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174 魔獣出没注意報

今朝方、前日の更新分を改稿しました。


 わたしがしみじみと自分のできなさを実感した次の日。


 朝早くにフェリルスさんとの散歩を終えておうちに帰りついたら、急にドカドカと騎士さんたちがやってきて、お屋敷が大騒ぎになってしまった。


「まだご主人様はお休み中でございます」

「至急のご用命です。王子殿下より承っております」


 正門のところでピエールくんと騎士さんたちが押し問答をしていたので、わたしはフェリルスさんと一緒に裏門に回って、お屋敷に入った。


「何かあったんでしょうか?」

「ぬ! ご主人が俺を呼んでいる!」


 フェリルスさんが何かを聞きつけてか、お耳を動かすと同時に、ダッシュで廊下を行ってしまう。


 わたしも後を追っていくと、ちょうどフェリルスさんに飛びかかられているディオール様と遭遇した。


「お出かけですか?」

「ああ。しばらくは授業どころではなさそうだ」


 どうやら本当に何かあったっぽい。事件かな? 事故かな?


 そこにちょうど、ピエールくんがやってくる。


「あの、ご主人様。リゼ様にも招集を、ということなのでございますが」

「呼んでどうする? 騒ぎを大きくするだけだぞ」

「それが、魔法書を緊急で増やしてほしい、と……」


 わたしはいつも王様に頼まれて、魔法が記録できる魔法書を納品している。


 中に入れるものはそれぞれだけど、今のところは攻撃用の大魔術を吹き込んで、魔獣狩りに活用しているということだった。


『使いどころはこちらで考える』


 と言われてるし、ディオール様にも王様の言うとおりにしなさいって言われてるから、黙々と作ってる。


 間に合わせでつくったから不完全で、一冊につき魔法一回の使い捨てだというのが大きな使用制限になってるから、そこを何とかできないかとも言われてるけど、あんまり研究は進めていない。すごく難しいっていうのもある。けど、いっぱい作るのも何か怖いなぁと思ってるんだよねぇ……


 前回も結構な量を作った。


 すぐに追加がほしいなんて、何かあったのかな?


「いかがなさいますか? 不在で突っぱねましょうか」

「……いや」


 わたしの方へ、ディオール様が振り返る。


「リゼ、ハーヴェイは呼べるか?」

「今ですか? なんでですか?」

「魔剣職人の男、名前はなんといったか」

「レギン親方?」

「あの男のところに一緒に行ってもらってくれ。いつもの魔法書製作の付き添いだ」


 魔法書の製作はレギン親方に手伝ってもらっている。


 もともと魔剣職人で、冶金が得意というのもあって、わたしより魔法書に使う魔鉄の精練が上手なのだ。


 製本や手直しはやってもらって、わたしが最後の仕上げに、【エコーの声】の【魔術式】を書いて完成品にしている。


「いいですけど、いつもひとりで行ってますよ?」

「いや。付近の山中にゴーレムが出たそうだ。遠征で王都周辺の警備が手薄になる。王都まで流れてくる可能性もゼロではないから、君のお守りをお願いしておきたい」


 珍しい魔獣だ。


 でも、心配しすぎじゃないかなぁ……


 王都まで強い魔獣が来ることって滅多にない。


 つい最近テウメッサの狐も出てたし、過敏になってるのかな。


「それに、彼はヒト型の魔獣の討伐を目指しているんじゃなかったか?」

「ヘカトンケイルですね。すごく探してるみたいです!」

「ならちょうどよかった。私が戻るまでに、切れ味のいい魔剣でも用意しておいてくれ。調査してみてからではあるが、余裕があれば、ヒト型の魔獣の基本的な狩り方くらいは教えてやれる。行動特性的にはヘカトンケイルとゴーレムは似ているんだ。二足歩行で知恵があり、パワー型」


 ディオール様は淡々と説明しつつ、最後にぽつりと付け加える。


「私が苦手なタイプだ」

「ディオール様にも苦手とかってあるんですね……」

「パワータイプの攻撃は相性が悪い。氷で防ごうとしてもすぐに割られる」


 確かに、氷って脆そうだもんね。


「それに、あの山は本来ゴブリンのナワバリで、ゴーレムの出没地帯ではなかったはずなんだ。急に現れたのだとしたら、何者かが使役している可能性がある。ゴブリンの中でも賢い個体か、それとも――」


 ディオール様はそこで言葉を濁し、「とにかく」と話を切り替えた。


「用心に越したことはない。鍛冶屋付近なら警備も手厚いはずだから、君はしばらくそこで大人しくしているように――フェリルス、来い」


 嬉しそうに尻尾を振りちぎるフェリルスさんを連れて、ディオール様は慌ただしく身を翻す。


「えっとえっと……待ってください!」


 これから山を捜索するんだったら、まさにこんなときのために用意した魔道具がある。


 お空、特に星座の地図線から届く光を使って、持ち主の居場所を割り出す魔道具だ。


 ルキア様から届く光を使った、一般的な座標はダメだというので、それ以外のものを利用して作ってある。


 こんなに早く出番が来るなんて。


 わたしはポケットをまさぐって、【ギネヴィアの櫛】の片割れをディオール様に手渡した。


「現場、山なんですよね? 遭難した時用です!」


 探知用の信号を乗せた魔石だ。これがあれば遭難しても探しにいけるから、持っていってもらおう。


 ディオール様は素直に受け取ってくれた。


 ちょっとだけ微笑んでくれる。


「軽い調査だけだ。すぐに戻る。君はくれぐれも大人しくしていてくれ」

「分かってます!」

「分かってないときの返事だが……まあいい。行ってくる」

「気をつけてくださいねぇ!」


 慌ただしく出ていく背中を見送った。


 ……大変そうだなぁ。


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― 新着の感想 ―
兵器、だよなその魔法書。いつも納品してるのに増産してくれって言われてそのとおり増産したら、今後も要請すればいくらでも作らせることができるって思われてしまうんじゃないか?
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