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異世界帝国戦記  作者: val
2/5

前史(後編)

後編です。結構好き勝手やってる気が……。

国名や地名は後で変更になる可能性があります。いい名前が思いつかなかったので……。





 2016年1月1日午前1時。これが日本国民が『転移』後初めて認識した時刻であった。


 『転移』確認後、政府はまず日本周辺の調査を軍に命じた。午前6時。正月を返上し、空軍の偵察機等が発進し、日本周辺の調査を行った。その結果、東京湾の湾口から60kmに北海道とほぼ同じ形、面積の島が、新潟の沖合40km地点に韓国程の大きさの島が確認された。その後これらの島には調査隊が入り、無人島であることが分かった。そして、東京湾側の島は『旭日島』、新潟沖合の島は『黎明島』と命名された。


 同年1月20日。『転移』の直後に起きた小規模な混乱も収まりつつあったころ、政府は年号を平成から新皇紀へと改めると発表した。暦は旧来のものを使用する為、大して市民の生活に影響するものではなかったが。


 1月25日から2月10日までに、種子島から合計8基の人工衛星が急ピッチで打ち上げられた。これは、日本の『転移』した世界がどのようなものであるかを調べるためであるとともに、通信網の完全復旧も兼ねていた。


 その結果、日本が『転移』したのは、地球とほとんど変わらない星であったことが判明。ただ、南北アメリカ大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸などは確認できたが、オセアニア大陸は存在せず、代わりなのか、その縮小版らしき島(?)が太平洋上に発見されたが、日本がこれに目を向けるのはずっと先のことである。それよりも近海の安定が必要だったのだ。


 3月29日、ともに『転移』したマリアナ諸島周辺を調査していた調査隊が、元の世界では存在しなかった島々を発見し、そこからは希少価値の高い金属類が産出される可能性があると報告してきた。様々な企業がそれらの島に入り、一種のゴールド・ラッシュのような光景が出現した。


 2017年(新皇紀2年)。旭日島への基地建設が開始された。広大な面積を持つこの島に、政府は軍の一部を移転し、その駐屯地跡を公営住宅とした。また、同時期に黎明島には多数の民間人が入植し、この島を天然食料の供給地にしようとした。この黎明島が、後の小規模な紛争の中心となる。


 2018年(新皇紀3年)2月。日本海を哨戒していた海軍の対潜哨戒機が、黎明島に向かい南下する国籍不明の船団を発見。直ちに日本海沿岸の全部隊に緊急配備が発令された。同時に、哨戒機は船団に対し警告を発したが、これに応える形で責任者と思われる数人の人間を乗せた船が黎明島へと向かっていった。日本からは駐留していた第14師団の師団長や外務省の役人ら数人が出席した。緊張を隠せない日本側に対し、国籍不明の人々はこう言った。「我々は東方共和国の者だ。この島は我々の領土なので速やかに退去していただきたい」


 当然ながら日本側は猛反発した。彼らの領土であるという証拠はなかったし、何度かの調査でこの島は人の住んでいた痕跡すら認められない完全な無人島であることは確認済みだったからだ。それに、既に黎明島では食料生産地としての開発を進めており、それに投じられた予算が無駄になることも恐れられていた。相手が、自分たちに逆らう国など存在しないかのように振舞っているのが気に食わないという感情的なものも混じっていたとされている。


 幾度か話し合いの場が設けられたが、両者の意見は平行線を辿り、最後には交渉は決裂。東方共和国の交渉団は今度は武力をもって交渉させてもらうと事実上の宣戦布告をして帰っていった。日本政府は常時警戒態勢を軍に発令。国内の戦力の半数を日本海沿岸と黎明島に集中させるとともに、市民の避難を始めていた。


 同年4月。警戒レベルが最高段階にまで引き上げられていた哨戒網に、多数の艦影が捕捉された。黎明島の沖合に展開したのは数隻の大型艦を含む約20隻の軍艦だった。


 この時、日本の方針は『限定的専守防衛』であった。これは、簡単に言えば領海(ここでいう領海は旧来の規則に則り暫定的に定められたもの)に侵入した自国籍以外の船を、警告後、威嚇射撃なしで攻撃できるというものである。この場合、堂々と領海(黎明島が日本領であるという前提の上での危ないものだったが)に侵入したのでこれが適用された。警告が発されたが、艦隊はそれを無視するかのように前進を続け、日本軍と交戦状態に入った。


 結果から述べれば、日本の圧倒的勝利であった。沖合に停泊していた無人哨戒艇数隻が砲撃によって沈められたが、反撃として放たれた島内に展開していた88式地対艦誘導弾や空軍戦闘機の空対艦誘導弾によって15隻撃沈、3隻大破の戦果を出した。


 同年6月。連合艦隊は空母『大和』、イージス駆逐艦『雪風』、その他『松』級駆逐艦10隻、補給艦2隻、揚陸艦4隻からなる東方共和国遠征艦隊を派遣した。これは当時投入できる最大の戦力だった。『松』級は32隻建造されていたが、急造艦であったため、14隻が不調等でドック入りしていた。実際、遠征部隊も4隻の『松』級が機関不調で脱落するという有様だった。また、シーレーン防衛の戦力も割かねばならない状況だった。それでも遠征が行われたのは、有るであろう二度目の攻撃を未然に防ぐためであった。


 6月28日。旧日本海において海戦が勃発。東方共和国は戦艦6隻、装甲巡洋艦10隻を含む50隻近い艦隊をもって迎えうった。数だけ見れば東方共和国側が優勢と見えたが、全ての艦が第一次世界大戦の時代のものであった。空母はおろか、対空火器すら碌に存在しない。


 当然ながら最新鋭装備と航空戦力を持つ日本艦隊が負ける筈もない。アウトレンジからの艦対艦誘導弾や『大和』艦載機による執拗なまでの反復攻撃に、東方共和国艦隊は壊滅した。その後、随伴してきた揚陸艦より歩兵1個師団が上陸。東方共和国は陸空軍も旧式であったため、わずか2週間で首都である北京が陥落し、東方共和国は降伏した。


 その後の交渉と調査で、東方共和国は第一次世界大戦直後の中国と同じレベルの国であることが判明した。日本政府は、講和条約の内容に公平な国交を結ぶことのみを要求した。これは、賠償金を要求しても払える可能性が低いと判断されたことや日本軍の損害が微々たるものだったということ(陸軍の死傷者は約80名前後。空海軍に至っては0)、使用された弾薬の大半が使用期限の迫ったもの、つまり放っておいても廃棄されるものばかりだったこともある。こうして、10月に日東通商航海条約が締結された。これにより多数の日本企業が東方共和国に進出し、急激な発展に一役買う事になる。


 2020年(新皇紀5年)。軍部は幾度か引き延ばしにされていた『第一次装備再編計画』を提出。これは、陸軍の各種装備の新型への変更、海軍のシーレーン防衛のための組織『海上警備隊』の創設を要求したものであった。特に海上警備隊は南海諸島(旧マリアナ諸島とその周辺の島々の総称)からの輸送船を守るために必要と判断され、この計画は承認された。海上警備隊の当初の装備は主に高速哨戒艇だったが、以降、軍艦クラスも配備される。


 続いて、2015年(新皇紀10年)、『第二次装備再編計画』が提出された。これは主に空海軍の意見で、特に海軍は老朽化する連合艦隊の艦艇を更新する為、『四・四・四計画』(戦艦部隊4、巡洋艦部隊4、空母部隊4)が出された。この計画は建造する主力艦艇の数から、『八・八・十二計画』(戦艦8、重巡洋艦8、空母12。実際は巡洋艦が各種合わせて26隻)とも呼ばれた。また、空軍は同じく耐久年数の限界が近づいている『隼』に代わる新型機の配備を要求した。こちらは政府が難色を示したものの、結局は全て通り、かかる年月から10ヶ年計画とも呼ばれる。この計画で、帝国空軍は2030年(新皇紀15年)に海軍と共用の戦闘機JF‐02『鍾馗』(海軍ではJCF−02『烈風』)の配備を始めた。


 2027年(新皇紀12年)、旭日島への部隊移転終了。これと並行して旭日島への鎮守府設置、潜水艦隊司令部の移転も行われた。2032年(新皇紀17年)、全海上都市の建造終了。50万人収容都市5、25万人収容都市10の合計15か所だった。


 2035年(新皇紀20年)、『第三次装備再編計画』提出。潜水艇等まで持ち出され凶悪化する海賊問題に対し、護衛空母を含む75隻の戦闘艦艇の予算を要求した。それはすぐに承認されたが、これは主力艦艇と違い島国である日本の生命線ともいえるシーレーンでの護衛は必要不可欠であったことが原因だった。


 そして、日本は2040年、新皇紀25年を迎えようとしていた………………。

次が本編です。……何で「鍾馗」って一発で出てこないんだろう……。

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