第10話『エミル達、採掘する』
皆様こんにちはです、第10話目更新でございます。
今回は採掘がメインになる回になります。
それから魔族の核についても少し触れます。
では、本編へどうぞ。
エミル達が魔族を斃した後、エミルは浴びた青い鮮血を洗い流す為近場の川辺で身体を洗い、服も洗い火の下級魔法で焚いた焚き火で直ぐに乾かし、そして全員がエミルを待っている間に逃げ出した馬達も全てが終わった事を察し馬車を引いて戻って来ていた。
因みにアルは気になる事があり魔族の破損した鎧の一部と槍を回収して荷台に乗せていた。
「それにしてもエミルが言っていたあの魔族の赤い水晶…『魔血晶』が将来的に必要になるって何なんだろうね〜?」
「…分かり、ません。
魔血晶は………念話に使われるだけで無く…魔族の、核にもなってる、厄介な…物です………。
アレが、ある限り………魔族は、名ありの、魔族に与えられた力で………復活します…」
サラがエミルの言う将来的な事に必要になると言う言葉を改めて振り返り、他の3人にも質問してみるがアルはお手上げ、ルルはリリアナや書物から学んだ魔族の額にある赤い水晶、魔血晶の持つ厄介な特性、名ありの魔族の手に渡れば魔族が復活する事を話し、尚の事必要になると言う意味が分からなくなっていた。
「…でも、エミルが必要だって言うなら絶対に必要なんだと思う。
まだ数日しかパーティを組んでいないけど、エミルの自信家な部分は信用出来るんだ。
だからそのエミルが必要だって言うなら僕は信じたい、エミルが僕を信じてくれた様に…!」
だが此処でロマンがエミルが必要ならばと言った事に対して彼女は数日間で不思議と自信家な面が見え、ライブグリッターの話を加味してそのエミルが必要と言った言葉を信じたいと口にする。
それはエミルが自身の優しさや勇気を信じた様に、エミルのその部分やエミル自身を信じたい、そんな信頼から出て来た言葉だった。
「…まぁ、アイツが世界の命運を握ってるってルルの予知で出ちまったし、何より会って直ぐの俺様達よりもお前が信じるっつうならそれで良いんじゃねぇか?
何せロマン、お前がエミルのパーティメンバーなんだからな」
「だね〜、ロマン君が言うならそれ以上私達から言う事は無いね〜。
…あ、エミルが来た!
お〜い、早く早く〜!」
そのロマンの言葉にアルやサラは世界の命運を握るエミルのパーティメンバーのロマンが言うなら自分達が口を挟む必要は無いとしてそれ以上何かを言うのを止めた。
それと同時に川辺がある森からエミルが出て来た為サラは手を振り彼女を早足にさせた。
「ごめんなさい、待たせちゃった?」
「いや、魔族と戦った時よりかは時間は喰っちゃいねぇよ。
さあ行くぜ、馬を歩きから走らせて少し時間短縮を図るぞ!」
「手綱を握るのは私だけどね〜」
エミルは待たせたかと4人に聞くと、依頼人でもあるアルが先程の魔族との戦闘よりも待っていないと気を利かせた。
しかし魔族との戦闘等もあり、予定よりも大幅に時間を取られたとして馬車を飛ばして時間短縮を図ると予定変更を叫び、サラ達は変わらずアルとルルは荷台に乗りサラが手綱を持った。
「あ、ロマン君少しお願いがあるんだけど馬の手綱を持ってくれないかな?
私はこの魔血晶にちょっと用があって手綱を握られないから」
「そうなんだ…うん、分かった。
じゃあ僕が馬の手綱引きを継ぐから荷台でそれに集中してて良いよ」
「本当にごめんねロマン君、この埋め合わせは必ず払うからね」
するとエミルは魔血晶に集中したいとして手綱をロマンに握る様に頼み出す。
それを引き受けたロマンは快諾して荷台にエミルを乗せて手綱を握った。
「それじゃ行くよロマン君、ハイッ‼︎」
「うん、ハイッ‼︎」
『ヒヒーン‼︎』
そうしてロマンが手綱を握ったのを確認してサラが先に馬に早く走る様に指示を出して馬車が急発進し、その後を追い掛ける為にロマンも馬に指示を出して後ろを付いて行くのであった。
その間にエミルは首紐に掛けた魔血晶に手を翳し、魔力を放出し小さな魔法陣を形成し、過去からの課題を片付ける為に作業を開始するのであった。
しかしその間ロマンや馬の気分の悪くなる光が魔血晶から放たれ、見た者や浴びた者、馬は気分が優れずにいたのだった。
それから山道に入り、崖から落ちない様に間隔を開けながら馬車を操り合計1時間半後、ほぼ予定時刻の昼前に鉱山に辿り着き全員で第2採掘場前に馬車から降りてアルが魔法袋から取り出した鶴嘴等の採掘道具を全員に渡していた。
「さて!
本来ならロマンの剣の分のミスリル鉱石を回収して帰ればよかったがさっきの魔族との戦闘で俺とルルのミスリルアーマー一式やミスリルプレート、武器まで傷付きやがった。
だから俺様達の分も含めて採掘せにゃならんくなっちまった。
エミル、透視と観察眼が使えるなら純度の高い鉱石を俺様達に教えやがれ!」
「分かったわアル。
それじゃあ採掘開始ね」
そしてアルは鶴嘴を抱えながら本来の予定よりも更にミスリル鉱石が必要になった事をエミルとロマンにも伝え、エミルに透視と観察眼を使い純度の高い鉱石を見つける様に指示を出し、坑道内に設けられた松明に火を点けて行きながら奥へと進み始めた。
「あ、ロマン君此処に純度の高いミスリル功績があるから此処で採掘して。
アルはこっち、サラはあっち。
ルルは私と一緒にちょっと奥の方にある鉱石を掘ろうね。
じゃあ採掘作業を楽にする為にも、身体強化III‼︎」
「おう、鉱石を傷めず確実に掘れる為に敢えて身体強化をIIIで止めるのは採掘についてそこそこ知識がある証拠だな。
流石は王族、そんなトコまで教育が行き渡ってるか。
じゃあエミルが言った場所で掘って掘って掘りまくるぞお前等ぁ‼︎」
そうして坑道を歩く中でエミルは純度の高いミスリル鉱石が大量に含まれる採掘ポイントを割り出し、それぞれに掘る場所を指示を出すと更に鉱石を傷めず、それでいて楽に掘れる様に身体強化IIIを自身を含む全員に掛ける。
それを見聞きしたアルはこんな炭鉱夫の知識すらある事に感心しながら全員に掘る様に指示を出し、皆がポイントに付き鶴嘴を振るったりし始めた。
「そう言えばルルって、フードを取って戦闘に入った時滅茶苦茶強気で普段の口調からは考えられない位、物をしっかりと言ってたよね?
アレは、何なのかな?」
「あ、あれは、その………戦闘モード、みたいな…物、です!
何方も、ちゃんとした私なので………気にしないで、下さい…!」
そうして鉱石の採掘作業に入ると、エミルはルルに戦闘時の普段との変わり様について聞くとルル曰く戦闘モードらしく、何方もちゃんとした自分だと言って二重人格の様な物では無く気分がハイになっているだけだとエミルは解釈し、そう言う性分であると記憶に留める事にした。
「あ、わ〜いやった〜、ミスリル鉱石ゲット〜‼︎」
「わ、硬い!
これは…やっぱりミスリル鉱石だ!」
「ガッハッハッハッハ、大量大量‼︎
これなら直ぐ必要な分が集まるわ‼︎」
それから30分後、エミル達を含めて5人は次々と純度の高いミスリル鉱石を採掘し、これを眺めていたアルは高笑いしながら必要な分が直ぐに揃うと叫び、そして身体強化の効果が切れる度にエミルは掛け直しを行い、そうして採掘開始から1時間半が経過した頃、アルとエミルの魔法袋に大量の純度高めのミスリル鉱石が収められ坑道の外に出て作業を終了する。
因みにエミルとルル、アルは当初の採る量より更に多く採っていた。
「ガッハッハッハッハ‼︎
これだけあればロマンの剣を鍛え直すついでに俺様達の装備も鍛え直せるわい‼︎
それじゃあアイアン村に帰るぞ、あそこの鍛冶屋を借りて早速作業に移るぜ‼︎」
「これなら日が落ちる前に帰れそうね。
あ、ロマン君、帰りも手綱を握ってくれないかな?」
「うん、分かったよ」
採掘道具をアルに返品すると、エミルのも合わせて魔法袋を覗き見て集まった鉱石を見てアルはご満悦と言った表情を見せ、早速アイアン村の鍛冶屋を借りて作業に移ると言い馬車の荷台にルルと共に乗り込む。
そしてエミルは魔族を斃した後の鉱山に来る時と同じく、ロマンに手綱を任せて赤魔晶に集中し始めた。
「後はまた魔族がまた襲撃して来なかったら日が傾く前に村に帰れるね」
「うん、どうか魔族が出ない様に…!」
「けっ、あんな不意打ちはレアケースだっての‼︎」
気分が優れない光の中で馬車が動き出し、山道を馬達が馬車を転がさない様にゆっくり歩く中、ロマンは日が傾く前に村に帰れると話しつつ、魔族の襲撃が無ければと口にし、それを聞くとサラはまた魔族が出ない事を祈っていた。
しかしアルはあの襲撃はレアケースだと話しながらまた来ないであろうと楽観視では無いが、魔族との戦いで感じたある種の死の匂いを感じない為恐らくは襲撃は無いと判断していた。
「…大丈夫、300キロメートル範囲内には魔族の存在は確認出来ないから」
「エミル、魔血晶に集中しながら千里眼で警戒してるの?
凄いマルチタスクだね…」
するとエミルがロマンに聴こえる様に魔族の存在は確認出来ないと話し、それを聞いたロマンは魔血晶に集中しながら千里眼で300キロメートル範囲内を警戒し、二の轍は踏まない様にしてる事を知り、そんなマルチタスクをこなすエミルをロマンは凄いとはっきりと口にした。
何故なら自分にはそんなマルチタスクが出来ないからである。
「…ロマン君も、サラもアルもルルも凄いよ。
初めての魔族との戦闘で小さな怪我をした程度で終わらせられたんだから」
「そ、それを言うなら………エミルも凄いと、思います。
………エミルも、魔族と『初めて』、戦ったのにちゃんと、魔法使いの…役割を、果たしてました、から…」
「…そうね、ありがとう、ルル」
そのロマンの凄いと言う言葉にエミルは前世においての魔族との戦いは死が付き纏う恐ろしい物であるのに、本当に初めて戦ったのに軽傷と武具の少しの破損で済ませた4人にも凄いと言う。
するとルルがエミルも初めて戦ってと言い、確かに『エミルでは』初めて戦った為額面通りでは無いが、ルルの言葉を素直に受け取り魔族との戦闘の勘は鈍ってない事を自身でも知るのであった。
それから2時間半後、日が傾き始める直前にアイアン村に辿り着き、門が開かれ馬車が村の中へと入った。
因みにエミルは魔力を魔血晶に通すのを村の見える前で止めている。
「ロマンにアルさん達お帰り…って、皆そのレベル如何したの⁉︎
ロマンとルルさんはレベル182、サラ王女殿下はレベル180、アルさんはレベル184、そしてエミル王女殿下もレベル185になってる⁉︎
一体アグ山に行く間に何があったのさ⁉︎」
「あ、あはは、色々あったんだよ、色々…」
するとエミルやロマン達を迎えたエヌは全員のレベルがたった半日程で22も上がった事に驚き、一体何があったのかと叫ぶとロマンも魔族に襲われましたと混乱を招く事は言わず色々あったと濁していた。
「それよりおい坊主、かぼちゃ亭で依頼達成報告をした後にこの村の鍛冶屋に案内しろ。
俺様が俺様達の武具の鍛え直しをする為に借りてぇ」
「え、あ、はい、分かりました!
では話を通してかぼちゃ亭の外で待ってます‼︎」
するとアルがエヌに鍛冶屋を借りて自分達の武具を鍛え直すと言い、それを聞いた瞬間エヌは敬礼をして鍛冶屋に話を通してかぼちゃ亭の外で待つと言いながらその場を去って行った。
するとアルがロマンにウインクをし、これ以上根掘り葉掘り聴かれるのを防いだとロマンは理解し、アルに頭を下げていた。
そして馬屋に馬車を入れ、馬達を預けると真っ直ぐかぼちゃ亭に向かい中に入る。
「いらっしゃいっと、ロマンにアルさん達か!
ロマンにエミル王女殿下、依頼は達成しましたか?」
「はいばっちりと、これがその証拠のミスリル鉱石です」
宿屋の亭主のガルがロマン達が入って来たのを確認すると、依頼達成は出来たかと聞いて来た為エミルとアルは魔法袋からミスリル鉱石を大量に取り出し、最後に依頼の書かれた魔法紙を取り出しガルに提出した。
「うお、滅茶苦茶採掘しましたね!
何かあったのでしょうか?」
「はい、ある事が発生し、それにより懸念事項が出来た為ルルやロマン君達に協力して貰って多く採掘しました。
そしてそのある事は………驚かず聞いて、騒ぎにならない様にして下さい。
実は私達はアグ山に向かう途中で魔族に襲われました」
ガルは大量のミスリル鉱石をみておどろきながらなにかあったのかと尋ねると、エミルはアグ山に向かう途中であった事…魔族の襲撃に遭った事を驚かず騒ぎにならない様に前置きをしながら話した。
するとガルは周りを見て聞き耳を立ててる者が居ないか確認すると、カウンターから屈み気味になり小声でエミルと話を続け始めた。
「それは確かですか、王女殿下?」
「はい、現に私が今首から下げているこの赤い水晶、魔族の核たる魔血晶です。
1度お渡ししますので奥で魔力を通してみて下さい、ギルド協会の方なら知っている筈です。
魔血晶は地上界の者の魔力を通すと地上界の者の気分を害する光を放つと」
ガルはエミルにそれは確かかと話し始めるとその当本人は魔族から摘出された魔血晶の特性(無論検閲内容)を話し、ガルはそれを受け取り奥へ行き魔力を集中して魔血晶に魔力を通した。
『っ⁉︎』
すると赤き水晶は邪気とも言うべき物を多分に含む光を放ち、ガルは驚きそれを床に落としてしまった。
更に巻き添えでリィナも皿を落とし割ってしまう。
そして恐る恐る拾い上げ、直ぐにエミルの下に走りそれを手渡した。
「か、確認しました…間違い無くこれは魔血晶、魔族の核です…!
い、依頼完了の承認後にこの事はギルド協会全体に共有し警告を促します、魔族が遂に出現した、と…!」
「はい、私が言いたかった事を率先して行うと言って頂きありがとうございました。
では依頼完了の判をお願い致します」
ガルは魔血晶を返却し、エミルがやりたかった事の1つである全体への警鐘を鳴らす事を言う前から率先して行うと約束したガルに礼を述べながら魔法紙に依頼完了の了の判が刻まれ、これで依頼は達成され、報酬のエミルの剣の修理が行われる事になった。
「エミル、もしかしてガルさんに全体に警告を出して貰いたかったからそれを?」
「それもありますけど、本当は別の理由があるの。
今は内緒ですけど伝えるべき時が来れば必ず伝えますよ。
それよりロマン君、剣を鞘から抜いて状態を見てください」
ロマンは魔血晶を引き抜いた理由はこれなのかとエミルに尋ねると、そのエミルは今は内緒と言い本当の答えは未だ言わない様にしていた。
そんな会話をしていた中、エミルはロマンの剣を抜き状態確認をする様に促した。
「え、うん………って、うわ⁉︎
昨日アルに見せた時よりも更に酷い状態に⁉︎」
「…やっぱしか、俺様の見間違えじゃなかったみてぇだな。
お前、持ち帰ったあの魔族の槍と何度も打ち合っただろ?
で、最後の方にはその状態、更に刃毀れして刀身もヒビ割れて何時折れても可笑しく無い状態になってやがった。
エミル、防具にエンチャントを掛けた理由はこれか?」
鞘から抜かれたミスリルソードは最早まともに戦いに耐えられない見るも無惨な状態と化し、それを戦闘後にアルは鞘に収める瞬間に気付き自分達の防具用と言い張りながらこの状態の剣を鍛え直そうとし、エミルも同じ事を考えていた為必要以上に鉱石を採掘したのである。
そしてアルは問いた、ロマンの防具に魔法祝印を掛けた理由はコレかと。
「ええ。
嬉しい誤算だったのはロマン君が剣で弾いて防具にダメージが入らない様にした事。
第4の魔法祝印は防具の強度アップにしてあの魔族の武器で余計な傷を増やしたく無かったのだけど今は未だ付けなくて大丈夫…と思っていたら魔族の襲撃が来てしまったの、見通しが甘かったわ」
エミルはアルの問い掛けにYESを出し、ミスリル製武具から付けられる様になる第4エンチャントは未だ抜きで大丈夫と踏んでいた所に魔族が現れた事で何もかもが見通しが甘かったと話し、完全な誤算だったと話した。
「(そう、見通しが甘かった、まさかあんなに早く魔族が来るなんて…。
そして、魔族が現れたならもう門に掛けた縛られし門も解けてる…プランの大幅な見直しが必要になるわ)」
事実エミルはエンチャントを完全にするのはロマンの剣が直ってからが良いタイミングだと考えていた為あの戦いは誤算だったのだ。
しかしロマンが武器で弾き合いをした為防具に余計なダメージが入らなかったのだけは嬉しい誤算でもあった。
でなければミスリル鉱石が更に必要になったからだ。
そして同時に、エミルは自身の中のプランを大幅な見直しをしなければならないと考えていた。
「…ふん、兎に角ロマンの剣や俺様達の武具の鍛え直しが先決だ。
何せ俺の斧も鎧も、ルルの武具も魔族の鎧を斬ったり槍を弾いたりしたから傷付いちまったからな。
ついでにあの槍と防具の破片にどんな魔法祝印が付いてるかも調べてやる。
さあ、ルルもミスリルダガー2本とミスリルプレート、軽装ガントレットやレギンスも寄越しな。
俺様の武具と一緒に直してやる」
「…はい…」
それらを聞き、少しは納得したのか傷付いた自分達の武具とロマンの剣の鍛え直しをするとアルは宣言し、同時にあの槍や防具の破片に付いた魔族側の魔法祝印も片手間に調べ上げると宣言する。
エミルは壊れた防具からそれを読み解くのは難しい筈だが、ゴッフの弟子なら大丈夫だろうと思いそれもアルの目に実際に見て貰おうと考えた。
そしてロマンとルルは自身の傷付いた剣と武具一式を渡した。
「さて久々の大仕事だ、こりゃ暫くは鍛冶屋に籠り切りだぜ…」
アルは手渡されたロマンの剣、ルルの武具に自身の武具、そして改めて自身とエミルの魔法袋に入れたミスリル鉱石を持って外に出て、エヌの案内で鍛冶屋まで赴きその戸を開け中に入って行った。
「大丈夫かな、アルは…暫く籠るって言っていたけど…」
「心配ないよ〜ロマン君!
アルは頑固者だし色々納得させるのに骨は折れるけど仕事の腕は確かだよ!
だから、絶対皆の武具を鍛え直してくれるよ‼︎
…でも鍛冶屋に籠るのは珍しいから、暫くは外に出ないだろうから食事は持って行ってあげようね」
ロマンは剣の心配とアル自身の心配をし、その背中が梶谷の中に入るまで見送っていた所にサラが心配は要らないと話した。
それは偏にアルの腕を信じているからこそ出る言葉であった。
しかしそんなサラでも鍛冶屋に籠って作業は珍しいと話し、仕事は暫く掛かるだろうと話しながらかぼちゃ亭の中に入って行った。
「それじゃあ皆、アルが武具の鍛え直しが終わるまではアイアン村で待機しましょうか。
あ、サラにロマン君、貴女の上級弓『フェザーボウ』や弓兵用防護服でも上位にある『賢人の衣』にフルで魔法祝印を、ロマン君は防具に第4の魔法祝印を掛けて良いかな?」
「えっ、良いの⁉︎
じゃあ付けて‼︎」
「僕もお願い、エミル」
そうしてエミルが手を叩き、アルの仕事が終わるまでは村に残ろうと話すとサラ達もロマンも頷き、アイアン村で暫く滞在する事になった。
するとエミルは丁度良い為サラのフェザーボウと賢人の衣に魔法祝印を掛けると提案するとサラは快諾。
ロマンも了承しそれを聞きエミルは杖を取り出し早速準備に入った。
「先ずフェザーボウ、此方には射程距離アップ、威力アップ、魔力浸透率アップ、そして矢の速度アップを。
次に賢人の衣には防御力アップと魔法ダメージ減衰、回復力アップ、そして移動速度アップ魔法祝印全部IVを付与‼︎
更にロマン君の防具全部に強度アップIVを付与‼︎
えい‼︎」
「お、おぉ〜‼︎
凄い、この服着てるだけで走るスピードが上がった事が実感出来る‼︎
ありがとう、エミル‼︎」
そうしてエミルは後衛のサラに掛ける魔法祝印を考えて決め、直ぐに距離を空けて其処から速度が上昇し絶技用の魔力浸透率も上がった矢を放つのと元から距離が空いてる場合は射程距離が上がった弓で狙撃すると言う無駄が無い魔法祝印を掛けていた。
それにサラは大喜びし、エミルの手を持ち屈託の無い純粋な笑顔を向けていた。
「僕の防具も強度が上がって、更に硬くなったよ。
ありがとう、エミル!」
そしてロマンも第4魔法祝印の効果を確かめるべくアーマーをガントレットで叩くと先程よりも硬くなった事が分かりエミルに礼を述べていた。
「…さて、そろそろ食事にしてアルにも食事を運びましょうか」
「そうだね。
じゃあリィナさん、早いですけど晩御飯の用意をお願いします!
それから暫く宿泊しますのでよろしくお願いします!
後先程のお皿の代金は弁償致します」
「はい、わかりましたよ!
あ、皿は良いですよ、沢山ありますから!」
その後魔法祝印を掛け終え、やり切った表情を見せたエミルは早速食事にしようと咳に着きながらリィナに食事を注文し始め、更にお皿弁償と暫く滞在する為に宿泊すると言いリィナもそれを聞き宿泊者名簿にロマンやエミル、サラ達の名を書き始めていた。
因みにお皿の弁償は向こうの意思を汲みしなくて済まされてしまった。
「(…さて、私は過去の課題に決着をつけましょうか。
ライラの時代で結局片付けられなかった課題を…)」
そしてエミルは首からぶら下げた魔血晶に手を掛け、ライラの時に残してしまった課題の着手に掛かりこの滞在期間中にそれを片付けてしまおうと考え運ばれて来る食事を口にしながら思案するのであった。
此処までの閲覧ありがとうございました。
ロマンの剣、更にボロボロになってしまうの巻。
この理由についてはまた説明を挟みます。
今回は魔血晶、絶技の名前について書きます。
魔血晶:魔族が念話の媒体として頭に付いた結晶にして魔族の核と言うべき存在。
これを回収した名あり魔族や魔王が魔力を送り込む事で肉体が消えた魔族が復活してしまう。
よって魔族との戦いではこれを破壊する事が最優先になる。
なお名無し魔族や地上界の者が魔力を注いでも地上界の者を不快にさせる光を放つだけである。
絶技の名前:絶技は下位、上位に分かれており例えば風の下位絶技の名前は疾風○である。
この○部分には剣や斧、弓や槍等の武器の種別の名が入る。
しかし光の絶技、闇の絶技だけは名前が固定されている。
次回もよろしくお願い致します。




