アマゾネスに転生!?~男の俺がアマゾネスになるみたいです~
学校からの帰り道、俺は録画していたアニメを見るため自転車をかっ飛ばしていた。
「アニメ♪アニメ♪アニメが俺を待っている~」
その時、突然俺の体を衝撃が襲った。
―――――!?
地面に転がる俺。
生温かい感覚が俺を包み込む。
一体何が起きたんだ?かろうじて見えるのはトラックとひしゃげた俺の自転車だけだ。
温かい感覚が徐々に消えていき体が冷たくなっていく。よくみると生温かかったのは俺の血に浸かってたからみたいだ。
視界も次第になくなっていった。
嘘だろ......俺......死ぬ......のか?
そして俺は意識を手放した。
◇
パチリッ!
俺は目を覚ました。
「なんだ夢か......」
てっきりトラックに轢かれて死んだのかと思ったぜ。
「お、起きたか」
―――――――!?
見知らぬ声がする。
俺は声のする方に目を向けた。
そこには動物の皮でできた最低限の服装に身を包んだ筋骨隆々の女がそこにいた。
「な!?」
俺は慌てて女から距離をとった。
よくみると俺がいる場所もいつもの部屋ではない。
簡易的なテント?
いや、まるで縄文時代の家のような場所であった。
「そんなに怯えないでいい。ここはアマゾネスの里。お前を連れていた男どもは始末したから安心してほしい」
アマゾネスの里......!?
男どもは始末した......!?
この女は一体何を言っているんだ?
「あ......ちょ......」
俺は慌ててこの原始的な家から飛び出した。
家を飛び出すと目の前には大きなたき火があがっていた。
そして、たき火の周りには先ほどの女と同じような格好をした女が囲っている。
「これは......一体......どういうことなんだ?」
俺は理解できない状況に逃げることもできずに固まってしまった。
「ふっ、大丈夫だと言っただろう。あのたき火をよく見てみろ」
俺の後に続いてやってきた女の言うとおりに、たき火を注意深く観察してみた。
「な!?」
俺はその悲惨な光景にその場で吐きだした。
「お前を連れていた男どもの末路だよ。私たちの国の中では男どもの隙にはさせない」
たき火の中には見知らぬ男が串刺しになって燃やされていたのだ。
俺は吐けるだけ吐いた後、またしても意識を失うのであった。
◇
パチリッ!
俺は目を覚ました。
ああ、全く悪い夢をみたものだ。
トラックに轢かれたのも意味がわからないけど、アマゾネスの里とかもっと意味がわからない。
「大丈夫か?」
「......」
夢の中に出てきた女が俺を覗き込む。
なんとなくこうなることを予想していた俺は、今度は慌てることなくゆっくりと起き上がった。
「一体全体何があったんだ?」
俺は落ち着いて現状理解に努めるのだった。
筋骨隆々な女は親切に説明してくれた。俺が男に連れられて森をあるいていたこと。そして、そこに出くわしたアマゾネスの戦士が助け出したこと。
アニメ好きで、ラノベもよく読んでいたので、なんとなーく今の状況を受け入れる。
恐らく俺はトラックに轢かれて異世界にやってきたのだ。そして、目を覚ます前に燃やされている男どもに連れ去られそうになっていた所をここの女達に助け出されたのだろう。
ようはこんな感じなんじゃないだろうか。
にわかには信じがたいけど。
でも一つ疑問があった。
「なんで俺を助けてくれたんだ?」
俺の質問を受けると、女は俺を指さしてこう言った。
「アマゾネスの戦士はどんな時でも女の味方だ。困ってる女を私達は見捨てない」
はぁ?だからそこが意味がわからないんだけど?
俺は男......だ......
......ん????
なんだか俺の胸に見なれない膨らみが......
あれかな。
うん。
トラックに轢かれて打ちどころが悪かったのかな。
俺はそっと着せてもらっていた服をはだけてみた。
「はぁぁぁあああ!?」
俺は思わず絶叫してしまった。
なんとそこには腫れなんかではすまされないほど、たゆんたゆんな胸があったのだ。
「どうした?どこか痛むのか?」
女が心配そうに俺を覗き込む。
「い、いや、なんでもない」
俺は極めて冷静を装ってそう応えた。
しかし内心は動揺が半端ない。
これは一体どういうことなんだ??
まさか。
そんな。
嘘だろう。
俺は不穏な気配を感じながらそっと下半身に手を当てた。
「............ない」
「ん?何がないんだ?」
「いや、なんでも......ない」
はぁ?
嘘だろ?
まだ一回も使ったことのない俺の、大事な息子が......跡形もなく消えていた。
「安心してほしい。お前の面倒は私達が見る。狩りの仕方も教えるし、何も心配する必要はない」
こうして俺はアマゾネスの里の一員として生活することになったのだった。
◇
アマゾネスの一員として生活をして二十日ほどがたった。
俺はようやく女として過ごすことに慣れてきていた。
女だらけの生活も慣れてみたら案外わるいものじゃない。一緒に体を洗ったりする時にはバッチリ女の体を堪能させてもらってるしな。
なに。
役得というものだ。
俺は地球では生のおっぱいなんて見たことはなかったが、ここにきてからは見なれてしまったよ。ははは。
そんなこんなで、俺は風呂の後に夜風に当たっていた。
俺はここでは果実を集めたりしていたのだが、他のみんなは狩りに行ったりしている。俺はまだいかせてもらえたことがない。
いつかはみんなと一緒に狩りにもいってみたいなぁ、なんて思っている。
俺は綺麗な満月を見ながらそんなことを考えていた。
その時、突然俺の体が熱くなり始めた......
「が......なんだこれ......体が溶ける!?」
激痛が襲う。
あまりの痛みに気を失いそうになるも、俺はなんとか耐えた。
何分くらい痛みが続いたかはわからない。しかし、次第に痛みは引いていった。
「はぁ。はぁ。はぁ。一体何だったんだ?」
俺はなんとか立ち上がった。
ん?
なんだか洋服がきついな。
それにいつもより視線が高......い?
「まさか!?」
俺は急いで体を確認する。
ある。
懐かしいものがある。
俺はそのことに気付いた瞬間、全身から汗が止まらなくなった。
初日の出来事がフラッシュバックする。
燃え盛るたき火に突き刺された男......
アマゾネスの里の住民は女には甘いが、男にはとことん厳しいのだ。
なんでこんなことに?
俺がわけもわからず戸惑っていると、がさごそと後ろで音がするのが聞こえた。
俺はばっと振り返った。
そこには、最初にこの町で知り合いになり、今では一緒に暮らしている女の姿があった。
「な......」
女は俺の姿に驚きの表情を浮かべている。
俺はまずい!とは思いつつも、この人なら分かってもらえるかもしれないと必死に訴えかけることにした。
「俺だよ。俺。ヨーコだよ」
俺はジェスチャーも交えながら必死に説得する。
しかし......
「男だ~!男が出たぞ~!」
女は声を大にして叫び出した。
俺は慌てて逃げ出した。
二十日も一緒に過ごしたのになんでわかってくれないんだ。
頬を涙で濡らしながら必死に逃げる。
俺は穴ぐらを見つけて、そっと中に逃げ込んだ。
アマゾネスの女たちが俺を探して近くを通る。
「本当に男がいたのか?」
「ああ。村のそぐそばまできていた」
「なんだって?まさか私達に気付かれずにそこまで接近するとは侮れないかもしれないな」
「油断せずに探そう」
うー、ヤバイ!
これはヤバイ!
俺は穴ぐらの中で小さく固まってビクビクしながら過ごすのだった。
そして、いつの間にか眠りについてしまうのであった。
◇
「おい、起きろ!」
俺は誰かに肩を揺さぶられて目を覚ました。
目を開けると、そこには見慣れた女の姿があった。
「うわ~」
俺は慌てて女から距離を取った。
「どうしたんだ?まさか。男に出くわしたのか!?昨日は姿が見えないから心配したんだぞ」
え......!?
俺は殺されると思ってビクビクしていたのだが、女は心配そうに俺に手を差し伸べてきた。
どういうことだ?
俺は女の手を取って立ち上がる。
ん?
服がきつくない。
視線も低くなっている。
そして、大事なものがない!
「男は危険な生き物だからな。見つけ次第ぶっ殺してやらねば」
女は目をギョロギョロさせながら辺りを見回していた。
俺は女に連れられながら原因を考えた。
もしかしたら、
あくまで推測に過ぎないんだけど、
俺は満月の夜にだけ男に戻れるのかもしれない。
思い当たる原因が満月を見たこと位しかない。
もしもこれが真実なら俺はどんでもない状況に陥ってしまった。
一カ月に一回は女達に襲われるということだ。
正直男に戻れる喜びよりも、殺される恐怖心の方が大きい。
俺、一体どうなっちゃうの!?
アマゾネスに転生したのに月一で男に戻るとか最悪なんですけど!
こうして俺の波乱万丈な異世界生活が幕を開けたのであった。