第1章 5話ー強い覚悟ー
「神眼の持ち主?鬼人族をもう一度封印するための鍵??なんだそれ…」
レオは、混乱したようにひたいに手を置き今の状況を整理しようとする。
「この手紙がこの村に送られて来たのは、お前が産まれて約一ヶ月経った頃じゃった。
驚いたもんじゃ。お前が産まれて来たとき、右目がまるで星のようにピカーッと光っておったんだからなあ。
あまりにもたまげたことだったから、この村の誰かが外のものに言ってしまったんじゃろう。
そして、広まっていった噂から、そのことを知った差出人が、この村に手紙をよこしたという訳だ。」
と、顎から伸びている長いひげを撫でながら、ソルムは言った。
「そ、そうだったのか…。右目が光ってたってすごいな…。」
とレオは驚いたように小さな声で呟くと、封筒の裏面や、手紙の裏面を何かを探すように見ながらソルムに問いかけた。
「ひとつ疑問なんですけど、この手紙差出人が書いてない。ソルム様は、何か知ってますか?」
レオが手紙から視線をソルムに移すと、ソルムは残念そうに答えた。
「いや。それがの、名前どころか、どこから来たかもわからんのじゃ。手紙自体も、村の前に落として行くかのようにのように置いてあったからのお。」
そう言うと、ソルムは「おお、そうじゃった。もうひとつ渡さないといけんものがあったのじゃ。」と思い出したように言うと、左にいた御付きの人から、同じような封筒を受け取り、レオに差し出した。
「お前の妹もな。お前と同じ、神眼の持ち主だったんじゃよ。」
と、ソルムは目を閉じてそう言った。それに対しレオは、ソルムから受け取った手紙を床に落とし、こう言った。
「俺の妹も、産まれて来たときに右目が光ってたってことか…?じゃあ、俺たちがあの日、鬼人族に襲われたのは、神眼の持ち主だったから…!?」
と、もう訳がわからなくなってしまったレオは、頭を抱え、膝をついた。
その様子を見ていたレオの母が、「レオくん!!」と心配そうに駆け寄って行ったが、ソルムに「待て、まだ話は終わっとらん。」と止められてしまったので、
レオの母は、「すみません…」と言いながらと涙をこらえて後ろに下がった。
ソルムは、膝をついて混乱しているレオにの肩を軽く叩き、
「聞け、レオナントよ。わしが若い頃に読んだ書物にも、こう記されておった。
神眼を持って産まれし勇者こそが、この地のたくさんの命を救い、世界をも守ることができる。とな。
神眼を持って産まれて来たということは、やらねばならぬ使命を抱えて産まれて来たということじゃ。
そしてお前は、失ってしまった妹のぶんまで、使命を果たさなくてはならん。」
と、優しく強い声でそう言った。その話を聞き、レオは顔を上げ、こう言った。
「俺がやらなきゃならない、使命…?」
その言葉に、ソルムはうむ。と頷いた。
「だからと言って、この手紙に書いてあることを、すべて信用していい訳じゃあない。
もしかしたら、罠かもしれんからのお。じゃが、行ってみんと、何もわからん。
お前がやらねばならぬ使命も、お前に鬼人族から人々を救う強さがあるのかも。」
その話を聞いていたレオは、次の瞬間覚悟を決めたように、勢いよく立ち上がり、ソルムにこう言った。
「ソルム!!俺、聖境の丘に行くよ!!それで、旅に出る!!その旅の中で俺のやらないといけない使命見つけて、そして妹の仇を、必ずとってくる!!!鬼人族の野郎たちを、全員必ずぶっ飛ばしてくる!!!!」
そう言ったレオの目には、妹を奪った鬼人族への憎しみや、恨みに満ちていたが、その目の奥に、強い希望の炎が、燃えてるようにも見えた。
その眼を見たソルムは、フォフォフォフォフォと笑うと、「流石じゃな!強い覚悟だ!」と言い、玄関の方へ体を向けた。
「じゃあわしの役目も終えたし、ここら辺で失礼するかの。レオよ、この村から聖境の丘へは、少なくとも10時間はかかる。明日は明け方に出発する方が良いじゃろう。
そして、残りの少ない1日。悔いのない日ににするのじゃよ。
長い間は、この村に帰ってこれぬじゃろうからな。」
そう言い終わると、ソルムは御付きの者に「行くぞい」と声をかけ、早々と家の外へと消えていった。
そして、レオは手紙が潰れていることなど気にせず、手を強く握りレオの母親の方に体を向けて、
「母さん、俺、旅に出るよ。そして、母さんのぶんまで、鬼人族の野郎をぶっ飛ばしてくる。」
と言った。その時のレオの目には、今までに見たことのないような、強い覚悟に満ち溢れていた。