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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第2章『アギラの動乱編』
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第31話『決戦、来たれり』

皆様こんにちはです、第31話目更新でございます。

今回からグランヴァニアでの戦いは決戦に突入します。

地上界と天界の連合はこの1戦で悪逆の将アギラを斃せるか、またアイリス達とシエル達が必然的に衝突する為彼女達の真の力をご覧下さいませ。

では、本編へどうぞ。

 グランヴァニア宮殿跡前、空は既に黄昏に染まり天使が収容所群に引き篭もり守護結界で虫1匹すら通さない様にしており、魔族達は苛立っていた。

 折角の花火を爆発させられ無い事に。


「糞、天使達が‼︎

 折角の魔血破(デモンズボム)を無力化しただけじゃなく収容所群に守護結界を張りやがって‼︎

 お陰で人体爆弾のお楽しみも鏖殺も出来なくなりやがった‼︎」


「ああ、忌々しいよな。

 だが、今はそれよりも…」


 魔族達は不平不満を口々にし、地上界の者達を殺せない事や天使達を睨み付けてストレスの吐口にしていた。

 が、1人の魔族がそれよりもと収容所群よりも先、宮殿跡と収容所群の間の1キロ前に陣取る魔族達の千里眼(ディスタントアイ)に同じく守護結界を張りながら収容所群まで馬で駆け抜ける地上界の連合軍と天使達の軍団が映り、守護結界が張られている間は並の魔族は手出し出来ない為に身構えているしか無かった。


「畜生が、アギラ様の言う通り次が俺達の首が飛ぶか奴らが死ぬかの戦いになる‼︎

 絶対に連中をぶっ殺してやる‼︎」


 魔族達は空と地上の両方に陣取り、オリハルコンゴーレムやハイゴブリンロード、アークドラゴンと更に蜘蛛型魔物の討伐推奨レベル160の『ヘルスパイダー』を数に物を言わせて並ばせて地上界と天界の両軍を相手にしようと弓や魔法を構えて決戦の地に敵が踏み入るのを待ち構えていた。




「この先が第2、第3収容所群よ! 

 そして千里眼(ディスタントアイ)で視えてる通り奴等は収容所群と宮殿跡の間の1キロ地点に陣取ってる、兵達は天使達の守護結界から抜けない様に馬を走らせながら決戦の地へ進みなさい‼︎」


『はい、エミル王女殿下‼︎』


 その頃エミルはロマン達と並走しながら第2、第3収容所群の前1キロまで漸く到達し、連合軍の兵士達に大声で天使達が張っている守護結界から出ない様にしながら従わせ馬達も背に乗せた人間達の命令を聞き一定のスピードで走りながら収容所群の500メートル前まで一気に駆け抜ける。


「(…待ってて、生き延びたグランヴァニアの民達。

 この戦いを終結させたら必ず…‼︎)」


「(必ず収容所から出してあげるから、だからそれまでもう少しだけ…‼︎)」


 エミルとロマンは通り過ぎ行く第1収容所群よりも規模が大きい2つの収容所群を見ながら中に居るグランヴァニアの民達に想いを馳せながら決戦の地に目を向けて過ぎ去って行く。

 それはサラ達やネイル達、アルク達や連合軍も同じであり、全員が罪無き民を救う為にアギラ達との戦いを一刻も早く終わらせようと決意を固めていた。


「────決戦の地に着いた‼︎

 全員速度を落として止まれぇ‼︎」


 そうして馬を走らせて駆け抜けて行く中、アルクが魔族やドラゴン達を目視で小さく確認すると全体に馬を走りから歩きに変え、ゆっくりと決戦上に向かい始めると徐々に魔界の軍団の数が見え始め、その数は最早20万を上回り物量ならば完全に連合軍の初期の軍勢すら超えていると。

 だが連合軍の、地上界の軍勢に恐怖は無かった。

 あるのは魔族アギラ達への怒りと平和を願い戦う心であった。


「ライラ様の祝福を受けし者達よ、スクナ様の子達よ、ロック殿の同胞(はらから)よ、ゴッフ殿の義兄弟達よ‼︎

 いよいよ決戦の時は来た‼︎

 諸君の心にあるのは怒りと平和を願う心だろう、分かるとも‼︎

 私も同じ想いを抱いているからだ‼︎」


 そうして決戦の地を目の前にランパルド、ロック、ゴッフ、サツキが前に出て鼓舞する為の言葉を掛け始める。

 初めはランパルドから口を開き、連合軍と天使達は黙って聴き始め、その背後に居る魔族達は武器を地面に突き、足を地に叩き付け戦い前の熱気を帯び始めていた。


「妾達の友は、家族は、あのヴァレルニアでの戦闘で死した者も多かった。

 グランヴァニアの民達の犠牲と共に…! 

 じゃが、それを妾達は無意味な血が流れた様にしては祖先の名に誓い決して出来ぬ‼︎」


 次にサツキは先のヴァレルニアでの惨劇を話し始め、事実あの魔血破(デモンズボム)とオーバーロードドラゴンが生み出した悲劇により友を、家族を喪った兵が多く居た。

 中にはあのブレスで消し炭になり遺体すら残らなかった者も数多く居た。

 しかしサツキは語り出す、その犠牲を無意味な物に変える事は出来ないと。


「我等地上界に生きる命は、あの様な悲劇や500年前の戦いによりこの世界に流れた血と涙をこの胸に刻み込み、それ等を決して只の過去の出来事にしてはならない! 

 今起きている戦いの為に無差別に流れてしまったとこの心に仕舞い込み、そして我等の未だ見ぬ未来の為にそれを終わらせ、2度と起こさせぬ様にしなければならない‼︎」


『オォォォォォ‼︎』


 ロックは今を生きる者達は500年前から続く悲劇の全て、大地に流れた血と涙を只の過去の産物にせず今も続く戦いの為だと断じ、先の見えぬ未来の為にこの果てしなく続く戦いを終わらせ2度と同じ悲劇を起こさせぬ様にと鼓舞すると連合軍の兵達が魔族達の地鳴らしに負けぬ声を轟かせる。


「ドラ息子共、武器を取れ、魔法を放て‼︎

 この戦いをその悲劇の無い未来の為の第1歩にさせるぞ‼︎

 もっと雄叫びを上げやがれ、ワシ等の怒り、ワシ等の平和への想いは、死んで逝った奴等の無念はこんなもんじゃねぇだろぉ‼︎」


『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎』


 ゴッフは武器や魔法を振るう様に叫び、この戦いを平和の未来の為の1歩とする様にと命じる。

 更にもっと声を高らかに雄叫びを上げる様に叫び兵士達に様々な感情を込めさせて行く。

 それ等を聞いた兵達は魔族達の地鳴らしを掻き消さんばかりの雄叫びを上げ目の前の敵達を睨み付けていた。

 その声に、視線に魔族達は地鳴らしを止めて行き武器を構え始めていた。

 そしてそれは連合軍も同じだった。


「………皆、行くわよ、より良い今と未来の為、過去を胸に抱きいざ我等は戦わん‼︎

 進め、この地に集まりし地上界の戦士達よぉぉ‼︎」


『ウオォォォォォォォォォォォォ‼︎』


【ドドドドドドドドドドドドドドド‼︎】


 最後にエミルが覚悟を決めると号令を掛け、より良い現在と未来の為、喪われた過去を胸に秘め遂に連合軍がグランヴァニアでの最後の戦いに踏み出した。

 その瞬間兵士達を守っていた守護結界も消え、天使達も連合軍に並行して飛翔し決戦の火蓋は落とされた。


「魔法と矢を放て、地上界の塵芥と天使共を蹴散らせ‼︎」


「敵の攻撃魔法を迎撃、又は矢と共に結界で防げ‼︎」


【ドォォォン‼︎

 キィィィィィン‼︎】


 魔族の現場指揮官が魔法と矢を放つ様に叫び、それに対抗する様にアルクが迎撃が防御を何方か出来る方にやらせ、空中で魔法や絶技の矢が相殺され合い、そうで無い物は互いの結界に阻まれる。

 更に天使達は魔族達の魔法、絶技を守護結界と違う光の盾と言うべき魔法で守りながら突撃し魔族や魔物と接敵する。


『オォォォォォォォォォォォォォ‼︎』


【カンキンキンキンカンキィン‼︎】


 更に地上で遂に連合軍と魔族、魔物が接敵し互いの武器で斬り結び合い赤と青の鮮血が地を濡らし合い、武器と鎧に付着する。

 その中で魔族達はエミルやロマン、ネイル達を執拗に狙い、明らかに彼女達をターゲットにしていると見て取れる戦況になり連合軍や天使もその妨害を始める。


「死ねぇエミル、灼熱雨(マグマレイン)‼︎」


「もうアンタたちは私の敵じゃない、火球(ファイヤーボール)‼︎」


【ドォォォン、ボォォォッ‼︎】


 それでも数は多くエミル達に敵が行かない事は無く名無し魔族が何体も火の最上級魔法で焼き尽くそうとした。

 しかし、エミルは既にこの時代で初めて魔族と戦った頃を遥かに凌駕する為、火の下級魔法で最上級魔法を打ち破り名無し魔族を灰燼に帰させていた。


『死ねぇ勇者に英雄サマの子孫共がぁ‼︎』


『邪魔だぁ‼︎』


【ザン、ブシャァァ、ボォォォッ‼︎】


 更にロマンとネイル達の方も襲われるがそれぞれ武器や魔法を駆使して前に進み出し、並居る魔族や魔物を全て屠り始めていた。

 一方アイリス、リコリス、アレスターは襲い来る魔族を葬りながらオーバーロードドラゴンがまた来ないかも警戒しつつ周囲を見渡していた。

 が、オーバーロードドラゴンは何処にも見当たらずアイリスも怪訝な表情を浮かべていた。


「可笑しい、オーバーロードドラゴンは全てで3体居た筈。

 なのに残り2体が現れないのは一体…」


「簡単な話だ天使アイリス、アレは私がアギラに貸し与えたモノ。

 よって、趣味を優先し盟約を破った奴から回収したまでの事だ」


 残り2体のオーバーロードドラゴンの出現兆候が無い事を魔族やアークドラゴンを屠りながら呟いていた所、其処に猛スピードでシエル、ダイズ、アザフィールが現れアイリス達の前に浮かびながら立ち塞がっていた。


「シエル、それにアザフィール‼︎」


「そして、アイツが魔界の第2の将、狂戦士(バトルマニア)のダイズって野朗か‼︎」


 上空を見上げたエミル達誓いの翼(オースウイングズ)は忘れもしない顔、自身達を敗北させライブグリッター探索から魔族への対処に目的変更をさせられたシエルとアザフィールを見て苦々しい表情を浮かべていた。

 その中でアルは見慣れぬ魔族をアイリス達の言った第2の魔族の将ダイズと判断して汗を掻いていた。


「シエル、ダイズ、そしてアザフィール! 

 矢張り現れましたね…我が妹、弟達、そして地上界の勇士達‼︎

 予定通り彼女達の相手は私達3人がやります、横槍や援護は不要です‼︎

 寧ろ巻き込まれない様に気を付けなさい‼︎」


「おや、奇遇だな。

 私達もアギラの名誉挽回の邪魔にならない様にお前達を相手取ろうとしていた所だ。

 ならアギラの部下達も横槍入れるなよ…死ぬぞ?」


 アイリスは乱入して来たシエル達を妹、弟の天使達や連合軍に相手をし、巻き込まれない様に注意を促す。

 するとシエル側もアギラの名誉挽回をさせるべく同じ考えだった為、アギラ達の部下に横槍を入れたら死ぬと警告を入れる。


『ゴクッ…』


 魔族達はそれがアイリス達に殺されるか邪魔した為シエルに殺されるかの何方かだと考え天使達と共に距離を置く。

 そしてアイリスはシエル、リコリスはダイズ、アレスターはアザフィールの前に対峙し相手を見定め、ダイズ以外は武器や杖を構えた。


「ふっ、天使リコリス…天界のNo.2の実力者、ならば此方も本気にならねば無作法と言う物だ。

 はっ‼︎」


【パキィィン!】


「…なっ………レベル440が、760に…⁉︎」


 するとダイズはリコリスに本気にならねばと口にし、気合を入れると彼の身体を包んでいた枷が現れては砕け散り、圧倒的なプレッシャーが戦場を支配する。

 エミル達魔法使いやロマンとルルは鑑定眼(アナライズ)で彼のレベルが440から一気に760まで跳ね上がった事に恐怖すら覚え、ならばシエルとアザフィールはどんなレベルなのかと絶望的な計算を始めていた。


「アザフィール、我々も本気を出すぞ。

 アイリスは天界最強の天使、アレスターはエルフから天使化した、ならばその実力は推して知れ」


「勿論、分かってますとも………ふん‼︎」


 更にシエル達も同じく力を込めると身体を覆った枷が砕け散り、その真の力が白日の下に晒される。

 鑑定眼(アナライズ)で見えたレベルはそれぞれ450、350から800、750にまで跳ね上がってしまいこれがシエル達の真の力だと知りエミル達は未だ自分達はシエルの真の実力の半分にすら到達していない事に愕然としていた。


「ではリコリス、アレスター、我々も本気を出しますよ。

 彼女達相手に油断しない事を」


「分かっていますわ、アイリス姉様」


「ではお二人共、ご武運を…すぅぅ…」


 するとアイリス達も本気を出すと話し、アイリスは2人に解っている忠告を敢えて出し、アレスターが2人の武運を祈ると3人は精神統一の様に瞳を閉じた。

 すると黄昏の空から3本の光が3人を包み、平均してレベル400だった3人はアレスターが745、リコリスが755、そしてアイリスはシエルと同じレベル800と化し、背中から生えた天使の羽は白銀の光を放ち3人のそれぞれの瞳の色が金色に変わっていた。


「こ、これがアレスター先生達の、本気…‼︎」


「何と、人知の及ばぬ………途方も無い領域に先生達は…‼︎」


「さ、流石最強の天使様達とシエル様達なんだな〜…‼︎」


 エミルとレオナはアレスター達のレベルがシエル達の本気に驚愕し、シエル達の真の力を知っていたムリアはアイリス達3人の実力が全く劣らない事の方に流石だと褒め称えながらその神々しさに天使も魔族も圧倒され、魔物はシエル達の殺気込みで怯えてしまっていた。


「さあ、行くぞ‼︎」


「ふっ‼︎」


【ドォォォォォォォン‼︎

 ドドドドガンキンガンキンバキドガドドドドドォォォン‼︎】


 そして6人は正に目にも止まらぬスピードで空を駆け、アイリスとシエルは矛と剣、リコリスとダイズは刃を展開した籠手と素手、アレスターとアザフィールは魔法戦や時々近接戦闘を挟み、それぞれが空中で衝突する度に余波が地上にまで及び足を取られる者が多数居た。


「くっ、皆、あの化け物達はアイリスやアレスター先生達に任せて早くアギラの所に向かうわよ‼︎

 折角押さえてくれてるのに動かなかったら何時まで経っても戦いは終わらないわよ‼︎」


「わ、分かったよエミル‼︎

 サラ、ネイルさん、皆行くよ‼︎」


 するとエミルは思考を直ぐに切り替えてシエル達をアイリス達に任せ自分達は作戦通りにグランヴァニア宮殿跡に向かう事をロマン達に指示を出す。

 それを聞いたロマン達も自分達の役割を思い出しそのまま馬を走らせ邪魔する魔物や魔族達を蹴散らし始める。


「(そう、それで良いんですよエミル様! 

 貴女達は作戦通りこの血みどろの戦いの根本たるアギラを斃して下さい‼︎)」


「ははは、流石天界のNo.2‼︎

 攻撃が重く俺の心を躍らせる‼︎

 さあ、もっと俺を愉しませろぉ‼︎」


「ふっ、はっ、せいやぁ‼︎」


 その戦いの中でアレスターは一瞬エミル達に目を向けてアギラを斃しに向かう事を正しい判断だとしてアザフィールと高速移動しながら魔法で撃ち合い、ダイズとリコリスは激しい殴り合い(リコリスは籠手のブレード込み)のノーガードで原始的な戦いをし、互いに拳で絶技を放ち腹や顔面、心臓の上の胸等を骨を砕き、内臓を破裂させては回復魔法(ライフマジック)で再生させ吐血等を繰り返していた。


「はっ‼︎

 ふふ、妹さんがダイズと殴り合って血反吐を吐いてるぞ? 

 助けなくて良いのかアイリス?」


「リコリスは良く出来た妹です、だからこそ心配は不要、よ‼︎

 はぁぁぁぁ‼︎」


 そしてアイリスとシエルはリコリスとダイズの戦いを見ながら高速で矛と剣を打ち合わせ、肩を薄く切られたり脇腹を掠めたりと言った小さな傷を作るのを高速でやり合い、更に至近距離での複合属性魔法の撃ち合いや絶技の応酬を繰り返し、3対3の中で1番熾烈な戦いを繰り広げていた。

 尤も、これ等は常人の目では捉えられず枷を外したアルク達やエミル達でさえ動いた影を捉えるのがやっとな超スピードである。


「クソォ、魔法使いエミルと勇者ロマン達を殺せぇ‼︎

 アギラ様の下に行かすなぁ‼︎」


「邪魔よ退きなさい‼︎」


 魔族達も漸くエミル達への攻撃を再開し、何度も近付こうと試みるがサラの矢や エミルやロマン、ルルにキャシーにシャラ、ムリアの魔法で撃ち落とされる者が出たり近付いてもロマンやルル、アルにネイルとガム、ムリアの武器で屠られエミルの杖で殴られて吹き飛ばされたりサラは矢を直接刺したり等して徐々に包囲網を突破し始める。


「皆の者、我が娘達の活路を開く為エミル達に近付く魔族と魔物を集中して攻撃せよぉ‼︎」


『オォォォォ‼︎』


 更に此処でランパルドが全軍にエミル達の活路を開く様に指示を出し、連合軍と天使達はエミル達が先に進める様に彼等を庇いながら先へ先へと行かせる。

 その中にはアルクにレオナとカルロ、マークス、リンとエミル達に関わりが深い者達がエミル達の為に路を開こうとしていた。


「皆…ありがとう…行くよ皆‼︎」


「うん、行こうエミル‼︎」


 そうして皆がエミル達を庇う中、遂にグランヴァニア宮殿跡に続く路が切り拓かれ10人の初めに地上界で枷を外した者達の進撃が始まり魔族達がそれに追い縋ろうと必死な抵抗を見せる。


「おっと、アルの兄弟のトコには行かせねえぜ外道魔族共‼︎」


「姉さんの下には、命を懸けてでも行かせない…‼︎」


「行ってこいエミル、ロマン君! 

 この戦いに終止符を打つんだ‼︎」


 其処にアルの兄弟職人やリン、アルク達が路を阻みエミル達へエールを送りながら魔族や魔物達と戦い始め、転移する集中すらさせない様にしながら戦い抜いた。


「頼んだぞ、我が娘達…‼︎」


 それ等を見ていたランパルドや各王達も武運を祈りながら娘や弟子、その仲間達が必ずアギラを討ち斃すと信じて自らの戦いを繰り広げていた。

 その空中ではアイリスとシエル達の超常的な戦いも続いており、これ等の戦いが何方に転び勝利を手にするかはエミル達の双肩に掛かるのであった。




 そうしてエミル達誓いの翼(オースウイングズ)、ネイル達正義の鉄剣ソードオブユースティティアはグランヴァニア宮殿跡前に漸く辿り着き、馬から降りて宮殿内に侵入する。

 其処にはアギラの部下達もまだ当然居り、エミル達の路を阻もうとしていた。


「待て、この先には我等アギラ様親衛隊が行かせは」


「邪魔だ退きやがれこの木偶の棒共が‼︎」


「親衛隊だかなんだか知らないけど、250程度が今更束になっても私達には敵わない、退きなさい‼︎」


 その魔族達は自らを親衛隊だと名乗っていたが、ルルの鑑定眼(アナライズ)で最高でもレベル250程度のレベル387の今の彼女達の敵では無く1番重装備のアルにも木偶の棒と呼ばれ、ルルに瞬きする間に斬り刻まれたりされ第1陣があっさり突破される。


「くそ、これ進ませて」


「我等が正義の刃を止められると思うなぁ‼︎」


「死にたく無かったら退いて下さい‼︎」


 次の第2陣はネイルの剣、キャシーの魔法で屠られ最早親衛隊がその機能を成しておらず、続く3陣4陣もあっさり突破され、そしてエミル達は遂に玉座の間へと辿り着く。


「見つけたぞ、アギラ‼︎」


「もう貴方の理不尽で悪趣味な策は此処まで、今直ぐ私達にその首を差し出しなさい‼︎」


 ネイル、エミルは玉座に座るアギラに対し殺気を全開にし此処でその首を差し出す様にとすら要求しながら全員で武器を構え何時でも戦闘開始を可能な状態にする。

 するとアギラは…この状況でありながら笑っていた。


「ふ、ふふふ、遂に来たかぁ…待っていたぞ、忌々しい勇者ロマンと魔法使いエミル…いや、ライラの転生体一行共‼︎」


『………えっ⁉︎』


 アギラは口を開くとエミルの事をライラの転生体だと暴露しながら叫び声を上げ、ムリアとキャシー、ルル以外がそれに驚いてエミルを見る。

 が、エミルは毅然とした態度のまま杖を構えていた。


「おやお仲間に言ってなかったのか、これは失礼を。

 何せ我々魔族の眼には魂の色が見えますからね。

 1人1人がそれぞれ全く違う色を持ちながら存在するのに、その女は500年前のライラと全く同じ魂の色を持つのだ‼︎

 理由に付きましては禁忌の魔法と流布され禁書の中に記された転生魔法を使いこの世に蘇ったのだろう。

 違いますかね、500年前の亡霊さん!」


 アギラはベラベラとロマン達が聞いてもいない事への解答を話し始め、魔族の眼には魂の色を視る力が備わっている、禁書内の禁忌とされる転生魔法を使い現代に蘇った亡霊と嘲りながら指を指す。

 そのアギラの話にエミルは未だ杖を構えていた…が、溜め息を吐きその閉ざしていた口を開いた。


「…そう、私は転生魔法を作り上げて500年前の死んだ時から現代に蘇ったわ、全ては魔族達の蛮行や魔王を討伐する為に‼︎

 理不尽な謀略を消す為に‼︎

 …皆黙っててごめんなさい、でも話さなかったのには理由があるの。

 この話をしても余計な混乱を生むか作り話かどちらの反応をするしか無い、だから黙ってこの世界で14年の間生きてきたのよ」


 エミルはそれを事実だと話し、話さなかった理由も余計な混乱を作りたく無いと言う、旅をして来た、魔族と共に戦って来たから分かる彼女の自信家でありながら慎重な態度を見せる『らしさ』があった。

 ロマンはそれ等を聞きエミルが何処までも自信家だった、が慎重を重ねる理由がストンと腑に落ちた感覚を覚えていた。

 するとこれを聞いたアルはエミルに問い掛け始める。


「なあ、お前さんは500年前の知識を持っているからガキの頃に誰かをそれを自慢する事はあったか? 

 ライラとして誰かを鼻で笑った事があったか? 

 そして…今此処に立つお前さんは『どっち』なんだ?」


 アルの問い掛けは500年前の知識と言う物を使い披露しては自慢してたか、優越感に浸った事はあったか、今此処に立つのはライラかエミルか何方かを問いていた。

 するとエミルは杖の構えを解かない、魔族アギラから視線を外さないを継続しながら答え始めた。


「いいえ、知識を出す時は誰かの顔に泥を塗らない様に努めたし、アレスター先生を本当に先生としてみて、この方ならライラを超えると確信を持っていたからたかが前世(ライラ)程度と思えたわ。

 そして、何より私が『エミル』として14年間生きて魔族や魔王討伐を悲願としてこの場に立つ事は変わらないわ‼︎」


 エミルは過去にアレスターとの授業で知識を自慢する事や誰かに泥を塗る行為をした事は無く、現在までそれを務めて更にアレスターを前世(ライラ)を超えると信じてたが故にライラ程度、と優越感に浸る事は無く寧ろその才覚を憧れたりした為にアルの問い掛けに誰かをライラとして貶した事は無かった、そしてこの14年の間も魔族や魔王討伐を悲願として生きて来た事に変わり無しと答え叫んだ。

 それを聞いたアルは頷きながらアギラの方を向く。


「なら良いや。

 だったら早く乙女の秘密も暴露しやがるこのクソッタレを斃して祝杯を上げようや‼︎」


「エミル…ありがとうね、アレスターの事をそんな風に想ってくれて。

 じゃあ私からも何も言わないわ‼︎

 そしてこの様子だと誰も変な考えを持つ事は無いみたいだから安心してよエミル‼︎」


 アルはアギラをさっさと斃し祝杯を上げようと話しながら笑い、サラもエミルがアレスターをどれだけ慕い、どれ程の才能があったかを見抜きながら彼から手解きを受けてたかを知ると最早何か言う事が無くなり、弓を構える。

 そしてそれはネイルやガムにシャラ、何より共に居た時間が最も長かったロマンも同じであった。


「そうだ、エミルが自分の前世をライラ様なんて言わなかったのは、周りの皆が…何より、僕を真の勇者って認めてくれた時に余計に萎縮させるから伏せてくれたんだ、自分の成長や周りの成長を自然体で見守り、『一緒に歩く為』に! 

 エミルはそんな優しい女の子なんだ…だからアギラ、お前の変な言葉には惑わされないぞ‼︎」


「おやおや、重大な秘密を隠していたのをそんな子供の様な理由で結束を高めるとは…苛立たしい。

 なら次はライラ、いやエミルがこの聖戦の儀を悪化させた事を話しましょう!」


『⁉︎』


 するとアギラはエミルの秘密で余計に結束が強まった事が気に食わず眉を顰めると、次にはこの聖戦の儀を悪化させたのはエミルだと話し、周りや何よりエミル自身を驚愕させる。


「エミル、貴女が縛られし門(バインドゲート)で門を500年封印したから地上界は戦いの前、いやそれ以上の復興を遂げました。

 しかしその一方、魔界では門が封印された為魔法元素(マナ)の流れが可笑しくなり、作物は枯れ貧困に喘ぐ最悪の500年間を過ごす事になったんですよ! 

 故に、今の魔界であの時代を経験して恨みが無い魔族は居ませんよ‼︎

 かく言う私もあの頃は名無し魔族として2度目の侵攻に参加した1人ですからねぇ‼︎」


 アギラはエミルが前世で門を封印した事で魔界側の魔法元素(マナ)の流れが可笑しくあり、貧困に喘いだ魔族達が数多く居りエミル…ライラを恨まない魔族は居ないとまで話した。

 初めはそんな事はと思い聞き流そうとしたが、エミルは魔族達が忌々しいライラと特に敵視していた事を思い出し、もしも事実なら自分は地上界の為にやった行いはとんでもない爆弾を仕掛けた事になるのでは? 

 そう思い始め固唾を呑み込み出していた。


「ふはははは、分かったかこの偽善者! 

 お前の行いの所為で碌に食べる物が無く死んだ魔族が居て、魔王様もそれはそれは大変お怒りになり、魔界側の聖戦の儀のルールを破ろうと決断を」


「────その口を閉じるんだな、嘘っぱち‼︎」


 アギラはエミルの事を顎に手を当てながら糾弾し始め、魔王も聖戦の儀のルールを破る決断をした…そう口にし始めていた所で、アギラを見ていたムリアがアギラを嘘吐きだと叫びその口を閉ざさせていた。


「エミル様、最北の世界樹で聖戦の儀の法を知った時やシエル様の話を良く思い出すんだな! 

 魔界側は500年前も楔の泉を探したり虐殺行為を裏でしていた事をしてたんでしょ⁉︎

 エミル様は日記をつけて何があったか要点を纏めて、それを俺達にも良く見せてくれた筈なんだな! 

 それで聖戦の儀の法が形骸化してるって結論付けたじゃないですか‼︎」


『…あっ‼︎』


 ムリアはエミルに対し最北の世界樹で聖戦の儀を知った時やシエルから楔の泉を探している話を思い出す様に言われ、皆も実はエミルが良く日記を書き、何かあればそれを見せて全体的に内容を共有して他のを思い出しながらアギラの話に矛盾点が見つかり全員ハッとしながらアギラがドゥナパルド4世達を騙した様に自分達にも嘘を吐く事をしたと知り怒りが満ち始めていた。


「それと魔界は確かに貧困に喘いだけど、200年後に魔物達が門を通れる様になってから徐々に解消されて、70年で生活は安定したんだな! 

 そして何より…お前は嘘を吐く時は顎に手を当てながら人を観察する癖がある事はお前の元部下の俺でさえも知ってるんだな‼︎」


「んぐ⁉︎

 うぅ、ゥゥゥ…‼︎」


 更にムリアは貧困に喘いだ時代は確かにあれど、魔物達が門を抜けれる様になって70年で生活水準は安定を取り戻した事、更に…アギラの癖である嘘を吐く時は顎に手を当てながら他人を観察する癖を暴露し、エミル達はドゥナパルド4世を騙してた時も確かに顎に手を当てていた事を思い出した。

 それ等を暴露されアギラは唸り始め…そしてシエル達の様に枷を砕き、レベル400になりながら吠え始めた。


「がぁぁぁぁぁクソがぁ‼︎

 私の策も、何もかもお前達に関わってから碌に成果を上げられない‼︎

 だから魔王様にラストチャンスと言われ後が無くなったんだ‼︎

 許すまじ、エミルにロマン‼︎

 特にロマン、お前は『ミスリルゴーレムを嗾けたあの時』に両親と一緒に死んでいればこうならずに済んだんだァァァ‼︎」


「…何だって…じゃあ父さん達が死んだのは…お前が…‼︎」


 アギラは玉座を魔力で吹き飛ばし、地団駄を踏みながらエミル達に関わったが故にこうなったと逆恨みを吐きながらエミルとロマンを名指しし、更にロマンにはミスリルゴーレムを嗾けたあの時に死ねばと口にし、ロマンやエミル達は此処でロマンの両親がアギラの所為で死んだと悟り、全員はアレスターが死んだ時とロマンの両親が死んだ状況が酷似している事に気づき目を見開き始めていた、それも怒りで。


「ああそうだよ、私の使命の1つには将来的に地上界侵攻の邪魔になる危険性が高い人材や勇者の血を引く者をあらゆる手を使い暗殺するってあったんだよ‼︎

 なのにアレスターまでは問題無かったのに勇者の血を引く奴は天性に運が良いのか悉く生き残りやがって‼︎

 其処からどんどん生き残る奴が増えやがったんだ‼︎

 だからお前やエミルは必ず殺してやる、この手で必ずなぁ‼︎」


 エミル達はアギラの使命にアレスターの様な天才やロマンの様な勇者ロアの血を引く者を暗殺する事を暴露し始め、アレスターまで暗殺したは良いが勇者の血を引く者を狙い出した途端にその使命が頓挫して行き趣味の地上界の者が完全な絶望に歪むフラストレーションを溜めてた様であった。

 それを聞いたエミル、サラ、そしてロマンは…特に怒りを爆発させ始めた。


「…そう。

 なら僕からはこう言ってやる、ギャランや父さん達の仇だ‼︎

 これ以上お前の所為で僕の様な思いをする人を無くす為に、僕達はお前を討つ‼︎」


「アレスターの仇討ち、此処で果たさせて貰うよ、この外道‼︎」


「やれる物ならやってみろ、塵芥共がぁぁ‼︎」


 ロマンやサラが仇討ちを叫び、エミルもアレスターやロマンの両親、更に恐らくはあの村を魔物に滅ぼされた勇者の少女もアギラの手でそれが行われたと悟り、この外道を斃すべく全員がロマンを中心に突撃を始める。

 それに応じアギラも戦闘態勢に移り迎撃を始める。

 そして今、グランヴァニアでの戦いの最終決戦は幕を開けるのであった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

大事な戦いの前にエミルの前世バレが発生、しかしロマン達はエミルはエミルと割り切りアギラの動揺を誘う作戦1失敗。

更にエミルが門を封印した所為で更に戦が悪化したと言う嘘による動揺を誘う作戦その2失敗、からのアギラ逆ギレとなりました。

更にアイリスやシエル達はエミル達の更に上の高みに位置するレベルだったり、アギラこそがロマンの両親の仇と様々な事が判明しました。

そして次回は遂にアギラ戦になります。

エミル達が如何に戦うか、その結末は如何なるかお楽しみに下さいませ。

では今回はアイリスやシエル達の真の実力、アギラの詳細な設定を書きます。


アイリスやシエル達の真の実力:アイリスとリコリス、天使化したアレスターやシエル達は互いに枷を付けて意図的にレベルを下げて来るべき敵と戦うために力を蓄えていた。

そのレベルはアイリスとシエルが800、ダイズが760、リコリスが755、アザフィールが750、アレスターは745とエミル達を50%程度で倒せる程の実力であった。

なおアレスターは天使化した際に生きていれば自力で辿り着けた領域に力を神に解放して貰いこのレベルに至っている。


アギラ:悪逆の将にして地上界の者を塵芥と見做しその顔が絶望に歪む瞬間を悦楽とする魔族。

魔物を嗾けアレスターやロマンの両親を殺害したのもこの魔族である。

その真のレベルは400であり魔族の将としてみれば十分だがシエル達からしてみればレベルも性格も同類に扱われるのを毛嫌う程度でしか無い。

その使命は試練の問いに自力で辿り着こうとする者、将来の侵略の邪魔になる者、勇者の血を継ぐ者の暗殺と楔の泉破壊であった。

しかしアレスターは暗殺出来たものも勇者の血を継ぐ者は天運に恵まれた為か暗殺に悉く失敗、特にロマンに至ってはミスリルゴーレムを嗾けて失敗した為特に警戒していたのが真実である。

それらを知ったエミル達はこの悪逆の将を斃す為に全力を注ぐ事になる。


次回もよろしくお願い致します。

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