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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第2章『アギラの動乱編』
22/49

第22話『誓いの翼達、枷を外す』

皆様こんにちはです、第22話目更新でございます。

修行回がまだまだ続きますがお付き合い頂けたら幸いです。

では、本編へどうぞ。

 ムリアとの念話は終えた直後、シエルはとある場所の部屋の中で溜め息を吐きながら近場で見ていたアザフィール達に目を配らせ、話し始める。


「…なぁアザフィール、ティターン、ティターニア、私は甘いか?」


「いえ、シエル様は『目的』の為に利用出来る物は利用する、ただそれだけです。

 決して同情等で動こうと思った訳では無いとこのアザフィールは思います」


『右に同じく』


 シエルは窓の外を見ながらムリアの家族を助ける交渉に乗った事を思いながらアザフィール達に自身は甘いかと問うと、アザフィールはアギラ失脚の為に利用出来るムリアやエミル達を利用したに過ぎないと話し、同情等で動いた訳では無いと励ますかの様に彼等はシエルの問いに答えていた。

 そうして目を閉じると見た目相応の少女の顔から戦士の顔になりアザフィール達を見た。


「そうか、ではアザフィールは魔界に居る我が同胞達に声を掛けムリアの家族を確保。

 ティターン達は此方の動きが悟られぬ様にアザフィールの支援をせよ」


『はっ‼︎』


 シエルは短く、しかし力強くアザフィール達に指示を飛ばし、アザフィール達も盟主シエルの名により動き出そうとした。


【バタン‼︎】


 するとその瞬間出入り口のドアが勢い良く開き、通路からダイズが部屋の中に押し入りシエルに駆け寄り始め、アザフィール達と入れ違いながら話が始まる。


「よしシエル起きてるな! 

 お前、アギラの策について情報は掴んだか⁉︎」


「いや、だがどうせあの男の事だから自身の『趣味』に走る下劣な策しか用意していないとは思っている。

 …その様子だと何か掴んだか?」


 ダイズはアギラの策についてシエルに問うと、彼女はアギラの事を下劣な策しか用意出来ない男と評価しており、今回の意気揚々と用意した策も彼の『趣味』に走った物だと予想していた。

 それからダイズの様子で何か掴んだかと問うと彼はシエルに耳打ちでそれを伝え始め、聞いていたシエルの表情は険しい物に変わって行く。


「確かなのかダイズ?」


「ああ、俺の内偵に出した部下がハッキリと見たらしい。

 如何する、このまま奴を野放しにしたら聖戦の儀の掟は破られ天界側が魔界を潰しに掛かるぞ? 

 そうなれば我々の『盟約』が破綻する可能性があるぞ?」


 ダイズに確かかと問うシエルに対し、ダイズは間違い無いと話しこのままアギラの策に対し手を打たねば聖戦の儀の掟が破られたとして天界が動き出す事を懸念し、それにより『盟約』の破綻すらあり得ると告げる。

 それらを聞きアザフィール達が去った後の部屋で思考を整えると、シエルはダイズに考え抜いた事を口にし始める。


「…寧ろそれが狙いでは無いか?」


「何?」


「『魔王』様が下劣なアギラを地上界侵略の将の1人に選んだ20年以上から思考し、我等が潜伏を開始始めた14年前からずっと拭えなかった疑問が此処に来て漸く氷解したよ」


 シエルは長年の疑問が氷解したと告げながら何故アギラが将の1人に選ばれたか、その理由がその『天界側が動き出す事』が狙いなのだと告げ、ダイズも考え始めるとハッとした表情を浮かべる。


「まさか、そう言う事か?」


「それしか無かろうな。

『魔王』様、いや、魔王の目的は唯1つ…アギラの手で聖戦の儀の掟を破らせ、天界側が、神が動き出すのを狙い、そして地上界と天界の両者を蹂躙し尽くす気なのだろう」


 ダイズが行き着いた解答をシエルが淡々と口にし、アギラが聖戦の儀の掟を破る事が寧ろ狙いで天界と神が動き出す事が狙いであり、それを魔王は地上界共々蹂躙する事が狙いだとハッキリと告げるのであった。

 その言葉を告げた瞬間、千里眼(ディスタントアイ)に映るグランヴァニアで雷が降り注ぎこれからの先行きが暗雲を見せ始めた事を予期していたのであった。




 一方最北の世界樹のエミル達の様子は如何なっているか、それは2日目も何ら成果を得られず3日目になり再び朝から修行法を試していた。


「ぐえぇ〜!」


「大丈夫かムリア? 

 気合が入っているのは良いが、空回りしては得られる成果も少ないぞ?」


「大丈夫っすネイルの兄貴〜! 

 心配ありがとうございますなんだな〜!」


 ムリアは2日目の夜になりシエル側から念話で『家族の安全を確保した、後は其方が約束を違えるな』と告げられた事で気合が入り修行法への集中が1日目等と比べても比較にならない物を見せていた。


「(あのエミル様、ムリアさんの事を黙ってくれてありがとうございます。

 私とシャラさんで相談して、ネイルさんに危害を及ぼす所かその助けになりたいと姿勢や発言から分かってましたので変な混乱を避ける様にして頂いた事を感謝いたします)」


「(気にしないで、貴女も私の前世がライラだって事を黙っててくれたからそのお礼よ)」


 その間にエミルとキャシーは小声で話し始め、エミルがムリアの事を黙ってくれた事をキャシーやシャラは感謝し、逆にエミルは前世がライラである事を黙ってくれたキャシーに感謝し、エミルはまた女子の間で秘密の共有をしているのであった。

 しかしその間にも…。


「きゃっ‼︎」


「くっ、駄目だ全然触る事すら出来ねぇぞ‼︎」


 サラとアルが吹き飛ばされ枷を壊す事が出来なく流石のアルも2日も成果無しには苛立ちを覚え始め、サラは「何が違うの〜⁉︎」と叫び堂々巡りが始まっていた。


「可笑しい、アレスター先生には出来たのに私達には出来ない。

 この2日間の間に才能の差は関係ない事は立証出来たのに一体何が違うの⁉︎」


 それらを見ていたエミルは日記を再び読み返し、ロジックエラーを起こしながら何が違うのかと纏まらない思考で考え始め流石の彼女も焦りが生まれていた。

 約束の5日目までタイムリミットが僅かになり始め如何すればと他の皆の様に答えが出ない思考の迷路に迷い始めていた。


「…あのエミル様、日記をお見せ出来ませんか?」


「えっ、キャシーちゃん? 

 …分かったわ、はい」


 するとキャシーは何か思い付いたのかエミルにアレスターの日記を見せて貰う様に懇願すると、エミルはあっさりと手渡しその様子を見ていた。

 するとキャシーは何度か読み返した後、「ありがとうございます」と言って日記をエミルに返却すると再び修行法を行い始めていた。


「キャシーちゃん、何か分かった事が」


【ドサッ!】


「っ、キャシーちゃん⁉︎」


 エミルはキャシーが何か掴んだのかと問い掛けようとした刹那、キャシーは意識を失い倒れてしまいエミルや周りに居た全員が駆け寄り声を掛け始めた。


「キャシー、如何したのキャシー⁉︎」


「キャシー、目を覚ますんだ‼︎」


「キャシーちゃん‼︎」


 ロマン、ネイル、エミルがキャシーを囲み、エミルが抱き抱えると彼女に3人で声を掛けながら揺すり目覚めさせようと必死になり名前を呼び続けていた。

 何故なら日記には『何処とも知れない場所に意識を飛ばされた』とあった為、もし戻れない様な事があれば大変な事態になってしまうからであった。


「…はっ⁉︎」


 するとキャシーは直ぐに目を覚まし起き上がると周りを見て一息吐き、如何やら彼女もいきなりこんな事態になった事に焦っていたらしく汗を掻いていた。


「キャシー、良かった無事だったんだな!」


「はい、ネイルさんに皆さん。

 それで何ですけど、私が今さっき如何なったか話したいので少し離れてもらって良いですか?」


「あ、うんごめんねキャシーちゃん」


 そうしてネイルを初めとした全員が心配する中、キャシーは自身に何があったかを話すべく少し全員に離れて貰う様に頼むとエミル達は距離を置き、腰を下ろして話を聞き始める。


「それでキャシー、先程の状態はアレスター殿の日記にあった状態になったと思われるが、一体如何やってそこに持って行けたんだ? 

 我々は枷を壊そうとして何度も失敗していたのに」


「そう、其処が間違いだったんですよ皆さん!」


 先ずネイルがキャシーにアレスターの日記にあった意識を持って行かれた状態に自分達は散々失敗してるのに何故いきなりなり、倒れたのかを問うと彼女は枷を壊すと言う部分をネイルが話した瞬間それが間違いだったと話した。


「えっ、ど、如何言う事なのキャシーちゃん?」


「えっとエミル様、私達は1日目の夜中に魔族のシエルと言う方の念話を傍受していたらエミル様が『私の言葉に深い意味は無い、ロジックエラーを起こすな、文面通りの言葉に捉えろ』って傍受してるのがばれて言われちゃいましたね? 

 それをさっきふと思い出してアレスター様の日記を見て、『今なら壊せると思い枷に触れた』と書かれてましたのでその通りに壊す様な真似をせずゆっくりと、静かに触れたんです。

 そしたら…」


 エミルは如何言う事かと聞くとキャシーはムリアの事を伏せながらシエルの念話を傍受し、彼女がエミルに投げ掛けた言葉を思い出しアレスターの日記を読み、ただ触れたとしか書かれていない為にその様に触れた瞬間今の様になったと話しロマン達はシエルの念話を傍受していたエミルは一旦置いて置きキャシーの素直さが突破口を開いたと全員で思っていた。

 ただ1人を除き。


「…って、私またあの魔族にヒントを与えられていたの⁉︎

 何、何考えてるのよ⁉︎

 もう、一体何なのよ魔族シエルは‼︎」


 エミルはシエルにヒントをまた与えられた事に憤慨し地団駄を踏み始め、それを見ていた全員は苦笑しながらも、直ぐにロマンが咳を払い全員を注目させた。


「こほん、つまり枷を壊すんじゃなくて単純に触れる事が重要だったってキャシーが証明してくれた訳だね。

 じゃあ皆もそうしてみようよ、エミルも」


「うぅ〜…そうする…悔しい、ホント悔しい、自分で気付けなくて悔しい」


 ロマンはキャシーが突破口、枷を壊す為に触れるのでは無く単純に触る事が重要だと纏めると全員の顔を見てそうする様に促し、そして悔しがるエミルにもそうする様に言うと未だ引き摺るエミルも修行が先だとして周知を始め、そして全員枷を再びイメージすると、それに手で静かに触れる様なイメージを思い描く。


【ドサッ!】


 すると全員意識を失いその場に倒れ込むのだった。

 その瞬間その場に転移して来る者が居た。

 それは魔族シエルとダイズであった。


「やっと『向こう側』に意識を持って行けたか。

 全くエミル、貴様は私が関わると思考が鈍化する常時低下(パッシブデバフ)でも罹ってるのか?」


「まぁ良いだろう、これでスタートラインに立つ用意ができたのだから。

 さあ、この辺りの魔物にコイツ達を襲わない様に命じるぞ」


 シエルはエミルを見ながら自分が関わると思考が固まる癖が出来た彼女に常時低下(パッシブデバフ)が罹ったのかと白い目で見ていたが、アギラはそれより彼女達がスタートラインに立つ用意が出来た事を喜びつつエミル達を周りの魔物が襲わない様に命じ始めに行った。

 …しかし魔物達はエミルの存在から起きたら何されるか分からないと言う恐怖から寧ろ離れて行き、2人はこの女は此処で何をしたのかと疑問に思い始めるのだった。




「あれ、此処は? 

 エミル、キャシー、ネイルさん、皆何処なの‼︎」


 するとロマンの意識がいきなり周りが真っ暗であり、足場が光っている以外は闇の中に居り他の皆の姿が見当たらない為周りを見始めていた。


『…汝、勇者ロマンに問う』


「っ、誰!」


 すると空間の中から謎の女性の声が響き渡り、ロマンは咄嗟に武具を構えるイメージを取るとミスリルソードやシールドが装備され、周りを警戒し始める。

 すると闇の中にビジョンが浮かび上がり、其処には魔族が5人の人を攻撃する直前で止まっていた。


『汝に問う、汝が何もせねばあの人々は死に、汝が魔族と戦えば1人の犠牲で済む。

 汝は如何なる道を取るか答えよ、勇者ロマン』


「…えっ⁉︎」


 すると謎の女性の声はそのビジョンの先の物を再生し、ロマンが何もしない場合は5人全員が死に、戦えば1人が死ぬと結果を見せ如何なる道を取るか選択を迫った。


「…その答えなら簡単だよ、それは…」


 ロマンはそれを聞き、以前何処かで見た様な問題を出されたと思いながらも、これなら迷う必要はないと考えて自分の考えを口にし始めるのだった。




『王女サラ、貴女の最愛の弟アレスターは魔族に殺された、ならばその復讐を、仇を取りますか?』


「えっ…?」


 更にサラの方ではアレスターが亡くなった場面に於いて1人の魔族がエンシェントドラゴンに命令を下しアレスターを亡き者にしたビジョンが流れる。

 それを聞きサラは考え始め、答えを出そうと賢王の娘として思考を始める。




『鍛治師アル、このまま戦い続けたらアンタ鍛治職人の道を進むより戦いに没頭しちゃうよ? 

 夢を簡単に諦めて良いの?』


 次にアルの方では誓いの翼(オースウイングズ)として戦い続けるとゴッフを超える職人になる夢が頓挫するビジョンを見せ付け、如何するかを問い始めていた。


「あぁん? 

 そんなの答えは決まってやがるぜ‼︎」


 アルはそんな質問に対しあっさりと答えを告げようと口を開き始め、更に斧を構えてビジョンの前に立つのだった。




『リリアナの娘にしてロアの血を濃く注ぐルル。

 貴女は勇者になる資格があり、また神剣ライブグリッターも今なら真の力を発揮させられるでしょう。

 なら貴女はこのまま勇者の血を引く事を隠すか、勇者に改めてなるか、答えなさい』


「…私は…」


 次にフードを取ったルルがビジョンの先で神剣を手に取り、周りから勇者と持て囃され亡き父ロアからも喜んで迎え入れられる物を見せつけられ、謎の女性は答える様に迫るとルルは瞳を閉じ、そして考え抜いた末に口を開き始めた。




「その答えは、僕が魔族の攻撃を防いで皆を守る、だよ‼︎」


『それでは汝が犠牲になるぞ、それでも良いのか?』


 ロマンはビジョンの中に入り、魔族の攻撃と無辜の民達の間に入り盾を構え、結界魔法(シールドマジック)も発動し防御態勢に入りその攻撃を待つ。

 すると謎の女性の声はそれでは代わりにロマンが犠牲になると話し、答えが変わらないと言うニュアンスで話していた。

 しかし、ロマンは笑っていた。


「犠牲になんてならないよ、だって…‼︎」


【ドォォォン‼︎】


 すると魔族の攻撃が結界に直撃し爆煙が周りを立ち込める…するとその爆煙の中から手斧と矢が飛び、魔族を仕留める。

 そしてロマンの横にはエミルが更に結界を張り、他の3人も側に居り全員がロマンに笑みを浮かべその行動を支えていた。


「だって僕には、信じられる仲間が居るんだから‼︎」


 そしてロマンはその声の主に頼れる仲間達が居り、その仲間と共に危機を乗り越えると言う深層意識にある人々を守りたい勇気と仲間を信じに抜く勇気の両者が示される。

 するとビジョンは砕け、足場の光が更に強まると同時にロマンの身体も光り始め、闇を照らす光となりながら宙に浮き始めた。


「仲間を信じ抜き、誰1人として死なせぬ様に勇気を振るうその姿、正に勇者ロアの子孫也。

 我は汝の勇気を認め、『この枷を外す』に足る資格があるとも認めよう…」


「…貴女は、天使様…⁉︎

 それに…ああ、温かい光が僕の中に…!」


 そして謎の女性は最後の最後で姿を現し、背中に白き翼を生やしフードを被った者…伝説に聞く天使その物の姿であり、その天使が祝福の様な光を授けるとロマンの中で『何か』が外れ、力が漲る様な感覚を得るのだった。




「私、確かにアレスターが殺されたのは凄く悔しいし、この手で仇討ちをしてやろうとか考えたこともあったよ。

 でも皆と過ごす内にそんな復讐よりも皆との大切な『今』を守らなきゃって感じるんだ。

 だからこの魔族に会っても復讐のためじゃ無い、皆を守る為にこの矢を射るよ! 

 それにアレスターも、復讐なんて望んで無いはずだから‼︎」


 サラは仇を、復讐を果たす事を一度は考えた事を告げつつ今はそれよりも皆との、アルやルル、エミルやロマン達との日常を守る為に矢を射ると叫び、それに加えてアレスターは復讐を望まない筈だと告げて仇討ちを否定する。

 声の主は黙って聞きながら、しかし満足した雰囲気を出しながらサラの前に現れる。

 その次にアルが話し始める場に移ると、何とアルはビジョンを斧で叩き壊してから言葉を発し始めた。


「その答えはなぁ、戦い続けながら鍛治職人の頂点、ゴッフ(ジジイ)を超えるんだよ‼︎

 どっちかしか選べねぇとか情け無ぇ質問なんか俺様には関係無ぇよ、俺様は何方もやり抜くんだよ‼︎」


「うわ凄い強欲⁉︎

 でも面白いじゃん‼︎

 その答え気に入ったよ‼︎」


 次にアルは戦いながら鍛治職人としてゴッフを超えると言うとっくに決めた答えを話し、それを叫び抜くと声の主であった天使の1人はそれを気に入り光を授け始める。

 更に次にルルが別の場で答えを話し始めた。


「私は、自分が勇者になりたいとは思わない。

 だって勇者に相応しい人は既に現れたからそれで良いの。

 そして、これでも満足しないなら私はこれまで秘密にして来たロアお父様の娘だってことを皆に明かして、勇者を神剣に導く『巫女』の役割がある事も告白してやりますよ‼︎」


 ルルはロマンこそが偉大な父を継ぐに相応しいと考え現状に満足している事を告げ、更にその答えでも満足しないならとこの後に自らの血筋やリリアナやロアに課せられた使命…勇者を神剣の下に導く『巫女』の役割すら告白すると叫び周りを見る。

 すると天使リコリスがルルの前に現れ、ルルに手を翳していた。


「貴女の覚悟、そして真の勇者を見出したとする答えを全て聞き届けたわ。

 さあ、これで貴女の枷は外れるわ。

 この後は自由よ、皆に血筋や使命を話すなり何なり好きにして良いわ。

 幸いにして貴女の憧れのライラの転生者が盗聴防止結界(カーム)を作り上げて話し放題ですから、ね」


 すると天使リコリスの手から光が溢れ、アルやロマンの様に力が溢れ出しながら瞳を閉じ意識を遠退かせていく。

 そしてサラの方に現れた声の主は…女性では無く男性、更にサラが良く知る者に天使の羽が生えた青年、エルフのアレスターだった。


「…アレスター…⁉︎」


「あはは、地上界で初めて限界値を知った事やあの日記を残した事、更に魔法論文を色々纏めたら天使になって姉さん達の試練に顔出しして良いよって言われました。

 …本当に姉さんは素晴らしいよ、過去よりも今を見つめ、未来に想いを馳せるその姿勢は父さんや母さんそっくりだよ。

 そんな姉さんの話を聞けて、私はとても満足しましたよ」


 サラの前に現れたアレスターは特別に天使になって良いと許可を貰った上にサラや自身が試練を与えようと言う大役を務めた事を明かした。

 そしてサラの答えを聞き偉大な父ロックやその妻であり現在は外交官として夫を支える『リーズ』の様な聡明さや優しさを思い浮かべ、そして笑みを浮かべながら手を翳し光を授け始める。


「さあ姉さん、これで貴女の枷は消えましたよ。

 これで思う存分仲間達との今やこれからの未来を守り、過去を思い出として大切に仕舞ってくださいね」


「アレスター…うん………ありがとう………‼︎」


 アレスターの最期の言葉として過去の思い出を大切に仕舞い、今や未来を守る様にと告げられると光がサラを包み、最後の最後で2度と会えぬと思った弟に感謝の言葉を泣きながら意識が現実へと回帰するのであった。




 そして、それらを見ていたエミルは背後に居る天使アイリスに向き直りながら会話を始める。


「それで、皆の試練が無事に終わったのは見せられたから良いけど私の分はないのかしら、天使アイリス?」


「貴女の場合は何を問おうとも答えはブレないから意味が無いの。

 だから試練は特別に合格扱いにして、私から貴女に伝えるべき事を伝えるわ。

 この地上界と魔界の間で行われている聖戦の儀についてを」


「…聖戦の…儀…」


 アイリスはエミルがどんな質問もブレずに返す為試練の意味が無いとして、代わりに地上界と魔界の間で行われている聖戦の儀の説明に入ると話す。

 それを聞きエミルは矢張りかと天界が何らかの形で戦いの根幹に関わってると疑問が確信に変わってしまう。


「先ず聖戦の儀は何方か一方の世界が貧困、飢餓、疲弊、土地不足等様々な理由から行われ、そして片方の王がもう片方の王にいつ攻め入るか伝えてから発生する戦いよ」


「えっ、でも500年前は突然魔族が攻めてきた筈よ! 

 それは間違い無いわ‼︎」


 エミルはアイリスから様々な理由で一方が攻め入るのを伝え、其処から発生する戦いだと話されると500年前は確かに一方的に攻められてしまった記憶があり魔族や魔王を斃す使命が生まれた筈だった。


「それはあの戦いで死んだ当時の地上界側の王に問題があったからよ。

 そんな御伽噺めいた戦いなど知るか、女や金を寄越せと欲望三昧で過ごした結果一方的に攻め入れられた形になったのよ」


 しかしアイリス曰く当時の地上界の王の失態により聖戦の儀は一方的に魔界側が攻め入る形になったと言われてしまい愕然としてしまう。

 500年前の戦いの裏側はそんな地上界が愚かだとしか言えない事情があった為当然の反応だった。


「…そんな…」


「しかし神様はそんな地上界を見兼ねて神剣ライブグリッターを授ける事を許可し、結果魔界側はエミル、いやライラ達の反撃を受け一時撤退し、更に縛られし門(バインドゲート)で地上界との行き来を封じられ500年の間互いに力を蓄える事になってしまった。

 そして地上界にライブグリッターがある以上、公平を期す為に魔剣ベルグランドを魔界に送ったわ」


 エミルが信じられない様子で聞いているとアイリスは淡々とあの戦いの表側も語っていき、最後はライラの縛られし門(バインドゲート)で戦いは中断、互いに力を蓄え更に地上界に神剣が贈られた様に魔界にも魔剣が授けられ、それをシエルが今所持しているとムリアの話から思い出した。

 そして魔剣の出所も天界だとして何処までも傍観者気取りで居る事にエミルは無性に腹が立ち始める。


「我々が傍観者になるのは聖戦の儀に定められたルールに天界は一方の味方になってはならないとあるからだ、許して欲しいとは言わない。

 …しかし、それより重要な事がある、魔界側がこのルールを破り始めている」


「えっ?」


 そんなエミルにアイリスは天界側に定められたルールを説明し、謝罪はしないが申し訳なさそうではいた。

 しかし、それより重要な事として魔界側がこのルールを破り始めていると話し、アイリスはエミル額に指を当てるとその脳内に聖戦の儀の知識を刻みながら言葉を続ける。


「先ず魔界側は楔の泉を破壊してはならないんだ、魔王による一方的な虐殺を阻止する為に。

 同じ様に戦いでは無い殺戮の禁止をし、更に地上界の限界レベル値250を上回る魔族の派兵は許されないんだ」


「ちょっと待ちなさいよ、魔界は500年前から楔の泉は探してるってシエルは言ったし、虐殺だって行ってきたわよ⁉︎

 それにレベル250を超える魔族だって今…‼︎」


 するとアイリスは魔界側に決められたルールの話を進めると、エミルは500年前から2つも破り今があり、現在に至ってはシエルやアザフィール達が送られ、限界値超えの敵が来ている事を叫びアイリスの肩を掴んでいた。

 するとアイリスはエミルに知識を刻み終えた後その手を取りながら真剣に2人は見つめ合った。


「…矢張り500年前からルールを犯していたのね、魔族達は。

 ならこれを神様に3度目の進言を行い、更に貴女の記憶から読み取った事例も全て見せて天界が介入して聖戦の儀の中止を図るわ。

 ただ…これには期待しないで、神様は数多くの事例を見せても天界は介入する事勿れを貫いているから。

 それじゃあ、貴女の仲間達に聖戦の儀の事をしっかり伝えるのよ、エミル‼︎」


「あ、ちよっと‼︎」


 アイリスは知識を刻むと同時にエミルがライラの時の記憶や現在の記憶も読み取りそれ等を事例にして天界が介入出来る様に神に取り計らうと告げる。

 しかしそれと同時に神はそんな事例を見ても全く動く事が無い為期待しないでとも言い、そのまま光に包まれながら聖戦の儀の知識を全て仲間達に伝える様に話す。

 するとエミルも光に包まれ、アイリスに手を伸ばしたがその手は届かず溢れる光により2人は離れ離れとなるのであった。



「はっ⁉︎」


 それから何れ程の時を寝ていたのか、エミルは身体を起こすと全員が既に目覚めており、そして何故か分からないが何れ程の時を眠り目覚めたのか自覚し、更に身体の内側から力が溢れ出し千里眼(ディスタントアイ)等も以前より遠く見える、そんな気がしていた。


「皆、お疲れ様」


「うん、エミルもお疲れ様」


 そうして体感4時間、3日目の昼下がりになりながら全員にエミルはお疲れ様と言うとロマンが代表してエミルに労いの言葉を掛けた。

 そして2人は握手すると、それだけで互いに枷が外れてレベルが250を超えている、今の千里眼(ディスタントアイ)ならばミスリラントやセレスティア、ヒノモトにグランヴァニアの何処でも見える。

 そんな全てがクリアになった感覚を感じ取るのであった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

遂にエミル達は限界突破、枷を外す事に成功しました。

更にアイリスからエミルに聖戦の儀と呼ばれる物が語られましたが、此方は次回の本編でエミルが皆に語ります。

さて、今回は天使化したアレスター、死者の天使化、枷を外した恩恵を公開します。


アレスター(天使化):アレスターは死後、本来なら様々な栄光や偉業を成す人物であった為、その者が早死にしてしまった為神は哀れんでアレスターを天使化させたのである。

天使になった為天界の法に従い生きてるが、今回のサラや彼に関連が人物が枷を外した場合その恩恵と言葉を交わす機会を神から得ている。


死者の天使化:極稀に本来達成する偉業があるのに早死にしたり、その偉業を成した後も更に偉業を重ねて死を迎えると神が特別に次の輪廻転生の時まで天使とさせる事がある。

この時レベルも生きている内に達したであろう最大値まで引き上げられたり等する。

これが天界の裏道の戦力である。

そして次の輪廻転生が近くなると神から天界に留まる事を言い渡される。


枷を外した恩恵:地上界の者達はその身にある枷を外した瞬間、レベルが現在の値から限界値250を超えて一律260まで引き上がり、覚えていた絶技や魔法の熟練度はカンストし初代勇者一行の誓いの剣(オースブレード)を超える事になる。

その後は地道にレベルを上げて行く事で更なる力を得て行く事になる。

そして限界値の枷が外れた為限界値その物が消えている。


次回もよろしくお願い致します。

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