第20話『エミル達、勧誘する』
皆様こんにちはです、第20話目更新でございます。
今回からエミル達以外に第三者の動きも活発化して行きます。
では、本編へどうぞ。
エミル達が日記解読をしていた頃。
地上界、魔界でも無い空気が澄み、白き翼を持つ者、天使達が天を舞い常に空が青く、しかし太陽が無いのにも関わらず闇に覆われない世界。
第3の世界、天界の神が住まう宮殿にて1人の紫の長髪が特徴の天使が正に神の前に跪きながら口を開き始めた。
「我等が父にして3界と全ての生命の創造主たる我等が神様。
此度はこの不肖天使アイリスの進言をお許し下さい下さい」
「…良い、言わずとも分かる。
現在地上界にて行われている『聖戦の儀』についての事であろう。
天使アイリス、愛しき娘よ、聖戦の儀には我々天界は必要以上の肩入れは禁じ静観をしている。
其方の進言は受け入れ難いと我々天界の立場の意味を知りなさい」
跪いた天使、かつてロアに神剣ライブグリッターを渡したアイリスは地上界で発生している聖戦の儀………地上界と魔界、2つの世界間で発生している戦いについての進言を行おうとしたが、神はそれを天界は静観する側に回る為に一方への必要以上の肩入れは禁じてるとまで発言し威圧感は無い、しかし神々しさが溢れる雰囲気を纏いながらアイリスを嗜めた。
するとアイリスは顔を上げて立ち上がり、更に進言を続け始める。
「しかし神様、現在魔界は地上界の限界値レベル250を遥かに上回る者達を派兵し、更には楔の泉を破壊し魔王を地上界に降臨させんとする聖戦の儀に定められた法を幾つも犯しています‼︎
更に地上界は魔族信奉者の国まで出来上がる始末‼︎
このままでは貴方様が嫌う一方による虐殺が本気で行われてしまいます‼︎
神様、どうか我等天使に地上界への派兵を許し、魔界側による虐殺を止める許可を‼︎」
「アイリス、我々天界は一方への必要以上の肩入れは許されないのだ。
今一度申そう。
其方の進言は受け入れ難い」
アイリスは感情を剥き出しにし、魔界側が聖戦の儀に定められた法を幾つも犯していると例すら上げ、その上で天使の地上界への派兵をする様に懇願するが、神は自らの意見を曲げずアイリスを再び嗜め話が其処で終わってしまう。
「…失礼致しました」
アイリスは自身の言葉は神に届かないと知るとそのまま跪いた上で頭を下げ、そしてその場から翼を羽ばたかせながら神殿を後にし、地上界の様子が見れる泉の前に降り立ち各地を見ていた。
「アイリス姉様、また今日も神様に進言は通らなかったの?」
「…ええ、天界は一方への肩入れは出来ない。
そう言って現状を………魔界側による明らかな虐殺への準備を見向きもしてない。
このままでは地上界で必要以上の血が流れるわ。
確実に、そしてそれは近い内に」
其処に別の天使達が集まり、アイリスが日頃から神に進言している事を知りつつ地上界の様子を共に監視していた。
そして、天使の中で最年長のアイリスは神に言われた文言を他の天使達に聞かせ、更に神は現状を見ていないと明らかに不敬な発言をしながら拳を握っていた。
地上界で虐殺が起きる、その確信を持ちながら。
「でも地上界の人の中に限界値を突破をして相手側に対抗しようとする人達が居ますよね?
ほら、魔法使いライラの転生者とその仲間達。
彼女達がこれを如何にかするって信じるのが私達の役目じゃ無いっすかね?」
すると天使の1人がライラの転生者、エミルとその仲間がレベル250の限界値を超える為に動いている事を地上界を映す泉を見ながら発言し、他の天使達も神が無理なら彼女達を信じると言う選択肢を取るしか無いと考えエミル達の様子をじっくりと見ていた。
だが、アイリスだけはエミル達のみならず地上界全体を監視し、その中でアギラやグランヴァニアの動きすら頭に入れながら考えていた。
「(確かに彼女達なら枷を外し対抗出来るかも知れない。
けど地上界はグランヴァニアとか言う愚か者達が聖戦の儀で禁じられている『聖戦中の地上界同士の争い』を犯して魔界側に協力し、魔界側はアギラ派が虐殺計画や楔の泉破壊を狙っている…。
恐らくライラ、いやエミル達だけでは間に合わない。
ならば私は…)」
アイリスはグランヴァニアの動きやアギラ達一派の動きを注視しており、既に聖戦の儀の定められた法は形骸化し混沌を極めつつある状態にあると脳内で思考していた。
そしてエミル達だけでは間に合わないとまで考え、その時には…とエミル達が出来るだけ早く枷を破る事を祈りつつ彼女自身も何らかの行動を起こそうとするのであった。
一方地上界、フィールウッド国ではエミルが盗聴防止結界を使いながらアレスターの見出した修行法が書かれた日記をロックとリリアナに見せ、2人はアレスターの持って生まれた才能に改めて脱帽していた。
「アレスター…お前は私のレベルが250のまま上がらない事を疑問に思いながらこの修行法を見つけていたのか…。
そしてそれを知ったが故に魔族に…。
魔力や魔法元素の流れを読むその力、正にライラと同格以上だよ………本当に、お前は天才だったのだな…」
「アレスター君…」
ロックは其処に書かれた内容をリリアナと共に黙読し、その才能が彼等から見てもライラと同格以上だった事を知り、父として自然と一筋の涙が零れ落ちる。
リリアナも幼い頃から魔法を見ていたある意味弟子であったアレスターに想いを馳せていた。
そして2人はエミル達に日記を返却し話を続ける。
「それで、君たちはこのアレスターさえ危険だと文脈から断ずる修行法をする事はもう決まっているのだな?」
「はい、私達は250の壁を如何しても超えなければなりませんので。
それがこの修行法でもしも超えられるなら、喜んで命を懸けてこれを行わせて頂きます。
期限は4国会議が行われる6日後に必ず成果を出す為に、5日で成し遂げてみせます」
ロックは誓いの翼にアレスターさえ危険としたこの日記の修行法をエミルが代表し4国会議が行われる6日後に成果を出す為5日で成す事をロックとリリアナに約束し、全員の目から強く固い意志を感じた2人は最早何も言わず、エミル達に成果を期待する事にして頷きながら彼女達の意志を見届ける。
「それでなんですが、この修行法にもう1つの冒険者パーティも誘い、彼等も限界を超えて欲しいと私は考えました。
その人達をこれから私達は誘いに行きます」
「何、その者達は一体?」
「…あっ、正義の鉄剣、キャシーやネイルさん達の事⁉︎」
するとエミルは今近場で誘え、且つアレスターのレベル120のラインを超えてる者達を誘うべくロック達にその者達を誘いたい旨を話した。
当の2人は何者かと思ったが、此処でロマンがキャシーやネイル達正義の鉄剣の事だと思いその名を出すとエミルはサムズアップをしていた。
「正義の鉄剣…成る程、シリウスの子孫の冒険者パーティか。
因みにだが、平均レベルはどれ位なのだ?」
「平均して169、リーダーのネイルさんが190とかなりの戦力を誇っております。
本当なら私の兄達や親衛隊長達も共にこの修行法をして戦力増強を図りたかったのですが、千里眼の範囲内には居ない為そちらは断念しました」
ロックはかつての仲間達の中でも特に正義感が強かったシリウスの子孫をこの修行法に誘いたいと言われ、エミルに平均レベルを問うとその数値は169、1番高いシリウスの子孫ネイルのレベルが190とかなりの戦力値であり、この修行法に誘うに十分な平均レベルである為ロックは頷きエミル達に指示を出し始める。
「よし、では誓いの翼の諸君は正義の鉄剣と共にアレスターが見出した修行法を完遂せよ!
我々は近衛兵数名と共に4国会議でセレスティア王国に向かう為それを見届けられないが、その成果を期待して待っておるぞ!
サラ、ルル、私やリリアナの娘である意地を見せるのだぞ!」
『はっ‼︎』
ロックはエミル達にネイル等と合流してアレスターの修行法を行い成果を出す事を命じ、それを4国会議で見届けられないが期待しているとして玉座からを立ち身振り手振りをしてエミル達に直ぐに行動に移る様にジェスチャーを送る。
それ等を見てエミル達は馬屋に預けていた馬車を引き取り、全速力で森を駆け抜け始めた。
「それでエミル、ネイルさんやキャシー達はまだフィールウッドに居るの⁉︎」
「居る、千里眼と透視で宿屋にいる事を確認したわ。
でも入れ違いになりそうになったら直ぐ様転移してでもその足を止めるわ!」
その全速力で森を駆ける馬車の手綱を握るエミルにロマンは横の席から揺られながらもキャシーやネイルがフィールウッドに居るかと問うと、如何やらエミルは千里眼と透視を使い、リリアーデの宿屋に居る事を確認し再び最短ルートの最北の世界樹の森を真っ直ぐ突っ切り始める。
しかしそれでも間に合わないならエミルは転移魔法を使い足を止めさせると宣告する。
ネイル達からすれば突然の再会になる為迷惑だと思うが、エミルは世界の為にもある程度は度外視する気でいた。
「──ー最北の世界樹の森を抜けたわ、リリアーデまでこの速度なら10分も掛からないわエミル!」
「まだ宿屋に居るわ、このまま突っ走らせるわ!
頑張りなさいよ馬ちゃん‼︎」
そうして激しく揺れる荷台から森を覗いていたサラは最北の世界樹の森を抜け、リリアーデに続く街道のある森に入った事を告げる。
その間に街道に入る中、エミルはネイルやキャシー達がまだ居る事を確認しながら馬に頑張る様に叫び馬も気合を入れて地を駆ける。
そうして予定より2分も早くリリアーデに到着し、エミル達は馬屋に馬車と馬を返却し、馬を撫でて誉めていると宿屋から丁度キャシーが出て来た。
「あ、やっぱりエミル様達でしたか!
最北の世界樹の森を真っ直ぐ馬車が駆け抜けるのを千里眼と透視の併用で見えましたから何か御用なのかお待ちしてました!」
「あ、キャシーちゃん丁度良かったわ!
正義の鉄剣に話があるから宿屋の部屋を少し借りさせて貰うわね!」
キャシーも如何やらエミル達の接近を目撃して待っていたらしく、エミルは丁度良いと言わんばかりに正義の鉄剣全員を宿屋の大部屋を借りて盗聴防止結界を発動させながら話を始める。
「それでエミル王女殿下、我々に一体何用があって訪ねて来たのでしょうか?
このメンバーで盗聴を恐れてる事から魔族やそれに絡んだ話だと思われますが」
「エミルで良いし敬語は公の場じゃないから余り不要よネイルさん。
それでだけどその勘は大当たり、でも言葉で説明すると長くなるからこの日記を貴方達5人で読んで欲しいの。
私達が何を言いたいか理解して欲しいから」
早速ネイルはこの魔族と戦う事を共通とした目的を持つメンバーの為、それに関連した事を話し合うのだと予想する。
それを聞きエミルは敬語は不要としながら予想が当たってると話し、更に自分達の口から説明するよりも早く理解して貰うべくアレスターの日記をネイルに手渡した。
「日記…著者は…フィールウッド国第1王子にして魔法の天才であり、恩師のアレスター殿⁉︎
すぐに読もう、皆‼︎」
「あのアレスター様の日記…一体どんな内容が…」
するとネイルは裏にある名前の欄を確認し、アレスターの名を見た途端昔世話になった記憶を思い起こしながら日記を読み始めるネイル達。
キャシーも魔法の天才がどんな物を書き遺したのか気になり5人で読み始めた。
「…自身の死期が訪れる事さえ予期してこの内容を…貴方は真に天才だ、アレスター殿…。
さて、読ませて貰ったがこれには命に関わるかも知れない危険な、自らの枷を壊す為にそれを知らせる修行法が書かれていたが、我々にもこれを?」
「はい、ロック様やリリアナ様がレベル250のまま止まっているのはこの枷が限界レベル値を決めてしまった為です。
皆さんには…危険は承知でその枷を壊してレベル250の壁を超えて欲しいんです。
無論パーティの命の危険を考えて強制はしませんが」
ネイル達は日記を読み終わりエミルに返却すると、彼等も命に関わるかも知れない修行法に汗を流しながら尋ねると、エミルは強制はしないと話しながら枷を壊してレベル250を超える様に話す、強制はしないと最後に付け加えながら。
「うむ…皆、魔族と戦う為には恐らくこの修行法は欠かせないと私は思った。
しかし、皆の命を考えると簡単に首を縦には振る事が出来ない。
皆の考えを聞かせて欲しい」
ネイルはこの修行法が命に関わるかもしれないと感じ取るとキャシーを始めとする他の4人の仲間達にこの修行法を試すか否かを考えを聞かせる様に頼み込んでいた。
すると始めにガムにシャラの兄妹が口を開き始めた。
「それなら俺達兄妹の意見は決まってますぜネイルさん!
俺達は幼い頃身寄りが無くて窃盗してた所をネイルさんに見つけて貰えて」
「其処で同じ歳位なのに真摯に向き合って盗んだ物のお金を払ってくれたり、私達に道徳や人の意志を踏み躙る本当の悪って物を月下の華の本を読み聞かせて教えてくれました!
だから私達兄妹はネイルさんにとっくに命を預けてますよ!」
ガムとシャラは昔は身寄りが無く物を盗みながら生きて来たが、ネイルが身寄りの無い2人に向き合い道徳や悪について学ばせたと彼等の口からそんなエピソードが出る。
そして2人はネイルに命を預けていると話し、この修行法をする覚悟が決まっていた様だった。
「お、俺も、ネイルの兄貴が記憶喪失の俺の面倒を見てくれて、正義の事や人を助ける事の尊さを教えてくれたんだ〜!
だ、だから、俺もこの修行法で強くなってネイルの兄貴に恩返しをしたいんだ〜!」
次にムリアも記憶喪失である自身の面倒を見てくれた恩に正義、人助けの尊さを1から教えたエピソードを語る。
そして彼もまたネイルに恩返しをしたいと告げ、アレスターの修行法をやる覚悟を決めていた。
そして最後にキャシーの番が回り、彼女も語り始める。
「私も、ロマン君やエミル様に救って頂いた後ネイルさんやガムさんにシャラさんにムリアさん、皆さんにパーティに加わらないかと誘ってくれただけじゃなくシャラさんは私には魔法使いの才能が自分よりあると言って皆さんでそれを花開かせる様に修行をさせて頂きました!
そして、その恩人の皆さんが魔族に襲われ、ロマン君達は重傷を負う程に追い詰められてしまいました…」
キャシーは自身を救い、導いた恩人達の全員に対し感謝の念を抱き、その全員がそれぞれ魔族に襲われエミルやロマン達は重傷を負わされたと話し、一度瞳を閉じ辛そうな表情を浮かべる。
しかしその直後に何処にでも居る普通の娘の風貌からは想像出来ない程の強い意志を秘めた瞳を開き、ネイルを見ながら答えを出す。
「だから、私は皆さんへの恩返しをしたいのと皆さんを守りたい、その意志を以てこの修行法をやりたいです‼︎
その先が茨の道でも、私は進ませて頂きます‼︎」
「…皆の意思は伝わった。
なら、我々がやる恒例のパーティの行動指針決定の際の儀式をしよう!」
キャシーもまた恩返しや恩人達を守りたいと言う意志をネイルもそれを聞き終え全員が同じ想いだと知る。
そしてそれに伴い部屋で円陣を組み始めたネイル達は武器を頭上に掲げ合わせ始め、エミルはこれはシリウスもしていた正義の鉄剣の意思表示の儀であると知ってる為、邪魔にならない様にロマン達共々端に寄る。
『我等正義の鉄剣、その意思決定により大魔法使いアレスター殿の遺せし修行法を執り行わんとすべし!
全てはか弱き人々の自由と生命を守らんとする正義の意志である事を我等は此処に誓う‼︎』
ネイル達が行った意思表示であり誓いの儀は代々正義の鉄剣が行って来た自分達の正義の意志と結束を固くし、そして互いに言い聞かせ正義に反する行いを禁じる正に儀式その物であり、シリウスの一族が正義を重んじた事の証明であった。
その儀式を初めて見たサラやルル達は目を輝かせ、エミルに話し掛け始めた。
「か、格好良い〜!
ねえねえエミル、私達誓いの翼もあんな風な誓いの言葉を考えてみないかな⁉︎」
「わ、私も…凄く、してみたい…です………‼︎」
「え、えぇ⁉︎
そんなの急に言われても考えて無いから困るよ〜!
えと、アルにロマン君は何か案は無いかな⁉︎」
エミルはサラとルルが誓いの言葉をやってみたいと言い出し、そんな事を急に言われたエミルは誓いの剣もそんな事をしていなかった為困り果ててアルやロマンに助けを求める。
「あぁん?
俺様があんな小っ恥ずかしい事を考えてる訳無いだろ!
リーダーはお前なんだから何か考えとけやエミル‼︎」
「え、えっと…僕も、特に案が浮かばない…かな?」
しかし助けを求めて掛けた橋はアル達本人により外されてしまい、特にアルにはエミルが何かを考える様に言われてしまい困り果てて何かないかと普段こう言った事では使わない頭を回転させ始めた。
「はっはっはっは、まあこれは私の父や先祖様達が代々行って来た誓いの儀だから即興で決まった訳じゃないんだ。
しかしエミル殿も誓いの言葉を立てたいのならアドバイスとして心に浮かんだ言葉や仕草を形にして執り行う様にと言っておくよ」
それを見ていたネイルもエミルが無理難題を掛けられたと思い、自分達の物は代々伝わる物で、更にアドバイスとして心に浮かんだ言葉や仕草を形にする様にと言葉を送る。
それを聞きエミルは心の中で思い浮かべた言葉と行動を形にして行き、そしてそれに取り決める。
「じゃあ皆縁を組んで手を繋ぎ合わせて。
そして目を閉じながら『我等誓いの翼は世界を救う為、アレスター先生の修行法で己の壁を超える事を誓います』って言うわよ、良いかな?」
「わぁ、それっぽくて良いね‼︎
じゃあやろやろ‼︎」
エミルはサラやロマン達にネイル達の様な円陣を組みながら瞳を閉じ、初めての為予め決めていた言葉を言い合い誓いを立てる事を全員に伝えるとサラやルルはノリノリで円を組み、アルは渋々と言った様子で、ロマンはオドオドしながら縁を組み手を繋ぎあった。
「じゃあ行くよ、せーの!」
『我等誓いの翼は世界を救う為、アレスター先生の修行法で己の壁を超える事を誓います』
そうして誓いの翼はエミル発案の誓いの言葉を立て、全員が世界を救う=魔族達に打ち勝つ事を思いながらアレスターの遺した修行法に望みを託す形の誓いとなった。
「(うん、後は先生が遺した修行法をやるだけね…)」
エミルはその間に思考し、更に何故この修行法が限界レベルを超えられる確証があるのか?
それは自身もアレスターの様に魔法元素や魔力の流れを視る事が出来る体質の為、そのアレスターが危険としながら可能性があるとした物にチップを掛けれるのだ。
「さて、じゃあ皆で転移魔法を使って最北の世界樹に行こう!
其処でアレスター先生の修行法をやって、4国会議が始まるまでの5日間で成果を出すわよ‼︎」
『おお‼︎』
「正義の鉄剣も同行しよう!
さあ行こう、皆‼︎」
そして2つのパーティの計10名は宿屋の部屋を借りた代金を払い、その足で転移魔法を使い最北の世界樹へと転移し、エミル達は絶縁地帯に近い小高い丘の上に立ち海やリリアーデの街を一望しながらこれから始まる修行に想いを馳せるのだった。
「ふっ、遂にアレスターが遺した物を見つけた様だなエミル達は。
さて、後は『スタートライン』に立てるか否かだが…恐らくは問題ないだろうな」
「うむ、特に魔法使いエミル達誓いの翼、そしてあのシリウスの子孫であるネイルに関しては問題は無いと思われる」
そんなエミル達を監視する様にシエル、ダイズ、アザフィール達がとある場所で千里眼を使いその光景を見ており、シエルとダイズ、更にティターン兄妹はポーカーで賭けをしながら、アザフィールがディーラーを務めながら会話を進めていた。
「で、残る4人の内期待出来そうなのはあのキャシーと言う田舎村風の娘がエミルと同等かやや劣る程度に魔法元素や魔力の流れを読み取る力を備えているっぽいな。
枷を壊した暁にはネイルやエミル達共々戦ってみたい物だ…レイズ」
「ガムとシャラは…結果を見なければ分からないがあのシリウスの子孫が選んだ者だ、凡人である訳が無い筈だろうさ…ふっ、レイズだ」
ダイズはエミル達やネイル以外にキャシーを才覚があると目に掛けており、彼の狂戦士の性が花開いた彼等との戦いを望んでいた。
一方シエルはガムとシャラ兄妹も凡人には収まらないとネイルの目利きを信じる形になりながら自身の『計画』に必要な要素になる様に頭数に加えていた。
「それにしても最後の1人…ムリア、とか名乗ってたね?
彼は今後如何する気なんだろう…レイズ」
「知るかそんな事、気になるんだったらアギラにでも聞いてみやがれっての。
まああんな小物に聞いても答えは1つしか出ないから無意味だけどな…んじゃオールイン!
これで掛け金は出揃ったな。
じゃあ今日こそ勝たせてもらうぜシエル様にダイズさんよ!」
次にティターニアが何故かムリアを気に掛ける発言をし、その行く末が如何なるか心配する様子を見せる。
対するティターンはアギラに何故か聞く様に促し、しかしアギラの性分上答えは1つしか返ってこないとして無意味な問いと片付ける。
そしてティターンが最後のオールインを行い勝つ自信があるのかニヤリと笑みを浮かべていた。
「…悪いなティターン達、俺はロイヤルストレートフラッシュだ」
『なっ⁉︎』
そして最初にレイズを行ったダイズからカードがオープンされ、ハートのロイヤルストレートフラッシュと最強の役を揃えてしまった為かダイズは平謝りし、負けを確認したティターン兄妹も役を公開した。
因みにティターンは2と9のフルハウス、ティターニアは8のフォーカードであった。
「さてシエル、お前の役は何だ?
2人が公開しているが未だお前は非公開になっている、つまりこの役に勝つものが出来上がったのだろう?
早く見せてくれないか?」
「…ああ、5のファイブカードだ。
この状況でお前のロイヤルストレートフラッシュを破るにはスペードのロイヤルストレートフラッシュかジョーカーを手にしてファイブカードを作る必要があった。
そしてそれはサマ抜きで完成した、運が良かったよ」
しかしこの1人勝ちの空気の中、狂戦士のダイズはシエルが自分の役を上回る役を作り上げたと確信し公開を迫った所、ロイヤルストレートフラッシュを上回るファイブカードをシエルは作り上げており運で掛け金全てを引き寄せる結果となった。
これにはオールインしたティターンは項垂れてしまっていた。
「ではシエル様が勝利となり、全てのGを没収とします。
ティターン、運が無かったな」
そしてディーラーのアザフィールは淡々と掛け金をシエルの下に引き寄せ、ティターンに運が無かったと武士の情けとしての止めの言葉をかけ、ティターンも普通フルハウスなら勝てるだろうと思いながら席を立ち部屋の隅で素寒貧にされた事を泣いていた。
【ブォン!】
「やあやあやあ、賭け事をしてるみたいだねぇ君達?
私も混ぜてくれないかい?」
「アギラ…貴様使命の準備は終わったのか?」
「その点は心配無く、順調に進んでいるさ。
さあ、我等魔王幹部三人衆の会議をしながらポーカーをしようじゃないか」
其処に突如アギラが現れ空気が一変し、全員が彼を睨む中アギラは準備は全て順調であると宣言し悠々とティターンが座っていた席に座り、ティターニアも席を立った事で再び幹部会議をしようと言いつつポーカーを始めるのだった。
「ストレートフラッシュ」
『ロイヤルストレートフラッシュ』
「………チッ」
なお結果はアギラがイカサマを使うが、他2人に素寒貧にされた上にエミル達がアレスターの遺した修行法を行い始めた事を共有されないまま会議を終え、不機嫌を隠さぬままアギラは帰って行くのだった。
なおシエル達がアギラにエミル達の行動を伝えない理由は自分で彼女達の行動を確認しない不手際による物であった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
天界や天使、神と言った存在が地上界を見たり、シエル達が余裕綽々に賭け事をする中エミル達はネイル達の勧誘をして修行スタートとなりました。
この修行が如何なるかお楽しみに下さいませ。
では今回はガムとシャラ、ムリア、アイリス、神、天界、この世界の賭け事や娯楽の設定をある程度公開します。
ガムとシャラ:ガムは槍戦士、シャラは魔法使いの兄妹。
2人は幼い頃にネイルに勉学や道徳、正義を教えられ彼の後を何処までも付いて行くと決意し、現在は正義の鉄剣の古株である。
2人とネイルは硬い信頼で結ばれ、この絆は途切れる事は無いだろう。
レベルは173である。
ムリア:記憶喪失の所をネイル達に拾われ、現在はネイル達のパーティで共に戦う斧戦士。
少し肥満体系なのんびり屋だがレベルは168と高め。
自身に親身になってくれた恩人のネイル達に信頼を寄せ、彼等の為なら命を張る覚悟が出来ている。
アイリス:天界に住まう天使にしてロアにライブグリッターを託した天使。
地上界での現状を憂い神に毎日進言しているがそれが通らず肩を落とすを繰り返している。
何故彼女が此処まで地上界に加担しようとしているかは聖戦の儀と呼ばれる物に由来し、更に彼女の根が優しい為である。
レベルは枷がある状態で450と、あのシエルと同レベルにして天界最強と言われる。
神:世界を創造した者にしてその眼で未来すら見透す全能とも言える存在。
その考えはアイリス達にも及ばず独自の思考を以て世界を見守っている。
レベルは創造主故に数値化不可能。
天界:天使と神が住まう第3の世界。
輪廻転生を司り、天使以外は死した者しか訪れられない神聖な世界である。
しかし、現在の地上界と魔界の戦いに全く関係が無い訳では無く、寧ろ根深い部分にまで関わってる。
この世界の賭け事や娯楽:この世界の賭け事は我々の世界の賭け事に似通った物が多く、顕著なのはトランプ系等である。
他にも娯楽としてチェスや様々な物が存在する。
次回もよろしくお願い致します。




