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「魔の森には何度か行ったことがあるんだよな?」

 

 もしトロールが見つからなかった場合、キノコ探しに移行する手筈となってるため、俺は、そう尋ねた。


「くっくっく、あそこはもう我らにとっては庭のようなもの」


「というのは、流石に冗談ですが、既に十回以上は入ってますので安心して下さい」

 

 フィーナの言動を華麗にスル―するロゼッタ。付き合いの長さゆえだろうか?


「ひょっとして、お兄さん……怖いんですか?」

 

 ギクッ!


「そ、そんなことないぜ。ただ、俺は安全を第一に考えてるだけだけど」


「声が震えてますし、それに口調も変ですよ」


「………………」


「大丈夫よ。私一人で行っても問題ないくらいだし、それにいざという時は護ってあげるから」


 やめて、そんなこと言われると、なんだか惨めになっちゃうから。男にはプライドってもんがあるんだよ。


「シア、一人で冒険者活動をするのは、止めて下さいっていいましたよね?」


「ええ、そうね。ごめんなさい」


「わ、我だって、一人で行こうと思えばいけるのだぞ!」

 

 そのアピールいる?

 けど、これって冷静に考えたらハーレムってやつなんじゃないか。少なくとも俺の人生経験の中で、女は三人、男は俺一人で出かけた経験なんかない。いや、母ちゃんとその友達と、その娘の三人ってことは稀にあったが、それはノーカウントだろう。

 この状況、傍から見れば、どのように見えるのだろうか。


「お嬢様と、その奴隷ってところじゃないですか?」


「え、口に出てた?」


「はい、少しだけ。あと、そのにやけた顔を見てれば、大体、何を考えてたのか分かりますよ」

 

 や、やべえ、気を付けなければ。これじゃあ、落ち落ち考え事も出来やしない。


「いいじゃない、想像するだけなら自由よ」

 

 寛容っぽくみせながら、実は貶してるよな、それ。


「我は、ハーレムというのは感心しないぞ。一人に絞るべきだ」


「いや、だから別にハーレムとか考えてないからな」

 

 飽くまで、ハーレムっぽいって思ってただけだし。


「大体、俺とお前らの関係が、奴隷と、お嬢様に見えるってのは納得出来ないんだよ。せめて執事だろ?」

 

 そもそも、奴隷なんて、この国では許されてないんだし。


「いいえ、執事というのは名誉ある立派な仕事なんですよ。お兄さんに勤まるはずありません。百歩譲っても下男ってところですね」

 

 酷い。てか下男って言い方、凄く嫌な言葉に聞こえるのは俺だけ? せめて、小間使いとかにして欲しいんだけど。


「な、なら、まず第一にお前らが、お嬢様に見られないんじゃないのか?」


「失礼ですね。これでもボク、いいとこのお嬢様なんですよ」


「ホントかよ。でも、これでもってことは、自分がお嬢様に見えないってことは分かってるんだよな?」


 いや、別に貶してるわけじゃないぞ。

 少なくとも、可愛いのは間違いない。ただ、活発そうなショートカットの髪と、ボクという一人称。そして魔女服。それらが、お嬢様然とした雰囲気を一掃しているのである。

 フィーナに関しては、完全に痛いコスプレ少女だしな。


「まあ、ボク達だけならお嬢様には見えないでしょうね。でもシアを合わせればどうでしょう」


「くっ」


 確かにシアには、お嬢様然とした、いいやそれ以上のオーラがある。そんな奴と並んでる美少女がいれば、皆が、いいとこのお嬢様と勘違いされてもおかしくはない。


「でも、俺が小間使いってのは――」


「下男ね」

「下男です」

「下男だな」



「三人揃って言わないでくれるっ!?」


 やっぱハーレム気分なんか俺に味わえるものではなかった。

 



「いませんね」


「………………うん」


 前回、トロールと思われる化け物を見たところに来たはいいが、姿は見えない。

 ここは魔の森に面しているだけあって、樹木も多い。だからどこかに隠れてるのではないかと思ったが、探して見つからないなら諦めるしかないだろう。


「アオ、お前はどうだ?」


「スラァ」


 念のため尋ねてみたが、返答は今一、芳しくない。

 ううむ、採取の任務で薬草を見つけるのとは、わけが違うか。


「まあ、当然といえば当然じゃないですかね? ボク達も、ここから森に入ることは何度かありましたけど、今までそんな化け物、見たことなかったですし」


「そうだったの!?」


「ええ」


 そういうことは早く言って欲しいんですけど。

 だったら、ここを探すだけ無駄じゃないか。


「もし、ニトーが見た魔物が実在するのだとしたら、森を住処にしている可能性が高そうね。その場合、流石に探し出すのは難しいでしょうけど」


 魔の森は深く、奥に行くほど危険とされている。中には、ドラゴンまで住んでるんじゃないかって奴がいるくらいだ。

 実際は伝承止まりで、実際に目撃されたことはないんだけどな。


「因みに、ボクたちは、一番奥とされる深度五まで行ったことはあるんですけど、その時、強大な魔物と出会うことはありませんでしたね」


「い、一番奥までか?」


「ええ。危険な魔物が本当に実在するなら、放置するのは危険だもの」


 それはまた、勇敢というか、無謀というべきか。

 実際、生きて帰って来てるんだから前者なんだろうが。


「だが、流石に全域を調査出来たわけではないからな。ニトーが見た怪物がいないとも言えないぞ」


「ただ、本格的に調査するにしても、今日は準備が足りないわね」


 そうだろうね。てか、俺もそこまでしたくないし。


「しょうがない、キノコだけとって帰るとしますか」


 ここまで情報が揃ってしまったのなら、俺としては諦めざるを得ない。


「そうね。そうして貰えると助かるわ」

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