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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
七章 復讐の天秤編

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235 道具と兵器


「ただ、君が自分なりに制限した方がいいと考えたのは素晴らしい。職人としての仕事意識の表れだ」


 慰めるような言葉を口にしてもらったけど、やっぱり嬉しくはなかった。


 不満そうなわたしの顔色を見て、ディオール様がいい加減な褒めモードを引っ込める。


「その部分は、騎士団長と陛下の間でも意見が割れている。それぞれのトップが様々な意見を集約してもなお解決が難しい問題に、君が答えを見つけられるとは思わない。何も考えなくていい。陛下の言う通りにしておけば間違いはない」


 ディオール様、そういえば前にもそう言っていた。


「ディオール様も同じ意見ですか?」


 陛下と同じように、規制してないものは好きに作っていい、って思ってるんだろうか。


「わたしが作った武器で、誰かが傷ついたり、悲しい思いをしたりするかもしれないんですよ」


 深く考えると眠れなくなりそう。


「それでいいと思いますか?」


 ディオール様は何も考えていない感じで、軽く頷いた。


「もちろん、そう思っている」


 わたしは何だかすごくがっかりしてしまった。


「……冷たいんですね」


 もっと優しい人だと思ってたんだけどなぁ。


 わたしが悩んでたら何かいい感じのことを言ってくれるのがディオール様だと思っていた。


 すごく悲しい。


「そんなに睨まないでくれ。わかった、今のは私が悪かった」


 ディオール様が両手を万歳する。


「先に言っておくが、私の意見は、今まで通りにすべきだというので変わりない。冷たいと言われようと、それが君にとって一番安全だからだ。ただ」


 あまり気乗りしない様子で、ディオール様は少し間を置いてから、口を開く。


「君に命がけのリスクを取る覚悟があるというのなら、君の良心に従って、売り物と相手を選べばいい。私は力を貸す。安全に暮らせるよう守るのが私の役目だ」


 ディオール様が険しい顔をしているので、わたしはちょっと怯んだ。


「そ……そんなに危ないことなんですか?」

「結論から言えばそうだな。説明が必要か? どうせ君は聞き流すだろうが」

「そ、それは、ディオール様次第だと思います! 楽しく聞けるようにお話してくれればいいじゃないですか!」

「……言ってくれる」


 ディオール様は難しい顔をして黙り込んだ。


 十秒。二十秒。三十秒。


 ……


 ずっと考え込んでいるので、わたしはだんだん申し訳なくなってきた。


「あ……あの……分かりました、いいです……」


 取り消すと、ディオール様はすごくほっとしたような顔になった。


「……そうだな、君の望む答えではないだろうが、もう少し簡単な解決方法ならある。君が作る魔道具には、独自にルールを課せばいい」


 ディオール様は指を一本立てた。


「ひとつ、デザインを工夫して用途を限定する。たとえば剣は人を傷つけられるが、はさみでは難しい。紙を切りたい人間に剣を売る必要はない。よく切れるはさみを売ればいい」


 それはそうかも?


「何かを切る魔道具を設計するときは、特定の用途にしか使えないようデザインすると、危険な事故も減る。高性能の裁断能力を持たせても、はさみの形なら大怪我になりにくい」


 うーん……


 刃先を丸めてあるから、突き刺したりはできないもんね。


 ディオール様が二本目の指を立てる。


「ふたつ、性能に制限を加える。野菜を切る包丁に、まな板や床まで真っ二つにする切れ味は必要ない。剣だって過剰な切れ味を搭載すれば、逆に使いにくくなる」


 それはそうかもしれないけど……


 そして三本目の指も立てた。


「みっつ、機能の強化を、既存の道具の延長上に限る。たとえば非常に切れ味の鋭い剣は結局のところ使い手次第で荷物にも凶器にもなるが、切りたいと思った相手をどこまでも追いかけていく機能は子どもが扱っても恐ろしい凶器と化す」


 それは怖いなぁ……


 【追尾(ホーミング)】機能搭載のナイフは、殺傷能力が段違いに高そうだ。


 そういうのをいたずらに作ってバラまく必要はないのかも。


「魔法のない道具を使っても使い手に実現できるのなら、魔道具もあくまで道具と言えるだろう。不可能を可能にする魔道具は、人の手に渡さないことだ」

「不可能を可能に……」

「人間に死ぬよう命じる魔道具は作ってはいけないが、相手に簡単なルールを守らせる魔道具は作ってもいいだろう。自主的に立てた誓いを守らせるようなね。犬を猫に変える魔道具や、会話ができる魔道具はダメだが、犬に『待て』をさせる魔道具なら構わないはずだ。ただし、死ぬまで餌を『待て』させるような、虐待的な命令に強制力を持たせてはいけない」


 わたしはごはんを前にうなだれているフェリルスさんを想像した。


「つまりフェリルスさんのごはんを抜く魔道具は作っちゃいけないけど、無駄吠えを抑制させる魔道具なら作ってもいいってことですか?」


 ディオール様は一気に変な顔つきになった。


「……作れるものなのか?」

「どうでしょう? こないだ、音の出る魔道具を作ったのでもしかしたら……」


 吠えても聞こえなくなる魔道具とかならできるかもしれない。


「あ、でも、フェリルスさんはすごく傷つくかもしれません。ある意味虐待……?」


 ディオール様はすごーく悩ましそうな顔をしながら、すごーく不本意そうに、


「……なら、やめとくか……」


 と、つぶやいた。


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