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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【五章再開】  作者: くまだ乙夜
三章 テウメッサの狐編

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87 リゼ、騎士団長から手合わせを申し込まれる


 見事な連携で火と水属性の魔術を当ててきた。


 相克する相性の魔術を同時に当てると結界は脆い。どちらにも寄せることができないから。


 壊れるかと思ってビクビクしていたけれど、なんとかしのぎきった。


 よし!


 わたしは高く飛び上がって結界をオフに。


 落下先をひとりの結界の上に指定して、着地と同時にブーツの威力を最大にした。


 結界が弾けて、一名脱落。


 もう一名が下からすくい上げるように剣で斬りかかってきたけれど、結界ではじき返した。


 木刀でガンガン叩かれてるけど、威力は大したことなし。


『結界でしっかり守れてれば剣で攻撃する意味が薄い』


 ――ってこういうことだったんだなぁ。


「余裕そうだけど、そろそろ魔石の燃料切れじゃない?」


 男の子が話しかけてきた。


 おっとっと、そうだった!


 魔石は切らしちゃダメ、絶対!


 わたしは結界用の護符につけている魔石に触れ、【複製】の【祝福バフ】をかけて、魔石を倍加させた。


 男の子がびっくりしてる。


「は――!? なんだよそれ……!」


 その一瞬の油断が命取り!


 高く跳んで、結界を踏みつけ、ブーツの出力を最大にした。


 結界が解けて、わたしは男の子の横にすちゃっと着地。


 三人とも脱落させたから、わたしの勝ち!


「なんだ。テストにもならないな」


 ディオール様がフフンとリオネルさんを見たせいで、リオネルさんがムカつき気味にニヤッとした。


「いやー、今のは新入りばっかだからねぇ。リゼちゃんならちょうどいいかと思ったんだけど、ちょっと舐めてたわ。中堅どころ呼ぶから、ちょっと待っててくれる?」


 リオネルさんが遠くにいる騎士さんに何か命令してから、また戻ってくる。


「次に呼ぶやつらなら、日常的に魔獣と戦ってるから、倒せばだいたいどのくらいの魔獣と戦ったことになるか分かるよ。段階的に強くしてくから、がんばって」


 ――そんなこんなで三十分後。


「おー、十人抜きかぁ! やるねぇ、リゼちゃん!」


 疲れてぜーぜー言いながら横たわっているわたしに、リオネルさんが拍手してくれた。


「平気か、リゼ? 呼吸が落ち着いたら向こうに座ろう」


 ディオール様がわたしを助け起こしてくれて、天幕の下の椅子に座らせてくれて、サイドテーブルにレモンの浮いたお水を置いてくれた。


 どこから持ってきたんだろう?


 きょろきょろ見渡したら、おぼんを持って立ち尽くしている騎士さんらしき人がディオール様の後ろで怯えた顔をしていた。


 正面の椅子にリオネルさんがかけて、ベラベラ喋る。


「最後に倒したやつが、よく跳ねる昆虫系の魔獣くらい? てわけで、そのブーツ、並みの魔獣は振りきれんじゃね? いやぁ、ここまでやるとは思ってなかったわ、すげーすげー」

「ありがとう、ございます……」

「特別身体の動きがいいとも思わねーけど、魔道具の使いどころがうまいねぇ。製作者だから?」

「当然だろう。『ギュゲースの指輪師』だぞ? あれだけ高度なものが作れるなら魔術師としても一流に決まっている」


 ディオール様が自慢してくれている。


 わたしは照れてしまってへらへらしていた。


「結界もめちゃくちゃ頑丈だねぇ、ちょっとびっくりしたわ。それ、最大出力でどんぐらいなわけ?」

「わ……分かりません。わたしがベースにした作品では、厚さ十二ミリの鉄板くらい、と聞いてます」

「はー! サントラール騎士団の標準配給品並みじゃん……」


 そこでリオネルさんは変な顔になった。


「待てよ……もしかしてそのブーツも?」

「これも、騎士団配給装備の型落ち品がベースの技術になってます」


 リオネルさんはそこで初めて、真顔になった。


 まっすぐわたしを観察する目つきが、今までと全然違う。


「型落ち品とはいうが、おそらく現行装備品より性能ははるかに上だぞ。改良者のリゼの腕がいい証拠だ」

「だよなぁ……おかしいと思ってたんだよ。『めっちゃ飛ぶじゃん』って」


 リオネルさんの話し方から陽気さが消える。低い声のつぶやきは、冗談交じりだったそれまでの会話が嘘のように真面目だった。


「『ギュゲースの指輪師』ってどんなもんかよく分かってなかったけど、今理解したわ」


 リオネルさんは椅子から立ち上がった。


「『ギュゲースの指輪師』どのに、俺も手合わせを申し込みたい」


 かたわらに置いてあったハルバードの柄尻を踏んで跳ね上げ、柄を掴むリオネルさん。


 その瞬間に出た魔力のきらめきに、わたしはヒエッとなった。


「お、お断りします!」

「えー!? なんでよ!?」

「リオネルさん、魔力が高い人ですよね!?」

「おお、よく分かったね。抑えてあるのに」


 一瞬だけど、色のついた魔力が見えた……!


 あれは強い魔術師の証……!


 ディオール様クラスでないと出ないオーラだ。


 もちろんわたしは出ない。


 色付き魔術師クラスには、結界なんて意味がない。


「いいじゃん。相手に不足ないっしょ?」


 リオネルさんがわたしの結界用の護符を指さす。


 護符はわたしが無秩序に継ぎ足した魔石で歪んでいた。


「そんなに湯水のごとく魔石使えるなら怖いもんなしでしょ。よっぽど金持ちなのかと思って見てたけど、もしかしてそれ、無から精製・・・・・してる?」

「はい」

「なんだよそりゃ! 反則じゃん!」


 わたしは魔石増やすのに時間がかからないからあんまり意識したことなかったけど、普通の人は限られた魔石でどう戦うかも考えないとダメなんだよね。


 普及用の廉価版を考えるのって難しいなぁ……


「ズルで勝ったリゼちゃんは俺とも対戦すること! はい決まり!」


 リオネルさんが武器で運動場の真ん中にぐるっと丸を書く。


「リゼちゃんはこの円から俺をほんのちょっとでも押し出したら勝ち。俺はリゼちゃんの結界を割ったら勝ち。リゼちゃんはこの外から攻撃してきてもいいよ。他に必要なハンデある?」

「ディオール様……」


 助けてほしいなぁ、と思って横目で見たら、ディオール様は冷淡にも、あごでリオネルさんを示した。


「ブチのめせ」

「む、無茶ですぅぅぅぅ!」

「大丈夫だ。リゼならできる」


 無責任なことを言って、ディオール様はわたしを円の近くに押し出した。


 そのとたんに、バチッと雷が落ちたみたいな白光が出た。


「おー、かってぇかってぇ。これで鉄板十二ミリは嘘だろ。倍ぐらいあるんじゃねえの?」


 わたしは思わず護符を握りしめた。


 魔石の魔力の大半が持っていかれた。


 こんなのは初めてだ。


「穴開けても俺の勝ちだよね?」


 リオネルさんがハルバードの先端にある槍で突く構えを取った。


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