第11話『エミル達、誓いの翼となる』
皆様こんにちはです、第11話目更新です。
今回はエミル達の少し重要な話があります。
そしてその重要な話は今後も関わって来ます。
では、本編ではどうぞ。
【カン、カン、カン‼︎】
エミル達の滞在が決まり、鍛冶屋にアルが籠りその店主がアルが振るい上げ打ち付ける金槌とその音に耳を奪われながら、アルは先ずは先に直ぐに終わるルルの武具の修復から汗を掻きながら始めていた。
「ふう、ルルの戦闘スタイルは相手の防具の縫い目を狙うやり方で助かったぜ。
お陰で前衛で1番ダメージ少なかったからな、がこれならアイツ等が寝静まる頃には終わりそうだぜ。
さあ、ミスリルプレートは終わったから次は軽装ガントレット、レギンス、そしてダガー2本の順だ…さあ店主、火の魔法や溶けたミスリルの管理は欠かすなよ!」
「は、はい‼︎」
【ジュゥゥゥ、ジョワッ‼︎
ギリギリギリギリ、カンカンカンカン‼︎】
既にルルのミスリルプレートを修繕したアルは店主を即席助手にして簡単な火の魔法を浴びせて溶けたミスリルの温度管理等をやらせ、自身は常に持ち歩く鍛冶道具一式で溶けたミスリル鉱石を型に嵌めたり、冷やして固めたりルルの手に馴染む様に削り曲げたり、そして打ち付けるを繰り返し行い始めた。
「凄い、これが職人王ゴッフ様のお弟子様、アルさんの腕…‼︎」
その手際の良さ、シンプルながらも他者を魅了する職人の輝き、それをアルは放ちながらミスリルガントレットの修繕があっという間に6割も終わり始めていた。
店主はその職人芸にすっかり虜となり、温度管理をする傍らにそれ等を見て遥か高みの存在の鍛治を体験していたのだった。
一方宿屋ではエミルが風呂を入り終えた後部屋に戻り、その地上界の生物を不愉快にさせる光が漏れぬ様に仕切りや窓に布を被せ閉め切り魔血晶に魔力を集中して昼間にしていた事を更に続けていた。
これを一刻も早く終わらせる事がエミルの絶対にやらねばならない事であり、それは自身がはっきりと分かってやっているのであった。
「(今頃アルはルルの武具の修繕を終えて自分の武具の修繕に入った筈。
ロマン君の武器の鍛え直しは魔族の槍と打ち合ってあんな状態になっているから明日中掛かり通しにしないとならない筈)」
その中でエミルはアルの仕事作業進捗を予想しながらロマンの剣が1番最後に回されるとも思っていた。
それは『魔族の武器と打ち合った結果』、剣が更に酷いダメージを負った為鍛え直す範囲が広がり過ぎた為である。
無論何故そうなったかはライラの記憶と知識を継ぐエミルには如何なる要素がそうしたか確信が持てていた。
「(なら私も明日、休憩としてアルやルルの武具にも魔法祝印を掛ける事を聞きに行った後これに集中しよう。
そしてその間に必ず過去の私が残した課題を…)」
更にマルチタスクの思考はルルは兎も角魔法祝印嫌いなアルの武具にすら魔法祝印をする事を聞きに行った後にこの魔血晶へ行っている作業に集中すると決め、そしてロマンの剣が仕上がる間に必ず前世で終わらせられなかった課題を片付けると心に決めながら魔力を魔族の核に通し続けるのであった。
その翌朝、エミルは夜通しの作業の休憩に1階へ降りると、其処にはサラとルルと、そしてロマンが朝食を摂っていた。
それを見つけたエミルは同じテーブルの椅子に座り3人に話し掛け始めた。
因みに魔血晶は万が一に盗まれない様に首から下げている。
「ロマン君、サラ、ルル、おはよう!
ルルの武具はまだ帰って来ないかな?」
「あ、エミルおはよう。
うん、サラから僕の剣は多分大作業になるから今日に回されるって話だから先ずルルのが先に来ないか今こうしてご飯を食べながら待ってるんだよ」
如何やらアルはまだ鍛冶屋から戻らないらしく、ロマン達は朝食を食べながら彼が来るのを待っていたらしい。
エミルも朝食に焼きパンと玉子焼きと軽めの朝食を食べ、同じ様に席で待っていた。
「んぐ、んぐ…ふう、ご馳走様でした」
【ガチャ、キィィ】
「ようお前等、おはようだな」
そうしてエミルが朝食食べ終わりご馳走様の礼をした直後、かぼちゃ亭の戸が開き、外からアルが自身の鍛え直した武具を装着しつつルルの武具も持って来てルルの前までやって来た。
「ほれルル、お前の武具だ。
早く装備して来い」
「…ありがとう、アル…!」
早速アルはルルに武具を渡すと、彼女は2階に上がり鍛え直されたミスリルプレート等の防具やミスリルダガー2本を装備して1階へと降り、全員で周りに人が居ない屋外の開けた場所に出るとルルはフードを取り、身体をクルリと回転させた後腰に差したミスリルダガー2本を抜き、軽く振り回して感触を確かめると以前よりも更に手に馴染み身体の一部の様に感じていた。
「…うん、コレなら前よりももっと戦える。
本当にありがとう、アル」
「へっ、そう言ってくれるなら職人冥利に尽きるってもんよ。
そんじゃぁ俺様はロマンの剣を鍛え直しに行くからまた明日会おうか」
それからミスリルダガー2本を手の上で回転させながら鞘に収めると、ルルはアルに感謝の礼を口にするとアルは流石に鍛え直した物を軽快に使い熟すのを見て少し素直に礼を受け取りそのままロマンの剣の作業へと行こうとした。
「あ、その前に2人共、2人の武具にも魔法祝印を掛けたいんだけどダメかな?」
するとエミルは昨夜から決めていた2人の武具にも魔法祝印を掛けたいと言う意志を伝える。
ルルは何も言わずに居たが、アルは不機嫌そうにエミルのその目をじっと見ていた。
サラは2日前の夜にアレだけアルは魔法祝印嫌いなのを理解した筈なのにこのエミルの言葉に驚きながら、何時でも2人の間に入れる様に準備をしていた。
「………ふん、お前ならそう言うと思ったよ。
ほら、好きなだけ魔法祝印を掛けやがれ、この頑固者のアル様の機嫌が変わらねぇ内にな」
『えっ⁉︎』
所が、何とアルはルルだけで無く自身の武具にも魔法祝印を掛ける事を承諾し、サラと更に2日前の夜の出来事を目撃していた為明日は槍が降るのでは無いか? と3人に思わせてしまった。
そしてそれを聞きエミルはアルの武具から先に魔法祝印を掛け始めた。
「じゃあアルの防具一式には防御力アップ、魔法ダメージ減衰、軽量化、強度アップを。
ミスリルアックスには威力アップ、魔力浸透率アップ、軽量化、強度アップ。
手投げ斧には威力アップ、魔力浸透率アップ、投擲速度アップ、強度アップの魔法祝印IVを一気に掛けるわ、えい‼︎」
そうしてエミルの足下に魔法陣が現れ、アルの武具全てに4つの魔法祝印が掛けられアルはその感触を確かめていた。
「…ふん、動き易くなったし俺様のミスリルアックスも振り回し易くなったな。
そしてこの手投げ用の斧にすら最高効力の魔法祝印を掛けるとは中々慎重だな」
「それは魔族と本格戦闘を見据えてるからよ。
それを理解したからアルも嫌いな魔法祝印を受け入れたんでしょう?」
「…ふん!」
エミルはアルの武具全てに魔法祝印を掛けた理由を魔族と戦うからと話すと、アルは鼻息を荒くしながらもそれ以上は何も言わずにそっぽを向きルルにも早く魔法祝印を掛ける様に促していた。
「それじゃあルルの防具一式には防御力アップ、魔法ダメージ減衰、強度アップは共通として、元々軽装だから回復力アップを掛けるね。
そしてミスリルダガー2本には威力アップ、魔力浸透率アップ、強度アップと硬い物を貫ける様に貫通力アップを掛けるね。
サラの矢は魔族の鎧をあの時貫いていたから貫通力は問題無いからこれでOK?」
「良いわエミル、掛けて」
そうしてルルの防具一式とミスリルダガー2本にも魔法祝印IVが掛けられ、それを受けたルルは再びミスリルダガーを引き抜き火の下位絶技『火炎剣』を使うと自身の魔力がダガーにより浸透し、威力増加に繋がっていた。
「うん、コレなら魔族の防具や武器に掛けられた魔法祝印にも負けない。
ありがとう、エミル」
「どういたしまして、ルル」
「魔族の武具の魔法祝印………あっ、忘れてた⁉︎」
ルルはエミルの魔法祝印に礼を言い、更に魔族側の魔法祝印に負けないと口にしながらダガーに纏った火を消し鞘に収める。
するとサラはルルの言葉で自身が忘れていた物を思い出し声を上げる。
「え、サラ、忘れてたって何を?
それに魔族の武具の魔法祝印って何なの?」
「ロマン君、ロマン君の剣があんなになった原因はその魔法祝印が関係してるのよ。
魔族の防具には地上界の武器や魔法のダメージを減らし、地上界の武器が当たった瞬間強度を引き上げる魔法祝印が。
武器には地上界の者に対する殺傷力を高めて地上界の防具や武器の破壊効果がある魔法祝印が掛かってるの。
だからロマン君の剣はあんなにボロボロになったのよ」
ロマンは魔族側の魔法祝印が何なのかと聞くと、エミルが魔族の防具と武器にそれぞれ掛けられた対地上界用魔法祝印と言うべき物が掛けられている事を明かし、ルルや思い出したサラは頷きそれが事実だとしていた。
それを聞いていたアルも溜め息を吐き、後ろを振り返りながらエミル達に言葉を掛け始めた。
「俺様は、俺様の武具は何者にも負けない、それこそ魔族にさえ勝つとさえ信じていた。
事実昨日の魔族には勝てたしな。
だが…あの魔法祝印が掛かった漆黒に澱んだミスリルの武具を見て、ルルからそれがどんなもんか聞いたらゾッとしたぜ。
奴等は俺様達地上界の者を皆殺しにしたいからあんな魔法祝印を掛けやがったんだってな。
それに対抗するには同じ様に魔法祝印で武具の防御力や強度を上げるしか無い、そう理解しちまったよ」
アルは自身が作り上げた武具に絶対的な自信があり、魂を込めた物でもある為これなら魔族にも負けないと信じて疑っていなかった。
だが魔族の武具を調べ魔法祝印が掛けられていると知り、更にルルから聞いた内容で地上界に対する絶対の殺意とも言うべき物を背筋で感じてしまい、昨日は良く武具を破壊されずに勝てたと思い、自分は井の中の蛙だとゴッフとの職人対決以来に思い知らされてしまったのだ。
その為エミルの魔法祝印の提案を受けたのであった。
「さあこれで俺様が大嫌いな魔法祝印を受けた理由が分かっただろ。
なら今日はもう自由時間だ、お前等は英気を養ってろ。
俺様はロマンの剣を鍛え直す、いや、最上の剣に生まれ変わらせてやるぜ」
自らが嫌う魔法祝印を受け入れた理由を語り終えたアルは、エミル達を置いて鍛冶屋に戻って行く。
その去り際にロマンの剣を鍛え直す以上の出来にしてみせると語り、その背中からはその熱意が伝わり、サラとルルはこれならばロマンの剣の心配は要らないと感じエミル達の方を向く。
因みにルルはフードを被り直した。
「じゃあ自由時間になったし、エミルやロマン君達はどうするのかな?」
「私はアルみたいに魔血晶に付き切りになってやらなきゃいけない事があるから、ロマン君達は村の中を散策してて良いよ。
それじゃあ解散、ロマン君後は任せたよ」
「え、エミル⁉︎
…行っちゃった…あの魔血晶にどんな価値があるんだろう…?」
残されたサラはルルやエミル達に何をしようかと語ると、エミルは魔血晶に付き切りになると宣言してロマンに2人を任せてかぼちゃ亭の宿泊中の部屋へと走り去る。
サラはエミルが抜き取った魔血晶にどんな価値があるか分からず首を傾げながら他の2人を見た。
「分からない。
分からないけど…エミルなら無意味な事は絶対にしない、そう信じてるから僕は何か成果がある事を信じるよ」
「…確かに昨日の魔族との戦闘、最初の不意打ちに対応する時私の『逃げる』じゃなくて『相殺する』を選んだからね。
逃げるのは間に合わないって即判断して。
そんな子が無意味な事をする訳がない、何だかそう思えて来ちゃうね〜」
「…はい………」
しかしロマンはエミルの事を信じると決めた日から彼女の自信家でありつつ慎重な姿勢、そしていざと言う際の大胆さを見て来た為無意味な事はしない、そう確信し何かを成すと信じ切っていた。
その言葉を聞きサラも魔族の灼熱雨を相殺する選択をした事もあり、世界の命運を握るの有無に関わらずルルと共に信じよう。
そう決めた2人はロマンに村を案内させて貰うのであった。
「グビ、グビ、グビ、ふぅ!
やっぱ大仕事には酒が欠かせないぜ、集中力が研ぎ澄まされる‼︎」
【カン、カン、カン、カン、カン‼︎】
「な、なんて方だ、刃毀れが全体に及んだ上に刀身にヒビが入ったロマンの剣をみるみる内に鍛え直している‼︎
俺じゃあ諦めで新しい剣を薦めるのに…やっぱり鍛治職人としての腕が違い過ぎるッ‼︎」
それから半日が経過して日が傾き、沈み始めた頃。
アルは酒を飲みながら作業を続け、現在は金槌を振るい刀身をミスリルで刃毀れした部分やヒビ割れた部分を打ち直し最初にアルが見たミスリルソードの状態よりも良く修復が成され始める。
アイアン村の鍛治師はとても自分には不可能な事をやって退けるアルの冴え渡る腕に感動すら覚え、溶かしたミスリルの管理をしながら業の数々を見ていた。
「グビ、グビ。
ほれ、ミスリル流せ‼︎
これを繰り返してロマンの剣を復活させんぞ‼︎」
「は、はい‼︎」
【ジュゥゥゥ、カンカンカン‼︎
カン、カン、カン‼︎】
それからも金槌でロマンの剣を打つ音が鍛冶屋の方から夜通し聞こえ、村人達もロマンの剣が直るか否かを心配する者も居れば、ゴッフ一門のアルが居るから何とかなると言うサラの言葉を信じた村人も居た。
それは当然村長達もであり、アルの最高の腕を以てしてロマンの剣が鍛え直される事を祈っていた。
「(やってやるぜロマン‼︎
ケイやテニアが残したこの剣、必ず修復してアイツ等の生きた証を、お前を守り抜いた愛と命、勇気に覚悟の籠った物をぜってぇ捨て去らせはしねぇぜ‼︎)」
【カン、カン、カン‼︎
カン、カン、カン、カン‼︎】
アルは更に自身が見送れなかったケイとテニア、2人の想いが詰まったこの剣を必ずや復活させると自らも想いを、魂を込めて鍛え直して行く。
それが鍛治職人の、ロマンの両親を知るアルが金槌を振るう力を更に強く鋭くし、彼の持つ全てが、300年間職人王ゴッフの弟子として剣を作り上げたアルと言う1人のドワーフの誇りを輝かせる。
【カン、カン、カン‼︎
カン、カン、カン、カン‼︎】
そうして誰もが寝静まる頃にも金槌を振るう音が聞こえ、その音色は子供には子守唄、大人には魂の叫びに聴こえ村中にその音は1日中響き渡るのであった.
「………よし、魔血晶の完全解析完了‼︎
奴等がどんな原理で念話を使うのかも分かったわ‼︎
ふう、思えば魔血晶の解析半ばで奴等の復活の原理を魔法化させて転生魔法を作り上げたのよ。
その私が解析出来ない訳が無いわね」
一方同じ頃、魔血晶に魔力を通して解析を完了させ、念話は原理までをも把握し切ったエミル。
そして転生魔法は同じく魔血晶を解析し、その半ばで作り上げる事が出来た過去の自分の記録に残らない禁忌の魔法だった。
しかしそれを使い、500年の月日を掛けられエミルに転生し今日まで魔法を振るい続けたのだ。
その自分自身が残した課題、魔血晶の解析をし念話が何の様に行われてるかを知るのが課題終了の第1段階だった。
「さあ、次はこの魔族の念話を読み解き、聴く事が可能になる新しい魔法を作り上げるわよ‼︎
何、心配するな私!
あの魔法が解析半ばで理論構築が出来て完成させられたんだ。
今度は完全解析してから作り上げるからそう難しくは無い!
さあ行くわよ、体内魔力接続、魔法理論構築開始…!」
そしてエミルは第2段階にして完成物、『魔族の念話を傍受する』魔法を構築すると言う全く新しく、誰も試みれなかった行為に踏み込み始めた。
転生魔法を解析半ばで作り上げた自分なら此方も意図も容易く出来る、そう確信しながら魔法理論構を開始する。
この日、ずっとエミルの部屋から少しだけ漏れていた不快な光は消え、代わりに彼女の魔力光が部屋を包みその光もまた、夜が明けるまで消える事は無かった。
そして翌朝、エミル、アルが居ない中で3人は朝食を摂り始め、そして食べ終えるが肝心な2人は何方もまだ来ずロマンの剣を鍛え直しているアルは兎も角エミルが降りて来ないのは心配になり始めたロマンは階段を見始めて20分以上が経過した。
「エミル大丈夫かな、何かあったのかな…?」
「昨日は降りて来たのに今日は来ないって少し心配だよね〜」
「………エミルさん、大丈夫…なんでしょう、か…?」
ロマンが心配する中でサラやルルも同様に心配し始め、昨日の元気な姿から全く姿を見せないエミルに三者三様の不安な気持ちが場の空気を支配し始めていた。
そしてそれがピークに達した途端、ロマンは席を立ち上がり始めた。
「──ー僕、エミルの様子を見てくる!」
「あ、それなら私も!」
「…私も…!」
ロマンはエミルへの心配から彼女の部屋に行き様子を見に行くと言い始め、するとサラやルルもその後に続き階段へ向かい上り始めようとした。
「あ、ロマン君にサラにルル、皆おはよう」
「あ、エミル‼︎」
その階段を上り始めようとした所でエミルが階段を下り始めている瞬間を互いに目撃し、エミルは目に隈が出来ながら呑気におはようと言い、その姿を見たが目の隈が気になり大声を上げてしまうロマンと、全く対称的な2人の反応の差が出てしまう。
そしてロマン達が階段から退くとエミルは階段を下り切り、改めて3人を見る事にするとエミルは3人が心配した様子を見せた事に気付き、口を開いた。
「あ〜、朝食を皆で食べるタイミングで起きて来なかった事で心配掛けちゃった?
ごめんなさい、でももう私がやるべき事は徹夜で終わったからもう心配しなくて良いよ?」
「そ、そうなんだ、その隈は徹夜したからなのか…良かった、その水晶に変な呪いが掛けられててそれで危なくなったのかと…」
エミルは3人に心配を掛けた事を謝罪し、目の隈も徹夜が原因だと説明をするとロマンは未だエミルの首からぶら下がっている魔血晶の所為で何かあったのかと心配になった事を告げると、3人はエミルを伴い自分達が座っていた席に戻り、エミルは朝食と紅茶を頼み席に座りながら休み始めた。
「…それで、徹夜したって魔血晶が関係してるよね?
一体何をしていたの?」
「ああ、新しい魔法を創る為に如何してもコレが必要だったのよ。
だからあの魔族から態々魔血晶を抜き取って、夜通し解析をしていたのよ」
「え、そんな凄い事を内緒でやってたの⁉︎
しかも魔法を創るって確か術式から構築しなきゃいけないから大変なのに本当に凄いよ‼︎
それで、一体どんな魔法を創ったの⁉︎」
ロマンは早速魔血晶が原因で徹夜した事を話し、何をしていたかと問うとエミルはしれっと新しい魔法を創り上げたと話した。
新しい魔法を創り上げるには理論を完璧に構築し魔法陣内で作り切らなければならず、そんな事をしたのはセレスティア王国初代女王のライラ位しかサラもルルも知らない為どんな魔法かと聞き始めた。
「ああ、それは…」
【ガチャ、キィィ】
「よう、お揃いだな…って、エミルお前も徹夜したのか?
ドワーフやエルフ達と違って人間の体は脆いんだ、余り無茶してパーティメンバーのロマンを心配させんなよ?」
エミルは早速作り上げた魔法の説明をしようとした所でかぼちゃ亭にアルが袋に包んだ物…アルが態々持って来る物はロマンの剣しかなくいよいよ皆来たかと思い始め、その間にエミルは朝食を摂り始めた。
するとアルは人間は他種族と違い体が脆い為ロマンに心配掛けるなと言われ反省するのであった。
「アル…遂に出来上がったんだね」
「ああ、お前の両親が遺した剣、しっかりと生まれ変わる事が出来たぞ」
ロマンはアルに近付き頼んだ物が仕上がったのだと聞くとアルはハッキリと剣が生まれ変わったと彼は包みから鞘に収められた剣を取り出した。
その瞬間にエミルの朝食は終わり早速立ち上がり見ると、鞘に収められてる時点で剣の鍔の形が少し変わり、十字型の鍔には変わりないが柄頭の様に鍔の真ん中に丸い紋様を彫った部分が加わり、鍔から柄の色も黒から金に変わっていた。
「鍔には昔ケイから教えられたお前の家の家紋を彫った。
つまり正真正銘お前の剣だ。
外に出て出来上がりを確かめな」
「本当だ、僕の家の家紋だ…うん、早速見てみるよ‼︎」
アルは鍔の紋様はロマンの家の家紋である事を告げ、正真正銘彼専用の剣に仕上がった事を告げてその出来具合を確かめる様に話す。
それを聞きロマンは早速ルルが出来具体を確かめた人気の無い広場に出て鞘を左腰に差し、そして柄を持ち勢い良く剣を引き抜いた。
するとその刀身は刃毀れも1つも無くミスリルの名に相応しい1点の曇りの無い輝きを放ち、剣はロマンの身体の一部の様に吸い付き正に自分専用に相応しき物だった。
「…凄い、こんなに僕に馴染む武器に仕上がるなんて…ありがとう、アル‼︎」
「へっ、良いって事よ。
俺様が直々に直したいからそうしただけなんだからな。
…大事に使ってやれよ、両親の形見を」
ロマンはその出来栄えに息を呑み、アルに心の底から感謝するとそのアル自身は頼まれたからやっただけと言いつつ、最後に両親の形見を大事に使う様に話してその肩を叩いていた。
「…それじゃあロマン君、改めて貴方の剣に魔法祝印を掛けたいのだけれど………大丈夫かな?」
「…うん、やって。
あの魔族の様に魔法祝印抜きで戦って壊すなんて二の轍を踏みたく無いから…だからお願い、エミル」
「分かったわ。
それじゃあ威力アップ、魔力浸透率アップ、軽量化、強度アップの魔法祝印IVを掛けるわ!
えい!」
そうしてエミルは改めてロマンの親の形見の剣に場保ちでは無く本格的な戦闘の為の魔法祝印を掛けても良いかとロマンに問うと、ロマンは2日前の魔族の様な二の轍を踏み再び剣を壊したく無い為それを了承する。
そうしてロマンのミスリルソードにも魔法祝印が掛けられロマンは少し振るうと先程以上に使い易くなった事を実感し、それから鞘に収めた。
「さて、俺様達は依頼が終わって後は互いにそれぞれの道を行くだけだがサラ達は如何するんだ?」
「う〜ん、取り急ぎ用事も無いから如何しようかな…お父様に魔族の事を報告は多分ギルド協会からもう情報が流れてるだろうし…」
「…それなら、私からサラ達に提案があるんだけど良いかな?
勿論貴女達とロマン君の許可が要るけど」
そしてアルは依頼の報酬を渡し、後はサラ達に如何するかを尋ねるとサラは魔族の件はギルド協会から伝わってるとしながら、やる事が見当たらない様子だった。
するとエミルがサラ達に提案をし、彼女達とロマンの了承が要る事と話しながらサラやロマン達を見た。
「僕達の了承…何かそれが必要な事があるの、エミル?」
「うん、実は魔族を斃した辺りから思っていたんだけど………この場に居る5人でパーティを組まないかな?
それも目的は勿論魔王討伐のパーティを!」
ロマンはエミルに了承が必要な事と言われ何なのかと問うと、そのエミル当本人は魔王討伐の為のパーティをこの場に居る5人で組まないかと話し、ロマンのみならずサラ達も驚きながらエミルを見ていた。
「だってサラの使命は魔王討伐なんでしょう?
それなら私達と組んで戦った方が効率も良いし手伝えるよ。
何ならあの魔族と戦った時に私達の息はピッタリだったからパーティを組めばかなり良い感じになると思うのだけど…サラ達は大丈夫かな?」
エミルはパーティを組む理由を話し始め、サラの使命を手伝えたり効率化が図れる事、更に名無し魔族と戦った際の息ピッタリな連携にパーティを組めばかなり良い物になると話した。
それに対してサラ達の反応は。
「えぇ〜本当に良いの⁉︎
ありがとう、魔王討伐を一緒にしてくれる仲間を探そうかなとかも思ってたから‼︎」
「おいサラ、勝手に………まぁ、名無しの魔族であれだけ強いんだ、戦力が多い事に越した事は無いか。
俺様もあの魔族の物言いにはムカついたからな」
「…あの、後は………ロマンさんが、良ければ、よろしくお願いします…」
サラはその話を快諾し、アルは少しムキになろうとしたが名無しの魔族でレベル173だった事や言動が気に食わなかった為、それを顧みて戦力が多い方が良いと判断し、反対意見を引っ込める。
そしてルルは後はロマンが良いならと話して皆でロマンを見始めその答えを待った。
そしてその口から出たのは………。
「…うん、この2日半でサラやアル、ルルの人となりも分かったし、エミルも同じ事を考えててくれたなら僕も嬉しいよ。
だから、よろしくお願いします!」
「わぁ、ロマン君もエミルと同じ事考えててくれたんだ、ありがとう2人共‼︎
アル達もありがとう‼︎」
如何やらロマンも同じ事を考えていたらしく、エミルとも同意見で反対する理由が無かった為ロマンはサラ達3人に頭を下げた。
するとサラは大喜びし、ルルはフード越しながら笑みを浮かべ、アルは仏頂面に見えそうだが口元は笑みを浮かべ満更でも無い様子を見せるのであった。
「それじゃあ早速かぼちゃ亭のガルさんに話を付けに行こうかサラ、アル、ルル!」
「了解〜‼︎」
そうして5人はかぼちゃ亭内に入り、ガルにパーティを組む事を話しに行く。
するとそれぞれのリーダーのエミルとサラが魔法紙を取り出し、其処に記載された別々のパーティが同じパーティを組む場合はリーダーを新しく選出し、それを両方が承諾した時パーティメンバーになれる項目を見せながらガルに話し掛けた。
「ガルさん、私達でパーティを組みたいんだけど良いかな?
リーダーは………魔王討伐を謳ってロマン君を選び抜いたエミルで!」
「あ、私になるの?
てっきりサラがリーダーになりたいって言うと思ったけど…でも何方も魔王討伐は一緒なので私はOKですよガルさん」
「僕達も大丈夫です!」
するとサラがリーダーをエミルに選出し、本人は驚いていたが同じ使命を持つ為OKをエミルは出し、ロマンも同じく大丈夫だと話し、フード越しにルルも頷きアルも反対意見を出さなかった。
「よし、ならリーダーはエミル王女殿下にして…5人以上のパーティになったからパーティの名前を決める事が出来るけど何か名前はあるかい?」
「あります、私達は初代勇者ロア一行の様に魔王討伐を目指すメンバーです。
なのでそんな彼等はパーティ名『誓いの剣』を名乗っていました。
それに肖り、私達は『誓いの翼』を名乗ります」
ガルはそれらを聞き5人パーティになってからパーティの名前が決められる事を告げ、案はあるかと言うとエミルは過去の自分達がロアをリーダーとして名乗った名である誓いの剣を出し、それに肖る、否、今度こそ魔王討伐を果たすべくエミルは決意を込めて誓いの翼にし、サラ達は父や母、師や先祖の名に肖る事を喜びエミルに声掛けし始めた。
「誓いの翼、すっごく良い名前だよエミル‼︎」
「…お母様の…パーティ名と、良く似た…」
「ふっ、ゴッフのパーティ名に肖るか、悪くねぇ」
「…誓いの、翼…僕達の、パーティ名…!」
4人はそれぞれ嬉し気な反応を示し、エミルもこの名前にして悪く無かったと思い手に力を込め、このメンバーで今度こそ魔王討伐を成すと意気込み始めるのであった。
「それではギルド協会でエミル一行とサラ一行が合流して誓いの翼を名乗る事になったと全体にお伝え致します。
…ロマン、皆様、良き旅を」
「はい、ガルさん、リィナさん‼︎」
そうしてロマンやエミル達は誓いの翼の名を背負い、共に仲間として冒険の旅に出る事になった。
それをガルや奥のリィナも祝福し、そのエールを背にかぼちゃ亭の宿泊代を払い外へと出た。
「大変だ〜‼︎
セレスティア王国のランパルド国王陛下戦達が村にいらっしゃるぞ〜‼︎」
「…えぇ⁉︎」
しかしその誓いの翼に早速最初の胃痛になる関門が迫って来た。
それはセレスティア王国現国王ランパルド達がやって来ると言うエミルにとっても想定外な事態であった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
冒険者と言えばパーティ、同じ目的を持つ者達が集まればパーティを組むに人数も増えると言う話でした。
細かい部分を見るとアルも魔法祝印を受け入れたりもしました。
さて、今回は誓いの翼、誓いの剣、魔界式魔法祝印を書きます。
誓いの翼:初代勇者ロア達のパーティ名から捩ると同時に魔王討伐の任を引き継ぐ意思を込めエミル達が名乗る事になったパーティ名。
リーダーは発案者のエミル、そしてメンバーも勇者ロアの子孫、賢王ロックの娘、予言者リリアナの娘、職人王ゴッフの弟子と二代目魔王討伐パーティに相応しい顔ぶれとなっている。
誓いの剣:初代勇者一行の名前にしてエミルの前世のライラが所属していたパーティの名前。
この存在と名は伝説となっており、彼等の御利益を肖りたいから名前を近い物にするのもしばしばあるが、エミル達の場合は魔王討伐を引き継ぐ意思を以て名を捩る事になった。
リーダーは初代勇者ロアである。
魔界式魔法祝印:文字通り魔界側の魔法祝印で魔族の武具にはこれが付与されている。
効果は防具には地上界の武器から身を守る為に強度と防御力がアップし、魔法は威力をかなり減衰されてしまう。
武器には地上界の者の命を奪い、武具の破壊の為に強度と威力がアップする。
これがロマンの剣がボロボロになり、魔法祝印嫌いなアルがエミルの魔法祝印を受け入れる結果となった要因である。
次回もよろしくお願い致します。




