表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第2章『アギラの動乱編』
29/49

第29話『4国連合、反抗する』

皆様こんにちはです、第29話目更新でございます。

今回はロマン達の怒りが爆発してからの続きになります。

その行く末をご覧下さいませ。

では、本編へどうぞ。

 混乱を極めるグランヴァニア、ヴァレルニア港街でエミル達は次々と現れる魔族に最大火力の魔法を放ち、ロマン達は怒りに任せ突撃していた。


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


「ちぃ、コイツ等止まらねえ‼︎

 お前等、雑魚は構うな‼︎

 勇者とその仲間共を狙え‼︎」


 特にロマンやネイル達の一騎当千振りは目ざましく、他の兵達を助けながら魔族達を屠りこれ以上の犠牲を出させない様に怒りに身を任せながらも立ち回っていた。

 それに焦った魔族達はロマン達に狙いを絞り始めるも、背中を見せれば連合軍に斃されると一騎当千の者達と他の兵で連携が出来上がりつつあった。


「ちぃ、塵芥の地上界のゴミ共が‼︎

 アギラ様の話なら連中はもっと混乱状態になって殺し易くなるって筈なのに‼︎」


「確かに我々は今は混乱状態にある‼︎

 だが、それよりも我々は今怒りの炎で燃え上がり、貴様達をこの手で討つと誓い立つ者が多いだけだ‼︎

 雷光けぇぇんッ‼︎」


 魔族達はアギラの話ならばもっと混乱して殺し易くなる手筈と口にしたが、アルクが怒りの炎で燃え立ち上がった者の方が多いと口にし、複合絶技である雷光剣を使用し魔族達を薙ぎ払う。

 この間も魔族達は転移して来て攻撃を開始して無人の港街は戦場の炎に晒されるのだった。


「負傷者達を狙え、大水流(タイダルウェイブ)‼︎」


「させません、結界魔法(シールドマジック)V‼︎」


「からの『瀑風流(タイダルストーム)‼︎」


 魔族達は今度は負傷者と治療に当たる魔法使い達を狙い最上級魔法、更には中には複合属性魔法が混じり彼等を襲おうとしたが、其処にキャシーがシャラと共に結界で最上級魔法を防ぎ、複合属性魔法は焔震撃(マグマブレイク)だった為エミルが真逆の属性の複合魔法たる瀑風流(タイダルストーム)で相殺、否、押し返し最上級魔法を放った魔族ごと薙ぎ払い次の混戦地帯に向かい始める。


「怪我人しか狙えねぇ腰抜け共が、俺様達を止められると思うな‼︎」


「許さない、卑劣なお前達だけは絶対に許さない‼︎」


「こんな、こんな命を弄ぶ事を悦ぶなんて…フィールウッド第1王女、そして魔王討伐の使命を賢王から継いだ身として私はこの度し難き行為を断罪する‼︎」


 その混戦地帯の1つでアル、ルル、サラもまたこの命を弄ぶアギラの策にロマン程苛烈では無いが怒りを燃やし斧を、2本のダガーソードを、矢を用いて並み居る魔族の軍勢を斃し続けていた。


「悪よ、滅びよぉぉぉぉ‼︎」


「ネイルさんに及ばないが我が正義の槍、篤とご覧あれ‼︎」


「俺の怒りは今頂点に達した、人の姿を今この時は捨て、罪ありき魔族の姿としてお前達同胞(はらから)を討ち払わん、おりゃぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 更にその先では剣と槍で乱舞しながらネイルが襲い来る魔族達を滅ぼすべき悪として屠り、ガムも槍で魔族を翻弄し、ムリアは敢えて変身魔法(メタモルフォーゼ)Iを解き魔族の姿でアギラ派の同胞(はらから)達を斧と魔法で討ち滅ぼして行く。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


「ぐぁぁぁぁ、勇者が止まらねえぇぇぇぇぇ⁉︎」


 そしてロマンは魔族の軍勢の中心に飛び込み、青い返り血を浴びながらネイル達以上に魔族達を剣、魔法、絶技の全てを以て殺して行き、ギャランや収容所の者達が何をされたのか分からないまま死んだ無念をぶつけ、怒りのままに更に突撃する。


「くそ、この勇者怒り任せの癖に的確に俺達を殺して来やがる⁉︎

 こうなったら魔力切れを狙って」


「『大震波(タイダルブレイク)‼︎』」


『グァァァァ‼︎』


 魔族達はロマンの猛攻にたじろぎ、魔力切れを狙い撃ちする作戦にしようとした瞬間、エミルがその場に立ち入り水と土の複合属性魔法で魔族200人を一気に消し飛ばし、更に杖と剣を持ちながら自身やアルやネイル達に身体強化(ボディバフ)を掛け剣と杖で魔族を斃せずとも退かしロマンの横に立つ。


「ロマン君はいこれ、体内魔力回復用ポーション‼︎

 それと私と一緒に戦って魔力切れを起こさない様にして‼︎」


「エミル⁉︎

 んぐ…ゴクッゴクッ、ありがとう。

 これで僕はまだ…戦える‼︎

 はぁぁぁぁ‼︎」


 エミルは慌ててロマンの口に体内魔力回復用ポーションを無理矢理押し込みながら飲ませる。

 それにロマンは驚くが瓶内の液体を飲み干しながら継続戦闘出来ると話し、少しは頭を冷やしながらも未だ怒りに燃えながら突撃する。

 それをエミルは止めず空瓶を魔族に投げ付けた後魔法大砲を連発し援護を始める。

 エミルも冷静を装っているが内心は怒りに満ち、ロマンを止める気など無いのだ。


「ち、畜生が‼︎

 あの勇者に魔法使いが付いた瞬間更に動きが良くなりやがった‼︎

 一体如何したらあいつ等を止められる⁉︎」


「俺様達を止められると思うなクソ野郎共がぁ‼︎

『激水斧』‼︎」


 魔族達はロマンとエミルの合流で更に手が付けられなくなったと愚痴を零し、如何すればと独り言を話していたその背後から遂にアル達が合流。

 独り言を話した魔族は周りの魔族ごと土と水の複合属性絶技で葬られ、多くの魔族が集結する場所に誓いの翼(オースウイングズ)も集結する。


「ロマン、このまま魔族達を押し切るよ‼︎」


「お前の背中は俺様達が守る‼︎

 だからお前も俺様達を守りやがれ‼︎」


「さあロマン君、行くよ‼︎」


 ルルが先ず魔族達に回転乱舞を叩き込み、アルも手斧を投げたりミスリルアックスで薙ぎ払い、サラも矢を連発して援護をしながらロマンに声を掛けこのまま戦うと話す。

 それを聞いたロマンは静かに頷きながらアルやルルと共に前衛として戦い、サラの弓矢とエミルの魔法が炸裂する。

 その別の場所ではネイル達の絶技や魔法が飛び交い、戦場は正に怒りに燃えた戦士達の独壇場となっていた。


「ええいクソ、もっとだ、もっと戦力を投入しろ‼︎

 アギラ様より戦力投入は好きにしろと言われてるんだ‼︎」


 すると1人の魔族は戦況が思わしく無いと判明したのか戦力の更なる投入を決行し、それに伴い魔族が更に次々と転移し戦場に入り始める。

 それ等に対し4国連合、正義の鉄剣ソードオブユースティティア、そして誓いの翼(オースウイングズ)は激しい抵抗をし、3時間以上に及ぶ戦闘が繰り返され、空は徐々に明るくなりながらなお戦闘が続いた。

 そして港街の建物は完全な瓦礫になり、街は見る影も無くなって行った。


「う、うう、助かりました………では、王女様、我々も…」


「待ちなさい、病み上がりで戦場に出ないで‼︎

 我々が守るから貴方達は休みなさい‼︎」


 その間に負傷した兵達はレオナ達の回復魔法(ライフマジック)により捥げた腕や裂傷した箇所が治され、回復した兵士達は戦場へ躍り出ようとしたがそれをレオナや魔法使い達が静止する。

 結界を張りながら攻撃魔法を放ち病み上がりの兵達を守護する。

 その間も戦況は激化の一途を辿り、戦場は火の海となり双方に完全な死者が出始めていた。


「うおぉぉぉぉぉぉ‼︎」


「はぁぁぁぁ‼︎」


 その頃戦場の中心地ではエミル達とネイル達が合流し、更にマークスやアルク達枷を外した者達も兵士達を引き連れて合流し物量で押そうとする魔族達を逆に押し返し始め、徐々に混乱した戦場は連合軍に軍配が上がり始める。

 その証拠としてエミル達の魔法大砲が魔族達を薙ぎ、ロマン達が斬り捨てていた。


「ええい何をしている‼︎

 我々の大半の魔血晶(デモンズクリスタル)はアギラ様に預けて逐次再生と戦闘への再参加が出来るんだぞ‼︎

 なのに何故奴等を殺せない⁉︎」


 その時1人の魔族が声を荒らげ何故押し返されるか理解に苦しんでいる様子だった。

 それを聞いたエミルやロマン達は確かに大半の魔族の額に魔血晶(デモンズクリスタル)は無く、さっきから同じ魔族を斃してばかりだと気付き体内魔力回復用ポーションが切れるか魔族達が諦めるかの根比べと化していると気付き戦いの疲労による汗が更に服や頬を濡らした。


灼熱雨(マグマレイン)‼︎

 地上界の勇士達よ諦めるな‼︎

 武器と魔法を振るい、魔族達の蛮行を許すな‼︎」


「我等の心は1つ、グランヴァニアの民を爆弾に変えた者達への正しき憎悪と怒りだ‼︎

 それ等を正義の心に変え、悪意ある魔族達を打ち払うぞ‼︎」


『オォォォォォ‼︎』


 そんな中でランパルドはフィロやリヨンを守りながら戦場の兵達に激励を飛ばし、それをアルクが更なる激励とし兵士達の疲労を忘れさせる言霊となり青と赤の血で濡れる地面を踏み鳴らし例え魔族が再生しようとも必ず押し切る様に連合軍は更なる躍進をし魔族達を押し返す。

 それ等により魔族達は地上界の軍勢に恐れを抱き始めていた。


「く、くそ、このままじゃマジでこっちが負けるんじゃ…⁉︎」


「あ、おい、後ろの空を見ろ‼︎」


 魔族達は地上界の勇士達の反抗にたじろぎ敗北のイメージすら過り始め撤退を視野に入れていた。

 すると魔族の1人が後方の彼方の空から1つの影が猛スピードで近付くのを確認し、ニヤリと笑みを浮かべ始めていた。


「何だエミル、何が近付いて来てやがる⁉︎」


「ド、ドラゴン…でも、金の竜鱗で覆われたアークドラゴンじゃない‼︎

 赤黒い…見た事も無いドラゴンが…来る‼︎」


 アルは魔族達の様子からエミルに何が近付いて来るか問うと、エミル達の千里眼(ディスタントアイ)に最上位と思われたアークドラゴンとはまた違う、赤黒く翼には棘が更に増え、全身が禍々しくなった見るだけで分かる今までの魔物が可愛く見える邪竜が近付きつつあった。

 そしてその邪竜はエミル達が視ている中で長距離から口に蒼炎を溜め込み始める。


「っ⁉︎

 拙い皆逃げて、あのドラゴンのブレスは今のエミル位じゃないと結界で防御し切れない‼︎」


【ボゥゥ‼︎】


 その時ルルやリリアナの危機予知に全体で防御した際の末路が見えてしまい、ルルが大声でエミルのレベルの結界じゃなければ防げないとして全員に逃げる様に叫ぶ。

 その瞬間邪竜の口から蒼炎のブレスが放たれまだ小さな影しか見えない長距離から一気にヴァレルニアの港街に巨大な蒼い炎の光が閃光の如く空を奔り始める。


「拙い、皆避けろぉぉぉぉ‼︎」


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』


【ゴォォォォォォォォォォォォ‼︎】


 それをアルクが直感から全体に避ける様に叫ぶと兵達は一斉に回避し始めるが、連合軍ごとヴァレルニアの港街に蒼炎が襲い、大地を穿ち海を割りながらブレスが地平線にまで届き一気に街は蒼の炎に覆われ、数万以上の兵士達が魔血晶(デモンズクリスタル)の無い魔族ごと灰も残らず焼却されてしまう。

 エミルやキャシー、レオナ達はギリギリで結界で防いだが防ぎ切った瞬間結界は砕け散り、術者達は地面に倒れ伏していた。


「あぐ…何て威力のブレス…私達の結界が最後の最後に破られた…‼︎」


「うっ、く………はっ、へ、陛下⁉︎」


「ぐぅぅぅ…‼︎」


 エミルは余りの威力のブレスに驚愕し、融解した地面や割れた海を見てそれが直撃してたら死んでいたと嫌でも思い知り、アルク達やリン達も恐怖し、その中でランパルドの近くに居たレオナの目に父王の右腕が焼滅していた光景が映っていた。


「そ、そんな、ランパルド国王様、私やリヨンを庇って…‼︎」


「ふ、ふっ…救える命を救わずして何が王か…ぐぅぅ‼︎」


 何とランパルドは逃げ遅れたフィロとリヨンを庇って右腕にブレスが直撃し、杖ごと焼き払われたのだ。

 それをフィロやリヨンは何故自分達の為にと感じたが、ランパルドは王として救える命を救ったと話しながらも苦しみ、フィロは回復魔法(ライフマジック)を使い焼けた腕のこれ以上の痛みを和らげようとした。


「な、何てブレスだ! 

 アークドラゴンなんかが可愛く見えるやべぇ威力だ…‼︎」


「っ、そのドラゴンが来るよ、皆構えて‼︎」


 アルは見た事も無い威力のブレスにただただ驚き身震いし、そのアルを含め現存する連合軍全体にエミルは邪竜が来ると叫び構える様に促した。

 そうして連合軍が立ち上がり身構える中彼方の空から猛スピードで焼け落ちた大地に赤黒い邪竜が姿を現す。


『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎』


『…っ‼︎』


 その邪竜は地に降り立った瞬間獲物達に咆哮を上げ、全身から放たれるプレッシャーに連合軍はたじろぎ、エミルすらも後退りながらこの邪竜を前にしていた。

 その時魔族達が水晶石を焼け爛れた大地に幾つも投げ捨てると、その全てが赤く光り其処にはアギラと複数の魔族の姿が映し出されていた。


「アギラ‼︎」


『やぁやぁやぁ、勇敢な地上界の戦士達よ。

 私からの魔血破(デモンズボム)を埋め込んだ愚民達、更に今送ったオーバーロードドラゴンのプレゼントは気に入ってくれたかな?』


 エミルはアギラの名を叫ぶと、本人は悪意の笑みを浮かべながら魔血破(デモンズボム)やこの邪竜、オーバーロードドラゴンをプレゼントとして贈り気に入ったか否かを問いていた。

 するとロマンはあの残酷な命を爆弾に変えた策やこの竜を気に入ったかと言われた瞬間彼の中で何かがプツリと切れる。


「巫山戯るなこの悪魔‼︎

 あんな…あんな残忍で命を弄ぶ行為やコレを気に入ったかだって? 

 そんな訳あるか‼︎」


『おや、如何やらお気に召さなかった様子らしい。

 これは失礼、今度からプレゼントの内容は考える事にしましょうか。

 それより、その水晶石から映るこの光景は見えるかな?』


 ロマンは怒りのままアギラがプレゼントと称した物全てを憎み出し剣を握る力が増していた。

 それは他の皆も同じであり、アギラを見る目は正に怒りと憎しみが込められた物だった。

 それを見たアギラは次はもっとプレゼントを考えると話した後、水晶石を通して映る光景が見えるかと問いた。

 するとエミルはその先には不思議な光を放つ泉があり、まさかと考えていた。


「まさかそれは…‼︎」


『そう、楔の泉です‼︎

 我々魔族の目にはただの泉にしか見えない為探すのに苦労しましたが、この国の愚民達が魔王様降臨に邪魔な存在だと話したら嬉々として探し出してくれましたよ‼︎

 故にこの国から滅ぼしてやろうとも考えてましたよ‼︎』


「悪趣味な…‼︎」


 エミル達はまさかと思うとアギラはあっさりと楔の泉だと吐き、グランヴァニアの民達が魔王降臨に邪魔と流布して探し当てた事まで話し、其処からこの国から滅ぼす計画まで立てたと話しネイルも余りの悪趣味さに歯軋りし、エミルは急いでアギラが居る場所を探そうと千里眼(ディスタントアイ)で探そうとしていた。


『おっと、今更探そうとしても無駄ですよ魔法使いエミル! 

 何故ならもう既に魔法を放ちこの泉の破壊準備が整ってますからねぇ! 

 それに仮に我々を止めたとしてオーバーロードドラゴンを放置してお仲間が焼かれるのを見過ごす気ですか? 

 薄情な女ですねぇ〜』


「アギラァ…‼︎」


 するとアギラは既に泉破壊の用意が整っていると話し、更にオーバーロードドラゴンを放置して自分達の所に来るのかと2つに1つを迫りエミルはアギラの悪辣な策に目を血走らせ睨み付けていた。

 それをアギラは鼻で笑い、そして泉に視線を戻し始めた。


『さて、ではそろそろ貴女達の目の前で楔の泉を破壊するショーを始めましょう‼︎

 さあ忌々しい楔よ、魔王様降臨を妨げるその光と封印を解放しろぉぉぉぉ‼︎』


「だ、駄目ぇぇぇぇぇ‼︎」


 アギラは複合属性魔法を手を掲げながら用意し、それをショーとして見せ付けながら破壊を開始する。

 エミルはあの悪夢が頭を過り、手を伸ばして静止しようとしたがそんな物が届く筈も無く魔法は楔の泉へと吸い込まれる様に放たれた。

 エミルは再びアギラを見つけて転移しようとし、オーバーロードドラゴンはそれを見てエミル達にブレスを放ち反応が遅れたエミルは蒼い炎が迫るのと楔の泉に魔法が打たれるのを同時に見ていた。

 そして────。


【キィィィィィィィィン‼︎】


 楔の泉、並びにエミル達の前に光の壁が現れ、魔法とブレスの両方を完璧に防ぐ。

 それを見たエミル達は何が起きたのか理解が遅れ、更に水晶石の先のアギラは明らかな動揺を見せていた。


『こ、これは天使の守護結界⁉︎

 何故、天界が動くにしても早すぎる⁉︎

 一体何が起きたんだ⁉︎』


 如何やらこの光の壁は天使達の守護結界らしく、アギラは天界が動くとしてももっと遅い、少なくともこの泉を破壊しきってからと踏んでいた為動揺し過ぎで混乱していた。

 するとエミル達の居るヴァレルニアの空が黄昏の光に包まれ、その天から白いフードを纏った者達が降り始める。

 それは天使と呼ばれる、天界に住まう戦士達であった。

 更に水晶石の先でも木の陰から1人の人物が現れる。


魔血破(デモンズボム)使用とオーバーロードドラゴン投入後に必ず此処に来る、そう踏んで警戒した甲斐がありましたよ…お陰で貴方の最後の詰めを阻止出来たのですからね』


『き、貴様は…アレスター⁉︎』


「アレスター⁉︎」


 その人物は何と天使化したアレスターであり、如何やらこの場所に警戒を強めてアギラの悪辣な策を崩す様に動いてたらしく言動からもそれが窺い知れた。

 更にアレスターの近場にも天使が降り立ち、エミル達の目の前には天使アイリスともう1人フードを取った天使、リコリスが降り立っていた。


「さあ地上界の戦士達、反撃の時ですよ…我等天界の戦士、聖戦の儀の法を破りし魔族アギラ達の断罪を成さん‼︎」


『グォォォォォォォォォォォォォォ‼︎』


 アイリス達がダメージを負った連合軍に回復魔法(ライフマジック)を掛け、傷を癒しながらその瞳を見開くと水晶石の先に居るアギラに対してアイリスが光の矛を向け断罪すると宣言する。

 するとオーバーロードドラゴンが咆哮を上げ天使達を威嚇するが、その天使達は怯みもせずそれを合図に魔族達と戦闘を開始し始める。


『く、くそ、何故貴様が天使に⁉︎』


『そんな事は自分でお考えなさい、それが私からの課題ですよ。

 さあ、可愛い生徒達を痛ぶった分の授業料は払って貰いますよ‼︎』


『ぐ、ぐおあっ⁉︎』


 更に水晶石の先でもアギラとアレスターの戦闘が行われ、そのビジョンを皮切りに水晶石の映像は途切れる。

 するとエミル達の意識は目の前の魔族やオーバーロードドラゴンの方に移り、誓いの翼(オースウイングズ)正義の鉄剣ソードオブユースティティアが相手取る事となる。

 その瞬間オーバーロードドラゴンは再びブレスを放つが、これをアイリスとリコリスが難なく防ぐ。


「天界が、天使が手を貸してくれるの⁉︎」


「あくまでオーバーロードドラゴンを斃すのは貴方達地上界の戦士達に任せます! 

 我々はブレスの防御に回ります! 

 不安にならないで、この数時間魔族と戦い続けレベルアップを何度も経た貴女達ならばこの化け物トカゲ1体如き退治可能です‼︎」


 ロマンは天使達が手を貸し始めた事に驚くと、リコリスがアイリス共々オーバーロードドラゴンのブレスを防ぐに留め、退治はエミルやロマンたちに任せるスタンスを取っていた。

 一方他の天使達は連合軍に手助けし、魔族達を攻撃し彼等を救っていた。

 それ等を見たエミルは天使達の立ち位置を大体理解し、杖を構えた。


「…ならそのトカゲ退治、やってやろうじゃないのアイリス、それと其処の天使さん‼︎

 皆、オーバーロードドラゴンを集中攻撃するわよ‼︎

 身体強化(ボディバフ)IV‼︎」


 そうしてエミルは大見得を切りながらオーバーロードドラゴン退治を10人で開始し、全員に身体強化(ボディバフ)IVを掛けるとそれが合図となり戦闘が開始されロマン達前衛が駆け抜けた。

 するとオーバーロードドラゴンは尻尾で薙ぎ払おうとすると全員避け、先ずはアルとムリアから攻撃を開始する。


『おぉぉぉぉぉぉ、暴焔斧‼︎』


【ズシャッ‼︎】


 アルとムリアは火+風の複合属性絶技を使いその身体を斬るが、竜鱗はオリハルコンと思わんがばかりに硬く余り刃が通らず表皮を傷付けるだけだった。


「くっ、何て硬さだ、刃が通らねぇ‼︎」


「なら私達が行く‼︎」


 すると其処にルル、ガムが突撃する。

 オーバーロードドラゴンの腕払い等を避け懐に潜り込み、アル達が傷付けた部分に狙いを定め武器を抜く。


「やぁぁ、嵐瀑剣、爆震剣‼︎」


「『激水槍』‼︎」


『ガァァァァァァァァァ‼︎』


 ルルは2本のダガーから別々の複合属性絶技を繰り出し、ガムも水+土の複合属性絶技を放ち、アル達が表面を傷つけた部分を再び攻撃して漸く肉に刃が突き刺さりオーバーロードドラゴンは苦しみ出した。

 すると再びブレスを放つ用意を始め、口に蒼い炎が溜まり始める。


「させ、ないよ‼︎」


【ヒュンヒュンヒュンヒュン、ズシャシャシャ、ボンッ‼︎】


『グォォォォォォォォォォォォォォ‼︎』


 するとサラが口の中に何発も絶技込みの矢を放ち、ブレスの暴発を誘発させてオーバーロードドラゴンを更に苦しめる。

 この行動にはアイリス、リコリスも不要な援護だったかと思いながら戦士達を見つめていた。


燋風束(マグマバインド)‼︎』


 其処にエミル、キャシー、シャラの3人による火+風の複合属性魔法が炸裂し、オーバーロードドラゴンの視界や動きを遮り行動制限を与えながらダメージを重ねて行く。


「行くぞ、ロマン君‼︎」


「はい‼︎」


 そうして最後の真打ちであるロマン、ネイルがオーバーロードドラゴンに突撃し、2人でオーバーロードドラゴンの手の払い除け、翼の羽ばたきを回避しながら懐まで潜り込み攻撃を開始する。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」


 先ずネイルが剣と槍で相互に複合属性絶技を使い、何度も何度もオーバーロードドラゴンを斬り付け刺し突き、硬い竜鱗などお構い無く兎に角攻撃をし、時には回避しながらダメージにダメージを重ね始めて行き、エミル達の援護もありながら攻撃を緩めずにいた。


「はぁぁぁぁぁ‼︎」


 其処にロマンも攻撃に加わり、2人で縦横無尽に駆けながら竜鱗を剥がして行き、其処にアル達も再び加わり重い1撃を叩き込みオーバーロードドラゴンの脳を揺らす。

 更にルル達も攻撃を加え竜鱗が剥がれた箇所から肉を裂き、竜の生き血が噴き出しオーバーロードドラゴンはいよいよ踠き苦しみ始めた。


「喰らいなさい、闇氷束(ブラックフローズン)‼︎」


【ガシャガシャガシャン‼︎】


 そんなオーバーロードドラゴンに対しエミルは闇+氷の複合属性魔法を使い邪竜の脚から下半身、更に翼を黒き氷で凍結させ動けなくさせる。

 それを見たアル達はいよいよ止めの時が来たと悟りながら一旦後ろに下がる。


「うおぉぉぉぉぉぉ、邪竜よ、この世から去れぇぇぇぇぇ‼︎」


【ザン‼︎

 ズシャァァァァ‼︎】


『グォォォォォォォォォォォォォォ‼︎』


 其処にネイルが槍を足に投げ、剣を両手で持ちながら邪竜の首を狙う。

 しかしこの邪竜は只の竜に在らず、何と凍結を無理矢理小さなブレスで溶かし、足等を動かし首を捻り斬首を躱す。

 しかし右腕と翼がネイルの剣により切断され踠き苦しむ姿が更に苛烈になった。

 そしてその頭上、既にロマンが首を捉え剣を構えながら急降下していた。


「これで、トドメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


【ザァァンッ‼︎

 ブシャァァァァァァァァァ‼︎

 ボトッ‼︎

 ズゥゥゥン‼︎】


 ロマンは魔力を剣に込め、最大火力の爆震剣でオーバーロードドラゴンの首を遂に斬首する。

 その首から鮮血が迸り、無念とも取れる表情をした邪竜の顔は地面に落ちた後白目になり、残された体も地面に倒れ伏し漸くオーバーロードドラゴンは斃されるのであった。


「はぁ、はぁ、はぁ…‼︎」


『…見事、地上界の戦士達』


 ロマンは剣先を地面に突き立て肩で息をし、他の面々も大体が同じ様子の中アイリスやリコリスはエミル達を見事と賞賛し、回復魔法(ライフマジック)や体内魔力回復用ポーションを取り出し飲ませ始め回る。

 一方その頃連合軍は天使達の手助けもあり無限とも思えた魔族達の軍勢を完全に押し切り、地獄の惨状から始まった怒りの戦いに一旦の決着をつけるのであった。




「ぐぁぁぁぁぁ‼︎」


 更にその頃、アギラは天使化したアレスターに完全に圧倒され取り巻きの魔族達も消滅させられ絶体絶命とも言うべき状況下に追い込まれていた。


「く、くそ‼︎

 何故私の策がぁ…‼︎」


「貴方はやり過ぎたんですよ。

 最早貴方に授業を課すのも無駄だと判断しました、次で消滅させます」


 アギラは自身の策が完全な失敗を遂げた事に何故、完璧な策だったとしたと思った物が何故崩れたと嘆いていた。

 それをアレスターはやり過ぎたと口にし、周りの天使達と共に裁きの魔法を放とうとした。

 しかし………その時赤黒い雷と共に5人の魔族達がアギラの目の前に転移して来る。

 それはアギラも忌々しいと思うシエル達だった。


「なっ、魔族シエル達⁉︎

 何故邪魔を」


「待ちなさい貴女達、動かないで下さい‼︎

 動けば彼女達は攻撃して来ますよ‼︎」


 名無し天使達は何故聖戦の儀の法を破ったアギラをシエル達が救うのか理解出来ず光の矛を構えようとしたが、それをアレスターが静止させる。

 動けばシエル達に殺されると判断したからである。


「流石は魔法の天才アレスター、見敵眼も優れてるな。

 それでこそ俺の拳が砕くと決めたに相応しき者」


「…退けアギラ、お前の策は失敗した。

 ならば次の策を講じるか披露しろ。

 魔界1の策士ならばあるんだろう、私達があっと驚く策が」


「…くっ‼︎」


 ダイズはアレスターの見敵眼を褒め称え、魔力を込めた拳を彼に向け敵意を剥き出しにする。

 そのプレッシャーに名無し天使達は完全に呑まれ彼とは戦えないと一瞬で理解する。

 対するシエルはアギラに策がまだあるのだろうと挑発する様に撤退を促していた。

 それを聞いたアギラは苦虫を噛み潰した様な表情で転移をした。


「…」


「アギラを見逃した事は別に悔いるなアレスターよ。

 シエル様やダイズにはそれぞれ思惑がある、それを邪魔されたくなかっただけだ。

 …ではさらばだ」


 アギラを逃した事を失策と内心で思っていたアレスターにアザフィールはシエルやダイズにも思惑がある為だと話し、悔いるなと話した。

 そしてシエル達5人は再び転移し、その場にはアレスター達のみが残された。


「…その思惑と言うのが分からないのですから困るんですけどね…」


 アレスターはボソリと彼女達が何を考え行動しているか分からない為頭をぽりぽりと掻くと、後ろを振り向き楔の泉の守護結界を更に強めてからエミル達の方を向き、そちらに転移を始めた。

 そして後に残ったのは戦いが終わったと言う静寂と光り輝く泉だけだった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

大勢の犠牲を出しながらもヴァレルニア港街での襲撃をエミル達は突破しました。

更に天界も遂に動き出しアギラ達の討滅に参加致します。

では今回はオーバーロードドラゴン、天使の守護結界、アギラの詰めの1手、何故討伐推奨レベル380のオーバーロードドラゴンをエミル達が倒せたか、現在のエミルとネイル達のレベルを説明させて頂きます。


オーバーロードドラゴン:魔界が誇るドラゴン種の中でも地上界に出さなかった個体、その中でも希少な最上位種である。

その討伐推奨レベルは380であり、下手な名あり魔族も恐れて近付かない、と言うより近付けない。

この種を手懐けられる魔族はレベル380オーバーは間違い無い。


天使の守護結界:天使達が扱う結界魔法であり、邪悪な意志を持つ者やその魔力は『この結界を張った天使のレベル未満』のものは一切通さない天使の盾である。

その為アギラや地上界なら初期のギャラン達等はこの結界に魔法も何もかも阻まれる。


アギラの詰めの1手:アギラにとって魔血破(デモンズボム)は自らの愉悦を満たしながら相手に犠牲を支払わせる道具であった。

しかし詰めの1手は疲弊した所にオーバーロードドラゴンを投入し、グランヴァニアの楔の泉を水晶石で中継しながら破壊する事だった。

しかし最後の最後で天界が既に動いており、その1手は結局失敗に終わった。


エミル達がオーバーロードドラゴンを倒せた理由:ヴァレルニア港街での戦い前のエミル達のレベルは290でありとてもオーバーロードドラゴンを倒せないレベルだった。

しかし3時間以上に渡る耐久戦によりエミル達は熟練度元素(レベルポイント)を大量に吸収しドラゴン襲撃前にはレベル360オーバーになっていた。

その為疲弊した状態でも1体だけなら無茶すれば勝てるにまで至っていた。

そうして天界の介入で魔族の邪魔が入らなくなりこの邪竜に集中出来る様になり漸く倒せた。


エミルとネイル達のレベル:ヴァレルニア港街戦前290。

オーバーロードドラゴン討滅後:レベル387。


次回もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ