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ゲームの行方

「何だまたユリアレスの負けか。弱いものだな」


「うう……」


 私は2連続で負け、拳を握りしめていた。なんだろうこの闇のゲームは。殴り合いなら絶対に負けないのに。


 相手の嘘を読み取るこのゲーム、エミリアーノ陛下とジェイクの勝負は五分五分なのだけど、私はジェイクの考えがびっくりするくらい読み取れず、私は陛下にびっくりするくらい嘘を見破られる。


「陛下、席替えをしましょう。それか逆回しにして僕は……」

「ユリアレスとジェイクの並びを逆にしたら結託して面白くないだろう」


 席順は仕組まれていたようだ。必死に提案するジェイクの意見をばっさり切るので、せめてと陛下を睨み付ける。ジェイクなら私がどのカードを持ってるかすぐ読み取ってくれてわざと負けてくれるのに、


 いや、そんなの良くないっていう戒めかこれ?

 私ははっとする。


「ジェイクごめんね……私今までジェイクに私の気持ちを押し付けてばっかりで、全然ジェイクの気持ちわかろうとしてなかった」


「いいんだよユリィ!ユリィの意志は僕の意志。僕はユリィに支配されたいから」


「……思わぬところでジェイクの本心が聞けたな。道理で私に対して感情がないわけだ」


 私もジェイクの初めてのカミングアウトに驚きと責任を感じるが、愉快そうに陛下は笑っている。ジェイクには私なりに最大限に優しくしてきたつもりで、暴君みたいに振る舞った覚えはないけど、どこで選択肢を間違ってしまったんだろう。こんなことになっているとは気がつかなかった。


「ユリアレス、罰の恥ずかしい話を早く」


「……そ、そういえば……私が子供の頃、村に子供が少なくてジェイクしか比べる人がいないから」


「ふむ」


 ジェイクも思い出したらしく、自分の口に手を当てるので陛下はやや期待してくれたのか身を乗り出す。


「ジェイクが特別運動が苦手で、私の身体能力はごく普通だと思い込んでいました。これが私の恥ずかしい話です」


「ユリィ、あのときは黙っててごめん!お父さんがそっとしておきなさいって言うから……」


「何だつまらん、さっきからそんな話ばかりではないか。もっと大人の会話はできないのか?」


「そんなのありませんよ!!」


 陛下も一応上流階級の人というか国王だし、はっきりとは言わないけど、何かを期待しているようだ。でもそんな話のストックは勿論ない。


 またネイさんがカードを混ぜてから配ってくる。私の動体視力でも不正は見つけられないから単に私が駆け引きに負けてるだけらしい。


「私が負けたらとっておきの話をしてやろう。聞きたいだろう?」


 配られたカードに有利不利はないけど、手札を確認して笑っている陛下にプレッシャーを感じる。こういうのも全て駆け引きなんだろうけど苦手だ。苦手だなんて意識するほど不利なのに。


 しかし、あっという間に3周して最後の1周となった。嫌気が差すほど今までと変わらない戦績だ。


「いつでも」


 陛下が一枚のカードを手に持った。ジェイクが質問する番だ。


「そのカードは、人間ではないですね?」

「そうだな」


 ドラゴンである可能性にかけてジェイクは質問しているようだ。陛下の反応は肯定。質問の瞬間、少し目が見開かれ口元が引き締まった。演技なのか素なのか私には判別できない。


「嘘ですね。僕は姫のカードを出します」


 陛下は肩をすくめて手札を開いた。そのカードは騎士だったので、姫を出したジェイクの勝ちだ。


「ジェイク何でわかるの……」


 私は天井を見上げる。星空の天井画が描かれていた。


「えっと、目が動いたかな」


 ジェイクのヒントを元に私は次こそは見破ると決意する。つまりジェイクは嘘の場合目を動かしてくれるはずだ。私をちらちら見ながら、ジェイクは一枚の手札を選んだ。

 ドラゴンにしてくれ、と私は思っている。


「そのカードには、翼が描かれているでしょ?」


 一度使われた質問は使えないルールなので私はこう聞いた。ジェイクの栗色の大きな目はじっと私の目を見ているけど、すぐに泳ぎ出した。なるほど、わからぬ。


 あいこだとカードは減りも増えもしないので私はドラゴンを出した。


「ご、ごめんユリィ……。騎士のカードにも小さく鳥が描かれてて……」


 ジェイクが苦しそうにぺらっと裏返したカードは騎士だった。よく見ると騎士の背後に白い鳥が一羽、羽ばたいている。


「えっ?」


 間抜けな声を出した私を見て陛下はにやにやしている。これを描いた絵師を殴ってやりたいと私は思った。


「ううん……ジェイクは悪くないよ。確認不足だった私が悪いから」


 言いながら私は陛下に出すカードを選ぶ。ジェイクと陛下なら後半になると残り枚数と確率まで計算しているけど私はそんな細かいことはしない。


 私は姫のカードを選んだ。金髪で水色のドレスを着た可憐なお姫様は私に微笑んでいる。カードを顔の前にかかげた。


「どうぞ」


 質問されているときは顔の手前にカードを持っていないといけない。これが嘘の難易度を上げている。


 陛下はすっと目を細め、不敵に笑う。


「もう、全て見切った」

「え?」


 陛下は華麗な手さばきでドラゴンのカードを出す。


「な……何で……」


 死にそうなくらいに私は衝撃を受ける。精神的なダメージを可視化したら、床に穴が空いて私はその中心に叩きつけられて円形のひびが広がってると思う。


「はは……ははは!!」


 悪役のようにエミリアーノ陛下は笑うけどつられておかしくなってきた。私も少し笑う。


「なあユリアレス、罰ゲームはもう良い。変わりにまたここに来い」


「え……?」


 あちこちに噂を立てられている中、エミリアーノ陛下が誘ってくるなんて意外だった。


「今までにユリアレスが私についた嘘もわかったのだ……忙しくなるとは言っても週に一度くらい来れるだろう?これからは私がもてなそう」


 勝手に決めつけて陛下は笑っている。その頬が薔薇色に染まっていて相当興奮してるのだなと私は思った。


「仕方ないですね、そうしましょう」


 私とジェイクと陛下の奇妙なお茶会はまだ続けていいらしい。ジェイクを見ると、無表情だったけれどすぐに私に向けていつものように微笑んだ。

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