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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【五章再開】  作者: くまだ乙夜
二章 ハルモニアのペプロス編

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61 ファンシードレスの発表会


 わたしはガーデンパーティ当日に、アニエスさんを連れて王宮にやってきた。


 馬車がたくさん並んでいて、可憐なコスチュームの女の子たちが続々と降りてくる。


 常春の妖精国がドレスコードなだけあって、みんな明るい色の服を着ていて、わたしは見ているだけで楽しかった。


「リゼ、行かなくていいの?」

「もうちょっとファッションチェックを! ああっ、あの子もわたしの作った羽使ってくれてる!」


 ちょうちょの羽、けっこう売れたなーって思ってたけど、使ってくれる人がいるとやっぱりうれしくなるね!


「リゼ、行くわよ! 王女殿下をお待たせするものじゃないわ」


 ぐずぐずしていたせいで、最後にはアニエスさんに怒られてしまった。


 後ろ髪を引かれているわたしに、アニエスさんが苦笑する。


「お手をどうぞ、お嬢様」


 アニエスさんがおどけてわたしの注意を引いた。


 わたしの手を取るアニエスさんの動作がキマッていたので、ついドキッとしてしまった。


 エスコートされながら歩いていたら、周りにいたお嬢さま方が道を開けながらささやいてくれた。


「あの人たち素敵」

「かわいいカップル!」


 そうでしょう、と言ってやりたかった。


 アニエスさんが従者の服を選んでくれたことに感謝しなきゃ。すっごく似合ってるからね!


 会場で待っていたマルグリット様も、ちょうちょの羽と、こないだ突貫で機能拡張したドレス一式を身に着けてくれていて、まさに妖精姫だった。


 マルグリット様はわたしを見つけるなり、感激したように抱擁してくれた。


「そのローブ、使ってくれてるのね!」

「王様からいただいたものなので! かわいくってお気に入りなんです!」


 それからわたしは、ちょっとだけ声を潜めた。


「あと、王家に反乱の意思とかはないので……!積極的に王家の色を着ていきたいなって……!」

「誰もそんなこと思わないわよ、偉大なマエストロに!」


 くすくす笑っているマルグリット様の前に、アニエスさんを呼んだ。


「今日はうちの社長も連れてきました!」

「ディアマン男爵が娘、アニエスでございます。このたびリヴィエール魔道具店の商社代表を務めることになりました」

「女性社長――仮装は男装なのね、かっこいいわ!」

「色は赤にしちゃったんですけど」

「あらいいじゃない、赤も似合っているわ」


 これでどこからどう見ても国王派閥だよね!


 授賞式のときは何にも知らなくて失敗しちゃったから、今度こそ。


 妖精国のイメージでセットされたテーブルでお茶とお菓子をいただき、わたしは『朝露の金平糖』と『妖精の指ビスケット』をちまちま食べた。


 わー、妖精のお菓子って、サイズもかわいい……


 ……若干の物足りなさ!


 心持ちしょんぼりしていたら、マルグリット様がみんなを集めて、車座に座らせた。


「皆様ごきげんよう。今日の仮装パーティに付き合ってくださってありがとう」

「いえいえ」


 わたしの横に座っている女の子が、ぼそりと低い声で返事をした。


 たぶん、そのまたお隣の女の子たちに聞かせるつもりだったのかな?


 ひそひそとした話し声が聞こえてきた。


「妖精とか……ほんときっつかったですわぁ」

「ねえ~。お美しいマルグリット様ならともかく、私たちのような者には……ねえ」


 ハハハと、あまり感じがよくない乾いた笑い。


 ちらりと確認すると、土妖精のノームや、魔獣に扮した女の子たちがいた。


「本日わたくしがみなさんに仮装をお願いしたのは、偉大なマエストロの作品をより堪能していただきたかったからですわ」


 マルグリット様は何も聞こえていないのか、普通にお話を進めている。


「リゼ様、今日のわたくしのドレスについて、皆様に解説していただけて?」

「はい」


 わたしはマルグリット様の真後ろに行って、そのほっそりしたウェストに両手をかけた。


「わたしの手にご注目ください! よく見ると、おかしなことに気づきませんか?」


 わたしの手は、幻影魔術の影響で、ぐんにゃりと歪んでいた。おへそに向かって、凹型にへこんでしまっている。


「これは、ドレスにかけた魔法のせいなんです!」


 わたしはマルグリット様のドレスの機能をオフにした。


 すっと手が正常に戻る。


 ついでに、ほっそりしたマルグリット様のお腰も、自然な古代風ドレスのシルエットに早変わりした。


「このドレス、なんとコルセットをつけてなくても、自動的にコルセットをつけたときのシルエットに補正して、幻影魔術を投影してくれるんです!」


 周囲がどよどよとどよめいた。


「今日のわたくしは、コルセットをつけておりません」


 マルグリット様が誇らしげに宣言。


 周囲はさらにどよめいた。


「スリムに見える錯視機能がついているんです。もうこれで、ダイエットなんて必要ない! 晩餐会で出てきたせっかくのおいしいお料理が全然おなかに入らなくて悲しい思いをすることがなくなるんです!」


 マルグリット様はちらりと、土妖精ノームたちの方に視線を投げた。


「今日の仮装大会は、容姿に悩むすべての女性を解放する記念日にしたいと思っておりましたの」


 マルグリット様はドレスのスカートをたくし上げて、ほっそりした足首を見せた。


「この靴をごらんくださいませ。こちら、ヒールがこんなにも高くついておりますでしょう? でも――」

「これも錯視機能なんです!」


 わたしがスイッチをオフにすると、マルグリット様の靴はハイヒールから、どっしりした編み上げのブーツに早変わりした。


「歩きにくい靴で、背伸びして歩くことももうありませんのよ!」

「危なくってとっても歩けないようなデザインの靴にすることもできますね! かわいい靴を履きたいけど、足が痛くなるのはイヤ……なんてときにもおすすめです!」


 わたしの靴は金属製のツタが絡まるデザインになっているけれど、これも幻影なので、オフにすればただの革靴と分かる。


 本物だったら足の皮膚がざくざく切れちゃうけど、幻影なら大丈夫!


「あと、こっちはちょっとお高くなっちゃいますけど、身長と体重も見せかけの部分は操作できますよ!」


 わたしは自分の『花咲か小人』の服の機能をオン。


 とんがり帽子の道化スタイルなわたしが、みるみるうちに小さくなって、マルグリット様の半分くらいの大きさに。


 これはわたしが魔力から紡いだ魔獣素材の超劣化品に、『ギュゲースの指輪』の技術を一部流用した超めんどくさい作品!


 『姿隠しのマントタルンカッペ』は、マントの表面に幻影を投影するけど、『ギュゲースの指輪』は着用者の周囲の空間を結界化して、幻影を投影する。


 防御用の結界魔術と同じ原理を一部流用しているので、おそろしく燃費が悪く、秒で魔石を消費する。


 わたしは魔石ならいくらでも増やせるので、採算を考えずに作ってしまったバカの作品だよ!


 勢いって怖い!


 もちろん、お客様からオーダーを受けたときに改良する予定。オーダーが来るかも分からない試作品なら、こんなものでいいでしょ。


 わたしは体重の調整をする機能もオンにして、まるまると太っちょな姿になった。それからスイッチを反対に押して、やせ細る月みたいに、ちょっとずつ細くなっていく。


「すばらしいと思いませんこと!?」


 マルグリット様が褒めちぎってくれて、わたしはいい気になった。


「今日は試供品のマントを用意してきました! 小人みたいにちっちゃくなるのを体験してみてください!」


 わたしはそう締めくくって、手近な人たちにマントを配り始めた。


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