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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【六章進行中】  作者: くまだ乙夜
六章 女神のオルゴール編

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208 リゼ、気まずくなる(1/3)


「お元気そうで何よりです!」


 いつも言われている言葉をそのまま返すと、ディオール様はちょっと気が抜けたように笑ってくれた。


「君に言われると複雑だな」

「へ、変な意味じゃないですよ?」

「君はそうなんだろう」


 笑顔のディオール様、久しぶりに見た。


「君こそ元気そうだ。顔が見られてよかった」

「わたしも会いたかったです……!」


 とかなんとか言っているうちに、シチューが運ばれてきた。


 寒い季節の定番! だけど今日はブロックのどーんと大きな牛肉が入ってる!


 わぁぁぁぁ、美味しそう……!!


 さっそくナイフをお肉に入れると、するっと筋が解けて、ほろりと崩れた。


 すかさずスプーンですくって口にする。


 柔らか~~~~!


 でも、いつものシチューと全然違うお味がする。


「こちら黒ビール煮込みのシチューでございます」


 もぐもぐ味わっていたら、そっとピエールくんが解説してくれた。


「熟成したビールには肉を柔らかくする効果がございまして」

「それでこんなにホロホロなんですね!」


 スプーンで直接崩せるくらい柔らかくて美味、もう最高。


 シチューのスープは、熟成したビールの味なのか、深く煎ったコーヒーみたいな苦味が口に残る。


 でも牛肉の脂と、スープに溶けたたっぷりのタマネギが甘すぎて、全然気にならなかった。添えてあるニンジンとマッシュポテトもたまらない。


「大人向けのコクのある味わいでございますが、いかがでしょうか、苦すぎたりはしませんか?」

「とってもおいしいです!!」


 確かにこの苦味、大人向けなのかもしれない。


 この味が”理解(わか)”るなんて、わたしもなかなか大人になったのでは……?


 ディオール様は琥珀色のウィスキーを片手に、のんびり食べている。


 急いでいるわけではなさそうだったので、わたしは話しかけてみることにした。


「そういえば、ディオール様ってドワーフ様式の魔道具にも詳しいんですか?」

「いや。気に入ったものをひとつふたつ手に入れはしたが、詳しいというほどでは」


 そうだったんだ。何か由来があったのかと思った。


 わたしの魔道具以外にも、いろいろ集めているんだなぁ。


「何かあったのか?」


 聞き返してくれたので、わたしは今日のことを話してみることにした。


「実はですね、わたし今ちょうど箱の修理を頼まれてまして!」


 オルゴールの依頼の件について、思い出した順にとりとめもなく喋る。


 ピエールくんから内緒にしてって言われたところは秘密だ。


「ディオール様は? 今日は何してたんですか?」


 お仕事は言えないことが多いらしくて、答えてもらえたことはほとんどない。


 ディオール様は回答を拒否しようと思ったのか、黙ってしまった。


 やっぱりダメかなぁ。


「……ずっと分析をやっている。まったく目処が立たん」


 ディオール様が打ち明けてくれたときは、思わず食べる手を止めた。


「こないだのゴーレムからコアを拾ってきて、中身を調べているんだが。光魔法のエキスパートが様々な角度から成分を分析して、まだ何も分かっていない」


 構造式もそうだけど、成分分析などなど、物質の細かいところを見るには光関係の魔術を使う。


 わたしは魔術というより、【生活魔法】経由のルキア様の奇跡で観察している。


 どっちも似たようなもの……と思っていたけれど、学園で教わった限りだと、別物っぽい。でも、どう違うのか、わたしにはうまくイメージできなかった。


「正体不明のものが増えてきて困っている。君が閉じ込められたとかいうあの箱もだ」


 そういえば、つい最近学園で変な箱に閉じ込められた覚えがある。


 ドミニク様、元気にしているかなぁ。


 あの箱、欲しかったのにディオール様に取り上げられたんだよね。


「……あの箱、よく分からないならわたしにくれてもいいのでは……?」

「そうだな。君なら何か分かるのかもしれない」

「じゃ、じゃあ……」

「そうもいかんが」

「で、でも、新しい発見があるかも……!」

「何をしでかすか分からんやつに何が起きるか分からんものを託すやつがいると思うか」


 わたしはどうしてもほしかったので、何回か粘ってみたけど、箱は結局、くれないみたいだった。


 ……まぁいいか。


 少しお話ができた。お仕事の話なんて、これまでは絶対に口を割らなかったんだから、聞けただけよかったことにしよう。


 シチューを平らげて、そろそろお部屋に戻ってお仕事を再開しようかなと思っていたら、ピエールくんが口を開いた。


「ご主人様。せっかくですから、リゼ様にオルゴールを見せていただいてはいかがでしょうか?」


 よさそう!


 お話が弾みそうだと思ったので、わたしは誘ってみることにした。


「今ちょうどありますよ! どうですか?」

「興味はある」

「じゃあぜひ!」


 お食事が終わるのを待って、わたしはさっそく、ディオール様を引っ張り込むことになったのだった。



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