第25話『アギラ、動く』
皆様こんにちはです、第25話眼を更新でございます。
今回はアギラと言う魔族の残忍さや悪辣な様を描写したいと思い書きました。
それが伝われば幸いです。
では、本編へどうぞ。
全国家の水晶石がジャックされ、グランヴァニアの玉座が映る中でドゥナパルド4世の演説と呼ぶ事も出来ない降伏宣言の後、更に言葉が続く。
『我々地上界は本来なら500年前の時点で魔王様の支配を受け、その中で1つの思想の下で平和を享受すべきだった。
だが愚かにも抵抗し、門を封印した愚者の為にその平和が訪れる事は』
「巫山戯るな、ロアやライラが命懸けで齎した平和を無意味だと言うな、魔族信奉者が‼︎」
ドゥナパルド4世は500年前の戦いの時点で地上界は魔界の支配を受けるべきだったと主張し、それを聞いたロックは普段の温厚な性格からは考えられ無い程の憤慨をし、円卓を叩きながらドゥナパルド4世を睨み付けていた。
そしてそれはロックだけで無く、ゴッフやリリアナも逆鱗に触れられ同様に怒りを抑えなかった。
『そして、我々は考えた結果今日この日に地上界を明け渡す草案と共に降伏をし、真の平和を勝ち取ると決めた!』
【パチパチパチパチパチパチパチパチ‼︎】
更に続く降伏演説の中でドゥナパルド4世はその手に草案となる所管を手に持ち、玉座から立ち上がりアギラの前まで歩き、彼に跪きしながら書簡と王冠を手渡すと周りの臣下から拍手が湧き上がり完全にアギラをグランヴァニアの新たな王にする事を受け入れていた。
『ありがとうグランヴァニアの諸君。
君達の物分かりの良さに私も心打たれ、真の平和の為に君達を導きたいと思ったよ』
【パチパチパチパチパチパチ‼︎】
次にアギラが玉座に座り、グランヴァニア帝国の魔族信奉者達に対し大振りな仕草で喜びを演出し、それ等を見た臣下は再び拍手喝采をアギラに向けて浴びせた。
『ではこの草案はしっかりと読ませて貰うと同時に、前皇帝を含め私からある命令をしたい。
さあドゥナパルド4世、此方へ来たまえ』
『はい、新皇帝陛下』
するとアギラは草案を読みながらその場に居るドゥナパルド4世含む臣下達に命令を下したいと話し、彼を自身の前まで呼び寄せた。
ランパルド達はこの者達を使い何か…と言っても考えられるのは1つ、他の4国家の侵略をするのだろうと考えていた。
但しロック達誓いの剣は違う可能性も考慮していた。
『では君達に最初の命令を下そう、良く聞きたまえ』
『はっ‼︎』
ドゥナパルド4世は玉座の前に再び跪き、アギラが下す最初の命令を聞こうと待っていた。
そしてアギラは彼に手を差し伸べて立ち上がらせ、ドゥナパルド4世や臣下達はどんな命令が来るのかを心待ちにしていた。
それが地上界侵略に加担する事でも喜んで受けただろう………そう、『そんな程度』の命令ならば。
【グサッ、ズシュ‼︎】
『………えっ………アギ、ラ…様………』
【プシャッ‼︎
ドサッ‼︎】
次の瞬間アギラは残忍な笑みを浮かべながらドゥナパルド4世の胸に手を突き刺し、そして脈打つ心臓を抉り抜き握り潰した。
ドゥナパルド4世は突然の出来事に理解が追い付かないまま倒れ、鮮血が床を汚し始める。
そしてアギラはその場に居る地上界の臣下達に『最初で最後の命令』を下す。
『──貴様達地上界の者共一切鏖殺されるべし。
くくく、くはははははは‼︎』
『きゃぁぁぁぁ‼︎
ぐあぁぁぁぁぁぁ‼︎』
一切鏖殺、即ち皆殺しを命じた瞬間魔族達が転移し始め、王宮は血の雨が降り首を斬り落とし、槍を投げ複数人を刺し貫く等の惨殺が行われる処刑場と化した。
それをアギラは再び玉座に座りながら笑みを零しながら未だジャックされている水晶石から言葉を発する。
『図に乗るな、家畜以下の地上界の塵芥共。
貴様達が我々と対等のテーブルに立てると思ったか?
笑わせる、何処までも愚かだ‼︎
だがグランヴァニアは自ら降伏し国を明け渡した、それに免じて1番初めに皆殺しにしてやると決めていたよ!
…さて、これを見ている地上界の者共よ。
次は貴様達の番だ、手始めにセレスティア王国に集まった王共と国民を処刑しようでは無いか‼︎
あっはははははは‼︎』
【ビュンッ‼︎】
アギラはその根底にある思想、地上界の者は全て家畜以下であり全て鏖殺されるべき物としか見ていない事を語りながら自ら降伏したグランヴァニアを真っ先に皆殺しに掛かる残忍性を見せ付けた。
ロック達は考えられた最悪のパターンが来た事で魔族アギラの危険性を確認すると、そのアギラは次は4国会議中の王達や国民の処刑を宣言し、その瞬間水晶石の映像が消える。
【ドンッ‼︎
バリィィンッ‼︎】
「あっはっはっはっはっは‼︎
死ねえ、地上界の塵芥共ォ‼︎」
更にその次にはドアを蹴破りセレスティアの兵士…しかし額に魔血晶が付いた地上界の者に化けた魔族と、窓ガラスを破り他の魔族達も突入し四方八方から魔族がランパルド達に襲い掛かろうとする…が、此処でゴッフが素早く円卓の上に立ち、斧を持ち宙から突撃して来た魔族達に愛用のオリハルコンアックスを振り回す。
「ずぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ‼︎」
【ブゥゥンッ、ズガァァァァァ‼︎】
そして窓から突撃して来た魔族全てを一振り斧を振り回して全員斬り巻き込みながら壁に叩き付け、其処にロックの矢が連射され壁に叩き付けられた魔族の魔血晶を正確に射抜き、最後にリリアナが極氷結でその魔族達を刹那の間に氷の檻に閉じ込め、残るはドアから突入して来た魔族達だけになった。
「はぁぁ、暴風剣、瀑水剣‼︎」
先ずルルが突撃して二重魔法祝印が掛かったミスリルダガー2本で回転斬りを行いながら風と水の上位絶技をつかい。
『爆炎剣‼︎』
其処にロマン、アルク、カルロが火の上位絶技により魔族達の鎧を溶かしながら斬り付け。
「極氷結‼︎」
其処にキャシーがリリアナと同様に極氷結を放ち、ドアから来た魔族達も全て凍結させ、2つの氷の塊が会議室の場に誕生し、魔族達はこの時点で既に絶命していた。
「おらぁ、砕けやがれ‼︎」
最後にアルがミスリルアックスを叩き付け、氷の彫刻と化した魔族達を粉々に砕き、その影響で氷の中で青い炎が燃えて魔族の完全絶命を全員は確認していた。
「はっ、ゴッフ達もまだまだ衰えて無いみてぇだな!
俺様も惚れ惚れする斧捌きだぜ‼︎」
「ふん、まだまだ若造共には負けてられんわ‼︎」
そうして第1波はゴッフ達やロマン達の手により殲滅され、アルは自らの師達は腕を衰えておらずその斧や弓捌き、そして魔法の強烈さを見せ付けられ、ゴッフ達もアル達にレベルは抜かれたがそんな事を全然感じさせない腕を見せ付けた事で若者達にまだ道を譲る気は無い事をその武器や魔法の冴えで伝えていた。
「気を付けて下さい、魔族達はまだまだ此処に来て陛下達を狙ってます‼︎」
「…私も感じる、来るよ、魔族の悪意が‼︎」
其処にキャシーが念話傍受魔法を使い魔族達がランパルド達の首を未だ狙っている事を告げると、ルルの予知が魔族の悪意を感知し、次の瞬間第2波が突入して真っ先にランパルドとサツキを狙う。
「甘いわ、大熱砲‼︎」
【ドォォォン‼︎】
「ぐぇ、ランパルドの奴の魔法も強」
【ザンッ、スゥゥゥゥゥ、キンッ‼︎】
ランパルドは第2波の魔族達全てに大熱砲を当て、足止め…但し足止めには過剰な威力を当てて魔族達がその魔法の力に驚愕していた瞬間、サツキがいつの間にか懐に下げていた刀を抜刀しており、そして第2波の魔族達全ての首を断ち、刀を鞘に収めた瞬間魔族達の首が地面に落ちその身体は青い炎に包まれるのであった。
「ふん、このランパルドも魔法使いの1人、舐めて掛かるで無いわ‼︎」
「ふう、妾を熱くさせる敵と思いきや唯の雑兵風情…こんな物で妾の首を狙うとはアギラとやらはお粗末のよう」
ランパルドもサツキも敵が自分達の首を狙うことに恐怖はせず、何方も魔法や抜刀術で第2波を瞬きの間に全滅させ、彼等もまた守られてばかりのお飾りの王達では無い事をロマン達に見せ付けていた。
「報告、城内各所、及び中央都市全域で魔族との戦闘が発生‼︎
現在レオナ王女殿下、及びエミル王女殿下達やマークス殿を中心に魔族を迎撃中‼︎
また魔族が入隊した兵士に化けてる者も居り、エミル王女殿下やムリア殿達の活躍で未だ大丈夫ですが、指揮系統にも混乱が生じております‼︎」
するとセレスティアの親衛隊の1人が青い返り血を浴びながら部屋に突入しながら跪き、現在の状況を詳しく説明し始めた。
ロマンやアルク達はレオナやエミル達のお陰で化けた魔族を見破り何とかなっていると報告を受けた為、そちらは安心しつつ中央都市全域の戦闘に関してはカバーしなければ拙いと考えていた。
「報告ご苦労‼︎
では若者達よ、我等王は此処に留まりこの首を狙う魔族達を迎撃する‼︎
君達は城内やライラック全域へと駆け抜け、魔族達を殲滅せよ‼︎」
『はっ‼︎』
するとランパルドも同じ事を考えたのか、王達を1箇所、しかも襲撃し放題の会議室に留まりロマン達や息子や臣下の兵には城内やライラック全域をカバーする様に命令し、ロマン達もこの場に居る王達ならば安心だと思い命令に従い城内を駆け抜け始めた。
「さあ各々方、我々地上界の国の王と予言者の力、奴等に見せ付けてやりましょうぞ‼︎」
「さあ来いや魔族共、テメェ等の獲物は此処に居るぜ‼︎」
そしてロマン達を見送ったランパルドはロック達全員に各々の力を魔族達に見せ付けんと鼓舞を始め、それに真っ先にゴッフが反応して獲物は此処だと叫び自らが呼び水となりて魔族達を誘う。
「魔族達の悪意、来ます‼︎」
そしてリリアナも危険予知が入り、魔族の悪意が迫る事を告げ臨戦態勢に入る。
こうして王や予言者は再び来た第3波を自らの手で迎撃して行き、中にはレベル250の魔族さえ居たがその悉くをレベルに関係無く打ち斃して行き、自身等を撒き餌にした迎撃は上手く行くのであった。
「灼熱雨‼︎」
「大水流‼︎」
「極光破‼︎」
一方城壁付近ではレオナ、シャラ、エミルの最上級魔法で魔族達は文字通り塵一つ残さず消え去り、セレスティア王国騎士団の魔法使い達も上級魔法で足止めをし、前衛が止めを刺す戦法を取っていた。
なお騎士団の武具にはレオナの魔法祝印IVが掛けられており、此方側の武具が一方的に破壊される事態を防いでいた。
「卑劣なる魔族達よ、我等が正義の刃を受けよ‼︎
光流波ァ‼︎」
「正義の槍もついでに受けな、爆炎槍‼︎」
「えい、暴風弓‼︎」
更に正義の鉄剣のネイルとガムの剣と槍が魔族の鎧を砕き貫き、サラの放つ矢もまた一撃必殺の威力となり魔血晶を砕きながら宙を舞う魔族達を撃ち落として行く。
「き、貴様⁉︎
貴様はあのネイルを殺す様にとアギラ様から命じられた筈だ⁉︎
なのに何故」
「俺の心は、正義はな〜‼︎
ネイルの兄貴達と一緒にあるんだ〜‼︎
震撃斧〜‼︎」
更に魂の色を視る為魔族の変身魔法Iが通じないムリアが何故かネイルやエミル達の味方をするのを理解出来ない魔族達は武器を振るいながらも驚愕し、そのムリアも土の上位絶技を使用しながら正義の心はネイル達と共にあると叫び、敵魔族を次々と力任せに両断して行く。
「我が名はセレスティア王国親衛隊隊長マークス‼︎
我が槍によりその悪意、祓わせて貰う‼︎
暴風槍‼︎」
『グァァァァァァァァ‼︎』
更にマークスが名乗りを上げながらその槍を以て魔族達を刺し貫き、此処に集う者達の中でもネイル達と同格だと見せ付け更にガムと背中合わせで槍を振るい、魔族の命を絶つ。
その他親衛隊も王族達を守る為の力を奮い立たせ、魔族を蹴散らして行く。
「危ない、やぁ‼︎」
するとネイルは遠くに居た王国騎士団の魔法使いを助けるべく持っていた剣を回転を付けながら投げ、それが直撃した魔族は両断され青い炎に包まれ灰になる。
するとネイルを狙い敵が押し寄せるが、それをネイルは副武装たる槍を振るい全ての魔族を迎撃し、それらをマークス達に劣らぬ技捌きで撃破して行く。
「悪は滅ぶべし‼︎」
『ガバッ⁉︎』
そうしてネイルを此処ぞとばかりに狙った魔族達は青い炎に包まれ、魔血晶も砕かれながら死を迎えそれ等魔族達をネイルは悪と断じ、滅ぶべしと最期の言葉を投げ掛け彼等の正義が自らの悪逆を上回ってしまっていた事を悟らせるのだった。
「ネイルさん‼︎」
【ビュンッ、ガシッ‼︎】
「ロマン君にアルク殿達、城内の状況はどうなってるか!」
すると城壁にロマンが現れ、ネイルの剣を投げて返却し、それを受け取ると中からアルやカルロ達まで現れた事で一旦城内の様子を彼等に問い質し始める。
「城の中の魔族達は化けてる奴等も含めて何とか倒した‼︎
不意打ちだらけで休まる暇が無かったがな‼︎
今は城壁周りの敵を迎撃し切ったから次は街の敵を殲滅に向かう‼︎」
するとカルロが城内の敵は一掃仕切り、更に城壁周りの敵も撃破した事で残るは街で暴れ回る魔族達を迎撃すると叫び、すると兵士が城門を開き街に駆け込む準備を整える。
「うん、なら私達誓いの翼は西から南に掛けての防衛をするわ‼︎
ネイルさん達は北から東までをお願い‼︎」
「了解した‼︎
キャシー、シャラ、転移して無辜なる民を救うぞ‼︎」
「王国騎士団も続け、我等が守るべき民達を守れ‼︎」
そうしてカルロの話を聞いたエミル達誓いの翼が西から南を、正義の鉄剣が北から東をかけて防衛戦を開始し、それぞれが転移し現場に向かう。
更にアルクとカルロが馬に乗った騎士団達を率いて街に進撃し、罪無き民を狙う悪意の塊を倒しに向かい始めた。
そしてエミル達は転移した先では女も老人も子供も関係無く殺されている残酷な光景が目に映る。
「ひ、酷いよ…こんな…‼︎」
「くっ…魔族共が‼︎」
「おっ、へっへっへ、誓いの翼とか言う正義の味方面の馬鹿共が来たぜ‼︎
俺の名は『ケミル』、この名は覚えなくて良いぜ、何せお前等は死ぬんだからなぁ‼︎
野郎共やっちまえ‼︎」
更に転移した先で、その光景にサラやロマンが悲しみ、アルとルル、エミルが怒りを溜め込んでいると名あり魔族のケミルが大勢の魔族を引き連れ、エミル達に襲い掛かり始めた。
そしてエミル達はこれを為した魔族達に怒りを爆発させ眼前の敵を迎撃し始めた。
「テメェ等卑怯な魔族に血も涙も無ぇ事は分かった、なら俺様達も全力でぶっ潰してやる‼︎
『爆震斧』‼︎」
「許さない、お前達みたいな卑劣な奴は僕達が斃す‼︎
『暴焔剣』‼︎」
真っ先に飛び出したアルとロマンは早速複合属性絶技を使用し、数だけは達者な魔族達を一気に屠り始め溜め込んだ怒りを爆発させていた。
その戦い振りは正しき怒りを振るう正義の化身であった。
「げぇ複合属性絶技⁉︎
し、しかもこいつ等、レベルが250を超えてます‼︎
ケ、ケミル様如何しましょう⁉︎」
「落ち着け、物量で押し切れば」
『『雷光破』‼︎』
アルとロマンの複合属性絶技を見た名無し魔族は一気に震え上がり、この中で唯一の名ありであるケミルに如何すれば良いかと慌て始める。
しかしケミルは至極当然の物量で押し切る命令を下す…その瞬間ロマン、ルル、そしてエミルの光と雷の複合属性魔法によりその場に居た名無し魔族の6割が魔血晶毎消し炭になり、物量の差が一気に消え始めていた。
「ま、拙い、陣形を整え」
「『嵐瀑弓』‼︎
『氷黒弓』‼︎」
更に陣形を整え反撃に出ようとした瞬間サラの複合属性絶技の矢が魔族達を貫き凍結させ、更に其処にロマン達前衛の攻撃により闇の氷は砕け、中の魔族達は一気に絶命し青い炎に包まれ始めた。
「クソ、役立たず共が‼︎
こうなれば俺が自ら貴様等を殺してくれる‼︎
はぁぁぁぁ‼︎」
「やぁぁぁぁぁぁ‼︎」
それ等を見て業を煮やしたケミルは背中に背負う兎に角サイズが背丈より大きな両刃の大剣を片手で振るい、それをロマンが大きさが半分にも満たない普通の剣で打ち合う。
それに対しケミルは余裕を見せ、魔界の魔法祝印もある為例えミスリルソードでも簡単に圧し折る事が出来る。
そう高を括っていた。
「くうぅ、やぁ‼︎」
「はっ、地上界の武器など我々魔族の武器の前では所詮無力よ‼︎」
「俺様の作った武具、そしてエミルが付与した魔法祝印‼︎
最高の武具に最高の魔法祝印が加われば如何なるかその目で確かめやがれ高飛車野郎‼︎」
ロマンが何度も剣や盾で打ち合い、それを見たケミルは完全に自身の戦に持ち込んだと意気揚々に大剣を乱暴に振るうが其処にアルやルルも割り込み、アルは自身の作り上げた武具に自信が認めたエミルの魔法祝印が加わったら如何なるかを思い知らせるべくミスリルアックスを力を込め振るう。
「はっはっは、地上界の者如きが我等魔族に何を言おうが何も響かんわ‼︎」
「呆れた奴、周りの状況も見れないなんて指揮官失格よ‼︎」
そのアルを嘲笑うケミルに対しルルは周りの状況も見えない事を指摘すると、ケミルは何時の間にか部下達が全て倒され、更にカルロ率いる騎士団にも囲まれて最早詰みに近い状況下に陥っていた。
「其処の魔族‼︎
この地区に残ったのは貴様のみだ‼︎
降伏するなら」
「降伏ぅ?
それをやるのは…お前達だぁ‼︎」
「この、大馬鹿‼︎」
カルロは最後通告をケミルに叫ぶが、それをケミルは無視し再びロマン達に襲い掛かり始めた。
それをロマンは大馬鹿と叫びながら再び剣同士で打ち合い始める。
するとケミルは未だ気付かない変化が戦場に起きる。
それはケミルの魔界の魔法祝印付きのミスリル製大剣に起きていた。
「今だ、やぁぁぁ‼︎
爆震剣‼︎」
それを目撃したロマンは複合属性絶技を纏った剣で鍔迫り合い始めると、ケミルの大剣に明確なヒビが入り始める。
そしてそのヒビから一気に大剣はロマンの小さな、二重魔法祝印が付与された剣に圧し折られ、振り返した瞬間両腕も両断されてしまう。
「ギャァァァァ、俺の腕ぇぇ⁉︎
うわぁぁ、逃げ」
「逃がさない‼︎
喰らいなさい、『瀑風流』‼︎」
「『雷光弓』‼︎」
其処にエミルとサラが追撃に魔法と矢、しかも何方も複合属性で攻撃し、剣を折られ腕が切られたショックで宙に逃げようとしたケミルを撃ち落とす。
そしてその眼下には既にロマン達が立っており、ジャンプし武器を構えた。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
そして3人はそれぞれの武器でケミルを空中ですれ違い様に斬り裂き、その命と魔血晶は砕かれケミルは最期に何も言えぬまま青き炎に包まれ地面に叩き落とされる。
それから着地したロマン達は周りに敵が居ないかを確認し始め、その様子からこの地区の魔族は居ないと判断していた。
「…念話傍受魔法にもアギラを助けを求める声はネイルさん達の方にしか聞こえない!
カルロお兄様、兵達と共に生存者捜索を‼︎」
「分かっている、全員生存者を見つけエミル達の下へ連れて行くか生存者の下に来させろ‼︎
傷の手当てを回復魔法でさせて避難させるぞ‼︎
良いか、1人でも多く民達を救い出せ‼︎」
担当地区の戦闘が終わった直後にエミルはカルロに生存者を探す様叫び、カルロ自身も兵士達と共に逃げ遅れた生存者を探し始め1人でも多く救おうと奔走し始めた。
アレスターの時にされた救える命を自らの命を賭して救うを行う為に。
そして見つかった重症者達もエミル達の回復魔法で一命を取り留めた者が多く居た………だが、それでも救えなかった命はあるのであった…。
『悪よ、消えて無くなれぇ‼︎』
「我等騎士団の力を受けよ、魔族共‼︎」
『ギャァァァァ‼︎』
一方北から東を担当したネイル達も名あり魔族やその他魔族軍団をアルクにレオナ、マークス達親衛隊と騎士団撃破し、戦闘を無事に終わらせる事に成功する。
「よし、マークスに親衛隊、そして騎士団の皆は逃げ遅れた生存者を探し出せ‼︎
レオナ、回復魔法の用意を‼︎
ネイル殿達も手伝ってくれ‼︎」
「無論です、か弱き民達を救うのは我々力ある者の使命!
皆、共に探し出しムリアとシャラ、キャシーは回復魔法で救える命を出来る限り救い出すぞ‼︎」
『了解‼︎』
アルクも戦闘が終わった直後に逃げ遅れた民達を救うべく瓦礫の下や建物の陰等を探し始め、ネイル達も同様に探し始め此方はムリアの魂の色を視る眼が大いに役立ち弱り掛かってる民達から次々と回復させ、避難させて行く。
しかし、此方も救えぬ命は如何足掻こうとも出てしまい、ネイル達はその無情なる現実を受け止め、この無念を怒りに変え次なる戦いに力を蓄えるのだった。
一方その頃血濡れのグランヴァニアの宮殿跡の地上界の者達の亡骸が積み上げられ、それを玉座から眺めながらアギラはセレスティア、更に裏で他3国にも地上界の者に化けた魔族で同時に不意打ち攻撃を仕掛けていた。
が、セレスティア王国同様何の戦線も戦績が芳しく無く、更には念話を傍受されていた節があると報告を受けアギラはシエルとダイズを呼び出しそれ等やエミル達がレベル260を突破している事を苛立ちながら問い質していた。
「如何言う事だシエル、ダイズ?
念話が傍受されている等私は聞いていないんだが?
それにシエル、貴様あのライラの転生体共が『試練の問い』を突破してレベル250の壁を超えてるじゃないか‼︎
納得の行く答えを出すんだろうな⁉︎」
「存外、地上界の者達の精神は簡単には折れなかったらしいな。
しかも『何処か』で試練の問いさえも知ってしまった。
こればかりは私の情報リサーチが甘かった様だ、済まなかったなアギラ」
アギラは特にシエルを捲し立て、折れた筈のエミル達が何故試練の問いを知りそれを突破したのかを問うが対するシエルは平謝りばかりしかせずまともに取り合おうとしていなかった。
その態度に遂にアギラの堪忍袋の尾が切れ玉座から立ち上がりシエルに対し剣を抜いていた。
「リサーチ不足だと、巫山戯るなこの魔剣に選ばれただけの女が‼︎
貴様は奴等が試練の問いを超える可能性を見出しながら見過ごしたのだ‼︎
その罪、魔王様の名の下に断罪してくれるわ‼︎」
「…ほう、私に剣を向けるかアギラ?
なら良いだろう、貴様がその気ならば私にも考えがあるぞ…」
アギラは剣を向け距離を一定に保ちながらシエルが行った事への自身の予想を立てつつ敬愛する魔王の名の下に断罪するとまで宣告する。
その瞬間シエルの目も座り、懐に携えた魔剣…では無く、オリハルコンソードを引き抜き型の無い脱力と何処から攻撃が来ても対処可能な構えとも呼べない無型の剣術の態勢を取り、アギラに対し殺気を放ち来るなら来いと言わんばかりに1歩ずつ近付いた。
「其処までにしろアギラ、シエル。
今は何の戦線も戦績が良く無いならいっその事グランヴァニアまで兵を下げ、奴等をこの地で迎え撃つ選択も視野に入れたら如何なんだ?
特にアギラ、お前には未だ策があるんだろう、しかも貴様的に『取って置き』の物が」
すると2人の間にダイズが割り込み、2人の剣を素手で持ち現在の戦況から決戦の舞台をグランヴァニアにし、其処でアギラが取って置きの策を使う様にダイズは言い回す。
するとアギラは一旦怒りを鎮めて剣を収めながら2人を見渡した。
「…ええ、ありますとも。
取って置きの、地上界の者達が如何足掻こうが乗るしか出来ない私好みの策が、ね。
良いでしょうシエル、今回の件は無かった事にし互いに水に流し合いましょう。
ですが次の戦いでは貴女方の戦力も借りたい、魔物でも良いから寄越しなさいな」
アギラは取って置きの策が地上界の者では如何足掻いても乗るしか出来ない事を豪語しながら笑みを浮かべ、それが決まった際の快感を想像しながらシエルに今回の件は水に流すと告げる。
但し無条件では無く2人に戦力寄越す様に要求すると、2人は考え始めそれを纏めると口を再び開く。
「…なら私からは『オーバーロードドラゴン』を3体くれてやる。
地上界換算で討伐推奨レベルは380、絶好のタイミングで使うが良い」
「俺からは副官にして貴様が絶縁した妹の『アリア』をくれてやる。
アリアからの忠告は素直に聞けよ?
でなければお前は勝てる物も勝てないからな」
そうしてシエルからは地上界には未だ出現例が無いドラゴンの最上位種『オーバーロードドラゴン』を3体と言うアギラも唸る魔物を寄越すと言い、ダイズからはアギラの妹とは信じられない程性格が真逆であり、実力も軍略もアギラを一方的に追い抜き彼から嫉妬から絶縁を叩き付けたダイズの副官アリアを寄越すと宣言される。
但し忠告は素直に聞く様にと釘を刺しながらである。
「アリア………あの小生意気な愚妹か。
ふん、無いよりかマシか。
良いだろう、私もそれで取り敢えずは満足しよう。
さて、奴等を迎え入れ後は…くふふふ…」
アギラはアリアの名を聞いた途端に不機嫌になるが、自身の策が綺麗に決まる事を夢に見ながら玉座に座り、積み上げた亡骸にダーツ投げをしながらその時を待ち、2人はそれを見た後に転移し別の場所…門の前まで来ていた。
「ふん、アギラの奴め悪趣味な事を嬉々としてやるその神経が知れん。
如何してあんな奴の妹のアリアが有能で経済、政治から支配した方が効率が良いと進言出来るのに奴はあんな…」
「自分の趣味と楔の泉破壊を同時にやろうとする結果だろう。
さて、それぞれ手配した戦力を奴に手渡しに1度魔界に戻るぞ。
…次の戦いかその次で奴の限界を知れる良い機会だからな…」
ダイズはアギラとアリア、2人の兄妹で何故能力や性格に差が生まれたのか不思議がり、シエルはアギラの性格から趣味を満たすのと楔の泉破壊を同時にやろうとする内心愚かと思う結果の為と分析しながら門を潜ろうとしていた。
そして…シエルはアギラの底が知れるとも口にしながら、敢えて戦力を回してその結末を静かに想像するのだった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
アギラが本格的に動き、多くの犠牲が出ました。
この悪行にエミル達は如何するか、またアギラの他の策とは何なのかお楽しみに下さいませ。
では今回はグランヴァニアとアギラの関係、アギラ派の魔族全体の思想について書きます。
グランヴァニアとアギラの関係:グランヴァニアは初めからアギラ達魔族を受け入れ、彼等の命令で各国で楔の泉を探す様に動いていた。
そしてグランヴァニアは自分達の魔族信奉こそが平和を齎すと信じて疑わなかったが、アギラにとってみれば捨て駒以下の塵芥が自分に纏わり付いているに過ぎなかった。
そして後は本編通りに最初の鏖殺対象に選ばれてしまった。
アギラ派の魔族全体の思想:アギラ派の魔族は全てアギラが自分達を導く者、魔王こそがそのアギラの上を行く絶対の支配者としている。
そして上が上なら下も下、アギラと同じく地上界に生きる者を全て塵芥にしか考えておらず自分達こそが何に置いても上だと信じて疑っていない。
次回もよろしくお願い致します。




