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ジェイクの将来と監視の男

今日は市場がお休みの日なので、出荷作業もお休み。

アンジェラが来て授業を行ってくれる日だ。


小雨が降っていたので私とジェイクは、家の中でアンジェラの到着を待っていた。ジェイクのお母さんが焼いてくれたトウモロコシのたっぷり入ったパンを堪能している。



アンジェラと私はグラソー男爵の一件以来微妙な仲だけど、ジェイクの学ぶ機会を奪いたくないので週に一度の授業は続けてもらっている。


ジェイクは本当に頭がいいし、勉強熱心だから。いつまでも村の収穫物を運んで市場で売り捌くだけでいいのかと思ってしまう。もっとアカデミックな職業にも就けそうだ。


「ねえ、ジェイクは将来なりたい職業あるの?」


私は食べるのをやめ、唐突に質問する。


「うん?」


ブルータスを撫でていたジェイクは首を傾げる。ブルータスはうっとりと目を閉じていたが、ジェイクの手が止まったので片目だけ開けた。


ジェイクは少しだけ何かを考えてから口を開く。


「ユリィ、僕はどこにも行かないよ。……僕はお父さんの仕事を引き継いで良かったと思う」


「ずっとこのままでいいの?」


私の質問にジェイクはいつもの微笑みを浮かべる。

ジェイクは同い年で、幼い頃から親交はあるけれど、こんなに優しくて気の合う男の子がたまたま居てくれたなんて奇跡的だなあと思う。


「僕は、ずっとこのままでいたいな」


「そっか。何かやりたいことがあったら言ってね。何でも手伝うから」


ジェイクは私と違って本当に7歳だしまだ将来の目標がはっきりしなくて当然なのかもしれない。でももしそれが定まれば全力で応援したいと思う。

「ユリィ、僕も同じように思ってるから」


「え?」


そのとき、力強いノックの音がした。


「ユリィ殿はご在宅か!」


知らない男の人の声だった。ドアを開ける前にザンディーラの石を使うと、思い当たる匂いがした。

私を監視していた悪臭の男だ。今日は清潔にしてるみたいだけど──。外にいるはずのカルロはなんで止めなかったんだろう?


「はい、何でしょうか」


私はドアを開けて、初めてこの男の姿をちゃんと見た。年の頃は20代後半の、黒い髪を短く刈り込んだ眼光の鋭い男だった。


「この度は拙者の部下が大変お世話になり申した!」


男は勢いをつけてまくし立ててくる。部下とは、モンスターに襲われたあの女性だと思われる。少し変わった口調の人だ。


「はあ……あ、いえ……」


「少しお邪魔しても宜しいか?」


「少しなら…。この後来客がありますので手短にお願いします」

私としては特に話したい相手ではない。とはいえ狭い玄関で話すこともないかと、これもまた小さなダイニングの椅子を勧める。


男は筋肉質なので少し椅子が窮屈そうに見えるが姿勢良く腰掛け、話し始めた。


「拙者はゼフと申す者でユリィ殿の監視の任に就いている。既にお気づきだったようだが」


「そうですね」


「やはり、ユリィ殿は強いだけでなく気配察知にも優れているのか!」


ゼフは子供に慣れていないのか、不器用な作り笑いを浮かべる。一応怖がらせないようにしてくれてるのかな。


「えっと……まめに交代して監視した方が良かったと思いますよ?」


私は遠回しにちょっと臭いましたと伝える。伝われ。

でもザンディーラの石を使うまで気付かなかったので私も鈍かった。


「ユリィ殿の言うのももっともだ。しかしこの現場は危険なモンスターが数多飼われており……」


ゼフはブルータスや、ミルにちらっと視線を送る。

どちらものんびりしていて危険とは全く思わないけど、そういえば家の外にもルシファー達やベル達がいる。彼らは危険がないとは言えない。


「更に守りの鐘が失われた故に、外からもモンスターが襲来する可能性のある区域。自分で言うのも少々おこがましいが…私以外では身の危険があったのだ」


「え?でもあの日は…」


「左様。連日の任務に少々体調を崩してしまい…やむを得ず彼女……キーラに代わってもらっていた日にファルオスが現れたのだ。ユリィ殿やカルロ殿の助けがなければどうなっていたか」


ゼフは深刻そうな表情をゴツゴツした両手で覆う。私の女の勘が久しぶりに働く。これは──職場恋愛の香りだ。ゴシップだ。村にはない娯楽だ。


「ゼフさんと、キーラさんは特別な関係なんですね?」


「…!」


ゼフは手を下ろし、私をまじまじと見つめる。


「いやはや、ユリィ殿がおませさんとは」


「あっ…つい…」


苦笑するゼフに古風な表現をされて恥ずかしくなる。だけど他人の恋愛は面白くてたまらない。

ふと隣のジェイクを見ると、首をひねっていた。ジェイクにはまだ早いのかな?

大人編を早く書きたいのですが伏線消化までもうしばらくお付き合いください

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