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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【五章再開】  作者: くまだ乙夜
五章 真理のゴーレム編

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「――できた! ハーヴェイさん!」


 そばでもどかしそうに見ていたハーヴェイさんに柄を渡す。


「攻撃一点特化の魔剣です! 使い方はいつもどおり! 勝手に調整入ります!」

「承知しました」


 ずっと呪文を唱えていてお喋りする余裕がないのか、ディオール様がフェリルスさんに向かって、びっと手振りで指示した。


「分かったぞご主人っ! 俺は足止めをするっ!」


 それからフェリルスさんは、先ほどディオール様がやったのと同じ動作で、びっと手振りでハーヴェイさんに指示をした。


「ハーヴェイッ!! 俺があいつの足元で邪魔をするっ! お前は全力で吹き飛ばせ!」


 わたしは後方で見てるだけ。


 ディオール様、近づきすぎですよ!


 心配だけど、声をかけて集中を殺いでもマズい。


 きっとわたしに言われなくても分かってる。


 ――最初にすごい速さでぶっ込んでいったのはフェリルスさんだった。


 スネを囓ろうとするけど、ヘカトンケイルもいい加減に懲りたのか、片足で蹴り飛ばしてしまう。


 でもその一瞬で、ハーヴェイさんが懐に入り込んだ。


 ヘカトンケイルの長い腕がハーヴェイさんに何発も打ち込む。怯んだすきに、別の腕で胴体を掴み上げた。


「【貫け】!」


 ディオール様が腕に釘のようなものを何本も何本も打ち込み、その腕を封じる――はずが、その場で傷が塞がってしまった。


 ヘカトンケイルはこの場で脅威なのはディオール様だけだと見抜いたようだ。


 ハーヴェイさんを遠くに投げ飛ばして、ディオール様の結界を壊しにかかる。


「ディオール様、これ!!」


 手持ちの護符をめいっぱい投げつけると、そのうちの一個が奇跡的に手に収まった。


 壊れた結界の割れ目を護符がなんとか塞ぎきる。


 地面に転がっている護符は自分で拾ってもらおう!


 それよりもハーヴェイさん!


 倒れているところに寄っていき、ポーションを頭の傷にかけたら、すぐに目が開いた。


「……ヘカトンケイルは」

「ディオール様を狙ってます!」

「非常にまずいですな。すぐに加勢を」

「それでですね、大事なこと言い忘れてたんですけど、この剣、相手の攻撃を反射して、攻撃に使えます!」

「今までとは使い勝手が違うということでありますか」

「そうです!! 向こうの攻撃に合わせて斬りつけたら、綺麗に跳ね返って向こうにダメージがいきます!」


 立ち上がって剣を拾うハーヴェイさんに、もう一個伝え忘れていた重要事項を言う。


「ヘカトンケイルの攻撃に合わせて、首を斬ってください! 血が大量に出ると、回復が間に合わなくなるそうです!」

「やってみましょう」


 ヘカトンケイルはこっちに背を向けている。でも、腕はこちら側にも牽制的に振り上げられているから、死角というわけでもない。


 ディオール様は防戦一方で、じりじり後退している。手持ちの護符もそろそろなくなりそう。


 ハーヴェイさんも後ろから迫っているけれど、踏み込む隙がないみたいだ。


 フェリルスさんは姿が見えない。ゴーレムもいない。


 ……勝機があるとしたら、わたしがハーヴェイさんのお古の魔剣で囮になるパターン? 攻撃が通らなくても、あの魔剣なら防御性能は激高い。


 わたしはそろりそろりと、剣が置かれている方へと、忍び歩きを開始した。


 誰もわたしに注意を向けていないのを確認し、一気にダッシュ!


 剣を拾い上げ、握り締める。


 羽根より軽い剣を構えて、とにかく突っ込んだ。


「リゼ!? 馬鹿――」


 わたしの攻撃は全然ヘカトンケイルにダメージを与えられなかった。なんかちょっとぶつかったかな、ぐらい。


 小うるさそうに、大きな腕がわたしに向かって振るわれた。


 受けた衝撃はすごかった。肘までビリビリ痺れるような手応えで、わたしは軽く後ろに吹き飛ばされてしまった。


 砂利にざりざり擦られながら、かなり後ろまで転がっていったみたいだ。


 目が回っている間に、いくつか怒声が聞こえてきた。


 寝てる場合じゃないので、気力を振り絞って起き上がり、くらくらする頭で目をすがめたら、ちょうど首を斬られたヘカトンケイルが倒れ伏すところだった。


 倒した!


 ヘカトンケイルを討伐したのだ。


 ……ヘカトンケイルを倒したのなら、とにかくすぐにやらないといけないことがある。


 わたしは目まいを振り切って、現場にかけよった。


◇◇◇


 現場はすごいことになっていた。


 ハーヴェイさん、血まみれで立ち尽くしてる。


 ディオール様、血まみれで、激しく息切れ。ぜん息みたいになっててその場にへたり込んでいる。


 おまけに辺り一帯が水と氷でびっしゃびしゃの水浸し。凍えるような冬の気温になっていた。


「リゼ! 君は、本当に、何をやって……」


 お説教は出鼻で止まった。


 激しくむせてる。


 ゲホゲホやってるディオール様が心配ではあったけど、それよりとにかくやらないといけないことがあった。


「腕を回収します!」


 これはわたしにしかできない。


 倒れているヘカトンケイルの腕のうち、無傷なやつを選んで、ひっつかむ。


 肩の骨格のうち、構造上、明らかに負担が大きい部分を探した。


 腕が密集している関係で、肩の取り回しに無理が生じているのだ。その部分はたいてい、膨大な魔力で補われている。


 骨格に詳しいわたしは、自信満々に見極めた。


 ここだー!


 物質化した魔力と、ヘカトンケイル自身の筋力が複雑に絡まる組織に、魔力を溶かす技をかける。


 入り組んではいるけど、わたしになら溶かせる!


 かなりの時間をかけて魔力を拡散させ――


 腕はとうとう、根元が緩んで、するりと取れた。


「ヘカトンケイルの腕、取ったどーーーーー!」


 一連の戦闘で、雄々しい気分が高まっていたわたしが、高々と掲げて宣言すると。


 ものすごく得意げなわたしの顔を見て、ハーヴェイさんが、耐えきれなかったように、笑ってくれた。


◇◇◇


 そんなわけで、みんなして下山。


 フェリルスさんもハーヴェイさんもボロボロで、特にディオール様がぐったりしていたけど、わたしだけは元気だった。


「護衛はわたしに任せてください!」


 魔剣を振り回しているわたしを見ても、ディオール様はもうお説教する元気もないみたいで、好きなようにさせてくれた。


 わたしがあたりを警戒しながら進んでいったから、魔獣も出てこられなかったのか、無事に帰りついたことで、今回のゴーレム狩りは作戦完了。


 翌朝には全員分の治療も済んで、遭難したディオール様の救出作戦も、完全に完了したのだった。


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