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「では、トロール討伐の素材分も合わせて、五百万ゴルドになります。全て、ニトーさんのカードへと送金となりましたので、ご確認下さい」
「………………」
俺は無言のまま、カードを操作し、振り込まれた金の額を確認する。
一、十、百……
ほ、ほんとにあった。
どうしてか、手が勝手に震える。
「ああ、そう言えば、キノコ採集の報酬を忘れてたわね」
プラス、三十万。
動悸がする。それと同時に、凄まじいまでの高揚感があった。いや、そうじゃない。これは全能感に等しい。
初めて、こんな大金を手にしてしまった俺は、ある種、神にでもなったような気分だった。
「おい、ここにいるやつ皆! 今日は俺の奢りだ! じゃんじゃん、なんでも食ってくれ!」
数秒の静寂がギルド内を包み、
「うおおおおおおおっ!!」
凄まじい勢いで弾け飛んだ。
「ちょ、アナタ何を!?」
「いいだろ、俺の金だ! 今日くらい好きに使わせてくれよ」
俺の発言に何を感じたのか、シアは溜息を吐いた。
「アナタの、お金だから、咎めはしないけど、程々にするのよ。お金なんて、無暗に使えば直ぐになくなっちゃうんだから」
「大丈夫、大丈夫」
俺だって分別ある大人なんだからさ。
「これが、ホントの駄目人間というやつですか」
「むぅ、我は判断を誤ったかもしれん」
何を言ってるんだ、こいつらは。ちょっと奢ってやるくらいでどうにかなる額でもないし、気にし過ぎなんだよ。
「大体、百万か……」
流石に、大盤振る舞いし過ぎたけど、次から気をつければ問題ないよな。
「スラ!」
「だよな! 楽しかったら、問題ない!」
アオも、好きなだけ飲み食い出来て、ご機嫌なようである。
そうだ、折角金があるんだ。今まで欲しくても我慢してきたものを買おうじゃないか。
前までは、母さんに怒られな――殺されない範囲で買い物をしていたが、今はそんなことを心配する必要もない。
「よっしゃ、ポチりまくるぞ!」
家に帰った俺は、さっそく、これまで欲しかったものを、購入していった。
「スラ!」
「なんだ、お前も欲しいものがあるのか」
「スララ」
「食べ物って、お前」
まだ食うつもりなのかよ、食わなくても平気な体のくせに……
「まっ、いいけどな!」
「スラッ!」
何せ、俺には金がある。飯買うくらいどうってことない。出前でも通販でも好きにすればいいさ。
「おっ、そうだ」
一通り注文を終えたところで、俺はネット掲示板を開く。
どうせなら、トロールを倒したということを、全国民に知らしめてやりたい。本当は、ツヅッターとか使うべきなのかもしれないけど、残念ながら俺はやってないからな。
「さてと」
俺は、トロールを倒したことと、それによって大金を入手出来たことを簡潔に書き込み、合わせて、写真を投稿する。
やはり、最近は魔物や、魔族に対する関心が強いのか、レスは速く、勢いも凄まじい。
が、
「いやいや、捏造でも、合成でもねえし」
大半は、馬鹿にしたり、疑ったりと、俺が望む反応ではなかった。
「まあ、伝説級の魔物に出会って、それも倒したなんて話、普通は信じないか」
俺は諦め嘆息する。
別に、信じて貰えなかったところで、どうということはない。
それに実際、俺は大金を持ってるのだ。今は、この優越感に浸ろうじゃないか。
「ぐひひ……」