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17 武装船を奪え

 他の島や大陸との玄関口である港町。

 俺たちは町の入口を通ったところで馬車を降り、詐欺師を衛兵に引き渡した。


「うぅ、やっと地上に降りれたぞ。まだ頭がクラクラする……」


 マルは乗り物酔いから抜け切らないようで、足が左右にふらついている。


「見ろ戦士殿、あれが奪われた武装船だ」


 フィノが町の奥、海のある方向を指さす。

 海に面した埠頭には、大小さまざまな船がズラリと隙間なく並んで停泊していた中に、一回り大きく頑丈そうな帆船があった。

 側面に開いた無数の窓からは、岩石の塊を撃ち出す大砲の筒が見える。


【外見的には16~17世紀、スペインのガレオン船に近いですね。背景を加工しヨーロッパ旅行をしてきたことにしてSNSに投稿しましょう】

「奪われたって言うには堂々と停泊してるように見えるが?」


 相変わらず意味不明なことを言っているスリサズを無視して、俺はフィノに問いかける。


「武装した船乗りたちが暴れたら、半端な警備兵や冒険者では対抗できない。それに奴らは略奪した金で役人に賄賂を払っている。他所のギルドに助けを求めないようにね。情けないことだがギルドも見て見ぬフリするしかないのさ」


 フィノは苦笑いしながら自嘲気味に言った。

 思っていたより組織だった連中である。ただの暴走した海の男というだけではないらしい。


「だが俺に協力を要請するってことは、なにか考えがあるんだろ?」


 俺の言葉に彼女は静かに頷く。


「武装船といえど、停泊中はほとんどの船員が陸に上がっている。その隙に金や物資を船ごと奪い返せば奴らを無力化できるだろう」

「どうやって船を奪う?」

「奴らはこの港町に戻ってきたら、必ずある酒場を貸し切って宴会を開くんだ。そこに船長のポルトという男がいる。奴から操舵室の鍵を盗んで船を動かす」


 なるほど、肝心の武装船が無くなってしまえば海賊行為どころではない。

 力を失えば、ギルドも取り締まりに乗り出すというわけだ。


「しかし部外者の俺たちが入れるのか? 貸し切りなんだろう?」

「船員以外にも、女を連れ込んだり、略奪品を売りさばくために商人も出入りしている。奴らも酒に酔っているだろうし、紛れ込めば簡単には分からないはずだ」

「なるほどな。分かった、その作戦でいこう」

「私は変装して潜入する。場所を教えておくから、酒場の前で落ち合おう」

「俺はこのままでいいのか?」

「ふむ」


 フィノはしばし考え、視線を上下に動かしながら俺の頭からつま先まで全身の隅々を観察する。


「……戦士殿なら大丈夫なんじゃないか?」

「ジョンならそのままで問題あるまい」

「どういう意味だ? それは」


 いつの間にかマルも話に加わってきていた。

 俺は視線から伝わるなにか失礼な雰囲気を感じとり、不機嫌な顔で聞き返す。


【あなたの粗暴な外見なら荒くれ者の船員と並んでも全く違和感がないという意味です。少なくともカモフラージュ率が90%を超えることは私が保証します】

「あー、お前は説明せんでいい」


 俺は片手で顔を押さえながらうめくように言った。

 つくづく配慮のない奴である。



 裏路地にある派手な看板の酒場。

 入口は鋼鉄のドアで閉ざされ、引き戸の付いた小窓から見張りの男が外を覗いている。関係者以外を入れないためだろう。

 そこの近くの角に隠れ、俺たちは出入りする人間の様子をうかがっていた。

 しばらくすると、商人風の男がやって来て見張りと二言三言会話を交わすと、ドアが開いて中へ案内されていった。


「あいつら、なにを話してたんだ?」

「ここに入るには船員が決めた合言葉が必要なんだ」


 占い師の姿に変装したフィノが囁く。

 顔の下半分をレースで隠し、占い師というよりは踊り子のような露出の多い格好をしている。


「おいおい、そんなの初耳だぞ」

【心配はいりません。先ほどの商人の口の動きを解析し、該当する合言葉を予測しました】

「ほう」


 大体の時はポンコツのくせに、たまに凄いことのできる奴だ。

 俺はドアの前に立ち、見張りに向かってスリサズから教わった合言葉を言う。


「モップバケツ」


 ピシャッ。

 見張りの小窓が勢いよく閉められた。


「……」

【商人の口の動きから予測できる単語は全部で5400語ありました。握力を弱めてくださいリンゴ電池が潰れてしまいます】


 俺は無言でスリサズの張り付いているリンゴを握りギリギリと力を込める。

 

「合言葉なら調べてある。私に任せろ」

「それを早く言ってくれ」

「あまり自信満々に出ていくものだから戦士殿もすでに調べてあったのかと」


 くそ、とんだ赤っ恥だ。ポンコツを信じた俺が馬鹿だった。


 フィノに付いていく形で酒場の中に入ると、下品な笑い声や怒声、呂律の回っていない話声など様々な音が一斉に耳に入ってきた。

 外にいた時は全く聞こえなかったことから、防音には気を遣っているらしい。


「私は船長と鍵の場所を探る。戦士殿はなるべく目立たないように客に溶け込んで、逃げられる裏口や見張りの配置を偵察しておいてくれ」


 そう言うとフィノは俺から離れ、ガヤガヤと騒ぐ人ごみの中に消えていった。


 客に溶け込めと急に言われても、具体的にどうすればいいのだろう。

 とりあえず酒でも頼むか。酒場に来ておいてグラスも持たないのは不自然だ。


「マスター、おすすめはあるか? 強いのを頼む」

【どうせ逃げるからタダ酒が飲めると思っていますね? 社会性を損なう行動は推奨できません】

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