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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
七章 復讐の天秤編

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249 リゼ、貢ぎ物の製作を命じられる(2/2)

 生活魔法は、精霊さんや神様から力を借りて起こす奇跡を、使いやすくまとめたものだ。


 だから、上位存在の気まぐれで、力が発動したりしなかったり、威力が強まったり弱まったりする。場合によっては、呪いになって正反対の力が降り注ぐことさえある。


 ただ、その中でもロジカルに作用する低威力の無害な呪文というのはたくさんあって、精霊さんたちも、膨大な依頼を精査している暇がないから、いちいち人によって威力を変更したりせず、半自動的に願いを処理しているみたいだ。


 無制限使用が可能な生活魔法を集めて、きちんと呪文を組み立てると、とんでもない威力を発揮したりするのも、また生活魔法の魅力なのだ。


 わたしが得意な魔道具づくりの呪文も、ほとんどがお祖母様から教わった、生活魔法の魔改造でできている。


 それに引き換え、魔術言語は諸説あるけど、特にどの存在から力を借りている、ということもないらしい。大勢の魔術師が長い年月をかけて検証し尽くしているから、呪文と効果が安定しているのが強みなんだそう。だから、生活魔法を通らずに、最初から魔術言語だけですべての用を足す人もいる。貴族の人たちはとくにその傾向があるのだということだった。雑多な魔法を先に覚えてしまうと、体系的に学ぶときに、かえって障害になるとか言っていた。


 ……みたいなことを、わたしはどこで覚えたんだっけ?


 おばあさまが言ってたんだっけ? 学校だっけ?


 最近、いろんなおべんきょーをしたせいで、よく分からなくなっている。


「祝福魔法であれ何であれ、神の寵愛を得るには、優れたものを捧げるのが手っ取り早い。昔は人間を供物として直接捧げていたけれど……」


 といってアルベルト王子がわたしをちらりと見るので、飛び上がりそうになった。


「わ、わわわわたしですか!? おいしくないですよ!?」

「殿下は作ったものでいいと言ってるだろう。人の話はよく聞きなさい」


 じゃあなんで生け贄の話をしたの……?


 半分ぐらい疑いの目でビクビク見上げていたら、王子様は手で隠して、笑いを堪えていた。


 ……もしかして、意地悪された……?


「リゼ、君は特にルキアから力を借りているというだろう? おそらく、今は使えないんだろうが」

「はい。全然ダメです」

「しかし、君はこれまでに私が知らないような高難易度の魔法をいくつも【祝福魔法(バフ)】として借りてきた。それはつまり、それだけルキアからの寵愛が深いということだ」


 そうだったかも……?


 ディオール様に手を貸してもらって、攻撃力爆上げの魔剣を作ったときも、ルキア様から借りてきた魔法にものすごく驚いてたもんねぇ。


「君なら、ルキアに願いを聞き届けてもらえるようなものを作れるはずなんだ」

「そうだね」


 王子様も頷いている。


「公爵が言いたいのは、ネメシスがバフを停止してきたとしても、その上位存在が異変に気づいてくれれば、もしかしたらそちらから禁止を解いてくれるかもしれない、ってことだよね、要するに」

「……担当者にいくら言っても仕方がないときは、お客様と直接お話する、みたいなことでしょうか……?」

「そんなところだね」


 騎士団の人たちもそんなことを言ってパレードしてたもんね。


 こうやって実際に停止されちゃった今は、効果なかったんだなぁってどうしても思っちゃうけど……


「そういえば、今回、どうして停止されちゃったんでしょうか……?」


 アルベルト王子は、ディオール様と顔を見合わせた。


 ……なに?


「直接的な原因は、あのゴーレムのコア……になるのかな?」

「そうだと思いますが」

「どこかの誰かが、魔道具で魔獣の死骸を弄んでいたんだよ。君も一度退治したそうだけど」

「ディオール様が遭難しちゃったときのやつですか?」

「そうそう。同じ犯人なのだと思うけどね」

「しかし、彼らも犯人を追っていたようですが」

「自作自演ではないの?」

「殿下も現場に残されていた資料をご覧になったでしょう。工作とは思えませんでしたが」

「どうなんだろうね。墓場のあれは別の手口だったりしない? ゴーレムは間違いなく君を狙ったものだったはずだ――」


 王子様はそこで、わたしがぽかーんとしているのに気づいて、にっこりした。


「……まだ私たちにも事件の全貌は分かっていないんだ。分かり次第教えてあげるよ」

「は、はい」


 ゴーレムが? ディオール様を狙った……?


 誰かに狙われてたの……?


 王子様は話題を変えるようにして、「そういえば」と言った。


「市街壁の結界も止まっているようだね。魔獣の被害がちらほら上がってきているんだ」

「ひぇ……」

「大急ぎで対策を取ってるけど、とにかくバフの停止を解除しないことには始まらない。それで、やれることは全部やろうという話になっているんだ」


 わたしもそれに賛成だ。


 魔獣は怖い。魔法なしで退治するなんて、絶対に無理!


「リゼルイーズ嬢。君にはぜひ、ルキアに献上する鏡を作ってほしい」


 ――八十年ほど昔、大きなバフの停止があった。


 そのときは王国中で手を尽くして祈祷や奉納をしたそうなんだけど、その中にひとつ、ルキア様から直接職人が祝福を賜ったほどの名品があったそう。


 わたしには、その再現をしてほしい、とのことだった。


 文献はディオール様が要点を翻訳してくれた。


 そこから読み取る限り、鏡の作り方は今より少し古い。途中まではほぼ、ガラスの製造工程と同じだ。そこから磨き上げて、水銀を裏に貼り付ける。


 別に難しくないなぁとは思ったけど、念のためディオール様に聞いてみる。


「手作業でやるんですよね……?」

「そうなる」


 ポイントはやっぱりそこかぁ……


 ガラスを平らに美しく擦り上げるのは、まぁまぁ技術がいる。


「専門の職人さんにお願いした方が早いのでは……?」

「もちろん、各地の神殿や職人と連携する手はずは整えているよ。遅くとも明日の昼には、最初の祝別の儀が始まる」

「おおー……」

「しかし、ルキアにとっては君は特別らしいからな。特別な加護を与えた職人からの貢ぎ物であれば、神々は必ず手を伸ばす」


 まあ、確かに。いつもマントとか作らせてもらってるもんなぁ。


 たまには大がかりなプレゼントでお返しをしてもいいのかも?


 どうせ今は魔法も使えないし、結界が復活しないと生活の復旧もままならないからねぇ。


「分かりました!」


 奉納物製作プロジェクト、始動します!


◇◇◇


 おうちに戻ってから、お店の郵便をチェックすると、いろんなお客様からの伝言と一緒に、アニエスさんからの置き手紙も見つかった。


『魔法が使えなくなってしまったので、学園が閉鎖になった。お店も開いていないようだから、しばらく休む。長引くようなら、テウメッサの狐のときのように、王都の外に避難するつもりだ』とある。


 さすがはアニエスさん、しっかりしているなぁ。


 わたしからも『しばらくお休みにする予定だから、また開くときに連絡します』って書いて、送り返しておこう。


 学園も休業なんだったら、製作に集中できる。


 よしよし、がんばろう。


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