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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
六章 女神のオルゴール編

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225 リゼ、まごころを君に


 たとえば、自動で和音をくっつける機能。


 オルゴールが『キーン』と鳴ると、自動で周波数から調和する音を算出し、和音を付け加えるようにできている。


 周波数で言うところの一、五倍の音を足して、綺麗な和音にしてしまうのだ。


 すごい仕組みだと思う。


 この式がちゃんと機能すれば、小さなオルゴールでも、マルグリット様のお部屋で聞いたような演奏を流せる。


 いいなぁ。修理できたら一度聞いてみたい。どんな音がするんだろう。


 ――分かったことその二。


 オルゴール本体のオリジナルの楽曲は、どうやら固定じゃなかったかもしれないこと。


 というのも、この【魔術式】、明らかにオルゴールの音色を生み出す以外の機能がたくさんついてる。


 ディオール様が指摘していた箱も、どうやらたくさんある機能のうちのひとつみたいだ。


 究極的には、手拍子とか、鼻歌なんかでも、原型を留めないほど加工して、オーケストラに持っていけるような、そんな式なのだ。


 オルゴールのために描き下ろした【魔術式】ではなさそう。


 もともとどこかに書かれていたものを移植してきて、その流用で、オルゴール専用の式を少し付け足したんじゃないかなぁ。


 その証拠に、オルゴール本体の音を参照して、やれ和音だ、やれエコーだ、音階部分の周波数帯の増幅だ、それ以外のカットだ、と、エフェクトをかける式がまるごと残ってたけど、そこだけちょっと、なんというか、描き方が直接的、というか……


 他の式は高度に洗練されているのに、後から継ぎ足した部分がすごく素人っぽくて、わたしにも読みやすいのだ。


 他のとこはかなり難しいよ。


 あんな曼荼羅みたいな式、書くのも読み解くのも一苦労だと思う。


 でも、オルゴールに残っていた、音階の周波数を合成するエフェクトは、本当にそのまんまだ。


 試しに、合成している式から、一番大きく強調されている周波数帯だけ抜き出していってまとめたら、なんと!


 原曲っぽいものが完成してしまった!!


 えぇ……


 わたしもよくやるけど、行列のデータを行列から引用しないで、ベタ書きして新しい【魔術式】を直接書いちゃうの、本当になんというか、素人さんの……


 ……まあいいか。


 わたしも人のことは言えないからねぇ!


 わたしの【魔術式】も、ドワーフさんが見たら大爆笑するような出来のところいっぱいあると思う。


 まあまあ。動けばいいんだよ。動けば。


 昔の話だけど、お姉様の描く魔術式よりはわたしのやつの方がはるかにうまく動いていた。


 でも、お姉様に言わせると『馬鹿の描き方』『下手くそ』らしいので、ロジックを超えたところにも魔術式の極意は存在するのだ。


 わたしは『まごころ』がポイントじゃないかと思ってる。


 神様、お願いします! って必死に祈ると通じるんだよ。


 これが完成しないと困る、もう三日寝てない、死んでしまう……


 そんな強い願いが魔術式を強くするのです。


 お母様たちも、自分を追い込めば追い込むほど魔道具の品質が上がるということは何となく経験則で知ってた気がするんだよなぁ。


 わたしへのイジメがひどくなった一因だったのかもしれない。


 まあ、それはさておき。


 魔術式のピークの周波数帯から算出して生み出した、どうやら原曲っぽいナニカ。


 マルグリット様たちが作ってくれた不完全版にかなり近いので、合ってると思う。


 でもこれだけだと、わたしにはどんな曲だか分からないんだよなぁ。


 いったいどんなメロディなんだろう?


 あーあ、本体が生きてればなぁ……


 どうにかして動かせないかなぁ?


 わたしは眺めている間に行き詰まってしまった。


 気を取り直してお茶を淹れる。


 お湯を沸かしている間に、ふと、うちの警備システムに目がいった。


 おばあさま作、【エコーの声】。


 これ、オルゴールの仕組みを調べた今だから分かる。


 音波の制御をする魔道具だったんだなぁ。


 あらかじめ、人間の耳には聞こえないくらい高い音波を家全体に張り巡らせておいて、戻ってきた音波の形状に変化があればお知らせしてくれる、という原理だ。


 ……今まで何にも分からないで使ってたぁ……


 つくづくおばあさまの魔道具はすごい。


 使い方を知らなくても、とりあえず触ってみれば使えるように設計されている。


 ……そして、偶然なのか、それとも何か縁があるのか。


 中身の【魔術式】も、壊れたオルゴールとかなり似ている。


 オルゴールとの違いは、こっちが大容量の空きスロットを持っていて、そばで鳴らした音を格納してしまえる、というところ。


 格納するといっても、本当に音自体を封じ込めているわけじゃない。


 音の成分を時間ごとに細かく計測したあと、その採取した音の成分を新たに合成して出力するのだ。


 そのときに、魔力を周波数通りに振動させて、音に変換する仕組みが備わっている。


 ……


 あれ?


 そうだ。


 エコーの声には、音を鳴らす(・・・・・)出力装置がついてる。


 これ、もしかして、オルゴールの【魔術式】に入ってる音のデータだけ取り出して、鳴らそうと思えば鳴らせるのでは……?


 繋げ方はちょっと工夫いるだろうけど、わたしにやれる範囲だ。


 やり方がぱっと頭に閃いて、わたしはとにかく、両方をドッキングさせてみることにした。


 ――結果はそれほど苦労もなく出た。


 わ、わああああ!


 た、大変だああああぁぁぁ!!


 すごいもの出てきたあぁぁあぁ!!!


 びっくりしたわたしは、すぐさま結果を人に見せたくなった。


◇◇◇


 魔術式の解読が済んだその日の夜、わたしは急いで手紙を書いた。


『オルゴールが完全に修復できました』


 バリガントさんにあてに特急で送ると、彼は飛んできた。


 本当にとるものも取りあえず来た、という感じで、鎧兜装備の騎士姿に、旅装のマントを羽織り、背嚢を背負っている。


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