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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第2章『アギラの動乱編』
27/49

第27話『4国連合、皇貴妃を救う』

皆様こんにちはです、第27話目更新でございます。

今回からグランヴァニアでの戦いに移行して行きます。

今回はその前哨戦となります。

では、本編へどうぞ。

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…‼︎』


『ガァァァァァ‼︎』


 グランヴァニアにある辺境の森の中、身分の高そうなドレスを着た子供連れの女性が子供と共に魔物から逃げ出し、せめてこの子だけでも…そう心に思いながら森を駆ける。


「ほらほらほらぁ、さっさと逃げなきゃアギラ様の命でさっくり殺しちまうぜぇ‼︎」


 その時背後から魔物達を率いていた魔族の男の声も響き、自分達の命がドゥナパルド4世の様に狩り殺される、そう思いながら走っていた。


「は、母上…‼︎」


「大丈夫よ『リヨン』、貴方だけは私が必ず守るから…‼︎」


 息子のリヨンにその身を案じられる中、彼の母は行く当ても無い森を先へ先へと走り、魔族の矢が気に当たりつつも何としてもこの子だけは守る、そう決めて駆け続ける。


「…あっ⁉︎」


 しかし、逃げ切ろうと言う希望は絶望へと変わる。

 何故なら、走り抜けた末に森を抜けてしまい、更に前方には海が見える沿岸部が見えてしまったからである。


「そ、そんな、母上…‼︎」


「…大丈夫よリヨン、貴方だけは絶対私が守るから…‼︎」


 母の身を案じるリヨンは最早逃げ道すら無くなり、これからどうすれば良いのかと母を見ると、リヨンの母は杖を構え守ろうと魔族や魔物達の前に立ちはだかる。


「ひっひっひ、追い詰めたぜぇ…?」


 しかし悲しきはそのレベル差、魔族はレベル230あり、付き従う魔物も『ハイゴブリンロード』と言う地上界に居るゴブリン種最強であり討伐推奨レベル170、更に『ヘルスパイダー』と言う討伐推奨レベル160の巨大蜘蛛型の魔物やミスリルゴーレムと言った高レベルモンスターで固まっており、絶対に生き残れない包囲網が完成していた。


「さぁ死ねぇ‼︎」


 魔族は魔物達に突撃させ、親子を崖から突き落とすか惨たらしく少しずつ殺していくか、何方にせよ魔物達に襲わせる必要がある為それをじっくりと見ようとしていた。

 そしてリヨンや母親も体が強張り絶望が迫る。


【ビュン、キィィィィィン‼︎】


『なっ⁉︎』


 だがリヨンと母親、そして魔族は驚愕する。

 2人と魔物の間に転移し、親子を結界魔法(シールドマジック)で守った5人が現れたのだから。


【ビュン‼︎】


「魔物達よ、正義の刃を受けろ‼︎」


 更に5人の者が転移し、魔物達に剣、槍、斧、魔法で攻撃し、先に転移して来た者と力を合わせ魔物達と戦い、そしてあっという間に魔物を全滅させる。


「なっ、魔物共が…⁉︎

 お、お前らよくも俺の遊戯を…‼︎」


「さぁ次はお前の番よ、魔族‼︎」


 魔族は魔物達をいきなり全滅させられ、ワナワナと怒りで震える中、結界を張る赤毛の魔法使いの少女が次は目の前の魔族の番だと叫び全員がそれぞれ構える。

 母親とリヨンは思った、魔族信奉者の国であり、魔族を受け入れてしまい自滅の道を辿った自分達にも神は救いのチャンスを与えて下さったのだと。

 そして赤毛の少女…エミルの咆哮と共に魔族側も増援を呼び物量で押し返そうと戦闘が始まるのであった。




 エミル達が親子達の前に現れる20分前、エミル達はセレスティア、ミスリラント、フィールウッドの船団と共にヒノモトに到着、そして其処でヒノモトの軍と合流して元の船団にヒノモトの船も加わり4国連合軍船団が完成し、半日かけてヒノモトの先にあるグランヴァニアに辿り着こうとする中、エミル達は用意されたり兵達が装備する武具に二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を転移し各船に跳びながら全てに掛けた。


「ふう。

 アルクお兄様の船で全ての兵や用意された武具に二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を掛け終えたわ。

 キャシーちゃんやシャラさん、レオナお姉様やロマン君達も手伝ってくれてありがとう」


「いえいえ、全てはこの3日で私達セレスティアの人間じゃ無い私達に王女殿下達が優しく二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を会得させて実用段階まで熟練度を重ねさせてくれたお陰ですよ!」


 キャシーはエミルの礼に謙遜しながら言うが、実際この3日間でエミルとレオナはキャシー、シャラ、ムリア、ロマン、ルルに枷が外れた影響で取得した魔法、絶技の熟練度もカンストする副次効果から二重魔法祝印(ダブルエンチャント)も覚えさせ、各船を回り魔法祝印(エンチャント)付与をさせたのだ。


「レオナ王女殿下にエミル、国の秘術を僕達にも教えて下さりありがとうございました‼︎」


「ふふ、良いのよ。

 この船の数や武具の量では2人では回り切れないと判断して枷を外した者の中で魔法を使える組に二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を教えただけなのですから。

 言わば兵達の未来の為の投資ですわ」


 ロマン達全員がエミルとレオナ姉妹に頭を下げる中で、レオナは兵達の生存性を上げる為にもロマンやルル(ルルの場合エミル伝てに聞いた)みたいな勇者の血筋の者やキャシー達魔法使い、更に味方魔族のムリアに二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を教え、連合船団の武具全てに魔法祝印(エンチャント)を掛け回る手が欲しかった為にエミルと共にロマン達にも教え、そして船を回ったのである。


「でも俺に教えても〜」


「ムリアさんは私達の仲間ですからね! 

 アギラとの戦いが終わったらハイ裏切りなんて考えられないですよ!」


「キャ、キャシーちゃーん‼︎」


 其処にムリアが自身の裏切りの可能性を考慮して二重魔法祝印(ダブルエンチャント)を教えて良かったのかと話すとキャシーが直ぐ様裏切りの可能性を否定し、それにムリアは嬉し泣きをしてると全員嵐が訪れる前なのに気持ちが晴れやかになっていた。


「さて、私達はグランヴァニアの監視でも…っ⁉︎

 お姉様、皆、母親と子供らしき子が2人、森の中で魔物や魔族に襲われてます‼︎」


「えっ…あ‼︎

 本当です、早く助けに向かわないと‼︎」


「お、俺兄貴達呼んで来るよ〜‼︎」


 それからエミルはグランヴァニアを監視し、港から降り立つ為千里眼(ディスタントアイ)透視(クリアアイ)を使い探し始めると、森の中で親子らしき2人が魔族や魔物に襲われているのを発見し、キャシー達も見つけた後ムリアはネイル達を呼びに向かう。


「ロマン君、ルル、私達もサラとアルの下に行きましょう‼︎」


『分かった‼︎』


 エミル、ロマン、フードを取ったルルは王船に転移して戻り、中に入り会議室に丁度居たアルやサラ、更に会議中のランパルドを発見し叫び始める。


「伝令、魔法祝印(エンチャント)付与終了後に親子らしき2人組がグランヴァニアの森の中で魔族と魔物達に終われているのを発見しました‼︎

 このままでは森を抜け、沿岸部に出てしまい襲われてる2名の命はありません‼︎」


「何ぃ⁉︎

 そりゃ拙いぜ‼︎

 おい王様達、早く俺様達に救助させに向かわせてくれや‼︎」


 エミルはロマン達と共に会議室に駆け込むと、ランパルドや他3国の王に状況を説明し自身の代理として会議に参加させたアルやサラもエミルからの伝令に驚き、特にアルは早く向かわせてくれと頼み込む。

 それらを聞いたランパルドはロック達と頷き合いながら席を立ちながら誓いの翼(オースウイングズ)に王命を言い放つ。


「ならば早く助け出すのが先決だ、誓いの翼(オースウイングズ)正義の鉄剣ソードオブユースティティアと共にその親子を救い出せ、これは4国連合初の人命救助である‼︎」


「陛下、ロック様達、ありがとうございます‼︎

 じゃあ皆、ネイルさん達の下に行こう‼︎」


「勿論よロマン君‼︎」


 ロマンは諸王達に一礼するとエミルの手により、ムリアやキャシー達の手で集まったネイル達の下に転移し、互いを認識し合う。


「エミル殿、首尾は⁉︎」


「皆様から許可貰いました、早速跳びますよ‼︎」


「魔族共め、俺様達の武具の錆にしてやる‼︎」


 ネイルは転移して来たエミル達に首尾を聞くと、エミルがサムズアップしながら許可を貰ったと呟くと全員引き締まった顔になり、アルはミスリルアックスを構えながら血の気の多い言葉を叫んだ瞬間、10人は追い詰められた親子の前に転移しエミルは結界魔法(シールドマジック)Vを使い親子を守るのであった。




 それからは先程のリヨン親子が見た様にエミル達は瞬く間に魔物を全滅させ、最後に魔族に処刑宣告をする場面だった。

 それらを聞いた魔族は慌てて鑑定眼(アナライズ)を使い、エミル達のレベルを測ると平均270オーバーとなっておりかなり焦っていた。


「く、くそ、コイツ等アギラ様が仰っておられた枷を外した者共か⁉︎

 拙い、1人では勝てない、何とか逃げ」


【ビュン、グサッ、グサッグサッグサッ‼︎】


 魔族はエミル達に勝てないと知るや否や直ぐに逃げ出そうとし、転移を始めようとしたが其処にアルの手斧、サラの矢が魔族目掛けて放たれ手斧は魔血晶(デモンズクリスタル)に直撃し破壊し、矢は首や鎧を貫き心臓を撃ち抜き魔族の殺害に成功し青い炎に包まれ魔族は灰になった。


「おっと手が滑っちまったぜ」


「私も手が滑ったよ〜」


 魔族に逃亡や念話を刺せぬ様に攻撃した当の2人は手が滑ったと主張し、アルは手斧を回収後も周りを警戒する。

 一方千里眼(ディスタントアイ)透視(クリアアイ)等で敵が居ないか確認したエミルは一呼吸置き、結界を張りながらリヨン親子に話し掛け始める。


「ふう、お怪我はありませんでしたか?」


「貴女達はグランヴァニアの者では無い…誰なのですか?」


 リヨンの母は自分達を気遣うエミル達をこの国の者では無いと見抜き、リヨンを庇いながら後退りをする。

 しかし後ろは直ぐ崖なので後退りと言ってもほんの数センチ分しか出来なかったが。


「ええ、我々はグランヴァニアの者では無いです。

 我々は悪逆を成す魔族達からグランヴァニアを救う為に来た者です!」


「はい、私達は4国連合軍所属の冒険者です。

 なので貴女達に危害を加えません、寧ろ助けに来たんです」


 ネイルとエミルはそれぞれ自分達の立場を明かし、共通して魔族達からグランヴァニアの人々を救いに来たと話し、警戒心を解こうとする。

 すると何かを考え出したのか母親の方はリヨンに見守られながら数刻黙り込み、そして再び口を開く。


「…本当にグランヴァニアの人々を救いに来たなら私達をその連合軍の場所に案内なさい。

 私の名は『フィロ』、グランヴァニア帝国皇帝ドゥナパルド4世の皇貴妃、この子は皇位継承権第3位のリヨンよ」


「! 

 ドゥナパルド4世の皇貴妃様と皇子様であらせられましたか! 

 分かりました、我々がランパルド国王陛下達の下にご案内致します!」


 リヨンの母、フィロはリヨン共々身分を明かすとエミルは相応の対応で頭を下げ、2人をランパルド達の下に案内すると言い出すと手を差し伸べ、その手が取られたのを確認すると転移魔法ディメンションマジックで全員をセレスティアの王船の下に転移し、後に残ったのは魔族の灰と魔物の亡骸だけであった。




 それからフィロ、リヨン親子がランパルド達の下に案内され、会議室にて紅茶や軽い食事で2人をもてなし始めていた。

 しかし会議室でもてなされている事にフィロは明らかな不満を見せていた。

 その中でフィロはお腹を空かせたリヨンに食べ物を分け自身は紅茶のみで済ませながら、その事情をランパルドが直々に説明を始める。


「この様な場所でもてなしてしまい申し訳ありません、フィロ皇貴妃殿。

 我々連合軍は敵の本拠地が占領されたグランヴァニア宮殿である事は分かっております。

 しかし、どの港から攻め入ればこちらの戦力を失わずに辿り着けるか会議しておりました。

 皇貴妃殿は今までどうやって生き延び、また何処から攻め入れば良いか存じておありで?」


 ランパルドはリヨンに食べ物を分けるフィロの姿に心苦しくなりながらも、彼女達が生き延びた理由とどの港から攻め入れば良いのかを尋ね、フィロは席を立ち上がると羽ペンを持ちながら説明を始める。


「先ず私は皇貴妃ではありますが所詮お飾り、皇后と違い彼の方に愛されていた訳ではありません。

 しかし皇室の取り決めにより秘密の密輸港含む全ての港を頭に取り入れております。

 生き延びた理由はあの日私とリヨンは魔族アギラに顔を合わすのも恥ずかしいと幽閉されていた為です」


「会わせるのが恥ずかしい、何故ですか?」


 フィロは密輸港を含む全ての港を知るとしながら地図に場所をマーキングして行くのと同時に、自らはお飾りでありアギラに合わせるのが恥ずかしいとも話し、それを聞いたエミルは何故アギラと顔合わせが恥ずかしい物とされ、腫れ物扱いされているのが気になり問い掛ける。

 すると、フィロは一呼吸置きながら話し始める。


「…お恥ずかしながら、私は魔族信奉者の国にありながら神様を信じ、魔族を忌むべき侵略者と心の奥で思っておりました。

 陛下はそんな心の奥を見透かしていたのでしょう。

 だから国民や自分達に与えたアギラの『祝印(ギフト)』を与えず、私やリヨンはお飾りにし、そして幽閉まで…」


 如何やらフィロは皇貴妃でありながら魔族を侵略者と見ており、それをドゥナパルド4世に見透かされリヨン共々幽閉されたと話していた。

 しかしその途中祝印(ギフト)と言う謎の単語が出て来た為全員首を傾げ、エミルはその事も聞き始める。


「あの、祝印(ギフト)とは一体?」


「私もリヨンも詳細は分かりません、ただ単に国民や陛下達魔族信奉者全てに与えられたとしか聞いてません.

 …さて、どの港から入れば良いかと言う情報は侍女達が私達を逃す際に密輸港も全て押さえられ、唯一使える港はこの国の表側で1番大きな『ヴァレルニア港』しか国から逃げ出す場所が無いと言われ、私達は其処を目指していたら魔族達に見つかり…」


 フィロやリヨンは首を横に振り、祝印(ギフト)の事は分からないとして切り上げ、フィロがマーキングした港に次々と×を付けて行き、最後に残ったヴァレルニア港が唯一使える港と話し、自分達も其処に向かっていたと話しつつ先程の状況に陥ったと話した。

 するとエミルは此処まで来るのに時間としては兵を集めるのに2日掛かり、計6日半掛かったのに今までフィロ親子が見つからずに居た事やこの港のみ使えるのが不自然に感じていた。


「失礼ながら我々が此処まで来るのに6日半を要しました。

 なのに見つからずにいたのは何故でしょうか? 

 それと、この港のみ使える理由は?」


「港の方は分かりません、しかし我々が見つからなかった、と言うより逃げられた理由は魔族達は国民達を自分達の作った収容所に押し込めていた為です。

 その為私達の逃げる時間が偶発的に出来上がり、ヴァレルニア港が使える事を調べ上げながら逃げていた次第です」


 フィロは自分達が逃げられた理由をあの虐殺を働いた魔族達が国民達を態々捕まえる為の収容所を作り、生き残った国民全てを押し込めていた事により逃げ出す猶予が生まれたと話し、エミル達は何故国民を収容所に押し込めると言う手間の掛かる真似をしたのか気になっていたが、間髪入れずにフィロが話を進め始める。


「それとヴァレルニア港なのですが、其処から北西に約30キロの位置に収容所群の1つがあります。

 更に北に20キロ、此処に2つの収容所群が存在しており、その先にグランヴァニア宮殿跡があります。

 なのでこれは私の勝手な頼みなのですが、ヴァレルニア港に行くならこの収容所群から我が国民を救って頂きたいのです。

 お願い致します!」


 更に羽ペンで⚪︎マークを付け、その下に『第1収容所群』と名前を付け、この距離ならば馬で走れば夜中に襲撃可能位置に当たり、諸王達やエミル達は其処にフィロの願いを聞く。

 確かに彼女はドゥナパルド4世によりお飾りにされた者ではあるが、皇族としての品位と民を想う心が有ると感じ取り会議している全員で見合い、如何するかをランパルド達王に任せると4人の王は互いに頷きフィロに視線を戻す。


「分かりました、元よりグランヴァニアの民達を救う為に来た身。

 ならば第1収容所群に襲撃を掛けて国民達を救いましょう」


「! 

 ありがとう…ございます…‼︎」


「良かったですね、母上」


 ランパルドはフィロとリヨンに対し国民達を救う願いを聞き入れ、この一言により連合軍の航路はヴァレルニア港へ船を着港し、軍の物量で収容所群を襲撃する事になりフィロは席を立ち、ランパルド達に深々と一礼するとリヨンも立ち上がり礼をした後、フィロを気遣う言葉を掛け慰めていた。

 そんな中でエミルは深々と考え事をしていた。


「エミルさん、如何したんすか?」


「何か心配事でもあるの、エミル?」


「ああガムさんにロマン君。

 うん、何故魔族が港を1個使える様にしてるか、更に態々地上界の者を収容所何て物を使って1箇所に集めているのか分からなくて…」


 ガムやロマンはエミルの様子に気が付き、他の皆もエミルの言葉を聞き確かにあの虐殺、一切鏖殺を宣言して置きながら収容所に集めるのは変だと感じ、ネイル達も交えて考え始めていた。


「ねえムリア? 

 アギラとか言う魔族は策を弄するのが好きみたいだけど、何か思い当たる物は無いの?」


「いや、全く分からないんだな〜。

 でもあの卑怯者が何の考えも無く収容所なんか作らないから、何かあると思って警戒した方が良いんだな〜。

 それに、祝印(ギフト)ってのも何か引っ掛かるんだな〜」


 シャラは元アギラの部下であるムリアにこの様な事に思い当たる節はあるか聞くが、そのムリアも様々な物に引っ掛かりを覚えるが明確な物が見えず、しかし卑怯な策士たるアギラが何かを準備していない訳が無い為全員に警戒する様に促していた。


「ふむ、ムリアがアギラとの警戒心は分かる、あの4国会議の日で見た奴の目は正に悪意の塊、邪悪その物だった。

 エミル殿にロマン君達も警戒した方が良いだろう、あの手の目をした者は卑劣な者であるからな」


「ネイルに同意見、月下の華として活動して来た身としてもあの目をした奴は危険過ぎる」


 更に正義感が強いネイルに多くの数百年間で不正を暴いたルルもあの手の目をした者は危険だとして警戒心を顕にし、その態度は圧倒的な実力を持つシエル達とも違う、明確な嫌悪感から来る危険な臭いを感じており、エミルとロマンに強く警戒する様に念押ししていた。


「ええ…警戒しないなんて間抜けな事はしないわ、あんな残忍な卑怯者には…」


 それ等を聞いたエミルは前世(ライラ)の記憶からもアギラの様な策士はレベルがバカ高い者以上に警戒する必要がある事を知っている。

 その警戒する内容は無論卑劣な策、それも自身の駒や様々な物を使って行う物を平然とする魔族が居る為である。

 そしてエミルの目から見て、アギラは間違いなくその部類に当たる魔族だった。




 それから連合軍はヴァレルニア港に辿り着くと船から兵や物資を下ろし、この港に拠点を作り、兵站線を築き上げるべく各国の枷を外した者達が食糧庫と武器庫を築き上げ、それから作戦が盗聴防止結界(カーム)を使いながら全体指揮官に任命されたアルクからなされる。


「連合軍全員静聴! 

 この先30キロ北西には地上界の者達を収容する施設がある。

 我々は真夜中に襲撃作戦を展開する! 

 セレスティアとヒノモトは正面から襲撃し、ミスリラントとフィールウッドは側面から攻撃せよ! 

 誓いの翼(オースウイングズ)は正面側、正義の鉄剣ソードオブユースティティアは側面側に同行し計2万の魔族と魔物達を蹴散らせ‼︎

 この1戦にはグランヴァニアの国民の命が懸かっている、それを肝に銘じ弱き民達を救う為死力を尽くせ‼︎」


『オォォォォ‼︎』


 アルクの作戦説明として2国家のバランス配偶をし、更にエミル達とネイル達の戦力バランスを配慮し、それぞれが切り札として活躍する側に同行させる様に命じ、そしてこの1戦にはグランヴァニアの国民達を救う為の大事な1戦である為死力を尽くす様に命じると同時に敵戦力は10分の1程度だと叫び、それに呼応し全員が雄叫びを上げた。


「次に戦術指揮の補佐としてエミル第2王女、そしてムリア殿から話がある、皆心して聞く様に!」


 次に魔族、特にアギラの様な策士タイプを良く知るエミルとアギラの元部下であったムリアが前に立ち、懸念事項を口にし始めた。


「セレスティア王国第2王女エミルと正義の鉄剣ソードオブユースティティアのムリア殿です、アルクお兄様は敵が2万と、フィロ様から齎された情報から話しましたが敵は陛下達を暗殺しようとしたあのアギラと言う策士です、それだけが戦力では無いでしょう」


「オマケに奴は卑怯者なんだな〜。

 だから、グランヴァニアの国民を人質に取るかだし伏兵も居るかも知れないから気を付けるんだな〜!」


 エミルとムリアはフィロが齎した収容所群を守備する魔族と魔物は2万ではあるが、アギラがそんな単純な数で守る訳無く伏兵、人質を取る事に警戒する様に発言すると全員がそれを徹底し始める。


「ではライラ様の祝福を受けし皆よ、行くぞ‼︎」


「初代ヒノモトの王、『スクナ』王の子等よ、妾に続け‼︎」


 そうしてランパルドとサツキは初代女王と初代王の名の下にセレスティア、ヒノモトの軍を率いて突撃し始める。


「我等ロックの同胞(はらから)も行くぞ!」


「ワシのドラ息子共、行くぜぇ‼︎」


 更にロック、ゴッフの長寿組もまた自らの名の下にフィールウッド、ミスリラントの軍勢と共に進撃する。

 総勢20万の兵達が馬を駆りグランヴァニアの大地を走り、第1収容所群へと目指した。

 例え其処に如何なる卑劣な罠があろうと必ず乗り越えると心に悪逆を赦さぬ火を灯しながら。




 一方グランヴァニアの第3収容所群とグランヴァニア宮殿跡を一望出来る山の頂上にて、アザフィールにティターン兄妹を率いたシエルとダイズが立ち、第1収容所群の方を千里眼(ディスタントアイ)を使い全員で覗き見ていた。


「ありゃりゃ、地上界の連中はやっぱ魔族信奉者とは言え同胞を見捨てられないみたいですよシエル様?」


「当然だ、それが地上界の強さであり弱さだからだ。

 しかしこれでアギラの策は奴等を襲うぞ、まるで火山の噴火の様に」


 ティターンは連合軍は第1収容所群に進撃したのを確認し、やや首を傾げながらシエルに報告すると彼女はそれこそが地上界の強さであり弱さ…つまり美徳だと言い放ちながらも、アギラの策が襲う事が確定すると瞳を閉じた。

 それに呼応して風が吹き美しい銀の髪が靡き、それが様々な感情を表してるかの様にティターン兄妹やアザフィール達には見えていた。


「…それで、天界は動くと見るか?」


「動くだろう、が、神の眼は未来を見通せても実際に事が起きねば動かない。

 よって第1収容所群は捨て石になる他無い、天界が動く大義名分を確実に得るためにも、な」


 ダイズは展開は動くか否かシエルに問うと、動く可能性はあるとしつつ、事が起きねば聖戦の儀の法を犯したとハッキリとした主張が出来ない為第1収容所群が結果的に捨て石になると発言し腕を組みながらグランヴァニア宮殿跡を見つめ始める。

 それも落胆した表情で。


「それにしてもアギラにはガッカリだ。

 地上界の連中にその策を使うと如何なる結果を生むか知ろうともせず使い、そしてアリアの忠告を無視し、最初で最後の盟約に泥を塗ったのだからな」


「ふん、所詮は他人の蜜を啜り、他人を蹴落とし成り上がる事しか出来ない愚か者の頭には肉親の忠告すら耳に入らない物さ。

 そしてその代償を払う時が近い事を未だ知らないのも間抜けの証だ」


 シエルはアギラの行為を全否定し、更に彼が行おうとする物が如何なる結果を残すか、忠告を無視した代償を知ろうともしない愚か者に対し冷淡な瞳で見つめ、ダイズもまたシエルと同意見であり代償を支払う時が近いのにも気付かない間抜けと侮蔑し、そのまま転移で5人は去って行った。

 そして残ったのは嵐の前の静けさを物語る風の音のみであった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

不穏なフラグも立ち込める中ですがエミル達は収容所群の1つを襲撃しグランヴァニアの民を救う為にエミル達や4国は動きます。

その結果は次回に…。

では今回はフィロ、リヨンの設定を公開致します。


フィロ:グランヴァニア皇帝ドゥナパルド4世の側室であり現在生き残っている唯一の大人の皇族。

皇貴妃と言う立場ではあるが、魔族信奉者の国に於いて神を信仰し魔族を侵略者と捉えてた事とドゥナパルド4世にそれを見抜かれてた為虐殺時には幽閉状態にあった。

しかしそれでも皇族である事に変わり無い為国の密輸港等の機密もしっかりと頭に入れられていた。

既に殺された夫グランヴァニアの民の事を愛しており、今回のエミル達の救援に民達を救う様にと頭を下げていた。

レベルは56なので残念ながらこの戦いについて行けない。


リヨン:齢12の幼いながらも皇位継承権第3位のフィロの息子。

幼き頃から母と共に腫れ物扱いにされ、しかし其処で母が皇位に立つ者は民を愛し導くべしと教えられていた。

今回の国を揺るがす事件の折にフィロと共に侍女達に逃されエミル達に救助された。

レベルは幽閉されていた為世界樹での修行も最低限にしか行われていない為30しかなく、この戦いの戦力にはなれない。


次回もよろしくお願い致します。

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