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24 兄弟を探して

 マルの母親……と思わしき美女は吸い込まれそうな青い瞳で俺たちを見ている。

 人の姿になったマルは角や鱗が残った半獣半人のような形態だったが、こっちはどこをどう見ても人間そのもの。

 あえて言うならば姿形が人形や彫刻のように整いすぎている、というところが人間離れしているといった感じだろうか。


「この格好か? ミスティック・ド(神秘竜)ラゴンの変化の能力は、竜の巨体を表に晒し余計な混乱を起こさぬ為のもの。マルドゥークは未熟ゆえにあのような姿になっているが、本来ならば完全に人の姿を模倣できる」


俺の訝しむような視線に気づいたのか、自分の姿について説明を始める。


「いや、そんなことよりだ。……えーと」

「名前が必要ならばアマルトゥと呼べ」


 アマルトゥ――それがマルの母親の名前らしい。

 マルに名前があるのだからそりゃあ母親にもあるか。


「で、そのアマルトゥが何でこんな所で人間に化けてナンパされてたんだ?」

「さっきの男はこれに乗っていたら声をかけられた。何か情報が聞けるかとしばらく付き合っていたのだが、特に得るものは無かったな」

「情報?」


 その気になれば人間なんか歯牙にもかけないようなドラゴン種族が、何を知りたがっているのだろう。


「ああそうか。マルの奴を探してるんだな? 今はその辺ほっつき歩いてるが、そのうち戻って来るだろうからさっさと連れて帰ってくれ」

「違う」


 一言で片づけられてしまった。

 本当に親子なのかこいつらは?


「探しているというのは間違いではないが、それはマルドゥークのことではない。テオニダス、ラダシュ、イスラルサ。我が子の兄弟たちだ」

「マルの他にもそんなに迷子のドラゴンがいるのか?」


 マルが特別に方向音痴なのかと思っていたが、まさか家族全員そんな感じなのだろうか。

 だとすれば、目の前にいるこの母親の教育が悪いのだとか、そもそも遺伝的にそういうポンコツな素質が備わっている可能性も……。


「無礼な想像をしていそうだから言っておくが、今までにマルドゥーク以外で失踪した一族の者はいない。それに姿を消した三体は、一族の中でも特に力の強い者たちだ。だからこそこうして我が自ら探し回っている」

「そ、そうか。いや、別に変なことは考えてないがそれならよかった」

【心拍数および発汗量の上昇が見られますね。高齢による自律神経失調でしょうか】


 アマルトゥの眼光に威圧され、俺は慌ててごまかす。

 今は人間の姿とはいえ、本来は巨大なドラゴンの長。

 怒らせたら何が起きるか分からない。


「時を同じくして、空から隕石と共にお前たちがこの地に降ってきたのを見た。無関係とは思えん」

「やっぱり見られてたんじゃねえか」

【隕石と誤認させることには成功しましたので問題はありません】


 おかげで妙な疑いをかけられているというのにどこが問題ないというのか。


「怪しいと思うのも仕方ないかもしれんが、俺たちにも心当たりはないぞ」

「ジョン、ひょっとしたら宇宙管理局の仕業かもしれない」


 隣席で聞いていたフィノが口を挟む。


「お前は魔王討伐軍の指揮をとっていた人間だな。今までどこで何をしていた?」

「いやー、ハハハ……私にも色々と事情がありまして……」


 フィノはいつもの調子でとぼけるが、やはり威圧感があるのか額には冷や汗が浮かんでいた。


「地球人がどうしてドラゴンを狙う?」


 俺は話を戻そうと、フィノに続きを催促する。


「ダーク・ゾーンの研究を全力で進めているマッカートン財団にとって、この星は実験材料の宝庫だ。我々を追ってきたエージェントがついでに現地のモンスターを捕まえてこいと命令されていてもおかしくはない」

「だとしても、その辺のスライムやゴブリンを捕まえるのとはわけが違うぞ。お前の所はドラゴン三体を消してしまえるような兵器でも持ってるのか?」

「うーん……心当たりはないけど、局の中でも私にも知らされていない機密はいくらでもあるからね。ゲオルグたちがまた何か企んでいるのかもしれない」

「どうやらまたも我の知らぬところで何か動いておるようだな」


 アマルトゥは納得したようにそう言うと、話は十分だとばかりに立ち上がる。


「我もお前たちが犯人だ、などと言うつもりはない。だがこの世界で何かが動く時、お前たちは常にその中心にいた。だから知らせておくべきだと思った」

「買いかぶりだと思うが」


 ぼやく俺を一瞥すると、アマルトゥは席を立ち、客車両から出て行こうと入口のドアに手を掛ける。


「マルに会っていかなくていいのか?」

「我と会えば群れに帰りたがるだろう。奴にはお前たちと共に兄弟を探させる。命があればいつか会えよう」


 そう言うと外に出てドアを閉める。

 俺も席から立ち上がり、ドアを開けてみたが、すでにアマルトゥの姿は消えていた。


 バサァッ――――。

 翼が翻る音と共に、上空を巨大な影が横切っていった。


「ふー……致命的なミスが見つかった時の上司のような威圧感だった」

「妙に具体的だな」


 アマルトゥが去ったのを確認してから、フィノはおもむろにハンカチを取り出し、額の汗を拭く。

 それにしてもアダムの死体探しに加えて行方不明のドラゴン――。

 遠い宇宙から帰ってきて早々、面倒なことが重なるものだ。

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