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転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。  作者: ”蒼龍”
第1章『旅立ち編』
13/49

第13話『エミル、内緒話しをする』

皆様こんにちはです、第13話目更新でございます。

今回はエミルが誰かと内緒の話をします。

その誰かとどんな話をするかお楽しみに下さいませ。

では、本編へどうぞ。

 エミル達はミスリラント領から本国行きの船に乗り、1日でその大地に足を付けた。

 アルは戻ってきたぞ故郷と言わんばかりに空気を吸い、サラやルルももしフィールウッドに帰れば同じ事をするだろうと考えていた。


「ふう、懐かしの鉄と、砂の臭い。

 帰って来てやったぜ、この俺様がよ!」


「あ、よう兄弟元気してたか! 

 俺に会えなくて寂しかったか?」


「はっ、本国に帰って会うのがお前か『ゴン』、ああ元気にしてたぜこの野郎! 

 前に貸したメタル鉱石の分を早く返しやがれよ!」


 アルが生まれ育った本国の臭いを嗅ぎ、帰郷したと思いを馳せていた。

 そんな所にロンと呼ばれたドワーフが馬車に乗りながらアルに声を掛け、如何やら2人には貸し借りがある間柄らしく軽口を互いに叩きながらロンの馬車は鉱石を運びながら何処かに行ってしまった。


「アル、今のは?」


「ああ、アイツはゴン。

 ズボラでやや間抜けだが鍛治職人としては真面目で実直な奴だぜ。

 それと、アイツが兄弟っつったのは俺様達鍛治職人は皆兄弟の精神をゴッフ(ジジイ)から叩き込まれたからだぜ? 

 さて、5人用馬車を使ってこの港から離れるぞ」


 ロマンはゴンに付いて聴くとアルは軽めに説明し、更にゴッフが職人達叩き込んだ教え、鍛治職人は皆兄弟と言う精神から兄弟と呼ばれた事を全員に教えると、アルは早く馬車を借りて港から離れる事をエミル達に告げるとエミル達も頷き行動を開始する。


「すみません、5人用の馬車を貸して下さい」


「はいよってアルさん! 

 何だあんたらアルさんの知り合いなのか〜、料金はオマケしとくよ!」


「流石アル、この国には自分を知らない奴は居ないって毎日自慢してだだけはあるね〜」


 エミルは馬屋に向かうとその馬屋の主人もアルの顔を知ってるらしく、通常よりも料金を安くして馬車を快く貸してくれていた。

 それを見たサラはアルが毎日自慢していたこの国に自分の顔を知らない奴は居ないと言う話を思い出しながらアルを見ると、そのアルは如何だ思い知ったかと言わんばかりの表情を見せていた。


「よし、じゃあ最初に向かうのはゴッフェニアとこの港の間の街、2番目に大きな都市の『セレン』よ! 

 其処で廃坑内のミスリルゴーレム狩りの依頼を見つけるわよ!」


「なぁに、あの忌々しいゴーレム共が徘徊して廃坑になった場所は沢山ある、ミスリルゴーレムがうじゃうじゃ居る廃坑だってあるだろうさ! 

 そいつらを片付けりゃ鉱山も取り戻せてレベルアップを図れる、俺様達も職人達もウハウハだぜ!」


「じゃあ皆様、セレンに行こう!」


 エミルは地図を広げ、現在の港町とゴッフェニアを間に挟む2番目に大きな都市セレンに向かう事を決め、馬車に乗り込み始めると同時にアルはゴーレムの所為で廃坑になった鉱山が大量にあると告げ、其処からゴーレムを排除すれば職人達も喜ぶとしてエミルが提案したミスリルゴーレム狩りに乗り気だった。

 サラやルルからも反対意見が無い為ロマンが最後に号令を掛けて馬車が港から荒野へと向かい始め、誓いの翼(オースウイングズ)はセレンへと向かい始めた。




「セレンまでは馬車で2日は掛かる、この国は昼は暑く夜は冷えるから水の用意と焚き火をして馬を冷えさせない事も重要だぜ」


「それからギルド協会の情報屋にも会ったら一応ライブグリッターの話をしてみようよ、もしかしたら良い情報があるかもだし」


「…セレンに着くまでは………それが、良いですね…」


 馬車で移動している際にエミルに対してアルが昼夜の寒暖差がある為水と馬を冷やさない為に焚き火を欠かさない事を忠告され、サラからはギルド協会の情報屋に会ったらライブグリッターの事を話してみる事を提案され、ゴッフに聴くだけでなくそちらの線も当たる事もサラから出た事は良いと思い、自分1人が引っ張るのでは無く皆で知恵を出し合う事こそ冒険者パーティと思いながら耳を傾けてていた。


「サラ達の案も良いかもね、エミル」


「そうね…って、早速情報屋発見! 

 聞き出してみるわよ!」


 ロマンもサラ達が出した案を良いかもと話し、彼もまた冒険者パーティとしての本当のあり方を理解しつつありエミルはそれが嬉しく思いながら手綱を握っていた。

 其処に噂をすれば影と言う言葉通りにギルド協会の情報屋が現れ、エミルは馬車を止めると情報屋の馬車が横に来るのを待った。

 すると情報屋もエミル達を発見し馬車を止める。


「おや、アルさんが居るパーティ…と言う事は貴女達が誓いの翼(オースウイングズ)ですね、魔王討伐を目指す冒険者パーティの!」


「流石ギルド協会直営の情報屋所属なだけあって耳が早いですね。

 はい、そうです、我々が誓いの翼(オースウイングズ)です。

 早速なんですがある物の情報を伺いたいのですが大丈夫でしょうか?」


 情報屋はアルを見た途端、エミル達を誓いの翼(オースウイングズ)だと判別し、目的も知っていると言う情報屋らしい情報伝達の速さを見せる。

 するとエミルは早速ライブグリッターについて聴こうと言う流れになり、全員で情報屋に視線を向ける。


「王女殿下達やアルさんに期待されるとプレッシャーが凄いなぁ…聞きたい事とは何ですか?」


「あの、僕達は魔王を斃す為に伝説の神剣ライブグリッターを探して旅をしているんです。

 それで、その在処をギルド協会の情報屋として何か知りませんか?」


「ライブグリッター…あの伝説の神剣ですね。

 ギルドの古い情報になりますが確かに480年前まではその存在を確認が取れていました。

 当時のエルフの協会職員が初代勇者ロア様が携えていたと記録しておりますから間違いないです」


 情報屋はプレッシャーを感じながらもどんな情報が欲しいかと聞いてくると此処でロマンがライブグリッターについて笑われる覚悟で探している旨を伝え、何か知らないかと問うと、情報屋は古い情報として480年前にエルフの協会職員がロアが確かに携えていたと話し、笑われる所か存在証明がなされ一気にロマン達は伝説は実在していたとして笑みを溢した。

 対してエミルはロアの性格ならずっと持っていても可笑しく無いと思いながら話を聞いていた。


「そ、それでそれ以降は? 

 ライブグリッターは一体何処に行ったのでしょうか⁉︎」


「あー、それがですね…460年前、ロア様が80歳で没したその時にライブグリッターの管理についていざこざが発生してその際に紛失と言う記録がなされています。

 ロア様が振るった伝説の神剣なのに扱いが雑だと思いませんか? 

 その所為で当時の関わったギルド協会職員は免職を喰らい、その元職員達も人間なら亡くなり、長寿の者は行方しれずとなったみたいです。

 すみません、こんな情報しか無く…」


 ロマンは更にライブグリッターについて食い下がるが、情報屋は460前、ロアが没した年に起きたいざこざにより紛失と言う神剣にあるまじき扱いをしたことを語り、関わった職員は人間なら寿命で、長寿の者は行方不明となりライブグリッターの在処を知る者は居ないと話した。

 最後に一言謝罪をしながらエミル達を一瞥する。


「そう、なんですか…それじゃあ情報の対価を」


「ああいえ、あんなみっともない情報しか無いのでお代は結構です。

 では王女殿下達と勇者さん、魔王討伐を果たして下さいませ」


 ロマンはガッカリした様子を見せるが、それでも情報は出た為その代金を払おうとした。

 だが、情報屋は代金は要らないと話し、そのまま一礼して馬車を走らせて行く。

 するとエミルも馬車を走らせ、更に先程の話を聞いていた事である事が浮かび、そして一言だけ口にした。


「嘘を吐きましたね、情報屋」


「えっ、嘘⁉︎」


「ええ、それも最後辺りに話したロア様が没した年にの件辺りが」


 ロマンは信じていた様子だったが、エミルは最後の方のロアが死んだ年に起きたいざこざを聞いている際に、ほんの少し情報屋の顔の仕草…作り笑いに違和感を持った為である。

 しかもその作り笑いはそれと無く、自然過ぎる作り笑いだった為ロマンの様に見逃す者が大半と言う余りにも上手過ぎた物だった。


「え、じゃあエミル、情報屋さんが嘘を吐くメリットって何なの?」


「それは分からない…ただ、あの情報屋個人で嘘を付けばそれこそギルド協会の信用に関わる…となると可能性的には…」


「…ギルド協会で、ライブグリッターの在処は………秘匿する、様になっている…とか…?」


 サラはなぜ嘘を吐いたかメリット面をエミルに聞くが、エミルも万能では無い為他人の考え等は分からない。

 しかし、『ギルド協会の情報屋』と言う組織の人間であるならある程度は可能性を絞り込めるとして口にしようとした。

 そんな時ルルがエミルの代弁をして、ギルド協会全体でライブグリッターを秘匿する箝口令が敷かれている事を話すと、エミルは静かに頷きそんな可能性がある事を示す。


「箝口令…でも何でそんな物を?」


「さあ? 

 ただ私なら魔族が現れる500年後の事を思って奴等に神剣の在処を教えない為に極一部の者しか知らない様にするし、なんなら150年前に出来た『あの国』に奪わせない様にするとか?」


 ロマンは箝口令と言う言葉に何故と聞くとエミルは自分ならばと言う条件で未来を見据えて神剣の在処を魔族に知られない様にする為、更に付け加えて150年前に出来た『国』の話をすると全員それぞれ違った反応を見せるが、共通点は『快く思っていない』事であった。


「あの国…魔族信奉者共が魔物に支配されていた大陸を魔物を操る術を身に付けて建国してセレスティアを始めとした4国と国交断絶しながら魔族が来る時を待つ馬鹿野郎共の国…『グランヴァニア』か」


「そう、グランヴァニアは魔王を倒し得る神剣の存在なんか許さない、壊してしまいたいとすら考える筈よ。

 だからそんな連中に漏れない様にする為にあれこれするわよ、私なら」


 アルは魔族信奉者の国、4国でタブー視されている禁忌の国家グランヴァニアの名を口に出すとエミルは肯定しつつ、そんな神剣を壊したがる連中に神剣の情報が漏れない様にする為にライブグリッターの在処は徹底的に秘匿する事を話した。

 但し自分ならばと言う条件を加えながらである。


「…でも、そうなら僕でもその案には賛成しちゃうかも知れない。

 ご先祖様が振るった伝説の神剣を盗られたり壊されたりしない様にする為に」


「…私も、です…」


「私も…そうしちゃうかなぁ〜?」


 すると話を聞き終えたロマン、ルル、サラはエミルが出した箝口令の予測について考えた結果賛成すると話し、アルも無言の肯定をするとエミルは500年後の世界には面倒な者達が面倒な…魔物を魔族の様に自在に操って国を作ったものだと考えながら空を見上げ、照りつける太陽に体力が減り始めた為馬と共に日陰に行き水分を補給し始めるのだった。




 それからその夜、全員が寝静まる時間にエミルは焚き火の前で魔力を活性化させ、魔法理論を構築しまた魔法を作り上げようとしていた。

 無論念話傍受魔法(インターセプション)を使いながら。


「…まだ、起きていたの…ですね、エミルさん…」


「あ、ルル」


 すると既に寝ていたと思っていたルルが起きており、皆を起こさぬ様な小声で名前を呼び合った後、ルルはエミルの対面側に座りながら話を掛け始めた。


「…あの、また…新しい魔法を………作っている、のですか…?」


「うん、結界魔法(シールドマジック)の欠点…『攻撃以外はすり抜ける』って物を補う為にちょっと手を加えてるの。

 ただ、1から10まで作る訳じゃ無いから其処まで時間は掛からないし、終わったら直ぐに寝るから安心して」


 ルルはエミルにまた魔法を作っているのかと聞き、それにエミルはYESを出し結界魔法(シールドマジック)の欠点…攻撃以外、例えばロープやそもそも武器を持った者がすり抜ける、更に自然の雷もすり抜ける欠陥点がある為、それを補うべく結界魔法(シールドマジック)に手を加えているのだ。


「(最も500年前の世界では敵が近付いて来れば死ぬから後衛に近付かせる前にやれが基本だったから余り気にしなかったけど、今は違う。

 今の時代は平和を謳歌してそんな殺伐と無縁に過ごした人が多過ぎる。

 魔族の襲来があった今、これをしないと大勢が死ぬ…必ず。

 だからこそ手を加えなきゃいけない、『魔族達や天災』を寄せ付けない様にする為に)」


 しかし500年前の時点で敵が近付いて来たら死ぬと言う死と隣り合わせだった為、そんな欠点は敢えて見過ごしていたが流石に500年後の世界にそんな事は無い為急いで手を加えているのだった。

 このまま手を加えねば将来的に大勢の人が死ぬ、その可能性を考えた為に。

 そして地上界の者以外を近付けない様にする為に魔血晶(デモンズクリスタル)を解析し、魔族や魔物の魔力の波長すらも読み取りそれを組み込む事でこの結界は完成するのだ。


「…流石はエミル、世界の命運を握りし子…いえ、『ライラ様の転生者』であらせられますね」


「…えっ?」


 するとルルはフードを取り、エミルに世界の命運を握りし子…では無く、過去の自分(ライラ)の転生者である事をハッキリと告げられ、驚きながらも盗聴防止結界(カーム)を張りながらルルの方を見ていた。


「私、予知は余り外さないとサラ達が言ってましたよね? 

 その予知で少し嘘を吐きました。

『ライラ様の転生体』と言う部分を世界の命運を握りし子に…何方でも意味は変わらないから嘘になってない嘘、ですがね」


「あちゃ〜、貴女の予知は本当にリリアナ譲りで外れじゃないよ………ちょっとショック。

 でも、なら何で14年前にそんな嘘を?」


 ルルは予知でエミルがライラの転生体だと見抜いてしまっており、それを言葉起こしする際に嘘を吐き、ライラの転生体だと言う事を意図的に隠していた様である。

 エミルはリリアナには事前に予知で見ても誰かは知らせない事を告げてた為誰にも知られてないと思っていたが、リリアナの娘の予知にまで引っ掛かった事に頭を抱えてしまうが、それなら何故そんな嘘をとエミルは尋ねる。

 するとルルは静かに話し始めた。


「私、お母様に言われたんです。

 もしもライラ様の転生者に出会う様ならそんなに畏まらず、ありのままの自分で付き合ってあげなさい、その方がライラ様も喜ぶと。

 だから、それに従い貴女がライラ様の転生体だと言う事を隠しました。

 そしてこれからも貴女の事を『エミル』と呼び続けます…他でも無い、私の仲間として」


 如何やらルルはリリアナに前以てありのままの自分で付き合う様にと言われたらしく、それを実行する為にサラやアルにすら嘘を吐き、あの2人もありのままの自分でエミルに付き合ってくれてたのだ。

 それを聞き、エミルはリリアナやルルには敵わないと思いながら一呼吸入れて話を続け始めた。


「そっか…リリアナと貴女には感謝しないとね。

 お陰で私がライラだったって事を周りに内緒にしてたのを助けられたみたいだから。

 ありがとうルル。

 …それで何だけど、その内緒話をしたって事は私からも対価で何か話をして良いって受け取って良いの? 

 勿論お互いの秘密として」


「ええ、勿論」


 エミルはルルに感謝しながら、自分が内緒にしていた事を此処で話した為自分からも内緒話をして良いのかと聞くと、ルルは勿論と答える。

 エミルは副産物の盗聴防止結界(カーム)が大助かりになる場面が来る日が早くもあるとはと思いながら話し始めた。


「ルル、貴女は人間とリリアナの間に生まれた娘、確かそうサラからも言われてたよね?」


「はい」


 エミルはライラの転生体と前置きしてルルに聞きたかった事…『ルルの出生やそれらに関わる事』を、自身の目と耳で確かめたかった事を此処で聞く、そう意を決して彼女の目を見ながら踏み込み始める。

 誓いの剣(オースブレード)で取り決めた事、リリアナの夫は誰か、ルルの父は誰なのかを秘匿すると決めた事をこの時は『ライラ』として聞く為に言葉を紡ぎ始める。


「なら、その父親の事を敢えて私はライラの転生体として聞きたいわ。

 貴女の父親は………私達誓いの剣(オースブレード)が関係を秘匿すると決めた人………『初代勇者ロア』、彼なのよね?」


「そうです、私はお母様とお父様…ロア様の1人娘です。

 なので端的に言えば、私はロマン君の遠いご先祖の1人娘になります。

 そして私自身も、魔法と絶技の両方が使える…つまり勇者としての資質は、一応あります」


 エミルはルルの父親が、リリアナの夫と秘匿されたロアである事を確認すると彼女は両手から小さな炎を出し、魔法と絶技が使える勇者ロアの血筋である事を証明して見せた。

 それらを確認したエミルは内心でリリアナとロアにおめでとうと思いながら更に話を続けた。


「ライブグリッターを渡した天使…『アイリス』が残した言葉、『神剣を振るう勇者の血筋を絶やしてはならない、それは魔王を倒せなくなる事を意味する』と私達に伝えて来た事。

 それに従い私達は各地にロアの血筋が残る様に子を儲けさせた…ロアが倒れた後にその跡を継ぐ誰かを世に残す為に。

 ただ、ロア本人はリリアナだけを愛したかったから2人の仲を裂く残酷な事をしたって私は思ってた…だけど、それでも2人の愛は変わらず、私達はリリアナとロアが婚姻を結んだ事を隠した。

 そしてその後に貴女が生まれたのね、ルル」


 エミルはリリアナとロアに負い目を感じる事…天使アイリスの言い付けとは言えロアにリリアナ1人を愛する環境を作れない様にした事をしたのを当時後悔し、謝罪しても仕切れない事をしたとさえ思っていた。

 所が、リリアナとロアの愛は変わらず最後には婚姻を自分達の間だけで周りに秘匿して結んだ事があり、其処から10年経過し漸くルルが生まれたのだと理解する。

 ルルもそれに頷きながらエミルをじっと見続けていた。


「そっか、2人の子なのね…良かった、しっかり愛し合った2人の間にこんなに可愛い娘が出来て…ああ、良かった…あの2人の愛がしっかりと形に残って……本当に、良かった…」


 エミルはリリアナとロアにしっかりと娘が出来た事を泣きながら喜び、そして出会えた事に運命的な物を感じながら自信家の彼女から想像出来ない程大粒の涙を流していた。

 その涙はそれ程ロアとリリアナの行く末を気にしていた証明にもなっていた。


「…あの、感涙に咽ぶのは良いのですが、私からライブグリッターの在処を聴き出そうとか考えないのですか? 

 ロアとリリアナの1人娘、知らない訳が無いと思わないのですか?」


 しかし此処でルルはエミルに自分にライブグリッターの在処を聞こうと思わないか、知らない訳が無いと言う現実的観点をエミルが泣き止むのを少し待ちながら聞き始める。


「うん、思わない。

 だって、あの2人の事だから貴女に在処を託しても黙ってる様に伝えるでしょう? 

 私がライラだったって事を黙る様に伝えたリリアナなら」


 するとエミルはあっさりと思わないと答える。

 その理由もリリアナとロアならルルにライブグリッターの在処を託しても絶対に漏らさない様にすると2人の事を知る者として答える。

 事実、リリアナはライラの転生体は誰かだと話す事は無い様に伝えていた為、その理論は屁理屈だが通る物であった。


「…では、これからゴッフ様にライブグリッターの在処を聞き出すのも無意味では? 

 私の父が、お母様の夫が誰かを此処まで隠して来た方達なんですよ? 

 それなのに行くのですか?」


「うん、直接的な在処までは流石に言わないだろうけどヒントは必ずくれるって信じてるから。

 魔王を斃したい、その想いが真実ならば…だって、同じ目的で戦って来た『仲間』なんだから」


 ルルはリリアナがそうならゴッフに聞きに行く事も無意味だと投げ掛け、なのに行くのかと『エミル』に聞くと、本人は在処を直接は言わないだろうがヒント程度はくれると信じていた。

 その理由をエミルは魔王討伐と言う同じ目的で戦って来た『仲間』だと、様々な思いを込めながら笑顔で告げる。

 それを聞いたルルは少しキョトンとしながらも根負けしたと思い、溜め息を吐きながらも苦笑していた。


「…よし、話してる間に結界魔法(シールドマジック)の改良型の構築完了と。

 名前は…単純に『結界魔法(シールドマジック)V』で良いかな? 

 と言う訳で行動方針は変わらずセレンに行ってレベル上げをして、其処からゴッフェニアでゴッフに話を聴きに行くわ。

 後ルルには申し訳無いんだけど、ライブグリッターを振るうのはロマン君って私は」


「それなら大丈夫ですよ。

 昔持った事がありますが、私では4割しか使いこなせませんでしたから。

 多分今現在でも6割が精々だと考えてますから、私もロマン君が相応しいと思ってます」


 そうして結界魔法(シールドマジック)Vの理論構築を完了し、行動方針は変えないと話したエミルはその後にロマンにライブグリッターを継承させる気も譲らないと話す。

 するとルルはあっさりと引き自分では使い熟せ無かった過去を教え、更にロマンならばとルル自身も考えている事を話2人は秘密を共有する友人となり2人で笑みを溢していた。


「じゃあルルにもこの魔法を万が一があった場合の為に教えるわね。

 リリアナの事だから絶技も魔法も一流になってねって天然なんだけど妙にプレッシャーを感じさせる課題とか出してそうだから問題無く貴女も使えそうだから」


「はい、お母様はそのつもりは無いんでしょうが、なんかその…ちょっと怖い雰囲気を出すんですよ、偶に。

 …結界の強度自体はIVと変わらず問題点を改良したみたいね。

 これならもしもの時は使えます、ありがとう、エミル」


 そしてエミルはルルにも結界魔法(シールドマジック)Vを教えながらリリアナの少し怖い部分を互いに話し合い、そのつもりがないのに何故怖いのかと思いながら会話に花を咲かせ、そしてエミルは盗聴防止結界(カーム)を解除してお互いに寝床に就き始めた。


「じゃあルル、おやすみなさい」


「…おやすみなさい、エミル…」


 こうしてリリアナの1人娘とライラの転生者はちょっとした内緒話を共有する共犯者になり、ルルは少しサラやアルにまた悪いと思いながらもこの話を胸の内に仕舞い、エミルもルルから聞いた事は漏らさぬ様に、自分から話すまでは言わない様にしようと思いながら眠りに就いた。

 そしてその夜、エミルは過去の自分(ライラ)の時の夢を見ていた。

 内容は他愛の無い、魔王を斃した後に何をしたいのかと全員で語り合った、そんな過去の夢を。




 それからエミルは朝起きた後、ロマンにも結界魔法(シールドマジック)Vを教えた後何事も無く馬車は街道を進み、3日目の朝にして遂にセレンに到着する。

 ロマンは本国に来た事が無い為かリリアーデやリーバ等を超える大きさの街に四方を覗き見し、エミルはライラックより少し小さいが荒野に似合う石造りの建物とあちこちから聞こえる金槌の音や鍛治特有の臭いに流石ドワーフの王が治める国の都市の1つだと感心していた。


「ガッハッハッハッハ、これがセレンの街並みよ‼︎

 見よ、石造りの建物、鍛治職人達の汗水垂らすこの光景を‼︎

 セレンとゴッフェニアは他の国の中央都市にだって負けてないぜ‼︎」


「凄い街並みだね、皆」


「そうだね〜、何度来てもこんな大きな街だと迷子になるかもね〜?」


 アルは故郷の国の第2都市を自慢げに語り、その鉄の臭いや巨大な街並みにロマンやサラは圧倒されながら馬車は馬屋に預かって貰い、其処からギルド運営の宿屋へと向かい始めた。


「よう兄弟、久し振りだな‼︎」


「腕は鈍ってないだろうな兄弟‼︎」


「ガッハッハッハッハ、俺様を誰だと思ってやがる‼︎

 ゴッフ(ジジイ)の弟子のアル様だぜ、腕が鈍る訳無いだろうが‼︎」


 その間に行く先々でアルは人間やドワーフに兄弟と声を掛けられ、ロマンは改めてゴッフの弟子のアルと言う存在の大きさを知り、エミルも流石頑固者ゴッフの弟子だと思いながら歩いていた。

 そしてギルド運営の宿屋『酒飲亭セレン支店』に辿り着き中へと入るとドワーフ達が昼間から酒を飲みながらも和気藹々とした空気が宿屋から漂っていた。


「おっ、アルの兄弟じゃねぇか久し振りだな‼︎

 おお〜い『キーラ』の嬢さん、アルの奴が来たぜ〜‼︎」


「えっ、あらあらアルさん、お久し振りですね! 

 横に居る方達はパーティメンバーですか?」


 すると客の1人がアルに気が付くと、宿屋の主人であるドワーフの女性キーラを呼び出す。

 そのキーラも料理を運びながらアルが久々にセレンに来た事を驚きながら、連れの4人がパーティメンバーであるかを確認して来る。


「おう、ついでにリーダーはこの魔法使いの女だぜ」


「はい、誓いの翼(オースウイングズ)のリーダー、エミルです。

 今回この街に来た理由ですが、この近くの廃坑になった鉱山でミスリルゴーレムが数多く徘徊していて、それの駆除依頼が無いかを確かめに来ました」


 アルはエミルがリーダーだと告げると1歩下りエミルに話し掛けろと合図を送ると、エミルは一礼をしてから誓いの翼(オースウイングズ)のリーダーだと話し、更に近場の廃坑でミスリルゴーレムを駆除する依頼が無いかをキーラに尋ね始める。


誓いの翼(オースウイングズ)…ああ、つい先日出来上がったパーティね‼︎

 ええありますとも、ざっと数えて5件、その内1番近いのはこの『ビーエ山』の廃坑に大量のミスリルゴーレムが徘徊してますよ! 

 魔王を斃したいならこの依頼を片付けないとまず無理ですから頑張って下さいね‼︎」


 するとキーラはカウンターに戻り、地図と魔法紙(マナシート)を取り出しその中でビーエ山の廃坑にミスリルゴーレムが大量発生していると話して依頼書を渡してくる。

 エミルはそれにサインしながらキーラも流石にギルド協会の一員である為エミル達誓いの翼(オースウイングズ)の目的を共有しているらしく、これ位を片付けられないなら無理と言いつつ笑顔で激励し、エミルもそれを重々理解している為頷いていた。


「何だ兄弟、何時から正義の味方になったんだよ? 

 魔王を斃したいのは其処のサラちゃんやルルちゃん位だったろ〜?」


「五月蝿ぇそんなんじゃねぇっての‼︎

 俺様の作った武具が魔族、更には魔王をぶっ斃した事の証を立てたいだけだっつうの‼︎」


 すると客の1人がアルを冷やかしに掛かると、アルは自分の作った武具が魔族や魔王を斃した証を立てたい…と、話してはいるがサラやルルは長年付き合っている経験から知っている。

 アルは仲間の義理人情に行動で応えるタイプだと。

 それが魔王討伐と言う大役になり客でもあり仲間でもある自分達を心配しての事だと。


「さて、キーラさん。

 ギルド協会にこの魔法を冒険者に流布して欲しいのですが良いですか?」


「魔法? 

 …あらあらあら、これはまた3つの新しい魔法を作り上げてしまうなんて素晴らしいですわね! 

 魔王を斃しい意気込みが良く伝わりますわ、ええ此方はギルド協会で冒険者全体に流布致しますわ。

 ただ…このレベル150以上で使える魔法は余り使える人が出ないと思いますけどね」


 そしてエミルは自身が作り上げた3つの魔法を流布するタイミングは此処だと、名ありの魔族の件もありそう感じながら術式を写した魔法紙(マナシート)を3枚を渡す。

 それを見てキーラはエミル達の熱意を感じ取り、ギルド協会に流布すると話しながら奥へ行き始めた。

 但し念話傍受魔法(インターセプション)は使える者が限られると話しをすると、エミルは内心そうじゃ無いと困ると思いながらその背中を見送った。


「さて、少し休んだら早速ビーエ山に行くよ皆! 

 幸い其処まではそんなに離れていないから馬車を使えば直ぐに着くから頑張って行こう‼︎」


「お〜‼︎」


「え、えと、お〜…!」


 エミルは地図確認を終えてビーエ山に着くまでは馬車で其処まで掛からないと話し、号令を掛けるとサラが真っ先に応え、次にロマンが戸惑いながら号令に応え、アルとルルも無言で応え、5人は馬屋に戻り早速ビーエ山に向かい始めるのだった。




 そのビーエ山上空にて、エミル達が向かう瞬間を見たアギラは連れて来た部下の1人に向き命令を始めた。


「では手筈通りに『例の魔物』で奴等を殺すか追い詰めろ。

 追い詰めた場合は貴様が残りを詰めに入りあの魔法使いと勇者から優先的に殺せ。

 そうすれば名ありの魔族に昇級させてやる、期待しているぞ」


「はっ、必ずやご期待に応えて見せましょう‼︎」


 名無し魔族にアギラは命令を下すと転移魔法ディメンションマジックで消え去り、部下の魔物は昇級が後少しで出来る為か張り切りを見せ、用意した魔物に命令を下し始めた。


「さあ行け、中のゴーレムが邪魔ならお前の好きな様にするが良い。

 そして『同じゴーレム種』でも格が違うと坑道内のミスリルゴーレムや今から来る奴らにそれを見せ受けてやれ…」


 その部下の名無しの魔族はアギラから預かった『ゴーレム』に対し命令し、そのゴーレムは悪意に操られた他の魔物と違う命令に基づき動き始めた。

 そして洞窟内のミスリルゴーレムを自身の使命の邪魔になるとして排除を開始した。

 ゴーレムは知能が無いと思われがちであるが、実は魔族に一度操られれば無機物から生まれた存在からは考えられない思考能力を身に付け、下された命令に邪魔な者は排除する忠実な僕程度に思考出来るのだ。


「そうだ、そうやって邪魔な奴は排除し、今から来る勇者と魔法使いを殺せ…ふふふふ!」


 そうしてアギラから手渡されたゴーレムの思考能力を見届けると名無し魔族も転移魔法ディメンションマジックでその場から離れる。

 そして残されたゴーレムはミスリルゴーレムから攻撃を受けても傷1つ付かない、ミスリルとはまた違った輝きを持ちながら強度の差でミスリルゴーレムを粉砕する。

 こんな事が出来る理由はただ1つ、このゴーレムはミスリルゴーレムよりランクが上の、最上位に分類されるゴーレムなのだからである。

 そして魔族はこれからエミル達が味わう地獄に心躍らせながらアギラに報告の為に『念話』をするのであった。




「っ、魔族の念話がある、しかも『ビーエ山に罠を張った』って奴等は話してる!」


「あぁん、俺様の国で小細工をしやがるのかぁ? 

 そいつは頂けねぇなぁ、その罠毎奴等を粉砕してやるぜ‼︎」


 しかしその念話はエミルにより傍受され、これから依頼で向かうビーエ山に魔族の罠ある事をロマン達は理解する。

 そしてアルは生まれ育った国で好き勝手される事を良しとせず、魔法祝印(エンチャント)を掛けたミスリルアックスでそれらを粉砕しようと高らかに叫び、エミル達もこれから待ち受ける罠に敢えて飛び込む様にし魔族の思い通りにはさせないと警戒しながら馬車を目的地に走らせるのであった。

此処までの閲覧ありがとうございました。

ルルの出自は滅茶苦茶由緒正しい血筋の子…予言者と勇者の実子でした。

しかし2人が夫婦関係の事等を誓いの剣(オースブレード)の間で秘密になり、ルルがロアの子と知るのは当事者だけです。

そして最後にまたしても不穏な影が迫りますが詳細は次回に。

では、今回はルルの更なる情報、魔法創造の難度について書きます。


ルル:予言者リリアナの娘にして実は初代勇者ロアの実子。

エミルの前世であるライラも2人が愛し合い、夫婦なのは知ってましたが自身の死後に2人の間に子が生まれたと知りエミルは喜びを隠せなかった。

更にルルは勇者の血筋の為魔法も実は使え、裏で熟練度を上げてたりした。

おまけとしてエミルの正体すら予知していたが、母の話や混乱を避けると言った様々な要素からこれを隠していた。

そして神剣の所在を知ってるか否かはまだ秘密である。


魔法の創造:魔法の創造は難易度が途轍も無く高く、元からある魔法を弄る程度ならギリギリレベルの高い魔法使いは出来るが、盗聴防止結界(カーム)念話傍受魔法(インターセプション)の様に1から10まで創るとなると魔法使いの才能に左右される。

ライラの才覚全てを受け継いだエミルならこれは可能であるが、他の魔法使いがこれをするのは最早未知の領域に足を踏み入れる物の為やる事は無い。


次回もよろしくお願い致します。

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