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第二話 細長く伸びる巨人


 通路を抜けて逃げ込んだ先は少し開けた部屋だった。

 部屋の中央には一枚の大きな姿見が鎮座している。姿見の縁はメッキが剥げかけた唐草模様のレリーフが施されている。


 一部が砕け落ちていたり蜘蛛の糸のようにひびが入っていたりするが、それでも俺の持つ懐中電灯の光を反射していた。

 パキパキと音を鳴らしながら姿見に近づく。姿見の前に立つと、肩で息をする俺の輪郭がぼやけて映りこんでいた。


 表面はどうやら曇っているようだ。鏡に施された細工によってだろうが、俺の背丈は実際よりも大きく細長く映るようになっていた。

 

 姿見の大きさは3~4メートルぐらいの高さがある。そこに映りこむ俺の姿も縦に強調されているのだが、姿見の巨大さと相まって、不気味なほどに大きい。

 曇りで不鮮明なのだが、手足は細長く、顔も細長くいびつな巨人が鏡の中にいた。


 いくらなんでも趣味が悪い。ごくりと生唾を飲み込み、俺はいったん鏡から離れた。

 

 

 全ての絵が落ちきったのだろうか?

 あれ以降、通路から物音はしなくなった。ほっと胸をなで下ろし、呼吸を整える。

 今一度通路のほうに戻り、部屋から頭だけを出して覗き込むと床には柄が散らばっていた。俺が通る前よりも見事に散らかってしまったが、断じてわざとではない。


 そう言い訳しながら、俺は再び部屋の真ん中に移動する。

 よくよく姿見の表面を観察すると、結露で曇っているみたいだった。

 グローブで擦ると、明かりに照らされた俺の顔がくっきり浮かびあがった。顔の左側には小型カメラがしっかりとマウントされている。

 カメラは全速力で走ってもずれることなく、健気に録画を続けていた。

 


 パキパキ鳴り続ける足元が気になって目線を下に移すと、小さな虫達が懐中電灯の明かりから逃げようと右往左往している。物音の正体は床に散らばったガラス片だった。

 ところどころに散らばったガラス片は懐中電灯に照らされてきらきらと輝いている。その反射した光は部屋全体に散らばり、プラネタリウムのような幻想的な光景を生み出した。


 ふと、散らばるガラス片に違和感を覚えた。床を渦中電灯で照らしながら、俺はその違和感の正体を探る。

 すると妙なことに気が付いた。

 ガラス片が部屋の中央にある姿見から落下したものであるならば、それは姿見を中心として周囲に散らばるはずだ。

 それが踏み荒らされたとして、細かくなり部屋全体に広がる、そこまではまあ不自然なことではない。


 だが、床を懐中電灯で照らしてみて一切ガラス片が落ちていない所があるのだ。

 ……まるで何かをひきずりながら誰かが歩いたように。


 しかし、これは結構大きいサイズのものを引きずったようだ。その証拠にガラス片がないところがちょうど道のようになっており、俺はガラス片を踏むことなく歩くことができた。

 散らばるガラス片の間にできた道は、さらに奥の部屋へ続く入り口へと続いている。



 その道を歩いて、さらに嫌なことに気付いた。








 道となっている部分の床が、ところどころ赤黒く汚れていることに。

 

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