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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第2章『アギラの動乱編』
21/49

第21話『誓いの翼達、修行する』

皆様こんにちはです、第21話目更新でございます。

前回から修行回が始まり、それがどんな物になるかお楽しみ下さいませ。

でら、本編へどうぞ。

 エミル達とネイル達はフィールウッド、ひいては全世界樹群生地の中でも最も危険地帯の最北の世界樹に転移で辿り着く。

 が、ネイル達は噂で魔物の巣窟となった筈なのに魔物を見掛けない為疑問符を浮かべていた。


「ふむ、最北の世界樹は危険地帯と聞いていたが実際はそうでも無いのか?」


「そりゃ此処に居る魔法使いの王女殿下様が4年間も此処で修行して魔物共をボコボコにしてたんだ。

 生態系の頂点に君臨してコイツの近場には此処の魔物は寄り付かないって話だぜ」


「生態系の頂点って…いや間違ってないと思うけど…」


 ネイルやキャシー達が警戒や疑問を浮かべているとアルがエミルがこの土地で4年も修行した結果、生態系の頂点に君臨してしまい魔物の方から逃げると伝え、エミルは抗議しようとしたが間違っていないのが皮肉な為抗議を取り下げていた。


「そうなんすか。

 じゃあエミル様はこの世界樹の周辺の絶縁地帯って把握してんすか?」


「驚く事無かれ、この後方4メートルの周辺からが絶縁地帯よ! 

 この絶景を見ながら朝日を迎えて夕陽を拝む、此処でテントや寝袋を用意しながら起床と就寝を繰り返すのが精神的な癒しになるのよ!」


 エミルが生態系の頂点と判明し、警戒する理由が無くなったガムは早速絶縁地帯の場所を聞くと、自分達の後方4メートル付近のこの丘周辺が絶縁地帯だと知り、エミルからは就寝や起床を絶景と呼べるこの場から行うのが精神を癒すと聞き、シャラやキャシーも魔法使いや絶技使用には精神を安定させないと正しい効力を発揮出来ない為その理論は正しいと思っていた。


「じゃあ早速アレスターさんの修行法を始めるんだね、エミル?」


「ええ、勿論よ。

 さて4メートル程下がって…うん、魔法元素(マナ)の感覚が途切れた。

 皆それぞれ精神を集中出来る様にしながら此処で微弱な魔法元素(マナ)の流れを感知するわよ!」


 それからロマンも直ぐに修行を始めると聞くと、エミルは当然YESと答え各々は姿勢を崩し、エミルは身体が痛くならない様に身体強化(ボディバフ)を全員に掛けてから杖を太腿の上に置きながら岩場の上に正座し始める。


「よし、じゃあ僕も…」


「へっ、俺様が1番集中出来るのはこれよ!」


 次にロマン、アルがエミルから少し離れた場所でロマンが膝を突き、剣の刀身を額に当て始め、アルは魔法袋(マナポーチ)を開けて其処から金槌を取り出し、瞳を閉じて適当な大きさの岩を目の前に置き、鍛治をする姿勢でジッとしていた。


「では私達も混ぜて貰おうかな?」


「ネイルさん達、此処空いてまっぜ!」


「じゃあ失礼するんだなぁ〜」


 次にネイル達がエミル達の方に集まり、ネイルも槍と盾を置きロマンと同じ様に剣の刀身を額に当て瞑想をし、ガムは腰を下ろし槍を立てながら瞳を閉じ、ムリアは良くある瞑想のポーズを斧を背負いながらやっていた。


「じゃあ男は男で集まって瞑想を始めたみたいだから私達もエミルの近くで集まって魔法元素(マナ)の流れを感知しよっ、ルル!」


「…じゃあ私もフードを取った方が集中出来るから取ろうっと」


 そうして男性陣が自然な流れで集まった中、サラが女性陣も集まる様に提案し膝を突きながら弓に手を掛けて瞑想を始める。

 其処にルルがフードを取り、戦闘モードに入りながら立ち続けて額に指を当てての瞑想に入り誓いの翼(オースウイングズ)達は全員違った瞑想ポーズになり、普通の瞑想の仕方をしてるのはエミルとロマンしか居なかった。


「わっ、あのダークエルフの子…えーとルルって言ったかしらね今? 

 フードを取ったらオドオドしてたのが豹変したわね…誓いの翼(オースウイングズ)も一癖二癖ある子が揃ってるわね。

 ウチでまともなのはネイルさんとキャシーちゃん位よ」


「あの、ご自身で自分をまとも側じゃないって言うんですね、シャラさん…」


 一方ルルの豹変やエミルとロマン以外のメンバーの瞑想の仕方で癖が強いと言った上で正義の鉄剣ソードオブユースティティアも自身を含めネイルとキャシー以外は一癖二癖あると言い放つシャラに対し、キャシーはシャラの自身を含めて癖が強いと言ったシャラにツッコミを入れながらエミルと同じポーズで瞑想に入り、全員で魔法元素(マナ)の流れを絶縁地帯で感知すると言う極めて難しい物を始める。


「………なんか、何も感じないね」


「サラ、30分しか経ってないのに集中を乱さない。

 エミル達は汗を掻きながら魔法元素(マナ)の流れを感知しようと頑張ってるんだから貴女ももっと集中なさい、獲物を射抜く様な形で鋭く静かに」


 しかし30分経過しても何も感じない事に集中を欠き始めて話し始めると、ルルがエミル達の集中力を見習う様に促しながらサラには戦闘における弓で獲物を静かに狙い、矢で鋭く射る感覚で集中する様にアドバイスするとサラは腕をポンと叩き、早速先程の瞑想ポーズに加えて魔法元素(マナ)と言う獲物を捉えようと集中を始めた。


「………あ、魔法元素(マナ)の流れを感知出来た! 

 後は体内魔力と同期させて魔力その物の流れと自分の中の枷をイメージして………見つけた‼︎

 後はこれに触れれば…‼︎」


 それから更に30分後、計1時間の瞑想でエミルは要領を掴み魔法元素(マナ)の流れを感知に成功し、更にはアレスターの日記にあった魔力の同期、その流れや内に秘められた枷のイメージを始めると早速自身の体内魔力等を覆う強固な枷を見つけ出す。

 そしてアレスターの様に触れれば後は野となれ山となれと行く…筈だった。


【バチィィィィィ‼︎】


「きゃあっ⁉︎」


「っ、エミル大丈夫⁉︎」


 しかしエミルはそれに触れた瞬間身体中から魔力による電流が走り、拒絶反応により倒れ込んでしまう。

 それを見聞きしたロマンが慌てて直ぐに駆け寄り抱き抱える。


「エミル、大丈夫⁉︎」


「え、ええ、ダメージ自体は無いわ…。

 でも物凄い拒絶反応だったわ、アレスター先生はどうやってこれに触れられたのか…」


【バチィィィィィ‼︎】


「うおわぁっ⁉︎」


 ロマンはエミルの安否確認をし、周りの女性陣も心配そうに見ていたが彼女自身にダメージは無い為安堵していた。

 しかし同時にエミルはアレスターが最終的にどうやって枷に触れ切ったのか拒絶反応と照らし合わせながら考察を始める。

 するとその直後に次はアルが倒れ込んでいた。


「クソが、鍛治をやる要領で集中して見つけたから金槌でぶっ叩くイメージしたらこれだ‼︎

 叩く強さが弱かったのか、それともぶっ叩く事自体がダメなのか分からなかったぜ‼︎」


 アルも鍛治職人としての集中力を活かしそれらをイメージ出来たは良い物も、金槌で叩くイメージも行った瞬間拒絶されたらしく倒れ込みながら何が駄目だったのか見当が付いていなかった。


「きゃっ⁉︎」


「ぐぅっ‼︎」


「ひゃう⁉︎」


 更にキャシー、ネイル、サラと次々と拒絶されてしまい、エミルの中でレベル120以上だとアレスターの様に枷に触れられるが強くなり過ぎれば枷も強固になると思い始めていた。

 が、レベル160のキャシーとレベル215の自身が等しく拒絶された為、レベル差は余り関係無くやり方に問題があるのではとも考察をしていた。


「ぐっ⁉︎

 私も拒絶された! 

 少なくとも魔法や体内魔力の大きさ、強度と言ったそっち方面の才能の有無は関係なさそうだ…!」


「うぎゃっ‼︎」


「くぅぅ‼︎

 そ、その様ね…ただ差があるとすれば魔法元素(マナ)の流れを読む才能や集中力の差程度って感じかしらね…!」


 更にルル、ガム、シャラも拒絶反応により倒れ込み、ルルやシャラも考察をしエミルがそれらを自身の日記にメモして行き、結局残ったロマンやムリアも拒絶されてしまい勇者の血も関係無い事等が分かった程度であり、どうやってこの拒絶反応を突破するかが課題になり始めるのだった。




「わお、現代っ子凄い! 

 絶縁地帯で魔法元素(マナ)の流れを読んで枷に触れるイメージを掴むまで1日も掛からずに要領を掴みましたっすよアイリスお姉様!」


「ええ、ライラの転生体のエミルは兎も角として如何やら500年間で地上界の者達は才覚溢れる者が増えたようね。

 けどその後が頂けないわ、『壊す事に集中し過ぎてる』」


 その頃天界ではエミル達の様子をアイリスを始めとした天使達が覗き見ており限界レベルを決めている枷に触れ始めた事を名無しの天使が凄いと褒め、アイリスもその点は評価していたがその後が駄目だと言い放ちエミル達がこの修行法を如何に確立させられるのか気付くのを天使達は見ていた。


「アイリス姉様、これを見て下さい」


「如何したの、『リコリス』?」


 するとアイリスに話し掛けるピンク色のセミロングヘアとサイドテールが特徴の天使、アイリスと共に唯一の名あり天使リコリスがグランヴァニアの地を指さし、アイリスはそれを覗くと何故か険しい表情を浮かべていた。


「…矢張り魔族アギラによる虐殺は如何あっても避けられない様ね。

 もう一度神様に進言して来るわ、リコリス達は変わらず地上界の監視を続けてて!」


「はい、アイリス姉様」


 アイリスはアギラの策略をその眼で視てしまい、エミル達が限界値を超えても救えない命が大量に出る事を確信する。

 そしてもう一度神に進言しに行き自身達の介入の許可を得ようとリコリス達に監視を任せ神殿に飛ぶ。

 そしてリコリス達は言われた様に監視を続け、特にリコリスはアギラが行う『策』を何度も監視しながら舌打ちをし、彼の下劣さを毛嫌うのであった。




「うわぁ‼︎

 ダメだ、何度やっても拒絶反応で吹き飛ばされるよ!」


 それから数時間が経過しすっかり夕方になり、夕日が地平線に沈み始め代わりに東の空から2つの月が見え始めていた。

 その間にもロマンもエミルも含め全員が拒絶されてしまい思うように枷を壊せずにいた。


「勇者ロア様の血脈も、ましてや誓いの剣(オースブレード)の血筋も何も関係なければキャシーの様に魔法元素(マナ)の流れを読み解く力がエミル殿並にあるにも関わらず拒絶される…何かやり方を間違えているのか、我々は?」


 ネイルはそれぞれの偉大な英雄の血脈を継ぐ者やゴッフの弟子、キャシーの様な魔法元素(マナ)の流れを読む才能がエミル並にある者やこの中『では』凡人に近いガムやシャラも等しく拒絶された事から何かやり方が間違っているのかと思い始め考察を始めていた。


「やり方、やり方…アレスター先生の本には触れたら、としか書いていないから多分この後のやり方は自分で見つけなさいって無言のメッセージなんだと思うけど…。

 兎に角お腹が空き始めたからご飯にしましょう、考えるのも修行もお腹を満たしてからよ」


 それを聞きエミルもアレスターの日記を何度も読み返すが、枷をイメージした後は『触れたら』としか書かれて居らず、1から10まで全て考えさせずに教えるのは彼の流儀では無い為如何するかを考える事も課題だとエミルは感じていた。

 しかしそれと同時に空腹を感じて来た為、一旦食事休憩を取る事になり全員で野営と料理の準備を進める。


「さーて、食材はリリアーデで買って来るからちょっと待っててね〜」


「あ、エミル様私達も行きます!」


 その間にエミルがリリアーデに転移して食材の買い出しに出かけようとした瞬間、キャシーやシャラも転移で付いて来てメニューは鶏肉を使ったクリームスープとなり、パンも大の男5人が居る為大量に買い込み再び野営地に戻り料理を開始する。

 そしてそれから20分、鍋の中で良い匂いを醸し出しそれが全員の空腹を誘う。


「はい、皆の分を分けて………はい皆で頂きます!」


『頂きます‼︎』


 それ等を見てたエミルは早く胃袋に栄養を送りたい男性陣や少し空腹を我慢してるロマンやネイル、更に女性陣達の為にそれぞれの食べる分量分を分けてスープとパンを手渡し全員で頂きますの挨拶をして食べ始めた。

 なおエミルも公の場では無い為マナーをある程度崩し談笑しながら10人での食事を楽しんでいた。


「ほう、ルル殿はリリアナ様の1人娘にしてあの月下の華であらせられるのか! 

 私も幼い頃にガムやシャラに正義とは斯くあるべしと言う教材に使った程の正義の義賊として憧れておりました! 

 お会い出来て光栄です!」


『サイン下さい‼︎』


 ネイルはゴッフの弟子のアルや王女サラの様に余り顔を出さないルルに素性を尋ねるとリリアナの1人娘や憧れの月下の華だと聞き握手を求めており、ネイルから本を読みファンになっていたガムとシャラはサインを欲しがる等三者三様の反応を見せていた。


「あ、あの、私は…ただ、お母様の様に…か弱い人達を助けたかっただけで、其処まで…大それた事は…!」


「しかし、貴女の行って来た義賊としてか弱き人々の本来あるべき富を悪逆を成す者から奪い返し悪を法で裁き数多くの人々を救ってみせた。

 私達から見れば貴女は間違い無く正義の者です。

 なので誇って下さい、貴女の救って来た人々の幸せと笑顔の為に」


 しかしルルはただ単にリリアナの様にか弱い人達を救いたい一心から始めた義賊行為の為余り大それた事じゃないと言うが、ネイル達民衆目線から立てばルルは間違い無く正義の味方であった。

 その為ネイルはそれを救って来た数多くの人々の為に誇る様に言い、握手を再び求めた結果2人は握手を交わすのであった。


「んぐ、んぐ、んぐ、このスープとパン美味いんだな〜!」


「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ぷはぁ‼︎

 よぅし酒も補充したし寝るまで修行を続けられるぜ‼︎

 サンキューな買い出し班‼︎」


「ありがとうございます、後お代わりはまだ有るから欲しかったら言って下さい!」


 その横ではムリアがスープやパンをガツ食いし、アルが酒を飲みまくり頭の集中力を高めながら買い出し班に感謝の言葉を示した。

 それに対してキャシーはお代わりはまだ沢山有る為食べたい人は名乗り出る様に行って来た。


「あっはは、こうやって大人数で集まって食卓を囲むのって本当に良いよねロマン君、エミル!」


『そうだね〜』


 そしてサラはエミルとロマンにこの大人数での食事も良いと話し、2人は頷きながら2つの月を見上げながら食事を楽しむのであった。

 それからお代わりも無くなり、食事を終えると食器類を洗い、魔法袋(マナポーチ)に仕舞い修行の再開をし始めた。


『うわっ‼︎』


『きゃっ‼︎』


 しかし、その日はアレスターの日記の枷がある部分を確かめられた以外何ら成果を得られないまま時間だけが過ぎて行き、終いには就寝時間となりエミルが居る為魔物に襲われる心配が無い為全員で寝袋に入り就寝するのであった。




「神様、本当にこのまま魔族達を野放しにして良いのですか⁉︎

 このままでは取り返しの付かない事が本当に‼︎」


「アイリス、理解なさい。

 我々は天界は聖戦に介入してはならない」


 その頃天界では再びアイリスが神に直談判し、地上界の介入を試みたが神がそれを再び嗜めてしまう。

 そうして会話は堂々巡りの平行線と化し、アイリスは無言のまま神殿を去りリコリス達の下に表情を険しくして戻る。


「アイリス姉様、神様は何と仰いましたか?」


「駄目よ、何も変わらない。

 天界は聖戦に介入してはならないの一点張りよ。

 このままでは取り返しの付かない事態を招くのに…‼︎」


 リコリスは険しい表情のアイリスを心配しつつ神への直談判の結果を問うとアイリスは平行線のままと告げる。

 それを聞き周りの天使達も落胆し、地上界を覗く泉からアギラが嬉々として計画を押し進めている事を見た瞬間アイリスは手を強く握り締めその蛮行をただただ見ている事しか出来なかった。




 一方地上界の夜、不意にエミルは目を覚ますと周りを見ているとムリアが寝袋に居らず何処かに消えていた。


「…ムリア?」


 エミルはムリアが居ない事を気にし始め、更に何と無く念話傍受魔法(インターセプション)を使い、魔族達の念話を傍受しようと魔力を集中していた。


[いい加減にして下さいよ〜‼︎]


「えっ、ムリア…⁉︎」


「…エミル様もお気付きになったのですね、行きましょう」


 すると魔族同士の念話からムリアの声が響いた為エミルは驚いているとキャシーやシャラが起きており、シャラは残り他のメンバーが行かないかを見張り残る2人は念話が送受信されている森の中に入って行く。

 すると其処には確かにムリアが居り、しかし褐色の肌に魔血晶(デモンズクリスタル)が額にあり、明らかに魔族の出立ちでその場に立っていた。


[お、俺はネイルの兄貴に拾われてから正義や道徳を知って、同時にアンタの卑劣さを知れたんだ‼︎

 だから、ネイルの兄貴を暗殺するなんて命令は聞けないんだな〜‼︎]


[はぁ、君には失望しかないですなぁ。

 私が2年前から出してる命令を未だ遂行せず、呑気に地上界の愚者達と旅を続けるなど]


 如何やらムリアは本来は名無しの魔族でありアギラの命令によりネイル暗殺を狙っていたらしいが、彼の誠実さや正義感がムリアの心を変えてしまったらしくアギラの命に反していたのだ。

 それをアギラはネイルを含め正義の鉄剣ソードオブユースティティアが愚か者…そう口にした瞬間ムリアの目が見開かれた。


「黙れ、愚かで卑怯なのはアンタなんだな、アギラ‼︎」


 ムリアは力関係上は上司である事が間違い無いアギラに対し卑怯で愚かなのはネイル達では無くアギラだと念話も忘れて口で叫び抜いてしまっていた。

 それ程アギラが発言した事は彼の逆鱗に触れてしまったのだろう、そうエミルは感じ取っていた。


[…ふむ、では仕方ないなぁ。

 君の愚かさを身に染みさせる為に魔界に居る親兄弟を抹殺してやりましょうか!]


[な、と、父ちゃん達は関係ないぞ‼︎

 やるなら俺だけやれ、卑怯者‼︎]


[いや、やるなら俺だけなどと言っている馬鹿には身内から崩した方が良いと相場が決まってるからね。

 ではネイル暗殺の最後のチャンスは任せましたよ! 

 ふふふ、ふひはははははははは‼︎]


 するとアギラはムリアの魔界に居る家族を人質に取ると言う卑劣な手段を講じ、ネイル暗殺のラストチャンスを与えると言った上で高笑いしながら向こう側から念話を切り、ムリアは悔し泣きをしながら地面に斧を叩き付けて無力さを嘆いていた。


「畜生、畜生、ネイルの兄貴に与えられた恩を仇で返すなんて…でもそうしなきゃ父ちゃんや弟達が…」


「…成る程、この500年で魔族側も事情が大きく変わったみたいですね」


「っ、キャシーちゃんにエミル様…いや………ライラ様…‼︎」


 ムリアは人間の姿に戻るとネイル暗殺をするか、家族の命を取るかの究極の選択を取られてしまい如何するか涙を流しながら考えていると、木の陰からエミルとキャシーが現れ、エミルは魔族も500年の徳の間に魔王の意思統率以外に色々とあった事を察する。

 するとムリアはキャシーの前でエミルをライラ様と呼び、その目は藁にも縋る想いで満ちていた。


「え、エミル様がライラ様って」


「あーキャシーちゃん、この事は内緒にね。

 それで、貴方は元々アギラの部下らしかったけどネイルのお陰で変われたみたいね」


「そ、そうなんだ、だから兄貴は俺にとっては家族も同然なんだ〜‼︎

 だからライラ様、何とかして下さい、お願いします〜‼︎」


 キャシーはエミルのことで混乱し始めたが、エミルは口に人差し指を当てて内緒のポーズを取るとムリアの大体の事情を口にすると彼は泣きながら土下座を始め、魔界に居る家族を救う案を出す様に懇願し始めた。

 しかしエミルも万能では無い為如何すれば良いかと考え始め頭を掻き始め…ふと包帯に目が止まり、ムリアに聞きたい事を口にし始めた。


「ねぇムリア、今魔界は魔王がトップなのは分かるけどアギラや…あのシエルとか言う魔族が幹部っぽいのは分かるのよ。

 だから聞きたいのだけど、魔界の派閥は今如何なっていて、何処が信用し易いか分かる?」


「えっ? 

 えっと、今魔界は卑怯者のアギラ派と、狂戦士(バトルマニア)のダイズ派、そして魔界1の剣士にして神剣の対の『魔剣ベルグランド』を持つ実力主義のシエル派に分かれてるんだ…その中で信用し易いなら………魔界の争いを今の魔王の命の下1人で収めた英雄アザフィールの弟子のダイズ様とシエル様がイイブンなんだ〜…」


 エミルは魔界の勢力図を聞くと、如何やらアギラ派にシエル派、更に未だ見ぬ狂戦士(バトルマニア)のダイズ派に分かれ、更にあのアザフィールがシエルとダイズの師であり魔界の内紛を1人で収めた大英雄と知った上で、信用度はエミルもダイズも変わらないと話した。

 その中でエミルが考えた策は…最早これしか無いと思い口にし始める。


「ならムリア、鞍替えなさい。

 私は念話傍受魔法(インターセプション)で聞いた限りアギラとシエルは仲が良いとは言えそうにはなかった。

 だからシエルに頼み込んで家族を救う様に頼みなさい、報酬はアギラ派の力を失わせる…とかでね」


「うっ…や、やっぱりそれしか無いんだなぁ〜…。

 でも家族やネイルの兄貴達の為なら俺は幾らでも命を懸ける覚悟はできてるだ〜‼︎」


 エミルはムリアに対してアギラ派からシエル派に鞍替えし家族の安全を確保する事を提案し報酬はアギラ派の求心力を弱める事を提示する。

 ムリアもそれ自体は考えなかった訳は無いが彼自身の中でシエルもダイズも近寄り難い雰囲気があった為それが出来なかったが、ネイル達や家族の為に命懸けの交渉に移り始めた。


[…シエル様、私は正義の鉄剣ソードオブユースティティアに送り込まれたアギラ派の魔族です。

 貴方様に、こ、交渉があって念話を]


[詳細は話さなくて良い。

 大方アギラに家族の命を天秤に掛けられ、しかしネイルの命を奪えない為八方塞がりになり私の派閥に家族の命を救って欲しいのだろう? 

 アギラのやりそうな一手だ。

 ええ良いわ、条件付きで引き受けてあげるわ]


 早速ムリアは念話を始め、エミルとキャシーが念話傍受魔法(インターセプション)を使い内容を傍受しているとシエルは条件付きではあるがあっさりと引き受け、これを聞いていたムリアとキャシーはキョトンとした表情を見せていた。

 しかしエミルは何か裏があるのかと思い注意しながら聞いていた。


[それで、私が出す条件は2つだ。

 1つはアギラの殺害ないし失脚だ。

 奴等は私やダイズの『盟約』の上で完全に邪魔な要素(ファクター)でしか無い、消えて貰いたかった所にこの交渉が来て私もタイミングが良かったよ。

 そして2つ目の条件、これが1番重要だ。

 ネイルにムリアと言う名を与えられた魔族よ、お前の心は何処にある?]


 シエルは2つの条件としてアギラの殺害ないし失脚を提示し、彼で彼女とダイズにとってはアギラ派の存在は邪魔でしか無いらしくこの時に交渉が来たのが良いタイミングだったらしく自身の手を汚さずともアギラ達が勝手に消えてくれるのが如何にもダイズとの『盟約』に都合が良いらしかった。

 そして重要な2つ目として………ムリアの心は何処にあると問い掛けて来た。


「(2つ目は完全に趣味に近い質問じゃない! 

 これの何処が重要なの⁉︎

 分からない、私にはこのシエルの思考が全く分からない‼︎)」


 それを傍受しているエミルはシエルの考えている事が全く分からずロジックエラーを起こし彼女にシエルと言う魔族の思考が全く理解が出来ずにいた。

 しかし、その質問をされたムリアは心が何処にあるかと問われるとハッキリと答えを突き付けた。


[…此処に、此処にあります。

 家族を想い、ネイルの兄貴にキャシーちゃんにガムにシャラ、こんな俺を仲間と呼んだ皆を想う心は、アギラの下にも魔王様…いや、魔王の下にも無い、此処にあるだ〜‼︎]


[…そうか、其処にあるのか。

 ならば良いだろうムリア、アザフィールに手配し家族の身の安全は保障しよう。

 だが必ずアギラの殺害か失脚を成せ、それが出来なければ私達の手でお前の家族の命は無いと知れ。

 …それから念話傍受を続けるライラの転生体エミルに言って置く]


 シエルはムリアの答えを聞き何か満足した声色になりアザフィールに手配し彼の家族の安全の保障を約束する。

 しかし代わりにアギラの殺害ないし失脚、つまりアギラを斃さねば家族の命は無いと代わりに人質の状態にし、しかしそれを成す時までは安全が保障されてる為御の字であった。

 そして念話を終わる直前にシエルはエミルに何かを言おうとして来た為身構えていた。


[私の言葉には其処まで深い意味は無い。

 下手なロジックエラーを起こすな、煩わしい。

 文面通りの言葉と受け取る事だ…では念話は終わる、アギラに聞かれたく無い]


 しかし来た言葉は自身の言葉に深い意味は無い、ロジックエラーを目の前で起こすのが煩わしい、文面通りに受け取れと言うシンプルな言葉であった。

 エミルはその言葉を加味すると限界レベルや楔の泉はただ知らせたかったから教えただけと言う身も蓋もない事実が浮上する。

 そしてアギラに念話を割り込まれたく無い為にシエル側から念話を終えるのだった。


「…魔族シエル、貴女の目的は何なのよ…」


 最後にエミルはやや冷たい風を浴びながらシエルの目的は何なのかと問うが、既に念話は終わり目の前にも居ない為彼女の最終目的が全く分からずに居た。

 ただ分かったのはアギラ派が邪魔である、そんな将来的に余り意味が無さそうな情報しか無かったのだった。


「あの、すみませんでした〜」


「ああいや、ムリアは悪く無いわ。

 寧ろ、貴方のお陰で更なる確信になる情報を手にしたから。

 そう、連中が地上界の者に化けて潜伏してるってね」


 そんな中ムリアはエミルに謝罪するとムリアのお陰で良い事も悪い事も分かり助かったとエミルは話した。

 その良い事は魔界側にもこの500年で変化が訪れている事。

 そして悪い事は、キャシーも警鐘を鳴らしロック達にも伝えた『魔族が地上界の者に化けている』と言う物であった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

魔界側の動きや魔族達が地上界の者に化けて潜伏したり、煮え切らない天界等がある中、エミル達は上手く行かない修行に少し疑問を抱きながらムリアの正体を知り彼の助けになる様に動きました。

その中でもシエルはまた何を考えているか分からず頭を抱えていますがこれが解消される時は何時かあります。

さて、今回は正体が判明したムリア、リコリス、魔法元素(マナ)の絶縁地帯天界の戦力の設定をある程度公開します。


ムリア:記憶喪失の斧戦士…と思われていたが実はアギラからネイル暗殺の為に送り込まれた魔族である。

キャシーやシャラは念話傍受魔法(インターセプション)により最近知り、しかし本人がネイルに言うまでは伏せると言う事になっていた。

ムリア本人はネイル達から正義や道徳を学んだ為、最早アギラに従う気は無くなっていたがそのアギラが家族を人質にすると宣告し家族かネイルかの板挟みになってしまった。

しかしエミルの案もありシエル派に鞍替えすると共に家族の身柄の安全を確保する様に要請し、本人からその約束を受けた為ネイルの命を狙わずに済む様になった。

因みに本来は名無し魔族であるが、ネイル達から貰ったムリアと言う名を大事にしている。


リコリス:アイリスの妹で天界に2人しか居ない生まれながらにしての名あり天使。

アイリス同様アギラが裏で進めている事に対し憂いているが、神の命の下行動出来ずにいる。

戦闘能力はアイリスに次ぎ枷がある状態でレベル400オーバーと、天界の双璧を成す天使である。


魔法元素(マナ)の絶縁地帯:世界樹の森の直ぐ側にある魔法元素(マナ)の流れが殆ど感じられなくなる特殊地帯。

此処では魔法元素(マナ)の流れをどんな場所でも捉えられる様にすると言うある意味無茶だが出来ない事は無い修行をしたり、心を安定させ魔法や絶技を無理無く使用出来る様にする場所である。

そして今回のアレスターの見つけた修行法が唯一出来る場所でもある。


天界の戦力:レベルが測定不能の神を除き、天界の戦力は全て天使で構成され生まれながらの名あり天使はアイリスとリコリスしか居ない。

しかし、天界の戦力は実はこれだけでは無く裏道の様な戦力もある。


次回もよろしくお願い致します。

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