第1章 1話ー目覚めー
ーチュンチュン
窓の外から可愛らしい鳥のさえずりが聞こえてくる。
「また…あの夢か…」
いつもならこの夢を見ると息が上がって、呼吸しづらくなり目を覚ますことが多いのだが、今日は不思議と目覚めがいい。
「今日が俺の誕生日だからか?…関係ないか。」
俺の誕生日をまるで祝ってくれてるかのような、雲ひとつない晴天に、なぜか嫌気がさした。
「お腹すいたな…朝飯なんだろ。」
物欲しそうに、自分のお腹を撫でてから、ふうっと息をつきリビングへつながる階段へと降りていった。
* * * * * *
階段を降りて視線を上げると、ちょうど母が机に料理を並べている最中だった。
母親と目があったので、いつもどうり
「おはよう」
と口にすると、嬉しそうな笑顔で
「おはよう!レオくん!今日は、レオくんの誕生日だから、朝からお母さん頑張っちゃった♪さあさあ!早く席についてー!朝ごはんの時間よー!」
と、大きく腕を振り上げて嬉しそうに言った。
レオの母親は、優しそうな顔立ちをしていて、レオとは違いつり目ではなくタレ目だ。
「ああ、うまそう」と口にしてレオは早々と椅子に座った。
料理はお腹が空いていたからか、いつもの倍以上美味しそうに見えた。
料理を見て、早く食べろとまるで胃が自分に命令しているかのように大きくお腹が鳴った。
「いただきます!!」
レオの母は嬉しそうに ふふふ と微笑み、「召し上がれ」と言った。
母の料理はどれも本当に美味しくて、レオの空っぽだった胃はあっという間に埋まってしまった。
テーブルに並べられていた料理を全て完食すると、隣に置いてあった牛乳が注がれたグラスを口に運び、ゴクゴクと音を鳴らし飲み干した。
「うふふ、本当にレオくんはいい食べっぷりね!ところで今日もグレイソンさんのところで剣術を教えてもらうのかしら?」
と、空になった食器を片付けながら問いかけた。
レオは、片付け終わった母から、母特製手作り弁当を受け取り、
「ああ、今日は必殺技を教えてくれるって言ってたから絶対に行かなきゃな!弁当ありがとう母さん!俺荷物取ってくる!」
と忙しそうに階段を駆け上がった。「誕生日だっていうのに、レオくんは頑張り屋さんね。」とやれやれと言った表情でレオの母は腕を組んだ。
そしてどこか難しそうに、どこか悲しそうに、
「ついにこの日が来てしまったのね…」
とリビングの端に置かれた、引き出しの一番上の段を見つめながら呟いた。