第23話『誓いの翼達、更に修行する』
皆様こんにちはです、第23話目更新でございます。
今回で修行は中盤を超えて後少しで仕上がりに入ります。
では、本編へどうぞ。
エミル達の試練が終わった後、アイリスはエミルの記憶をビジョンとして神に見せ、リコリスや他の天使達と共に3回目の進言が始まっていた。
「神様、魔法使いエミルの記憶から魔界は500年前から聖戦の儀の法を犯しています‼︎
そして念話傍受で魔族シエルが楔の泉を500年前より探し、破壊の為に魔族が動いてるとあります‼︎
これでも我々天界は聖戦の儀の中止をし、魔界側に罰則を加えぬのですか、我らが父たる神様‼︎」
「神様、私からもお願い致します。
魔界は魔族アギラが虐殺計画を練っております。
そしてそれを止められるのは我々天使だけ、お願い致します我々を地上界へ派兵して下さい!」
アイリスとリコリスが中心となり神に地上界への派兵許可を得ようと必死に説得し始めていた。
それ等を見聞きした神は瞳を閉じ、そして開き答えを出し始めた。
「天使アイリス、リコリス、そして愛しき我が娘に息子達よ。
汝達の叫びは伝わり、魔界側に明らかな法を犯す証拠を私は見た」
「…なら」
「しかし同時に理解して欲しい。
我々天界は一方に肩入れしてはならないと。
よって天界からの派兵は禁ずる。
我が子等よ、分かっておくれ。
神が悪戯に介入すればそれに世界は甘えてしまうのだ。
だから、この話はもう終えよう」
だが神は自身の介入でいざと言う時は神が助けると言う事例を作らないが為に数ある証拠を突き付けてもなお動かず、そして話を一方的に切り上げてしまう。
それを聞いたアイリスは………遂に怒りが爆発し、武装して神に斬り掛かり、それを神は身動きせず結界で防いでいた。
「神よ、貴方のやってる事は生み出した者達の成長を願い見守っている事では無い、ただの欺瞞による放任だ‼︎
そんな事例を作りたく無い⁉︎
巫山戯るな‼︎
なら何故聖戦の儀の法を作った‼︎
何故法を犯せば天界が動くと定めた‼︎
答えろ、我等が愚父よ‼︎」
アイリスは天界、ひいては神が何故聖戦の儀の法を作ったのかと怒りに任せながら問い、更に現在の神が行っている事は成長を見守るのではなく放任、身勝手に動くのも咎めぬ毒親と同じであった。
その為アイリスは天界の光の槍を持ち結界を突き斬ったり等して矛を届かせようとしていた。
「アイリス姉様、矛を納めて‼︎
皆、姉様を取り押さえて‼︎」
『は、はい‼︎』
その突然の暴発にリコリス達は慌ててアイリスを押さえ、神殿から飛び去り地上界を監視する泉まで飛ぶのであった。
そして矛を突き付けられた神はその事については気にしなかったが、アイリスの言葉を静かに繰り返していた。
「…何故そんな法を作った、愚父か…。
初めは互いに戦う事でしか解決しない物を解消すべく作ったのだが…何時から形骸化し、私は愚かになったのだろうか…」
神はその法を作った理由は、戦いでしか解決しない勝利者を決めてそれを解消しようとした筈だった。
しかしそれは何時しか形骸化し、自身も全く決断が出来ない愚か者になったと1人愚痴を零し、そして天界にも浮かぶ2つの月を見上げるのであった。
一方その頃地上界にて、盗聴防止結界を使いながらの遅めの昼食となり修行によりその先で見た試練の話になっていた。
但しエミルは全員分の物を見ていた為その話題が終わってから聖戦の儀の刻まれた知識を話そうと思っていた。
「…つまり私やロマン君は所謂何かを犠牲にしてしか誰かを救えない問題を出され、我々は仲間を信じ攻撃を止める選択を取ったと」
「俺様は戦いと鍛治職人の両立を聞かれ、サラは復讐で弓を引くかをアレスターの坊主から聞かされ、そしてルルは自身の血筋に関わる………それも、まさかルルが勇者ロアの娘だったなんてな…」
先ずロマンとネイルが共通の試練を課され、次にアルが冒険者と鍛治職人の両立、サラが過去を想い、今と未来の為に弓を射る事を告げ、そしてルルが今まで内緒にしていた勇者ロアの娘である事を覚悟を持って話し、ロマンに先祖の娘が未だ存命してた事を驚かされる。
「でも、やっぱり真の勇者はロマンだよ。
私よりも勇気や優しさの意味を深く理解してる…だから試練の内容も正義の味方に関する問題だったと思う。
だから私は私のままで良いんだ。
そしていつか神剣の下に貴方や皆を導くからその時まで待ってて」
「ルル…ありがとう…」
しかし、勇者の資質はある事も見せるが矢張りロマンが真の勇者とルルは推すのだった。
それは試練の内容、更にロマンが潜在意識で優しさや勇気を知る為と答え自身はシーフ、義賊のままで良いと口にしてロマンから礼を言われてしまう。
だが本人は好きな様に生きたいだけの為その礼は不要だった。
更に神剣ライブグリッターの下には何時か導くと話してそれでルルの話は終えた。
「で、俺やシャラは凡人のままで良いかって質問に…」
「ネイルさんを守るのに天才だとかそんな特別は必要無い、凡人魂見せてやるって答えだったね」
ガムとシャラは凡人なままであり続けるかと言う問いに対して凡人魂を見せると言ってみせ、2人の特別な才能をいらないと言う無欲の勇気に天使は満足したらしい。
「…んで、俺は同族と戦う覚悟はあるかって聞かれて、ネイルの兄貴や家族の為、アギラみたいな卑怯者を野放しにしない為に戦うって答えを出したんだ〜。
つまり、俺実はネイルの兄貴を暗殺する様に命令された魔族なんだ〜。
皆、記憶喪失なんて騙しててごめんなさい〜…」
続いてムリアが自身の素性を告白し、魔族の証の魔血晶や褐色肌を見せながら全員に土下座して謝り、如何なる非難も受ける気でいた。
しかし、返って来た言葉は…。
「でもネイルさんを今まで暗殺するタイミングでやらなかっただろ?
だからノーカンだよノーカン!」
「それにムリアは弱き人々の為にその斧を振るい救って来たんだ、その心に嘘偽りは無いと私は思う。
そして地上界にも悪逆を成す者がいる、ならば魔界に正義を成す者が居ても何ら可笑しく無いさ」
ガムとネイルのムリアの善性を信じ、また正義の者だとネイルが呼びそれは正義の鉄剣内では最高の褒め言葉であった。
それらを聞きムリアは涙ぐんでしまい、ネイルの胸の内で泣き出し、ネイルはそれを静かに受け止めていた。
「良かったですね、ムリアさん」
「そうね…所でキャシー、貴女はどんな内容を問われたのかしら?」
それを側で見ていたキャシーやシャラは良かったと呟きムリアが謂れの無い批判を受ける事がなかったのを喜んでいた。
するとシャラはキャシーに試練の内容はどんな物だったかを問い始め、ネイルやガム、ロマン達も注目を始めていた。
「えっと、貴女には初恋があり、そしてそれを叶える為の魔法使いの才覚がある。
それ等を腐らせたまま眠らせて良いかって聞かれて、私は女を舐めないで下さい!
恋も才能の開花も自分の力で成し遂げます、貴女にとやかく言われる筋合いは無いです‼︎
ってムキになって叫んじゃいましたら、女の子の意地を見せて貰ったって言われて合格でした、はい」
するとキャシーの内容は彼女の恋心や魔法使いの才覚に関する問いかけだったらしく、それを聞いたキャシーはムキになってしまいアドバイスをくれそうな雰囲気の物を自分で蹴り飛ばして両方とも自分で叶えると叫んでしまったらしい。
そして天使はそれを気に入り合格となったと気不味く話していた。
「あら恋パナ?
お姉さん少し気になるなぁ〜」
「そ、そんな事より最後にエミル様‼︎
エミル様はどんな試練を⁉︎」
するとシャラはキャシーの恋話に興味を持ち聞こうとしたが、本人にはぐらかされてエミルにどんな試練の問いが待っていたかを聞き始める。
キャシーの中では前世がライラであるエミルの事の為複雑な内容の物が来たのだろうと思っていた。
「いや、私にそんな試練の問い掛けなんか無かったわよ?
代わりに皆の答えを見せて貰ってて、何故私に試練の問いが無いか天使に聞いたら私がブレなさ過ぎて意味が無いって言われちゃったわ」
「え、えぇ…。
でも、魔王を斃す事にブレが無いのは確かだし、その為の明確な答えをとっくに持ってそうだよね、エミルって」
しかしエミルはそんな物は無かったと答え、天使からブレなさ過ぎて意味がないと言われた事も話すとロマンを初め、誓いの翼の皆は納得してしまい、ネイル達もエミルはそんな人物なのだとこの3日で思い知りながら話を聞いていた。
「でも天使、しかもライブグリッターを授けたとされるアイリスから今地上界と魔界の間で行われている戦い、聖戦の儀についての知識を頭に刻み込まれたわ。
それを皆に話すわね」
『聖戦の…儀…?』
しかしエミルは何もせずに枷が外れたのかと言えば違い、自身の頭に刻まれた聖戦の儀の知識について全員に共有を始める。
この中でロマンやサラ、ルルにネイルは天界がそんな名前の戦いを決めてる事を疑問に思いながらエミルから話される内容に他の皆と共に聞き始める。
因みにムリアは元名無し魔族とは言えその知識がある為復習を兼ねて聞いていた。
「先ず聖戦の儀は天界が定めた地上界と魔界の間で発生する戦いの名前で、発生原因は貧困から土地不足と多岐に渡りそれを戦いで解消するルールみたいなの」
「な、何だそりゃ⁉︎
それじゃぁ俺様達の命懸けの戦いは天界が決めたそんな変なもんで起きて続いてやがるってのか⁉︎」
「極端に言えばそうね」
エミルは先ず聖戦の儀の概要から話し、その発生原因も様々で天界はそれを戦いで解消する様に定めたと話すとアルは憤慨し、天界がそんな物を決めた為にこんな戦いが500年も続いているのかと叫ぶとエミルは極論でYESと答え他の皆も天界が傍観者を気取る事に不快な気分を抱き始めていた。
「そして戦いが起きる時は片方の王がもう片方の王に何時攻めるかを伝えてから戦いが始まるわ」
「むっ?
エミル殿少し待って欲しい。
確か500年前の戦いは魔界が一方的に攻め入ったと言い伝えられている筈だが如何なんだろうか?」
「そだよ、お父様達も突然攻められたって言ってたし、これってルール違反だよね?」
エミルは更に話を続け、戦いが起きる際のルールも話すとネイルとサラが反応し言い伝えや生き証人達からは突然攻められたと話し、サラは其処にルール違反と付け加えたが、エミルは頭を抱えながらアイリスに言われた内容をそのまま口にし始めた。
「それが…500年前の地上界の王は女や金に溺れて聖戦の儀を御伽噺と片付けて何ら準備をしなかったらしいの。
そして500年前の戦争が起きて、アイリスが救済措置として神剣ライブグリッターをロア様に授ける羽目になったとか言ってたわ」
「…何それ、それじゃあお母様達はその愚王の為に地獄を見せられたの?
許せない…‼︎」
エミルは500年前の地上界の王の愚行をそのまま口にし、ライブグリッターが授けられた原因の1つと語るとルルはその愚王の行いに怒りを覚え、他の面々も同様の感想を抱いていた。
「で、その結末は皆も知っての通りライブグリッターを振るうロア様やシリウス様達の活躍により魔族達を一時撤退させ、ライラ様が縛られし門を使って500年間両者は疲弊を回復させ、力を蓄える事になったわ。
因みに天界はライブグリッターが地上界にある為、魔界に対の魔剣ベルグランドを授けて、あの魔族シエルが持ってるらしいわ」
そして500年前の結末を改めてエミルは話し、更にシエルが魔剣ベルグランドを持つ魔族の中でも勇者ロアの立ち位置に居る人物だと伝えると皆ムリアを見てシエル等の情報を聞き始める。
「えっと、シエル様は聖戦の儀が起こる前の魔界の争いを今の魔王の下で収めたアザフィール様の弟子の1人で、魔界1の剣士と言われて物すっごく強くて今の魔王の幹部三人衆最強の女と呼ばれる実力主義者なんだな〜」
「あのシエルって魔族はそんな恐ろしい人だったんだ…そしてアザフィールは魔界の英雄でシエルの師匠で今は部下…頭が痛くなる実力相関図だよ…」
ムリアのアザフィールやシエルの説明を聞き、ロマン達はシエルやアザフィールがそんな地上界の勇者ロアやシリウスの様な存在だと知り頭を抱えていた。
「だが連中はレベル350と450だ、俺達は枷を外して更に強くなれるから直ぐに奴等と」
「あ、三人衆の内狂戦士のダイズ様とシエル様達は実力をアギラに合わせてレベル低下を自分に掛けて本来の実力じゃないんだな〜」
「え"っ、つまりそのアギラ以外は手加減してアレなの…⁉︎」
しかしアルはレベルの枷が外れた為、順当に行けば350のアザフィール達と戦えると話すが、ムリアが直ぐにアギラ以外は自身にレベル低下を常に掛けてると話す。
それを聞いたサラは嫌そうな表情を浮かべて手加減していたアザフィールにズタボロにされた事実を突き付けられてしまう。
「…さて、シエル達の話は後にして聖戦の儀のルールについて話すわ。
両者の共通事項として虐殺禁止、レベル250オーバーの戦力の派兵禁止とか色々あるわ。
で地上界側の独自ルールとして魔界に攻め入るには神様の許可が如何なる時も必要、聖戦の儀中は地上界の者同士で争ってはならない、意図的に地上界を裏切る真似をしてはならないってのがあるわ」
するとエミルはシエル達の事は思考の隅に追い遣り、聖戦の儀のルールを話し始める。
すると直ぐに全員がルール違反を魔界側、更に地上界はグランヴァニアが行なっていると思い口にしようとしたが、まだ魔界側のルールが出てない為その先を聞こうと出そうとした言葉を喉の奥に引っ込める。
「で、魔界側は魔王を魔界に縛る楔の泉を破壊してはならない、魔王は地上界に来てはならない、必要以上の地上界への攻撃をしてはならないってルールがあるわ。
…皆の思う事は分かるわ、地上界はグランヴァニアが、魔界はもう全体がルール違反を犯してこれ等のルールが形骸化してるわ」
「確かに…ではエミル殿、ルール違反の際に天界は何らかの罰則を課すのかな?」
エミルは最後に魔界側のルールを話すと同時にそれ等のルールが現状形骸化し、ルール違反が多発している事を告げるとアルは気に入らないと言った表情を見せ、其処にネイルが天界側のルール違反に対する動きをエミルに問い始める。
「ええ、天界はこれ等のルールを破る者達に天使を派兵して聖戦の儀の中止、そして違反側に罰を与えるわ、本来なら」
「…本来、なら?」
エミルはネイルの問いに天界から天使が降り立ち本来なら罰則を与えると話す。
しかし、本来ならと言う言葉に全員引っ掛かりを覚えた為、エミルに何が起きてるのかを視線で問い始める。
「アイリス曰く、神様が証拠を見せても動き出そうとしてないらしいわ。
だから天使が来るのを期待しない方が良いと言われたわ」
「何じゃそりゃ⁉︎」
「神様って、無責任な奴なのね…」
エミルは今の神の事をアイリスに伝えられた通りに言いつつ展開が動かなそうと話すとガムとシャラは心底驚き、同時に神の傍観者気取りに落胆するのだった。
そしてそれはロマンやネイル達も同じく、特にロマンの方は神を「意気地無しな…」とボソッと冷淡に呟き、ネイルは「神であろうと、混沌とした世を治めぬのならそれは悪だ!」とキッパリと悪認定してしまった。
「とまぁ、神『サマ』の放任主義の話は此処までにして、以上が聖戦の儀の情報よ。
そして私達誓いの翼は楔の泉を破壊しようとする魔族を倒す為に動くわ。
でもその前に残り2日で皆にマスターして貰いたい絶技と魔法があるわ。
思ったより直ぐに枷外しが終わって助かったわ」
そうしてエミルの聖戦の儀の話が終わり、食事も丁度終えた所でエミルは誓いの翼の行動方針をネイル達に話し、彼等も楔の泉が破壊されれば魔王が動き出す事を聖戦の儀のルール説明で理解しそうするのが理想的と思っていた。
そんな所にエミルは更に覚えて欲しい魔法等と口にするとロマン達は身構えてしまう。
「覚えて欲しい奴…アザフィールの野朗が使った複合属性の魔法と絶技だな?」
「そう、皆を鑑定眼で視たら全員レベルが260になっていたの。
これなら複合属性魔法や絶技を使っても身体が壊れず上手くコントロール出来ると思ったから、時間が許す限りこの2つの『全部』の熟練度を上げて欲しいわ」
アルはアザフィールの放った焔震撃や爆震剣等を思い出し身震いし、ロマン達も固唾を呑み自分達もアレを覚えるのかと感じ固まっていた。
「エミル殿、失礼するが複合属性とは一体?」
「ネイルさん達も知らなくて当然よ、これは250になったリリアナ様や書物でライラ様が必死になって漸く使える様になった代物なんだから。
複合属性は文字通り属性を混ぜた物よ。
火は水、土は風、闇は光、氷は雷と相反する属性以外の組み合わせで混ぜ合わせ使える魔法よ。
例外的に氷は闇、雷は光とこの4つの属性はこの組み合わせでしか使えないけどね」
ネイルの質問にエミルは懇切丁寧に説明を始め、相反する属性以外の組み合わせで放つ物で、但し光は雷、闇は氷としかこの4属性は組み合わせられないと話し、するとエミルは杖を持ちながら実践に入ろうとしていた。
「じゃあ試しに1個空に向かって撃つわ…『雷光破』‼︎」
【ズガァァァァァァァァァ‼︎】
『⁉︎』
エミルは空に向かって光+雷の魔法、雷光破を放つ。
その見た目は下級と上級魔法しかない雷の魔法に光はの魔法が加わり白い稲妻が耀きながら空に放たれ一閃の雷を美しいと思う者も居た。
しかし魔法使い組やネイル、複合属性で倒されたロマン達は感じ取る。
初めて放つ魔法、しかも上級魔法までしかない雷が光を混ぜただけで熟練度を高めた最上級魔法に匹敵する物だと、
「これが複合属性魔法よ、初めて使った割には熟練した最上級魔法並の火力があるでしょ?
これが廃れた理由の1つ、250にならなきゃ使えないし威力はバカ高いし手加減して放てる代物じゃないから禁術扱いになってるわ。
でも、260になった皆ならコントロール困難なこの複合属性を使い熟し魔族との戦いを終わらせるって信じてるから」
エミルは複合属性の威力を見せ付け、廃れた…と言うより禁呪扱いされてると話しロマン達は汗を掻くが、その汗は嫌な悪感情から来る物では無い。
エミルがこんな物を使い熟すと信じると言う無茶振りからの汗だった。
「…はっ、上等じゃねぇか‼︎
このアル様が複合属性絶技を使い、侵略して来た魔族をボコす。
俺様の冒険者と鍛治職人の両立の野望に鮮烈な1頁が加わるって訳だな‼︎」
先ずアルから前に出て自身の試練の問いにあった冒険者と鍛治職人の両立の野望を高らかに宣言し、聖戦の儀でやって来る敵魔族を斃すべく複合属性絶技を物にしようとしていた。
「わぁ、アルったら相変わらず…でもアルがやる気満々なら私だってやらなきゃね!
魔王を斃す事を託されたんだから‼︎」
「私も…遂にロアお父様の娘と告白した以上、魔法も使って皆を助けます‼︎」
次にサラ、ルルがそれぞれの決意を語り、更にルルに至っては皆に勇者ロアの娘だと告白した為魔法も使い皆を助けると話した。
そして誓いの翼最後の1人ロマンも前に出てエミルに話しかけ始める。
「僕も…皆と一緒に戦って、互いに守り合って最後には皆で笑い合ってこの戦いを終わらせたい!
神様の取り決めとか、そんなの関係無く、僕は僕が守りたいと思ったものを全て守りたい!
だからエミル、僕にも複合属性絶技と魔法を教えて欲しいよ‼︎」
「皆ならそう言うと思ったからこの後からビシバシ教えるから覚悟しててね」
ロマンもまた守るべきものの為に戦うと、戦闘時の勇気を振り絞った答え方をしエミルを満足させる。
そしてエミルもまた4人に直ぐに複合属性を使い熟す為にスパルタで教える気満々であり、生温い教え方で残り2日を無駄にしない様に決める。
「なら我々正義の鉄剣もまた残り2日の時間を共に付き合い、悪を成す魔族達と戦うべく複合属性絶技や魔法を教えて貰いたい。
が弱き人々を守る為にも…この答えでは不満かな、エミル殿?」
「ううん平気よ。
幸いこっちの魔法や絶技を教えるのは試練の問いみたいに背筋が凍る訳じゃ無いから。
でもキャシーちゃん達と言えど甘くしないから覚悟はしてね?」
するとネイル達正義の鉄剣もこの残り2日を更に有意義にすべくエミルから絶技や魔法を教わる選択を取り、キャシー達全員もその気だった為エミルは彼等にもスパルタ方式で絶技と魔法を教えると宣告し、其処から皿を洗い特訓が始まった。
「属性を同時に使うんじゃ無い‼︎
それじゃ別々の絶技や魔法になるだけよ‼︎
良い、複合属性を使うコツは『属性を混ぜる』イメージを持つ事よ‼︎
同時に2つの属性を使う程度なら名無し魔族だって出来る、魔力の流れを読み取って2つの属性を混ぜなさい‼︎」
エミルは複合属性魔法の熟練度を高める傍ら、2つの属性を別々に使う者達に『属性を混ぜる』と言うイメージのコツを教えながら実際に使い、更に別々の属性の絶技を使う程度なら名無し魔族も出来ると双剣の魔族を思い出し、アレが成長して複合属性を覚えたら拙かったと思いつつ更にスパルタで教えて行く。
「(さて、私も複合属性を使い熟すのと並行してあの魔法祝印を再び使える様にしなきゃ。
前世の私が開発したあの魔法祝印を…!)」
そしてエミルも複合属性魔法や絶技を教え、使い熟す傍らで前世でロア達やシリウス達の武具に掛けていた通常の魔法祝印とはまた別の特殊な魔法祝印を再び使い熟せる様にすべくその魔法祝印も並行して使い続け、体内魔力回復用ポーションをガブ飲みしながら3日目の夜を迎え、夕食と特訓の繰り返しになるのだった。
一方その頃セレスティアのある場所で、ダイズとシエルがチェスをしておりシエルが今回肌色が悪くもう直ぐ勝敗が決する場面になっていた。
「チェック、さあ次はどうするかな…」
「…無理だな、残り5手でチェックメイトだ。
投了しよう、今回は負けたよダイズ」
ダイズは意気揚々とシエルのキングにチェックを行うと、彼女は残り5手でどう足掻いてもチェックメイトは避けられないとして投了を宣言し、自身のキングを指で弾いて倒しながら素直に負けを認めるのであった。
「ふう、これで2589勝2596敗7200分け、あと7回勝利で戦績が並ぶな」
「勝ち負けにこだわるお前らしいよダイズ。
そしてその戦績になった後は勝ち越しを狙っている訳だ。
ああ怖い怖い」
2人はアザフィールの弟子の時代からずっと競い合い、暇さえ有れば実際の戦闘訓練からジャンケン、今回のチェスの様な小さな勝負までして暇を持て余しながら優劣を決めようとしているのだ。
するとドアのノック音が響き、中にアザフィールが入って来てシエルの報告を始める。
「シエル様、ダイズ殿、ムリアの家族の安全確保が完了しました。
並びに試練の問いを完遂したエミル一行達は複合属性の習得を開始しました」
「そうか、此方は予想通りに動いてくれるな。
あの連中の飲み込みの速さだ、複合属性を5日目の夕刻までにはマスターするだろう」
アザフィールは交渉条件だったムリアの家族の安全を確保し、更にそれが終えた直後にティターニア達をエミル達の監視に当たらせ状況報告をする。
するとシエルはチェスの駒を増やして並ばせ、エミルやネイル達に見立てた駒がアギラに見立てたキングに徐々に迫る事を駒を動かし表現していた。
「それで、天界は動き出すと思うかシエル?
動くなら天使アイリスやリコリスに戦いを挑みたいのだがな…『盟約』の範囲内、でだがな」
「さあ?
其処は不確定要素だから気にしなくてもまだ良いわ。
問題はアギラがこのまま死ぬか否かよ」
其処にダイズが駒を更に増やし、天界に見立てたポーンやクイーン等が動くか狂戦士として気にしていた。
しかしシエルは其処を重要視するのはまだ早く、アギラが早く死ぬか否かを重要視してアギラのキングを指で転がしていた。
「…さて、そろそろ『表の顔』の時間ですぞ、早くお召し上がりをして下さいませ『エリスお嬢様』、『ザイド殿』」
「ああ、そうするよ『アズ』。
2人にももう帰る様に連絡を入れて欲しい」
「さて、俺達は俺達に与えられた使命と副官から言われた効率的な侵略法…『魔族の地上界潜伏、経済その他諸々の支配と物資の横流し』を粛々としてやるか」
するとアザフィール、ダイズ、シエルは魔法を発動し、ムリアの様に人間等に化けるとシエルは貿易商人エリスの顔として活動を始め、ダイズも政治家ザイドとしてムリアも知らない魔王から与えられた使命の魔界への物資横流しや、経済や政治の支配を進めるべくテーブルで貿易の話を淡々と始めるのであった。
そして今日も地上界はその裏側を魔族に侵食されていた。
しかしムリアの存在がエミルに知られている為それに気付かれるが時間との勝負にもなっている事をシエル達は知っているのであった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
エミル達が修行や聖戦の儀の話をする裏側で天界側は一悶着あり、魔界側はシエルの表の顔が判明しました。
そして物語は此処から加速して行くでしょう。
さて、今回はシエル、ダイズ、アザフィール、楔の泉の追加設定、聖戦の儀についての設定を書きます。
シエル:魔族の将にして神剣の対である魔剣ベルグランドを振るう魔剣に選ばれた者にして魔界にとっての勇者の様な存在。
地上界での活動は主に貿易界の超新星にして見放されたらその世界では生きていけないとされる少女エリスとして経済的な支配やダイズやアギラのサポートをする事がメインである。
因みにレベル450もアギラに合わせて意図的にレベル低下の枷を付けてる為真の実力はまだエミル達はしらない。
ダイズ:魔族の将の1人で理性と狂戦士が混在した者。
シエルとはアザフィールの弟子同士で常に何かで勝負をする仲である。
此方の表の顔は政治家であり経済界にも顔が利くザイドと言う者である。
シエル同様レベルに枷を付けて440の為その真の力は恐ろしい物であるだろう。
因みにシエル、ダイズがこの表の顔を持つのは彼の副官が作戦を練った為だったりする。
アザフィール:シエルの副官にしてシエル、ダイズを鍛え上げた者。
魔界の争いを今の魔王の下で収めた英雄であり、その力も本来はレベル350などではない。
現在は自分を超えた弟子、特にシエルの指揮下に入り表の顔も彼女の執事長アズとして活動している。
楔の泉:天界が聖戦の儀で地上界が魔界に一方的に蹂躙されぬ様に設置した領域。
魔王の降臨を阻止する為に設置されており、魔族の眼には只の泉にしか映らない。
これが無ければ魔王が1人で地上界の蹂躙をする事が可能な為聖戦の儀の法に基づき3箇所あり、現在の魔界はこれを破壊する為に動いている。
聖戦の儀:天界側が定めた地上界と魔界の間での闘争の名称。
開戦の理由は多岐に渡りそれを解決する為にこの法がある。
細かくルールが定められているが、地上界側は主に魔界に攻め入るには神の許可が必要、聖戦の儀中は地上界の者同士の争いを禁ずる、地上界への背信行為を禁ずるがある。
魔界側は必要以上の地上界への攻撃は禁ずる、楔の泉は破壊してはならない、魔王は地上界に出てはならないがある。
また共通項として虐殺行為や地上界の枷もありレベル250を超える者の派兵は禁ずるとある。
これに反した者は本来なら天界の天使達の裁きが下る様になっている。
しかしこの法は既に形骸化し魔界側も地上界側も無秩序な争いの種が生まれ、天界側も何故か手を拱いている。




