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05 デザートゴブリン

【ネブラタイトを入手したようですね。この調子なら予定よりも早くこの星から脱出することができそうです】


 突然左目の視界がぼやけ、宇宙船のブリッジにいるスリサズが映し出される。


「いきなり目の中に現れるな。それに、まだくれると決まったわけじゃない」

【拒否された場合はいつもの手口で無理やり強奪すれば良いでしょう】

「いつ俺がそんな真似をした?」

「誰と話しておるのかね?」


 長老が虚空に向かって話す俺を怪訝な目で見ている。

 俺とスリサズの通信は、はた目には俺がひとり言を言っているだけに見えるらしい。

 通信する時には怪しまれないようになにか考えておく必要があるな。そもそもこのポンコツが話しかけてこなければ問題ないのだが……


「安心しなさい。これを見せておきながらがっかりさせるようなことは言わんよ」

「では譲って頂けると?」

「もちろんじゃ、と言いたいところだが少し頼みがある」


 予想はしていたが、やはり無条件に譲ってくれるわけではないようだ。


「まあ仕方ないな。聞かせてくれ」


 多少無茶な要求をされたとしても俺たちに選択の余地はない。

 俺は覚悟を決めて先を促した。


「簡単なことじゃ。我々も連れて行ってもらいたい」

「なに?」


 意外な要求に、俺は思わず聞き返す。


「集落の住人はワシを合わせて37人。お前さんたちの宇宙船の大きさならば収容できるはずじゃ」

「スリサズ、どうだ?」

【問題ありません。清掃用ドローンで居住スペースを整備しておきましょう】


 ウィーン――。

 左目に映った映像の中に、ブラシの付いた数台のロボットがどこからか現れブリッジを出ていくのが見えた。


【ギャーッ! な、なにをする! 放せ~!!】

【それはゴミではありません】


 マルが掃除ロボットに掴まれ、どこかに連れ去られていった。


「しかしご老人、いいのですか? 長年ここで暮らしてきたんでしょう?」


 船内でそんなやり取りが行われていたことは露知らず、フィノは長老と話を続ける。


「好き好んで住んでいたわけではない。ワシらも脱出する手段を長年考えてきたのじゃ。しかし、正常に動く宇宙船だけはどこかから流れ着いてくるのを待つしかなかった」

「俺たちは自分の星に帰ろうとしてる途中だったんだ。全員を元の星に戻してやることはできないぞ」

「構わんよ。ここより自然が豊かで暮らしやすい星であればどこでもな」

「私の通信機が回復したら上にかけあってみましょう。宇宙管理局は難民の対応も行っています」


 フィノがそう提案する。

 相変わらず何をしているのかよく分からん組織だが、他に頼れるものはなさそうだ。


「交渉成立じゃな。ネブラタイトは持っていくがいい」


 長老が手に提げていた鉱石入りのバケツをフィノに手渡す。


「早速、住民に移動を呼びかけるとしよう。みな喜ぶじゃろう」

「長老! た……大変だ!」


 その時、痩せぎすの男が慌てた様子で、倒れ込むように俺たちの前に現れた。

 住民の一人のようだ。


「どうした?」

「だ、ダーク・ゾーンの魔物が襲ってきた!」

「なんじゃと!?」

「ダーク・ゾーン?」


 聞き慣れない言葉を耳にし、俺はフィノの方を見るが、彼女も聞いたことがないという風に首を振る。


「ギイィッ!」


 獣の歯ぎしりのような声と共に空から小柄な影が現れ、駆け込んできた男の目の前に刃物を突き立てた。


「ヒィッ!」


 男は短く悲鳴を上げ、腰を抜かしたのか尻餅をついたまま逃げるように後ずさる。


「こいつは……ゴブリン?」


 子どもぐらいの体格に、長く尖った耳と鼻。

 俺にとっては見慣れたモンスターの姿がそこにあった。

 体は砂漠に溶け込むような薄い茶色をしているが、それ以外はどこを見てもゴブリンそのものだった。

 しかし、なぜこんな星にゴブリンが? 単によく似た生物というだけだろうか。


「ギッ!」

「ギギィッ!」


 あちこちから同じような鳴き声が聞こえると、物陰や民家の屋根からも、さらに何匹かゴブリンが顔を出し始めた。

 その小さな手には、一様にナタのような蛮刀が握られている。


「じいさん! 建物に入って鍵をかけてろ!」

「お、お前さんたちはどうするんじゃ?」

「任せろ。こいつらの相手なら慣れてる」


 適当な長屋に長老と報告に来た男を押し込むと、俺は高周波ブレードを抜いた。


「ギャァッ!!」


 一匹のゴブリンが飛びかかって来る。

 俺は蛮刀の一撃を受け止め、腹にブレードを突き立て串刺しにした。


「グ、グゲッ……」

「お前らは俺のことなんか知らないだろうが言っといてやる。()()()()()()、化け物ども」


 戦士としてモンスターと戦うのは一年ぶりぐらいか。

 昔を思い出し、精神が高ぶる。


「ギシャアッ!」


 明確に敵意を感じ取ったのか、俺を取り囲んでいたゴブリンが一斉に襲ってくる。


「ふん!」


 ゴブリンを串刺しにしたままのブレードを振り抜き、死体を別の集団に投げつけた。

 死体をぶつけられたゴブリンは、お互いを巻き込み連鎖的に吹っ飛んでいく。


「フィノは逃げ遅れた人間を助けに行け! ここは俺が引き受ける!」

「また魔法使いに戻らなきゃならないのか。やれやれ」

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