦闘中に観察し続けた結果ある事が分かり、それのお陰で何の絶技、魔法が来るか分かったと話していた。
それを聞いていたガムは何の事かさっぱり分からず早く答えを言う様に話していた。
「この‼︎」
「瀑風流‼︎
…私が分かった事、それはアギラが魔法や絶技を使う時に『必要以上に体内魔力と魔法元素を練り上げて放ってしまっている』事よ‼︎
そのお陰でどの属性に変換した魔法、絶技が来るか魔力や魔法元素の流れを見て判別出来るのよ‼︎
戦い慣れてない新米の兵達がやるミスをお前はやってる、だからどんな属性の物が来るか判別出来る‼︎」
アギラはエミルが話している途中で魔法を放とうとしたが、それをエミルが迷わず瀑風流を放ち相殺すると更に説明を続け、アギラが新米の兵や冒険者がやってしまう魔力や魔法元素を練り上げ過ぎて放つと言う初歩的なミスを口にし、魔法元素の流れを読む力が天才の域にあるエミルならではの判別の仕方にロマン達は驚き、またアギラがそんなミスをしていたのかと言う事に驚愕していた。
「幾ら策士とは言え、魔族の将がそんなミスを⁉︎」
「ええしてるわ、だからどんな攻撃が来るか感覚で分かるのよネイルさん!
アギラ、お前は碌に戦場で同レベルやそれに近い者と戦わないでレベルアップして経験も積まずに今の地位に胡座をかいていたでしょ‼︎
だからもう、お前の攻撃は私達は見抜き次の手を打てるわ‼︎
ロマン君‼︎」
「!
はぁぁぁぁ‼︎」
ネイルは魔族の将がそんな自分達もやらないミスをしていたのかとエミルに信じられない様子で問うと、彼女は自信満々に感覚で分かると発言し、今の地位に胡座をかいたアギラの攻撃は全て見抜けると発言し、ロマンに指示を出すとロマンは阿吽の呼吸でそれを聞きアギラに向かって走り出す。
「クソがァァァァ‼︎」
エミルの発言を全て聞き、ワナワナと震えていたアギラは最早自身のプライドが全てズタズタにされてしまいヤケを起こしてロマンを迎え撃つべくレイピアを構えながら突撃し、ネイル達は絶技がぶつかるかと一瞬思っていた。
「危ないロマン君、焔震撃を使って‼︎」
「っ、焔震撃‼︎」
【ドォォォォォォォン‼︎】
しかし斬り結ぶまで後数歩の所で次にキャシーが焔震撃を使う様に警告し、ロマンは足を止めてそれを使った。
するとアギラも足を止めてしまい対抗属性の瀑風流を使い両者の魔法は相殺され、再びロマンは吹き飛ばされるがアルやネイル達が受け止めてそのまま立たせ、アギラは仲間がいない為柱に背中を打ち付けてしまう。
「キャシー、私にも分かったわよ!
アイツ、接近戦を仕掛けると見せ掛けてレイピアに魔力は一切通さずにエミル様が言ったミスを左手でやってたわね⁉︎」
「はいシャラさん‼︎
ですからアギラ、貴方フェイントの使い方も下手過ぎますよ‼︎
こんなんじゃガムさん達だってフェイントだって見抜けますよ‼︎」
するとシャラがキャシーに今のがレイピアに魔力を通さず至近距離で魔法を仕掛けるフェイントだと見抜き、キャシーもこれを肯定してアギラがフェイントすら下手だと酷評し、ガム達も見抜けてしまうと言った瞬間ガム達も先の一瞬を過ぎた辺りで気付き頷いていた。
「く、クソォォォォ‼︎
この、この塵芥共め‼︎」
「…そして2つ目の弱点、私は今気付いたわ。
アギラ、お前は気付いているか分からないけど魔法の威力が徐々に弱って来てるわよ‼︎
恐らくフルパワーで戦った事が少ないからその反動で力を浪費しているのよ‼︎
魔法を使う事が少ないロマン君の魔法で先程まで私の魔法を相殺してたのがいきなりロマン君の魔法でも相殺出来たのが証拠よ‼︎」
アギラは地面に左腕を叩き付けながら憎らしくエミル達を睨み付けていた。
だが此処でエミルは更に気付いた弱点…フルパワーでの戦闘慣れをして無い所為で反動が襲い力を浪費している事を告げた。
それはエミルの魔法で漸く相殺してた魔法がいきなりロマンの魔法で相殺可能になった事を例にしながら論じ、他の全員…アギラも含めて驚いていた。
「対する私達は全ての戦いを全力で戦い、その中でフルパワーを維持する様に継続戦闘も熟している‼︎
つまりアギラ、もうこの先お前が勝つ可能性は更に減り続けるわ‼︎
…その身に断罪の刃が刺さる事に怯えなさい‼︎」
「で、出鱈目を言うな塵芥の中の更なるゴミがぁぁぁぁぁぁ‼︎」
そしてエミルは自身達は常に全力で戦い、その中でフルパワーを長時間維持する様に心掛けて戦い続けた事を話しながら全員で体内魔力回復用ポーションを飲み、そしてアギラにこの先勝ち目が更に無くなると叫ぶとアギラも体内魔力回復用ポーションを取り出し、それをガブ飲みしながら突撃し始めレイピアを構え始めた。
「はぁ‼︎」
しかしアギラの目に先程よりも速くなったロマンが自身の攻撃を完全に盾で受け止め、右手に持った剣で斬り付けるとアギラは咄嗟に避けるが剣先がアギラの鎧を掠め金属同時が擦れ合う音が響いた。
「くっ、何故スピードが上がったんだ⁉︎
身体強化を二重に掛ける魔法を創り上げたのか、エミル‼︎」
「違うよアギラ…僕のスピードが上がったんじゃない、お前のスピードが落ち始めたんだよ…!
体内魔力回復用ポーションを飲んでこれならエミルの言う通りお前に勝ち目は無い、此処で討たせて貰うよ‼︎
はぁぁぁぁ‼︎」
アギラは突然ロマンのスピードが上がった事をまたエミルが新しい魔法を創り上げたのかと思考し叫ぶ。
だが、ロマンから出た一言はアギラの方が遅くなってしまってるのだと言う自身が信じたく無い一言であった。
そしてロマンは此処がチャンスだと叫び前衛全員が突撃を始め、サラが矢を放ちエミル達は魔法で援護を始めた。
「ぐ、ぐあ⁉︎
く、クソこの塵芥共」
「塵芥塵芥五月蝿ぇんだよこの傲慢トンチキサイコパスド三流策士が‼︎
震撃斧‼︎」
「正義の心が、お前を討つ‼︎
暴風槍、瀑水剣‼︎」
「はぁぁぁぁ、極雷剣、絶氷剣‼︎」
前衛6人の攻撃や後衛4人の援護をパワーダウンが始まったアギラに捌き切るのはやっとであり、それが彼のプライドを尚も傷付け口癖の塵芥を再び口にした。
が、いい加減聞き飽きたアルが最大級の罵倒を以て複合属性では無く敢えて上位絶技を使いアギラの鎧にミスリルアックスを当ててネイル、ルルの方に吹き飛ばすと2人も上位絶技の乱舞を始めダメージを重ね始める。
「がぁぁぁぁぁぁ‼︎
この塵」
「もう喋らせない、爆炎弓‼︎」
「キャシー、行くわよ‼︎」
「はいシャラさん、乱風束‼︎」
しかしその乱舞をレイピアで無理矢理弾き返すと全員に向かって再び塵芥と叫び魔法を放とうとしたが、その前にサラの矢が鎧を焼きながら貫き、シャラとキャシーの乱風束の風で切り刻まれながらその場に拘束されてしまう。
「ぐ、うおあぁぁぁ…‼︎」
「ムリア、行くぜ!
光流波‼︎」
「勿論だなガム、暗黒破‼︎」
そうして動けないアギラにガム、ムリアはそれぞれ光と闇の一閃を竜巻の中に放ち、アギラの鎧は更に貫かれ青い血を吐血し始める。
もう誰の目から見ても分かる、アギラは既に倒れる一歩手前まで追い込まれ始めたと。
「ガフッ、ぐ、裏切り者、がぁぁ…‼︎」
「アギラ、受けなさい‼︎
焔震撃‼︎」
「ギャァァァァァァァァァァァァ‼︎」
アギラは裏切り者のムリアに憎しみの込められた目で見つめるが、其処に本命のエミルから複合属性魔法である焔震撃で足下の床を焔の震撃が襲い、そのエネルギーによりアギラは断末魔の悲鳴を上げながら焔に焼かれながらその命が風前の灯火と化していた。
「ロマン君、止めを‼︎」
「分かってる、これで終わりだアギラ‼︎
雷光けぇぇぇぇぇぇん‼︎」
「グフッ、ひょ、氷黒剣…‼︎」
【ガキィィィィン、ギギギギギギギギ‼︎】
そしてエミルはアギラの手でギャランを殺され、両親を死に追いやられたロマンに止めを刺す様に叫び、いざと言う時はサラやエミル達も控えながらロマンはジャンプしながら雷光剣を兜割で、アギラは最後の力を振り絞り氷黒剣を弾く様に放ち鍔迫り合いが発生する。
その鍔迫り合いは周りに衝撃を伝播させ、正にアギラの最後の力と呼ぶべき物だと全員に知らしめた。
「ぐっ、おぉぉぉぉ…‼︎」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、やぁぁぁぁぁぁ‼︎」
【バキィィィィィン‼︎】
それからその鍔迫り合いが30秒以上経過した瞬間、アギラが膝を崩し始めるとロマンはそれを見て此処だと全身全霊の力を込めて剣を振り下ろした。
その瞬間アギラの魔界式魔法祝印が掛かったレイピアの刃が叩き折られ、右腕を肩から鎧ごと切断されレイピアの刃が宙を舞った。
「がぁぁぁ…‼︎」
「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
そしてロマンは再び雷光剣を使用しアギラの身体に刃を振り上げる様に振るい、そのミスリルソードが遂にアギラの鎧ごしに身体に食い込み、そしてそのまま振り上げられ────。
「『時間停止魔法』」
【カチッ‼︎】
瞬間、世界の時間は静止しロマンの剣もアギラの上半身を半分以上食い込ませそのまま頭まで切断する直前で止まる。
更にその場にティターン、ティターニア兄妹が現れ、アギラやロマンの前に立っていた。
「はっ、策士策に溺れるってのはこの事だな!
ザマァ無いぜアギラ!
ほら、ティターニア行くぜ」
【ブシュ‼︎】
するとティターンはアギラの事を最大限に見下し、負けた事を自業自得だと発言した後彼の魔血晶を回収してティターニアと共にその場から去ろうとした。
しかしティターニアはロマンの目を見ながら少しその場から動かず、しかし兄の命により近場に立ち振り返る。
「さようなら勇者一行様達、取り敢えずアギラ撃破は祝福するわ」
【ビュン、カチッ、ザァァンッ‼︎】
そしてティターニアがアギラを倒した事を祝福すると、2人で何処かに転移し消え去る。
その瞬間止まった世界が動き出し、アギラはそのまま切断され青い炎に包まれて倒れ去った。
「やった、アギラを倒したよ皆‼︎」
「ええ、皆良くやったわね‼︎
ロマン君もお疲れ…ロマン君?」
アギラの死を確認した瞬間サラが遂に仇敵を倒した事を喜び、全員も手に力を込め死んだ者達の無念を晴らしたと思い、そしてエミルが全員を労い、ロマンにも声掛けをした…その時、ロマンだけが険しい顔をしており、エミルは何事かと思い声を掛ける。
「…ねえエミル、この世界に時間を止める魔法って存在するの?」
「えっ?
…いえ、500年前から今までそんな魔法は聞いた事も無いわ。
何かあったの?」
ロマンはこの世界に時間を停止させる魔法が存在するかと急にエミルに問い掛け始め、エミルはライラの時代からそんな魔法は聞いた事も無いと告げるとロマンは溜め息をしながら自分が『見聞きした物』を話し始めた。
「うん、急に身体や世界の時間が止まったって感覚が来たと思ったらティターン兄妹が僕の目に映って、アギラの魔血晶を引き抜いて何処かに去ったんだ、アギラ撃破おめでとうって言いながら」
『何だって⁉︎』
何とロマンは世界が静止した瞬間やその間の出来事を認知し、何が起きていたかとエミル達に告げると全員驚愕し、エミルは特に時間を停止させる魔法の存在を初めて認知しつつアギラの核が回収された事に不安を覚えながら黄昏の空を見るのであった。
「ぐぅ、はぁ、はぁ、はぁ…素晴らしいぞ天使リコリス、俺を此処まで追い詰めたのは我が師アザフィールやシエル、魔王様に続いて4人目だ…‼︎」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…‼︎」
少し時を遡り外での戦いにて、ダイズはリコリスの実力に満足しながら自身を追い詰めたのは師であるアザフィールとシエルに何と魔王に喧嘩を売って追い詰められた事を暴露しつつ4人目と話しながら傷を癒す魔力が無くなりながらも構えていた。
一方リコリスも片腕の骨を治す魔力すら尽き掛けながら構えており、その顔や素肌には打撲痕が残っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、未だ倒れないんですね…‼︎」
「ふ、ふふふ…これでも未だ若いものには遅れをこれ以上取らせる訳にはいかんのでな…‼︎」
更にアレスター、アザフィールもボロボロになっており、アレスターの方は魔法を撃つ余力を失いつつあり、アザフィールも絶技を1発か2発撃てれば良い所まで魔力が尽き、残りは素の剣術で戦う他に無かった。
『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!』
そしてアイリスとシエルも他4人まで余力が無い訳では無いが相当力を使い果たし、何方が倒れても可笑しく無い状況になっていた。
しかしシエルは相変わらずオリハルコンソードでベルグランドを残した状態であり、アイリスは今アレを使われたら防げないと感じながら矛を構えていた。
【カチッ‼︎】
「っ、これは時間停止魔法⁉︎
姉様‼︎」
「分かってる、ティターン兄妹だ‼︎
奴等、アギラの核を抜き取ってる‼︎
此処でアギラを逃す可能性を作る訳には」
「待て、戦いは終わりだ」
瞬間、世界が静止し同じ魔法を覚えてる超越者6名以外の時間が完全に止まり、リコリスとアイリス、アレスターはティターン達が時間を止めアギラの核を回収した事を視るとアギラが生き残る可能性を潰すべく兄妹を止めようとする…が、突然シエルが戦いは終わりだと告げ剣を納め始め他の2人も構えを解いていた。
【カチッ‼︎】
「戦いは終わり、それはどう言う⁉︎」
「こう言う事だ…聞け、アギラ派の者共よ‼︎
お前達の将アギラはたった今死んだ‼︎
よってこの戦いは我々の敗北である、即時退却せよ‼︎」
アイリスは再び動き出した世界の中で戦いは終わりとは何なのかと問うと、シエルは何とアギラは死に、戦いは敗北したと魔族や魔物達に叫び、それを聞いた連合軍や天使、魔族達は騒つき始めた。
「ア、アギラ様が死んだだって⁉︎
そんな馬鹿な…‼︎」
「…あぁ、アギラ様のお身体が灰になって魔法使いエミル達が立っている⁉︎
て事は…‼︎」
しかしアギラ派の魔族達は簡単には信じられず宮殿跡を透視すると、アギラは実際にエミル達の手で灰にされた光景が映り、アギラが『敗北』した事を理解してしまう。
「もう一度言う、アギラは死んだ‼︎
よって現場指揮は私が取るが、これ以上の戦闘による消耗は本格的に我等が敗れ去る事を意味する‼︎
なのでアギラ派の魔族達は魔物を引き連れ、撤退せよ‼︎」
「っ…ち、畜生‼︎」
【ビュン‼︎】
更にシエルはアギラは死んだと強く告げ、またこれ以上の消耗こそ本格的に魔界が敗れた事を意味する為魔物を伴い撤退する様に命令する。
すると魔族達は目の前の敵を無視して魔物全てを連れて撤退し、残るはシエル達3人だけになり連合軍や天使達の視線が自然と集まった。
「何故、アギラの魔血晶を回収したのにそれを彼の部下達に言わないのですか?」
「理由は簡単だ、奴は『魔王』様より最後のチャンスを賜ったのに物にしなかった。
よって我々が奴を始末すると言う命を実行するだけの事だよ。
では何時かまた会おうか、天使アイリス」
アイリスは疑問であるアギラの核を回収した事を告げなかった理由を矛を構えながら問うと、それをシエルは指で摘みながらラストチャンスを掴めなかった為始末するからだと答える。
それからアイリスに対し不敵な笑みを浮かべると転移してその場から消える。
「ではさらばだ天使リコリス、次に会ったら決着をつけようか?」
【ビュン‼︎】
「はぁー、はぁー、もう2度と戦いたく無いわ…‼︎」
するとダイズもリコリスに次に会えば決着をつけるかと質問を投げ掛けながら転移し、対するリコリスはアイリスからの治療を受けながら2度と戦いたく無いと話し、光の籠手のブレードを畳み戦闘態勢を解除する。
「なら私も去ろう、さようならだ魔法の天才アレスターよ。
…出来れば、輪廻転生の時が未だ先であり戦う機会があれば是非手合わせを願いたい物だよ」
【ビュン‼︎】
「あっはは…輪廻転生ばかりは私には如何しようもありませんけれどね…」
そして最後にアザフィールも去り、アレスターの輪廻転生が未だ先だと願いつつ、また手合わせをしたいと言う戦士の矜持を見せ付けて行く。
対するアレスターも輪廻転生ばかりは如何しようも無いと語り、頭を掻きながら一先ず戦いは終わった事に一息を吐いていた。
「聞いたか、我が妹達が悪逆の将アギラを討ち取ったぞ‼︎
我等は勝利したぞぉぉぉぉぉ‼︎」
『ウォォォォォォォォォォ‼︎』
そしてアルクが最後にエミル達がアギラを討ち連合軍が勝利した事を告げると、連合軍は少なくない犠牲を払いながらも勝利を喜び、またこの戦いで死んだ者達の鎮魂を込めて勝鬨を上げる。
その様子を見たアイリス達は一先ずこの空気に水を刺さない様にティターン兄妹の行動を伏せながら集まる天使やカルロ達に頭を撫でるのであった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
最後の1撃はロマンの手により下され、アギラは斃されました。
そしてティターン兄妹にアギラの魔血晶は回収されましたが、結局これが最後のチャンスだったので後に待つのは…。
では今回は時間停止魔法をある程度、アギラの戦闘での欠点の設定を書きます。
ロマンが停止中の世界を『視れた』理由は後々語られます。
時間停止魔法:エミルの知らないこの世界の時間を停止させる魔法。
ティターン兄妹が使える魔法である程度、アイリス達も知り時間停止中に動けた理由をエミル達はまだ知らない。
アギラの戦闘での欠点:アギラは戦闘において初歩的なミス、絶技や魔法行使に体内魔力や魔法元素を必要以上に練り上げてしまう癖がある。
その為魔法元素や魔力の動きを見切れる人物と相対した時にその欠点の所為で次にどの魔法、絶技が来るか判別されてしまう。
更にアギラは戦い慣れしていない為長時間フルパワーを維持する事が出来ない。
これはアギラが他人を蹴落とし自らは余り手を汚さなかった為起きた物である。
なので時間を掛けてしまうとアギラは戦闘で相手に勝つ事が出来なくなってしまう。
シエルとダイズが性格面以外で同列に扱われたく無い理由はこの戦闘での欠点に起因している。
次回もよろしくお願い致します。




