第17話『誓いの翼、結束する』
皆様こんにちはです、第17話目更新でございます。
今回は敗北後のエミルの心境やロマンがもう1人の主人公の立場を発揮します。
では、本編へどうぞ。
馬車に揺られて2日が経過し、エミル達はミスリラント本国の最大の港ジルコンに辿り着く。
其処はエミル達が本国に入国した港より更に大きく、船の大きさも数も段違いであった。
これにはロマンも初めて見る物に口を開けながら周りを見渡していた。
「おいロマン、田舎風吹かせてる暇があったらこの船に乗るぞ‼︎
フィールウッド国までの直行船だ、早く乗れ‼︎」
「わっ、ごめんアル!」
周りの船を見渡していたロマンだったが、それに気を取られ過ぎた為か他の仲間達と逸れそうになり、アルが大声でロマンを呼びフィールウッド国への直行船に共に乗る事が出来た。
そうして船室で一旦集まり、全員で盗聴防止結界内で改めて目的確認となった。
「じゃあ改めてだけど、私達の目的はフィールウッド国へ行き賢王ロック様達と謁見、珍しい泉やアレスター先生の遺物の閲覧。
これを並行してやって魔族シエルが漏らした楔の泉や限界レベル250の真偽確認や事実なら泉の防衛策構築と限界レベルの突破をするわ、良いわね?」
「うん、大丈夫だよ〜エミル!」
エミルは改めての行動方針を説明すると、サラが1番に同意し、他はサラの勢いに負けて頷く形になった。
エミルとしてはアレスターの死に関連する事の為、姉として知りたいのもあるのだろう。
この爛漫な元気さの裏にはそんな悲しい感情があるのだとロマン達は悟り黙って同意していた。
「うん、それじゃあ後は解散ね。
皆これから5日間の船旅で英気を養おうね」
そうして同意を確認したエミルは盗聴防止結界を解除し、誓いの翼は負傷した身体を休めながらの船旅になりそれぞれがロマンとアルの船室から女性陣の船室に戻り、船が出港する時を待っていた。
「(………そう、あんな夢が現実になるのはゴメンだから…)」
「(…エミル?)」
その直前にエミルは自身が見た悪夢を思い出し、あの内容が現実の物になるのはゴメンだと考え、使命感と…若干の恐怖心を胸に秘めながら船室を後にする。
その後ろ姿にロマンは何かを感じ、彼女を目で追うが手を伸ばそうとする前に船室にはアルと2人で残されてしまう。
「何かあったのかロマン?」
「………うん、何か………何時もの勢いが無くて。
それでエミルに何か声を掛けないとって…」
アルはロマンの様子から何かあったのかと声を掛けると、本人はエミルに何か声を掛けないと…そう言ってドアの方を見続け、船室は静寂に包まれる。
そうしている内に船が出港したらしく、船全体が揺られ始めるのだった。
それからロマンはサラやルル、アルにも協力してエミルに話し掛けようとしたが、その度に間が悪く話し掛けられず船旅2日目になり、その間に誰1人としてまともに彼女に話し掛けられなかった。
「あ〜もう、何でなの〜!
何でエミルに話し掛けようとしたら向こうは用事があったり、こっちに用事が回って話し掛けられないの〜⁉︎」
「………間が悪い、なんてレベルを、超えて…いますね………」
テーブルに突っ伏したサラやフードを被ったルルはこの間の悪さに嫌気が刺し、食事も別々に摂る等明らかにエミル側から避けられてる様な感覚を覚え、現在の昼食時もアルが不機嫌に酒を飲んでいた。
「たく、俺様達は仲間だろ?
なのに何故避けやがるんだエミルは⁉︎
おいロマン、お前何とか声を掛けるタイミングを図りやがれ!
サラやルルでダメなら俺様達じゃタイミングが合えばなんて言ってられねぇ、お前が何とかしろ!」
「うん…僕もそのつもりなんだけど………何か、上手く噛み合わないんだよね…」
アルはコミュニケーション能力の高いサラやこう見えて話にはグイグイと行くフードありのルルでさえもエミルと話が出来ず彼等ではお手上げとして協力を求めたロマンに堂々巡りで出番を回されるが、ロマンも肉料理を食べながらタイミングが合わないと溢し全然上手く話をする場面を見つけられずにいた。
「うぅ〜、何だか誓いの翼が結成早々に解散の危機みたいな雰囲気になってるよ〜う!
ねぇルル〜、何か良い案や予知は無いの〜?」
「…ごめんなさい、予知は任意で、見れる物では………。
………あれ、そう言えばこの海域は………」
サラはお手上げな空気を出しながらルルに無茶ながら何か案か予知は無いかと聞くが、矢張りと言うべきかダークエルフの予知は任意で見れる物では無い為ルルも俯いていた………が、俯いた影響で懐に仕舞った世界地図を見つけ取り出すと、船の進行ルートと現在の海域を計算し始め、1人で何か唸っていた。
「如何したルル、何か案が浮かんだのか?」
「…はい、恐らくですが………今日の夜に………」
アルはルルの様子から案が浮かんだのかを問い、サラやロマンも様子を見るとルルは自身が知る『反則情報』からエミルが今夜何をするのかを予測し、その反則情報の内容が分からない様にしながらロマン達に予測を伝えると、ロマンもそのタイミングしかないと感じルルの予測に思い切って乗っかろうと思っていた。
そして現在の場所は………門がある遺跡群に近い海域であり、夜に最接近する航路を船は取っていたのだった。
その晩、エミルは甲板に出て望遠鏡で門の遺跡群を覗き見ていた。
500年前に自身の手で封印した門。
其処から溢れる瘴気や暗雲からその時の場面を思い出し、そして溜め息を吐きながらある事を考えていた。
「(…アレスター先生の死やあの悪夢で麻痺していた感覚が戻った、500年前に常にあった隣人達の理不尽な死…。
そして何より500年前に私が取った行動………それが最善策と思って、私はロックやロア達に…)」
それは500年前にあった魔物や魔族達に仲間や友の命を奪われる理不尽な蹂躙、それにより生まれる喪失や絶望、哀しみ。
エミルは…ライラはそれを防ぐ為に縛られし門使用を踏み切り、そして転生魔法により現代へと再び生を受けた。
だが…特にあの悪夢を見た時から生まれた感情、それは誓いの剣の皆に同じ絶望を自らの死で与えてしまった、その明確な後悔の念であった。
「(あのアザフィールやシエル達の実力差と完敗、そして悪夢…それで漸く私は私の犯した過ちに気付いた、気付いてしまった。
自分の命を勘定に入れなかったから気付けなかった、リリアナ達に刻んでしまった哀しみや絶望。
そして今度はロマン君達を死に掛けさせて私は…。
なら私は、ロマン君達を死地に追いやるとんでも無い過ちを…⁉︎)」
エミルはライラの時から自身の生命について軽薄で、勘定に入れず常に無茶をして来た。
それをロア達に咎められた事もあるが結局そのまま突き進み500年前の最期に至った。
その際に遺してしまった仲間達に絶望感を与えてしまったのでは?
そしてアザフィールやシエルの規格外なレベル差に今度はロマン達を自身の軽はずみな行動で死に追いやるのではと悪夢を見た時からその恐怖心が芽生え、遺跡群を見た瞬間それが膨らみ今まで考えなかった重圧に潰されそうになっていた。
「…エミル」
「っ⁉︎
ロマン…君…」
そんな重くのし掛かる負の感情に思考が支配されそうになった時、背後から声が掛かる。
それは現代の仲間であり自身が見出した勇者ロマンである。
そしてそのロマンから離れた位置にはアル達も居り、全員エミルを心配してその様子を見に来ていたのは彼女にも分かってしまう。
「あ〜、何か心配掛けたみたいね。
でも大丈夫だから心配しないで良いよ。
さ、船の中に」
「待ってよエミル!
…そんな辛そうな顔をして、大丈夫な訳無いでしょ⁉︎」
「…辛そ、う…」
エミルはロマン達の顔を見て作り笑いをし、心配せず船内へ戻ろうと言い掛ける。
だが、それをロマンが許さず腕を掴み彼女が辛そうであった事を伝える。
それを聞いたエミルはその言葉が深く刺さり立ち止まってしまう。
「…ルルから聞いたんだ、この時間帯に多分エミルは遺跡群…門を見て何か1人で抱え込んじゃうんじゃないかって。
それも全部、あの4人組の魔族が関係してるよね?
ねぇ、それなら僕達にもその辛さを教えて分けてよ、その為の冒険者パーティ…誓いの翼なんでしょ!」
「ロマン君…」
ロマンはルルからこの時間帯に此処に来て何かを抱え込むと聞き、それも内容は魔族シエル達が関わるとロマンはエミルが自身達を避け始めた事から考えに至っていた。
そしてその鬱屈とした感情を自分達にも分ける様に叫び、その為の誓いの翼だと言われ、エミルはその仲間思いで真っ直ぐな眼差しに誤魔化しが効かなくなり、諦めた様に甲板の背凭れに腕を掛け、遺跡群を見ながら口を開き始めた。
「…私さ、悪夢を見たんだ。
あのアザフィールの攻撃で皆を助けられず、そしてあの遺跡群から魔王が出て来て地上界を滅ぼされる夢を」
「…そう、なんだね」
エミルは詳しい内容は省きながら夢の内容を話し、ロマンや離れて聞いているサラ達はそんな悪夢を見ていた事を此処に来て初めて知り、あの敗北が自信家のエミルに深い傷を負わせたと考え、エミルの前世を知るルルはもっと複雑な理由があるのだと思いながら次の言葉を待っていた。
「それでね、私は夢の中であのシエルにこう言われたんだ。
これがお前達の限界だ、お前に惑わされてこうなった。
偽善者にして愚者エミル、お前が自らの愚かさを見ず突き進んだから死なずに済んだ皆が死んだ。
その結末を胸に刻みながら魔族が地上界を支配する様を見届けるがいいって」
エミルは更にライラである事を伏せながらも夢の中のシエルに言い放たれた言葉を告白し、その一言一言を告げる度に夢の中のシエルが向けた失望の眼差しや味わった絶望感が胸を締め付け、更にロマン達の死の光景や前世を含めた自身の愚かさを認識して行きその表情が曇り始め、腕も震え始めていた。
「…それで、エミルはその夢を見てどんな感情が1番大きかったの?」
「えっ、ロマン君…?
…恐怖、皆を失う事や、地上界で知り合えた人や全てを喪う事…それが、怖いって…」
するとロマンはその夢の中で何の感情が大きくエミルを支配したのか彼女に問うと、エミルはロマンを真っ直ぐ見ながら皆を喪う事が怖かったのだと伝える。
確かにエミルが感じた自己嫌悪の感情は全て恐怖から来ており、それは嘘偽り無き告白であった。
それを聞きロマンは…笑みを浮かべながら口を開き始めた。
「そっか、やっぱりエミルも同じだったんだね」
「えっ?」
「僕も、あの時アザフィール達を前にして…怖かった、逃げ出したかった。
けれど、エミル達を置いて逃げるなんて僕には出来なかった。
だってエミル達の期待を裏切るなんて真似は出来なかったし、何より………エミル達を喪うのが怖かったから。
だから、僕は…」
ロマンはエミルが同じだと言い放ち、それを聞いたエミルは突然の事に惚ける。
ロマンの言を思考に起こすと、如何やらアザフィール達の威圧感に怯みあの場から逃げようとも考えたらしかった。
しかしロマンはエミル達から受けた期待を裏切れず、そしてその仲間達を喪うのが怖かったからこそ前に出て盾を構えたのだと言う。
それらを話す時のロマンの手はエミル同様に震えていた。
「だからさ、エミルは仲間想いで優しくて、それでいてリーダーらしく自信家で…でも怖い物は怖くて…根本からして僕達と同じくお互いを想い合う人なんだよ。
だったら、怖いって想いも僕達に分けて欲しいんだ。
それが、仲間でしょ?」
ロマンはその震えを押さえながら今まで自身が見て来たエミルの人物像を口にして行き、アル達も見ながら互いを思い合える者だとし、その上で仲間であるなら怖いと言う感情も共有しようと苦笑しながら自身が信じる『エミル』に想いを伝える。
それを聞いたエミルは自身の前世を含め、その半分以下しか生きていない目の前の弱気な、しかし確かな勇気を持つ勇者に諭され少し俯き、そして全員に向き直る。
「…そう、よね。
私達は誓いの翼…苦楽を共にする仲間………ごめんなさい、私、皆を勝手に道を決めて突き進んで喪う事に勝手に怯えて、皆を避けちゃった…」
「僕達なら大丈夫だよ、エミルのそう言う部分も含めて支え合うのが仲間なんだからね。
そうでしょ、皆?」
「…まぁな」
エミルは自身の弱さにより仲間達を避けてしまい、更に勝手に仲間を喪う恐怖に怯えていた事を誓いの翼の仲間達に告白しながら謝罪する。
それをロマンはそのエミルの弱さも含め支え合うのが仲間だと口にしながらサラ達の方に向く。
するとサラは和かに手を振り、ルルは気恥ずかしくなりながら頷き、アルもそっぽを向きながら肯定していた。
「さっエミル、船室に行って作戦会議をしよう。
今度はアザフィール達にも負けない様に、これからの事をきっちりと話し合おう?」
「…そうね、ええロマン君、サラ、ルル、アル!
もうあの理不尽の権化みたいな連中に一泡吹かせる為に色々会議するわよ!」
「あは、何時ものエミルに戻ったね!
オッケー、夜中まで作戦会議をしよ〜う‼︎」
そうして『仲間達』に自身が抱いた物を告白し、漸く胸の中にあった恐怖心を拭い去る事が出来たエミルは何時もの調子に戻り作戦会議をしようと高らかに叫ぶとサラもルルもアルも、そしてロマンも自分達が知るエミルに戻った事を喜びながら船内に戻り始める。
「…ありがとうロマン君、私の弱さとかを受け止めてくれて」
「それは僕もだよエミル。
君は僕を優しさと勇気を持つ勇者だって言ってくれてるから。
だから、これはお互い様だよ」
「…ええ、そうね」
そうして船内に戻る途中でエミルはロマンにありがとうと口にすると、ロマンもリリアーデで自身を真の勇者だと信じたエミルに感謝しか無く、故にお互い様だと口にして船内へ戻った。
そうしてロマンとアルの船室に再び集まり盗聴防止結界を発動させて5人の作戦タイムに入る。
「それじゃあ作戦なんだけど、名あり魔族の中でもレベル230が2人までなら今の私達なら苦しいけど相手に出来る、これは共有して置くべきね」
「ならそれ以下の奴等なら其処まで物量で来られなきゃサックリ勝てる訳だな?」
「ええ、その認識で間違いないわアル」
先ずエミル達は自分達のレベルならレベル230の名あり魔族2人までなら相手出来るレベルと魔法、技の熟練度を持っているとエミルは豪語する。
其処にアルも物量で攻められなければそれ以下の魔族に勝てると発言すると此方もエミルは肯定する。
それ等を共有し合い、次にフードを取ったルルが次の議題に入る。
「ならアギラは?
奴のレベルは280と聞くわ。
今の私達では勝てないと思うけど?」
「それはそうね、ええ今は勝てない。
レベル250になれればアギラ1人ならギリギリだけど勝てると思う…こっちも無事に済まない可能性を考慮しながらなら。
ただレベル220から私達地上界の者はレベルが上がり辛くなるって書物にあったから…確実に勝つ為にはやっぱりアレスター先生が掴みそうだった物を私達で成すしか無いわ」
ルルから現段階で行く先々で罠を張ったアギラ1人に勝てないと言われるとエミルはあっさり肯定し、レベル250になれればアギラ『1人ならば』犠牲を考慮してギリギリ勝てる様になる可能性が出ると発言する。
しかしエミルは前世の経験からレベル220から先は中々レベルが上がり辛くなる事を書物で見たと話し、これが地上界の者の限界レベルに近付く事だと内心で考察していた。
そしてアレスターの掴み掛けた物を自分達で掴むとも話す。
「ならアレスターの坊主の遺したもんを見る為に賢王ロックに会うのは絶対だな。
予言者リリアナと一緒に見た珍しい泉の件も聞くならな」
「ええ、先生の遺した物とその珍しい泉がフィールウッド国に一緒にあったのは僥倖よ。
その泉が楔の泉なら魔族から守る方法を見出すのも並行出来るから尚更ね」
そしてアルもアレスターが遺した物と珍しい泉の確認は絶対だとし、エミルも肯定しながら楔の泉を守る専用魔法を作る事も考慮しながら船室からフィールウッドの方角を見ていた。
その発言と目には既に恐怖心は拭い去られ、自信家のエミルが完全復活していた事を全員に知らしめていた。
するとサラが手を上げ質問を始める。
「はいはいはーい!
じゃああのティターニアとティターン、アザフィールとシエルの4人組に会ったら如何するの?」
「うん、あんなの相手にしてたら生命が幾つ有っても足りないから逃げるが勝ちよ逃げるが。
転移魔法で300キロ向こうに逃げ続けるわ。
ただ追って来た場合を考慮して隠密用のアイテムやら分身魔法やらを駆使して全力で逃げるわ。
…通用するか分からないけど」
サラはシエル達4人組に会ったら如何するかを質問すると、エミルは風の魔法の1つである分身魔法や隠密アイテムを駆使して全力で逃げると恥ずかし気も無く宣言する。
しかしアザフィールの1撃を受けて全員死に掛け、その上にまだシエルが控えている為妥当な判断だとして全員納得していた。
逃げ切れるかは別問題としていたが。
「じゃあ纏めるとフィールウッドでシエルの言った限界レベル突破や楔の泉探索をロック様達の下でする、シエル達にあったら全力で逃げる、こんな感じで良いよねエミル?」
「ええ、そんな感じよロマン君。
話の纏めありがとうね」
最後にロマンが話の纏めに入り、エミルも概ねOKを出し作戦会議(特にシエル達4人組に関して)は終わり、全員がそれ等を共有し終わりエミルは一呼吸入れ、全員を見渡した。
「皆、敵は500年前の魔族を上回る強さを持つ恐ろしい存在よ。
でもね………不思議と皆なら超えられる、必ず魔王を倒せるって予感がするの。
私はこの予感を信じて、私は皆と一緒に何処までも行くわ!
だから、最後まで頑張るわよ、無理せず無茶を壊しながら‼︎」
エミルはアギラを含め敵が500年前の敵を上回る事を改めて告げ、それでもなおこのメンバーとならそれ等を超え、魔王を倒す予感がするのだと口にする。
最後に彼女の信条たる無茶はしても無理はするなも同じく口にしながらロマン達を鼓舞する。
その反応はと言えば。
「ガッハッハッハッハ、心配すんな!
このアル様が無理を無茶にしっかり変えてやるぜ‼︎」
「うんうん、無理したら身体に毒だからね〜!」
「但しエミル、無茶振りも程々に」
「あ、あはは…でも、皆同じ気持ちだから前を向いて行こう、エミル!」
それぞれ無茶に飛び込み押し通る気満々でエミルに言葉を返していた。
ロマンも苦笑しつつも前を向き行こうと言い反対せずにエミルのガンガン行く事に賛同している事を示し改めて誓いの翼の結束力が深まり始めていた。
「うん…じゃあ皆、作戦会議終了!
この後はしっかりと休みながらフィールウッドまで行くわよ、じゃあ解散!」
『おお〜‼︎』
「お、おお〜!」
最後に作戦会議終了と解散をエミルが宣言して全員に休む事を言い渡す。
それに対してサラ達は元気に、そして真っ先に返事し遅れてロマンも返事をすると盗聴防止結界を解除し、女性陣は自身達の船室へと戻って行った。
「…ふう、良かったな。
ウチのリーダー様の機嫌が直ってよ」
「うん、そうだね。
じゃあアルおやすみ」
その後ろ姿を見送りながらアルはエミルの機嫌が直った事を彼なりに気に掛けながらロマンに話すと、短く会話を交わした後消灯し、船に揺られながら2人はベッドの横になり眠りに就くのだった。
この時ロマンはエミルと初めて出会った時の事を夢に見て、その時からずっと自分を信じてくれる彼女には感謝しかないと思いながら夢の中であの時の問答を繰り返すのであった。
「んん〜…面白く無いですねぇ。
ちょっとシエルさん、ライラの転生体もその仲間達も完全復帰してフィールウッドに向かってるじゃないか、これは如何言う事かな?」
「私に聞くな、アザフィールのあの1撃で全て決したと私は思ったんだ。
しかし存外しぶとい様だ、誓いの翼を名乗るだけはある」
その船から離れた位置の小島にて、千里眼を使いエミル達が完全復活したのを気に食わないアギラはシエルに対し捲し立てていたが、当のシエルは右から左に流しその話を聞いている様子は無かった。
アギラはその態度に血管が浮き出ており、しかし此処でこの女に挑んでも神剣ライブグリッターの対となる『魔剣』を持つ魔界1の剣士にしてアザフィールの弟子であった者を殺せる訳が無いとして少し堪えていた。
「…ん、くくく、君が使命を怠慢しあの勇者達を野放しにしているのは分かったよ。
ならシエル、この事を魔王様に報告させて」
「その『魔王』様からの伝言だ。
『何時になったら楔の泉を見つける、貴様の愉快な計画とやらの決行は未だか?』との事だ。
今報告に戻れば確実に首が飛ぶのはお前の方だぞ、アギラ?」
「なっ⁉︎
ぐっ…」
アギラはシエルの態度から崇拝する魔王に彼女の行動を耳に入れ、その首を飛ばそうと画策しようとした…が、逆にシエルに魔王からの伝言を伝えられてしまい今魔界に帰れば生命が無いのは楔の泉発見に至らず、更に自身の計画を実行しないアギラ自身だと気付かされてしまい何も言えなくなりながらシエルを睨んでいた。
「それじゃあ私はダイズの使命を少し手伝ってくる。
精々その策とやらで地上界を混乱させられる様に祈って置くとするよ、アギラ?」
シエルは最後にダイズ側の魔王から与えられた使命の手伝いをすると宣言し、その軽い足取りと台詞を言い放ちながら転移魔法で恐らくダイズの近くに転移して行った。
それ等を見て聞いていたアギラは………完全に切れて島の木々に大熱砲を撃ち込み火災を発生させていた。
「がぁぁぁぁぁぁぉ、シエルシエルシエルゥゥゥゥ‼︎
たかが『魔剣』を持つだけで魔王様の幹部になっただけの女がぁぁぁ‼︎
私を苛立たせんじゃねぇぇぇぇぇ‼︎
はぁ、はぁ、はぁ………良いだろう、計画実行と楔の泉破壊をしてやる‼︎
それでお前が吠え面をかく姿を嘲笑ってやるわっ‼︎」
アギラは周囲の木々を燃やし尽くした後シエルへの怨嗟の言葉を口にし、そして一通り辺りを燃やし尽くした後自身の与えられた使命を果たすべく転移してその場から消えるのだった。
その思惑はシエルに屈辱を与えると言う余りに稚拙で、しかし彼女に対する恨みを滲ませる物であり明らかにシエルを蹴落とそうとしているのがこれを誰かが見ていれば分かる物だった。
そして後に残ったのは灰と焼け落ちた木々がある小島だけだった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
エミルも人間の為、転生魔法を使う道を選んだ事でかつての仲間達を傷付けたか、シエル達の強さにロマン達を死地に追い遣ってないかと感じたりします。
しかしロマンやサラ達のフォローのお陰で少しは立ち直る事が出来ました。
さて、今回はシエルの更なる情報開示をします。
シエル:エミル達に怪物認定された魔族の将。
腰には漆黒に染まったオリハルコンソードを装備しているが、それ以外にも神剣ライブグリッターの対となる魔剣に選ばれた者。
アギラはその立場や力を妬み、ダイズはその力に狂戦士としての血が騒ぎ何度も挑む等評価が他の2人で二分化している。
そして矢張りエミル達に何等かの期待をしている様だが詳細は不明である。
次回もよろしくお願い致します。




