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EX.4 エピローグ+1

最終話の続き的な話です。

続編に続く的な終わり方ですが特に考えてはいません。

 マルの案内によって、俺たちは灰色の宇宙人共の追跡をなんとか振り切り、巨大な円盤型の宇宙船のブリッジにたどり着いた。

 船内は広く、何を運んでいるのか知らないが大小さまざまな金属製のコンテナが収容されている。


「思い出してきたぞ。我も初めて連れてこられたときはこの箱に入れられておったのだ」

「そんな扱いでよく守護神なんて口車に乗せられたもんだな」

【グレイの集団はすぐに我々を追ってここに殺到してくるでしょう。その前に宇宙船を発進させ、超光速(ワープドライブ)航法で別の銀河まで逃げ切らなくてはなりません。メインコンピュータに私を接続してください】

「メインコンピュータ……これか?」


 ブリッジの中心にある、一際目立つ大きな機械にスリサズを置く。


【システムに侵入開始……高い技術力に反してセキュリティレベルは低いようです……セキュリティ解除完了。超光速(ワープドライブ)航法、スタンバイ。地球の座標を入力します】

「待て、地球には戻らんと言ったはずだぞ。行くなら俺の星にしろ」

【私の使命は地球の管理にあるため、地球への帰還が第一優先目的となります。意見が対立した場合、宇宙船の操作権限がある私の選択を優先します】


 スリサズはそう言って進路を地球に指定しようとするが、こちらも素直に従うわけにはいかない。

 このまま地球に戻ったら、俺が元の星に帰る機会が失われるだけではなく、スリサズがまた暴走して人類を力づくで支配しようとするだろう。

 俺を騙したレジスタンスに肩入れする義理はないが、だからと言ってあえて混乱を生み出すような真似はしたくない。


「……そうだ。マル! お前も元の世界に帰りたいだろ?」

「へ? そ、そ、そりゃあもちろんそうだが」


 話についてこれずにボーっとしていたところに急に話を振られ、マルは戸惑いながらも答える。


「どうだ、これで2対1だ」

【なるほど。多数決の原理、あるいは数の暴力に持ち込もうということですね。確かに今、宇宙船の操作権限は私にありますが、社会の安定を求めるプログラム上、多数決の結果を無視することはできません】


 地球人の多くはなにか物事を決める場合、この多数決を優先する。

 それは地球で作られたAIであるスリサズでも例外ではない、と思っての行動だったが、予想通り効果はあった。

 もっとも、暴走して恐怖政治を敷こうとしていたスリサズならば、完全に無視される可能性もあったのだが、本来の力を取り戻した時とそうでない時では考え方も変わるのだろうか。

 いずれにせよ、数で優勢の今ならこっちの主張を押し通すことができそうだ。


「――じゃあ私は地球に一票」

「……マル、なんか言ったか?」

「いや、今のは我の後ろから聞こえた」


 確かに今のは明らかにマルの声ではなかった。

 しかし誰かは思い出せないが、聞き覚えのある声だ。

 声のした方を振り向くと、マルが首をかしげてさらに後方を向いている。

 その視線の先には、人間が一人収まりそうなコンテナが、ガンガンと音を立てて揺れているのが見えた。

 何者かが内側からコンテナの壁を叩いているようだ。


 ガシャンッ。

 やがて、一際大きな音と共にコンテナの側面が外れ、中からブーツを履いた一本の足が飛び出してきた。

 明らかに人間のものだ。


「ふー、やっと出られた」

「お前は……フィノ?」


 俺が元いた星の港町で出会い、最終的には魔王討伐軍の総指揮官として共に戦った女が、コンテナから這い出るように現れた。


「やあ戦士殿、それとも今はジョン・ドウと呼ぶべきかな?」

「なんでその呼び名を……いや、そもそもなんでこんな所にいる?」

「まあ今さら隠しておいても仕方ないから話すけど、実は私も地球人だったのだよハッハッハ」

「いや、ハッハッハじゃなくてだな……」


 そんな軽い感じでカミングアウトされても困るのだが。


「アダムの計画を阻止してSSSを地球に帰還させたまでは良かったんだが、私自身はちょっとした手違いでN1180EV、つまり君たちがいた星に取り残されてしまってね。救助を呼ぼうにも通信機が故障してしまい、仕方なく自力で脱出しようとこの宇宙船に密航したのだが、今までこのコンテナに閉じ込められてしまっていたんだ。一緒に入っていた積荷の食料や水のおかげで餓死せずには済んだけどね」

「あー……ちょっと話を整理させてくれ……細かい点は置いといて、つまりあんたは地球人で、スリサズの力で地球に帰りたいってことか?」


 かなり衝撃的な事実であるはずなのだが、素直に驚くことができない。

 フィノの軽薄な態度と、深く詮索している暇のない切羽詰まった状況のせいだろうか。


「まあそういうことだ。私も予想外の長期任務になってしまって、いい加減に故郷が恋しくてね。無事に地球に戻れたら君たちも元の星に帰してあげられるよう宇宙管理局にかけ合ってあげよう」

「駄目だ。スリサズを地球に帰すのは危険すぎるし、お前が地球人だと言うならその約束も信用できん」

「……な、なんだか見ない内に人間不信になっているようだね。なにかあったのかな?」


 即答で断る俺に、フィノは面食らったように二度三度まばたきをし、マルとスリサズに小声で尋ねた。

 内緒話をしているようだが丸聞こえである。


「我もさっき会ったばかりだから知らん」

【高齢になると意味もなく疑り深くなるものです】

「ふーむ、まあ君たちが揃ってこんな星にいることから、ある程度想像はつくか……」


 ドォンッ――!

 その時、爆発音が聞こえ宇宙船が大きく揺れた。


「な、なんだ!?」

【議論を続けている時間はあまりないようですね】


 ブリッジのモニターに、映像が表示される。宇宙船の外に設置されたカメラから映し出されているようだ。

 映像には、宇宙人の集団が手に持った光線銃やらバズーカやらミサイルランチャーやらを躊躇なくこの宇宙船に撃ち込んでいるのが見えた。


「あいつらメチャクチャしやがる」

「船を奪われるぐらいなら我々ごと……ってところかな」

【宇宙船のシールドで防いでいますが限界があります。()()を放り出して注意を逸らすことも可能ですが――】

「おいコラ」


 ドォンッ――!

 さらにたて続けに爆発音と振動が起き、船体が大きく傾く。

 次の攻撃で沈められる。機械に詳しくない俺でもそう考えるような揺れだった。


「んぎゃッ」


 マルが傾いたブリッジを転がり、壁に勢いよく激突した。


「とにかく宇宙船を発進させろ! ここから離れるぞ!」

【先ほどの意見対立により行先がまだ指定されていません】

「じゃあ地球に戻……」

「それは駄目だ」

「こんな状況でも頑固だね君は」

「どこでもいいから早くしてくれぇ……」


 頭にコブを作って、フラフラと立ち上がりながら言うマル。


【では間を取り、ランダムに座標を指定して超光速(ワープドライブ)航法を開始します。高負荷が予想されますのでシートベルトを締めるか、何かに掴まっておくことを推奨します】

「それ間を取るって言えるのか? ……ぐおッ!」


 俺の言葉は、突如襲い掛かった重力に封じられた。

 体全体が壁に押し付けられ、窓から見える外の空間が歪む。


【3、2、1、ワープ開始――――】

「やれやれ、また地球に帰れないのか……長官に言えば労災が降りるかな」


 バシュンッ――――――――――――。

 フィノがぼやく言葉を最後に宇宙船は光に包まれ、この星、いやこの銀河系から姿を消した。

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